黒いウエアは狙われるって本当!? スズメバチが攻撃するのはココだった!

毎年ある時期になるとニュースで取り沙汰されるハチ被害の問題。山好きのあなたも、登山中に遭遇してしまう可能性がゼロではありません。万一に備えて対策はしっかりとしておきたいもの。それにはまず、ハチの生態を知ることが一番です。「ハチはどんな場所を攻撃してくるの?」「 黒いウエアって狙われるの?」そんなハチに対する疑問を解決しましょう。ハチ目線で見てみると、意外な事実が分かるかも!?


アイキャッチ画像出典:PIXTA

恐るべし…ハチ被害の実態

キイロスズメバチ
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夏~秋頃になると、目にすることの多いハチ被害のニュース。毎年どのくらいの人が被害にあっているかを知っていますか? 2017年9月に厚生労働省が発表した人口動態調査の結果によると、2016年度のスズメバチ、ジガバチ及びミツバチとの接触による死亡者数は19人(男性16人・女性3人)。毎年20人近くが亡くなっています。軽症で済んだケースを含めると、ハチ被害はかなりの件数になるのではないでしょうか。

2017年度に登山道で起きたハチ被害事例

命の危険にも繋がるハチ被害は、山での被害も多数報告されています。2017年に実際にニュースになった登山中の事例を見てみましょう。

2017年8月11日 高千穂峰

高千穂峰
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鹿児島県霧島市の高千穂峰の1合目付近で、登山客十数名がスズメバチ襲われた。ハチの種類は地面に巣を作るスズメバチ科の「ジバチ」と見られ、登山道脇の土手の地面から巣が見つかる。刺された登山客は全員軽症だったとのこと。

2017年9月10日 大滝山

大滝山
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香川県と徳島県の県境に位置する大滝山の登山道で、登山者8人がスズメバチに刺され病院に搬送されたが、いずれも軽症だったとのこと。市内の登山クラブに所属するメンバー20名で下山中だった。

2017年9月11日 藻岩山

藻岩山
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北海道札幌市の藻岩山の登山口で、男女11人がキイロスズメバチに刺された。全員軽症だったとのこと。

2017年10月1日 白岳

佐世保市白岳自然公園 長崎県佐世保市の白岳自然公園の向かいにある白岳で、白岳自然公園主催のイベントの一環である登山中だった親子連れ20人が下山時にスズメバチに襲われ、うち子供4人と大人2人が刺され病院に搬送された。

登山に付き添っていた公園の看板犬であるボーダーコリーのオス“ロン”がスズメバチを追い払うようにかけより、自ら標的に。その間に登山者は避難することができたという。ロンは、20か所以上も刺され治療を受け、1ヶ月ほどして回復したとのこと。地元の長崎新聞でもロンの勇気ある行動が報じられ、ロンを称える声が相次いだ。

2017年10月4日 飯盛山

飯盛山
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神奈川県から林間学校に訪れていた小学生10人と教師1人が、長野県南牧村の飯盛山に向かう林道でハチに刺され病院に搬送されたが、いずれも軽症だったとのこと。ハチは地面に巣をつくる「クロスズメバチ」と見られている。

夏から秋は特に注意!

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事例のように、登山中のハチ被害で多いのが、攻撃性の高い性質を持つと言われているスズメバチによるものです。スズメバチは春から活動を開始し、巣作りが活発になり繁殖期となる7月~10月頃は攻撃性が増す時期。ちょうど登山のハイシーズンや秋の行楽シーズンと重なるので、山へ行く際は注意が必要です。

スズメバチが攻撃してくるのはココ!

スズメバチが攻撃する人間の部位
参考:「おどろきのスズメバチ 」 中村 雅雄 著、講談社、p94
「おどろきのスズメバチ(中村 雅雄 著、講談社)」に掲載されている『スズメバチが人間の体のどこをねらって毒針を刺してくるかを調べたデータ』によると、どうやら、頭部や手足が狙われやすいようです。

それには理由があり、複眼と呼ばれるスズメバチの大きな目は、前後の動きよりも上下左右の動きの方が感じ取りやすいため。スズメバチを手で払ったり、逃げる時に体を大きく動かしてしまいがちな部位が狙われやすくなります。手足や頭は露出していることも多い部位。登山に出かける際は、帽子をかぶり、長袖長スボンの着用を心掛けましょう。また、スズメバチの視野は上の方が広く、下の方が狭いのが特徴。逃げる時に姿勢を低くすべきなのも納得ですね!

▼スズメバチの種類と対策についてはこちら

体の部位で狙われやすい箇所は分かりましたが、では、黒いものが狙われるという噂は本当なのでしょうか?

黒いウエアは狙われるって本当!?

黒はハチに狙われる色とよくいいますが、実際はどうなのでしょうか。本当ならば、登山で黒いウエアは避けたいですよね。「スズメバチはなぜ刺すか(松浦 誠 著、北海道大学図書刊行会)」の中で、スズメバチの前で様々な色の布を振り回した実験をされているので、結果をご紹介します。

敵意を示した色は…

蜂に襲われる黒い服を着た人
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敵意を示し、激しい攻撃をしかけてきたのはやはり「」でした! 天敵である熊の毛の色を認識していて、本能的に黒いものを狙ってくるという説もありますが、スズメバチが黒を狙う理由ははっきりとは分かっていません。ただ、攻撃態勢に入ったスズメバチが、黒いものを標的にする可能性が非常に高いことは確か。黒や濃い色のウエアは避けたほうが良いでしょう。

その他の色では「青」にやや多い程度で、他の色はあまりハチを刺激しなかった。とくに「白」や「銀」にたいしては巣にたいする刺激が強くない場合はほとんど反応せず、かなり強い刺激を与えた場合でも、「黒」に比べると攻撃してくるハチは10分の1以下であった。

引用:スズメバチはなぜ刺すか 松浦 誠 著、北海道大学図書刊行会、p67

ハチにの色彩感覚って…

ミツバチ
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ハチの中でもミツバチの色彩感覚についての研究では、オーストリアの動物行動学者でありノーベル生理学・医学賞を受賞しているカール・フォン・フリッシュが、ミツバチは紫外線に敏感な感覚を持っており、波長の短い紫外線とは逆の、波長の長い「赤」は見えていないことを明らかにしています。

また、人間のようにはっきりとした色彩感覚はなく、明度こそ感じているものの、オレンジと黄色、青と紫のような近い色は同じような色に見えているとのこと。スズメバチについては明らかになっていませんが、もしかしたらミツバチと同様の可能性も!?

▼ハチ対策にぴったりのウエアの色についてはこちら

▼ハチに刺されるとどうなる!? 正しい対処方はこちら

▼アナフィラキシーショックについてはこちら

スズメバチの巣に気づかず、近づいてしまうことも無きにしもあらず。もしも登山中にスズメバチに遭遇してしまったら、どうしたら良いのでしょうか?

もしも、登山中にスズメバチに遭遇してしまったら…

香水や整髪料、食べ物の匂い、登山者が歩く振動など、スズメバチは自分たちと異なる匂いや、いつもと違う振動に敏感であり、それにより敵が近づいていることを察知しています。ただ、すぐに攻撃してくることは稀なんです。スズメバチが攻撃してくる様子と私たちがとるべき行動を段階ごとに見てみましょう。

スズメバチ目線でチェック! 攻撃するまでの3ステップ

スズメバチの警戒
出典:PIXTA
『ん!? 巣が揺れているな。なんだかおかしいぞ! ちょっと外の様子を見に行ってみよう!』

『やっぱり! 怪しい奴がいるぞ!』
※人の周りを旋回する

スズメバチの威嚇
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『おーい、みんな! 敵が来たぞ!』
※毒液を撒いて、仲間に知らせる

『ここは俺たちの縄張りだ! これ以上近づくな! 』
※仲間と共に羽音を立てたり、カチカチ音を出しながら人の周りを旋回する

こっちは攻撃する準備万端だぞ!

スズメバチの攻撃
出典:PIXTA
なかなか立ち去らないな! こいつは危険だ!

『 よしっ、戦うぞー! 攻撃開始だー!!』

段階別!スズメバチ遭遇時の対処法

スズメバチの警戒 【①警告段階】
スズメバチが自分の周りをぐるぐると旋回し始めたら警告の合図。この時点で攻撃してくることは稀ですので、静かに遠ざかりましょう! また、ハチは動きの遅いものや静止しているものを判別しにくいともいわれており、じっとしていると離れていく場合もあるようですが、状況次第と言わざるを得ません。

スズメバチの威嚇段階 【②威嚇段階】
仲間も呼んで威嚇してきている場合は、スズメバチの攻撃態勢が整っている状態。手で振り払ったり、身体を大きく動かすとたちまち攻撃されてしまいます。なるべく姿勢を低くし、静かに巣から遠ざかりましょう!

スズメバチの攻撃段階 【③攻撃段階】
威嚇したのに巣から離れない、もしくは巣に刺激を与えた敵には、ついに攻撃をしかけてきます。スズメバチが興奮状態の場合、どんどん仲間のハチが増えてくることもあるので、巣の近くにいることは非常に危険。追いかけられたら、できるだけ姿勢を低くして、攻撃をかわしながら、静かに巣から遠ざかりましょう!

スズメバチも必死!? 登山の際は対策を!

スズメバチの巣 出典:PIXTA
春から秋にかけて、巣作りから繁殖、次世代の女王バチへのバトンタッチまでを行うスズメバチ。その寿命は女王バチで1年、働きバチで2ヶ月程といわれています。誕生した新女王バチ以外は冬を越すことができないのです。そうやって命を次へと繋いでいるスズメバチが、必死に自分たちの巣を守ろうとするのは理解できます。特に攻撃的になる時期も、スズメバチの生態を知ると合点がいくのではないでしょうか。

スズメバチが都会に進出しているのは「人間が自然を破壊したせい」なんてこともいわれたり、「ハチも生態系の一員であり、共存を考えるべき」という意見も。

スズメバチ
出典:PIXTA
とはいえ、刺されると命の危険もあることは事実。登山中はとにかくスズメバチの巣に近づかないこと、そしてスズメバチを刺激しないこと。できる対策をしっかりととって登山に出掛けましょう。スズメバチも私たちも穏やかに山で過ごせると良いですね!



【参考文献】
中村 雅雄(2013)『おどろきのスズメバチ』 講談社 松浦 誠(1988)『スズメバチはなぜ刺すか』北海道大学図書刊行会

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YAMA HACK編集部
YAMA HACK編集部

YAMA HACK運営&記事編集担当。登山をきっかけに自然の力に魅了される。山で飲むコーヒーが大好き。何かあれば必ず山に行き、心身共に整える。山について新しい視点を与えられるような記事作りを心がけて日々執筆活動を行う。

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