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登山の時のインナーにヒートテックは止めましょう!

実は編集部では、数年前に「ヒートテックが山でも使える」という記事を出した過去があります。(現在は削除済み)
確かに、普段使いには良いアイテムです。しかし、現在YAMA HACKでは、「登山のインナーとして、ヒートテックを着ていくのはさけてほしい」と考えています。
今回はそのような過去もふまえながら、ヒートテックが登山でおすすめできない理由を検証し、解説していきます。
「持っているもので済ませたい」

しかし、あまり山に登らない初心者の中には、登山用のインナーを持っていない人も。その人たちは「持っているもので済ませたい」や「暖かいウェアと言えばヒートテック」などの理由で、登山にヒートテックを選んでしまいがち。
「普段使っているものが安心」という気持ちもわかりますが、やはりそこは街と山。環境が違うので、同じようにはいきません。
なんで登山では着ない方がいいの?

体が冷えると体調を崩してしまうだけでなく、最悪の場合、低体温症になってしまうこともあるため注意が必要です。
しかし、どれだけ危険かはイマイチわかりにくいもの。そこで、実際に編集部員がヒートテックを着用して登山をしてみました。
【検証】ヒートテックで登山に行ってみた

コースは御幸ヶ原コースを選択。ヤマプラでの目安のコースタイムは約120分です。
着替えのインナーや防寒ウェアを用意し、安全に配慮した上で実施。実際に山で、ヒートテックを着用して感じた内容をまとめました。
①汗をかき始めると一気に温まる

それでも登りでは、ジワっと汗が。汗をかき始めるまでは時間がかかりましたが、体が温まって汗をかき始めるとヒートテックが発熱したのか、急激に体が温められたような感じでした。
そこからは発汗量も増え、特に背中や脇はたくさんの汗をかいたため風が吹くとかなり寒かったです。
②ベストなウェアの重ね着がわからなかった

また風が当たらなくなったせいか、今までよりもヒートテックの濡れをかなり感じるようになりました。濡れた生地が肌にベタっとまとわりつくような感じで、普段着ている登山用インナー(モンベルのジオライン)が汗で濡れた時とは別の感覚。これが結構冷たくて不快でした。
③初心者だとなおさら汗をかきやすそう

そうなると行動中は汗をかいても寒さを感じないかもしれませんが、休憩で止まった時や風を受けた時に冷えを感じることになります。
薄着の時は外から寒さを感じるし、ウェアを着れば内側の濡れで冷えて不快、とウェアの調整がかなり困難でした。歩行ペースで発汗量を正確にコントロールするのには経験が必要なため、歩行ペースによる発汗量のコントロールもあまり現実的でないように感じました。
【まとめ】
・ゆっくり歩いても汗はかく。汗をかき始めるとウェアがどんどん発熱して暑くなっていった
・薄着だと外からの風で汗が冷える。ウェアを着ると、内側にかいた汗が濡れて冷たく不快
・快適に歩くにはペースやウェアの調整が細かく必要で、正直めんどうに思えた
初めて登山でヒートテックを着ましたが、街で着たような暖かさによる安心感は感じられませんでした。
登山のように常に動き汗をかきつづける場合は、運動による発熱+ヒートテックの発熱でかなり暑くなり、汗で濡れて冷たくなってしまうようです。
なんで暖かくなる素材が冷たく感じたの?

【1】水分が熱を生み出す仕組み
【2】暖かさを感じる流れ
【3】冷えた原因
の3ステップで考えてみましょう。
【1】水が熱を生み出す仕組み

水は水蒸気になる時に、周りにある熱を奪います。それを「気化熱」といい、夏のひんやりグッズなどはその働きを活用して冷涼感を生み出しています。
反対に、水蒸気が水に変わる時に発生するエネルギーが凝縮熱(吸着熱)。ここで生まれる熱を利用して体を暖かくするのが、ヒートテックなどの「吸湿発熱インナー」と呼ばれるものです。
【2】吸湿発熱インナーで暖かさを感じる流れ

①人は何もしなくても、汗などで水分を発散しています。その水蒸気を吸湿発熱素材(ウェア)が吸収。
②その時に水蒸気が凝縮され、水分に変わることで凝縮熱が発生。
③その時に発生した熱が体に伝わるので、暖かく感じる。
水をたくさん含むことができる素材のほうが、長い時間熱を生み出すことができます。ヒートテックは、レーヨンというたくさん水分を含むこと(保水)ができる繊維を使用することで、暖かさを生み出し続けているのです。
【3】冷えた原因は”保水力の限界”

また、乾くスピードが追いつかないため濡れたウェアが肌に接触。水分はとても熱伝導率が高いため、肌がウェアで濡れるとそこから体温を奪われてしまいます。
たくさん保水できる繊維は、「乾きにくい繊維」ということは覚えておいてください。レーヨンに限らず、ポリエステルやコットン、ウールでも限界を越えると飽和します。
登山でヒートテックを使うことに関して

事前に登山用インナーの良さを知ることができれば、ヒートテックを選ぶ人が少なくなるかもしれません。初心者を連れていく時には当たり前と思わず、丁寧にウェア選びなども教えてあげましょう。
山の怖さも知っているガイドさんはやはり安全性を優先。もちろん価格は商品選択の時に重要ですが、安全性は忘れないようにしないといけないですね。
ヒートテックはコスパ良し!でも、登山では控えよう

初心者の方が登山を好きになるかは、「登山が楽しかったかどうか」にかかっています。せっかくの登山を楽しい思い出にするため、初心者の方のウェア選びは安全第一でいきましょう。登山は寒くても汗をかくため、インナーは速乾性があるものやウール素材のものを選んでください。
\まとめ/
【1】発熱したては良いが、徐々に暑くなって汗をたくさんかいてしまう
【2】ヒートテックは汗で濡れると登山中は乾きにくく、冷えにつながる
【3】汗で冷えると体調を崩して、登山が楽しくなくなる