登山ガイドに聞いた!山で遭遇したくない虫6種と刺された時の対処法

2018/07/19 更新

登山やハイキングに行くと、いろいろな虫に出くわします。中には、刺されるとさまざまな症状をひきおこす危険な虫も。そこで、身近な自然の中でも出くわす可能性の高い虫の種類から、事前にできる予防策、万が一の時の対処法までを、登山ガイドの栗田朋恵さんに教えてもらいました。


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この季節、山へ行くなら気を付けたい“虫”

低山登山の様子
出典:PIXTA
登山やハイキングに行くと、いろいろな虫に出くわします。中には、刺されるとさまざまな症状をひきおこす危険な虫も。そこで、身近な自然の中でも出くわす可能性の高い虫の種類から、事前にできる予防策、万が一の時の対処法までを、登山ガイドの栗田朋恵さんに教えてもらいました。

山であいたくない虫、どんな種類がいる?対処法は?

虫刺され
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では具体的に、山で遭遇したくない虫にはどんな虫がいるのか、また、万が一刺されたり、咬まれたりしてしまった場合にどうしたらいいのかを聞きました。ちなみに栗田さんは、ここで紹介する虫には、1度は被害に遭った経験があるそう。

1:刺されると猛烈にかゆいヤブ蚊、ブヨ(ブユ)

蚊
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ヒトスジシマカに代表されるいわゆる「ヤブ蚊」は、刺されてすぐに、ぽつっと赤く腫れ、かゆみを発症するのに対し、「ブヨ」は発症まで半日ほどかかる場合が多く、腫れやかゆみもヤブ蚊より強くでやすく、水ぶくれになることもあるのだそう。

「ブヨは小さい虫なので、刺された時には気がつかないこともありますが、数時間経って大きく腫れ上がることがあります。山菜採りなんかに行って藪の中に入ったりするとたくさんいて、私も刺された経験が何度かありますね。ヤブ蚊、ブヨに刺されたら、毒を吸い出す器具『ポイズンリムーバー』を使用することで症状の軽減が期待できます。ただしポイズンリムーバーは刺された直後が効果的。刺されたことに気づかず、時間が経ってしまうと効果が薄いと考えられます。その場合はすぐに市販の抗ヒスタミン軟膏を塗っておくのも効果的だと思います」(栗田さん、以下同)


2:刺されると痛い!命の危険もあるハチ・アブ

キイロスズメバチ
撮影:西海太介
刺されると痛みがある虫と言えばハチやアブ。私も子どもの頃、実家で小さな蜂に刺されたことがありますが、小さいくせにものすごく痛かったことを覚えています。万が一アブやハチに出くわしたら、まずは相手を刺激しないことが大事なのだとか。

「ハチに出くわしたら、手で払ったりすると攻撃してくるので、じっと通り過ぎるのを待つのが得策。一方アブは、振り払ってでも避けないと刺されます。ハチは防御のために刺しますが、アブは食事のために刺すのでハチよりも積極的に刺してきます。ハチの場合、グループで登山している時に、誰か1人が攻撃してしまうと、周囲の人にも被害が及ぶので、遭遇した場合の行動を事前に共有しておきましょう」(同)



ウシアブ
撮影:西海太介(刺すのはハナアブではなく、写真のようなウシアブ)
ハチの毒針は、ポイズンリムーバーでは吸うことができません。万が一刺されてしまったときは、応急処置としてきれいな水で患部を絞り洗いするのが最適です。その後は、冷やすことで、腫れや痛み、かゆみなどを抑えることも期待できます。ただし、ハチに刺された場合は重い全身性のアレルギー症状を起こすこともあるので、「体調の変化を良く見ておくことが大事」と栗田さん。

「ハチは、過去に刺されたことがあるとアレルギー症状が出やすくなる傾向があります。息苦しさや、刺されたところ以外の蕁麻疹などの症状が出る場合は、急いで病院へ行かないと命にかかわる場合があります」(同)

ハチの中でも、オオスズメバチやクロスズメバチ(通称:ジバチ)は、山で注意したいハチです。この2種類は地面の下に巣を作る習性があるため、外から巣が見えないので、気が付いたら巣の近くにいて刺されるという事故が起こりやすいハチです。

3:むやみに取り除くのも危険なマダニ

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ここ数年、ニュースなどで「マダニ」の被害をよく耳にするようになりましたが、野生動物が生息しているエリアには、家の中にいるような小さなダニとは違う大型のマダニが生息しているそう。マダニは、口器と呼ばれる部分を人間の皮膚に刺して吸血します。咬まれると、赤く腫れあがるほか、いろいろな感染症をひきおこし重症化するケースもあります。

「マダニは口の部分を人間の皮膚に埋め込み血を吸います。私も実際に足を刺されたことがありますが、痛みが全くないため気がつかず、帰宅後にお風呂に入って初めて気づき、ゴミかなと思って払ったらマダニでした」(同)

診察
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栗田さんは翌日皮膚科へ行ったところ、手で払ったためにマダニの口の部分だけ皮膚の中に残ってしまっており、切開して取り出すという事態になったそうです。マダニは布団にいるダニとは違い、2〜3mmほどで肉眼でも分かる大きさ。がっちりと噛み付き、長い時間をかけて血を吸うので1週間ほど気づかないケースもあるようです。

「私が噛まれたときのように、自分で取ろうとすると、マダニの体の一部が体内に残ってしまうことがあります。自己処理はせず、マダニがついたまま、ただちに受診しましょう」(同)

すぐにでも取りたくなりますが、医師も虫の種類や状態が一目で分かり、治療がスムーズに行いやすいのだそうです。あるいは、ダニの除去器具『ティックツウィーザー』というものもあります。事前に練習しておいて、確実に除去できるようになればこちらを使用するのも効果的。

ITEM
ティックツウィーザー ウルトラ
サイズ: 最大直径15×109mm
重量: 8g
本体素材: プラスチック
ドイツ製


4:知らないうちに被害にあう毛虫

チャドクガ
撮影:西海太介(チャドクガ)
もう1つ、遭遇したくない虫としてあげられるのは「毛虫」。体じゅうの毛が毒を持っているものもあり、触れただけでもかゆみや痛み、発疹などの皮膚炎が起こる場合があります。ツバキなどにつくチャドクガは毒針毛(どくしんもう)が風に乗って飛び、間接的に被害を受ける場合もあります。恐ろしいですよね。

「毛虫に刺されたら、ガムテープやセロハンテープを使って、見えない毛針をペタペタと取り除きます。もしテープが無い場合は、絆創膏やテーピング用のテープなど粘着性のあるものなら代用がきくでしょう。取り除いたら水で患部を洗い流し、症状がひどいようなら病院への受診をおすすめします」(同)


5:水辺では気をつけたいヒル

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ヒルに咬まれると、ヒルジンという血を凝固させない成分を出すため、ダラダラと血が止まりにくいのが特徴。毒はもっていないですが、人によっては、かゆみやかぶれが大きくなるケースもあるのだとか。

「私自身も、田んぼの中でヒルに咬まれたことがあります。(※おそらく水棲のチスイビル。ヤマビルは陸棲)ヒルは見た目が強烈なのと、噛まれたところが血だらけになるのでびっくりしますが、ヒルそのものには毒はありません。咬まれた場合は、患部を洗い流し、軽く圧迫して血が止まるのを待ちましょう。ヒルがくっついていたら、ライターなどで火を近づけると逃げやすくなりますが、火傷をしないよう注意が必要です。塩か虫除けスプレーを使用しても取ることができます」(同)

6:田舎では家の中に出没することもあるムカデ

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ムカデは昆虫ではないですが、人を刺す生き物の1つ。山の中ではよく見かけますし、田舎では民家の中に出没したなんて話もたびたび聞きますよね。

「ムカデについては、私はまだ刺されたことはないのですが、登山の休憩中に、シャツを脱いで置いておいたら、その中にムカデが紛れ込み、知らずに着てしまって刺された、なんて話も聞きますね。咬まれると激しい痛みがあり、赤く腫れるようです。ムカデの場合も、噛まれたら皮膚科を受診したほうがいいでしょうね」(同)
  • いざという時にあると便利なものは?

ポイズンリムーバー
出典:PIXTA
「水は患部を洗い流したり様々な応急処置に幅広く活用できるので重要です。飲用以外に多めに持って行くようにしましょう。ポイズンリムーバーはネットで手軽に購入ができ、ハチ以外の毒虫にも使えるので1本あると心強いですね。抗ヒスタミン軟膏は、刺されてすぐに塗る方が症状の軽減に期待できます」(同)

・水
・ポイズンリムーバー
・抗ヒスタミン軟膏

以上の3点は、登山やハイキングの際には常備しておきたいアイテムです。

出かける前の準備も大切! 事前にできる予防策

登山
出典:PIXTA
人を刺す虫の被害にあわないようにするには、事前にできる予防策をしっかり行うことも重要です。具体的な方法を教えてもらいました。

1:服装はできるだけ露出を少なく

夏の登山
出典:PIXTA
「まず服装は、できるだけ露出が少ない方がいいですね。種類関係なく、虫は肌の露出しているところに目がけてやってきます。トップスはこれからの時期、どうしても半袖が多くなるので、虫が発生しやすい場所を通るときだけでも、アームカバーをつけると良いと思います。また、ハチや蚊は、刺激してしまった時に黒い色に寄ってくる習性があります。そのため黒の衣類はできるだけ避けておきましょう」(同)

特に夏の低山では暑いので、半袖短パンなどで登っている人もよく見かけますが、やはりそれは危険なんですね。また、ズボンと靴下の隙間も狙われやすいとのこと。特に、ダニなどもいる藪の中を歩くときなどには、ズボンの裾を靴下に入れることがおすすめだそうです。


2:“いい香り”はご法度!

制汗剤
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「ハチは、柔軟剤や化粧品、制汗剤スプレーなどの香りに反応して寄ってきます」(同)

汗の臭いが気になるからと、休憩時についつい制汗剤などをつけたり、いい匂いのする汗拭きシートなどを使ってしまいそうになりますが、NGだったとは。甘いお菓子も匂いが漏れないよう、ジッパー付きの袋などに入れて持っていくのがおすすめです。

3:虫除けスプレーは、衣類の上や帽子のツバなどにも

虫除けスプレー
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「露出している肌はもちろん、衣類の上からもふりかけます。顔や首回りも刺されやすいので、帽子のツバの内側にスプレーをかけると効果的。時間がたつと効果が薄くなるので、途中でかけ直すといいと思います」(同)

最近では防虫機能を施した素材でできているウェアも販売されているので、それらのアイテムも用いることで、より予防効果を高めることができそうです。
  • 自己判断が難しい場合は、すみやかに病院へ

出典:PIXTA
「虫刺されに限らずですが、山の応急処置の基本は、自分の技量をこえたものは、専門家にゆだねること」と栗田さんは話します。「自分で対処できないこと、判断が難しいことは必ずあるので、少しでも体調や経過に異変がみられるようなら、どんな虫でも病院を受診することをおすすめします」(同)

虫が寄ってこない予防を事前にしつつ、もし刺された場合も、慌てず適切に処置をして、夏のアウトドアを満喫したいですね。


◆お話しをお聞きした方:栗田朋恵さん

登山ガイド。外あそびtete主宰。長野県小谷村生まれ。故郷の白馬山麓と神奈川県鎌倉市を主なフィールドに活動している。親子ハイキングのワークショップのほか、幼児や児童を対象にした自然体験と造形表現の活動なども行っている。2児の母でもある。

監修/セルズ環境教育デザイン研究所 西海太介氏


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    相馬 由子
    相馬 由子

    編集者、ライター。埼玉県秩父市出身で、山に囲まれて育ったため、一時的に都会に憧れたものの、大人になってから自然の中の気持ち良さに改めて気づく。合同会社ディライトフル代表。

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