アウトドアウェア界を牽引し続ける「ポーラテック」
今やファッションアイテムとして誰もが知る「フリース」。この先駆者であり、高機能ファブリック(衣類素材)を製造開発しているのが<POLARTEC(ポーラテック)>です。
ポーラテックの素材は一貫して通気性・保温性・軽量性に優れた特徴があり、アメリカ軍をはじめ世界中のアウトドアメーカーで採用。第一線を走るファブリックメーカーとして、今も進化し続けています。
小さな紡績会社から一大ファブリックメーカーへ
そんなポーラテックの歴史は100年以上前にも及びます。
1906年、マサチューセッツ州郊外の小さな紡績会社からはじまったポーラテック社(モールデン・ミルズ社)。元々は軍用ウールコートや家具用ファブリックなどの製造が主でしたが、1970年代頃から外で使用するポリエステル繊維の開発に力を注いできました。
その質の高いポリエステル繊維に目をつけたのが、パタゴニア創業者イヴォン・シュイナード氏。両社による共同開発がスタートし、1985年に誕生したのがフリースの元祖「シンチラ・フリース」です。
そして、ポーラテックはスポーツ・アウトドア業界へと市場を伸ばし、その名が広く知れ渡ることとなります。
フリースだけじゃない!ポーラテックは”500種以上”もの素材があるんです!
現在ではフリース素材だけでなく、ベースレイヤーからアウターレイヤー、インサレーションなど、幅広いファブリックを開発しているポーラテック。その数は細かいものを合わせると500種以上にも及び、毎年新たな素材も誕生しています。
そんな数あるファブリックの中から、登山・アウトドアで人気の8素材をピックアップ。その特徴や用途、使用されているアイテムをまとめてみました!
▼ポーラテック・ファブリック一覧▼
ベースレイヤー・ミドルレイヤー |
---|
1. ポーラテック・パワードライ |
2. ポーラテック・パワーグリッド |
3. ポーラテック・パワーストレッチ プロ |
4. ポーラテック・パワーウール |
インサレーション |
---|
5. ポーラテック・アルファ |
6. ポーラテック・クラシック |
7. ポーラテック・ウィンドプロ |
ウェザープロテクション |
---|
8. ポーラテック・ウィンドブロック |
同じ素材でもメーカーによって機能は多種多様
ひとつの素材でもそれを扱うメーカーのコンセプトによって機能は変わってきます。
言うなれば、ファブリックは調理される前の食材のようなもので、料理の仕方によって味も違いますよね。
今回ご紹介するのは各素材の基本的な特徴。気になるウェアにポーラテックが使われていたときに「こんな特徴があるんだな」という参考にしてもらえると嬉しいです。
それでは、ポーラテック図鑑のスタートです!
1.ポーラテック・パワードライ|持続するドライな着心地
「汗の不快感がとにかく気になる」そんな方におすすめするのが、ポーラテックの代表的ベースレイヤー『パワードライ』です。特徴は素早い吸水速乾性と高い通気性。これにより、体をつねにドライな状態に保ちます。
軽量で適度に保温性も備え、100%ポリエステルのやわらかい着心地も魅力です!
パワードライのテクノロジーは?
パワードライは、生地の両面に特性の異なる2つの網み糸を用いた二重構造のポリエステルニット素材により構成されています。
毛細血管現象の原理を利用して素早く吸汗。水分は生地の表面へと伝わっていき、素早い乾燥を促します。
こんなアイテムで採用されています!
▼ホグロフス|パワードライ ティー ロングスリーブ▼
日本限定発売のパワードライ採用ハイブリッドTシャツ。肩部分に摩擦に強い布帛素材を使用し、ザックの擦れによるダメージをガード。インナーから一枚での着用まで、幅広い用途で活躍します。
2.ポーラテック・パワーグリッド|保温と通気を両立
『パワーグリッド』はテクニカルフリースの代名詞とも言える人気素材。適度な保温性を持ちながらも通気性と吸水速乾性を備え、冬山などの行動着として活躍します。
メーカーによってグリッドの深さもさまざまで、コンセプトに応じて保温と通気のバランスが調節可能。
パワーグリッドのテクノロジーは?
凸凹になった格子パネルにより、保温性と通気性を両立します。肌に隣接する凸部分が吸汗して外へと拡散。凹状のラインが空気の層を作り、止まっている時には温かさを、動いている時には通気性を生み出します。
こんなアイテムで採用されています!
▼パタゴニア|R1シリーズ▼
絶大な人気を誇るパタゴニアのテクニカルフリース。寒い季節の行動着としてはもちろんのこと、夏山から冬のインナーまで、幅広く活躍するアイテムです。
▼マウンテンハードウェア|マウンテングリッドジャケット▼

薄手のフルジップフリースジャケット。グリッド構造により適度な保温性と通気性を両立。夏山の行動着や冬山のミッドレイヤーとして、全シーズンで使えるオールラウンドなウェアです。
3.ポーラテック・パワーストレッチプロ|どこまでも伸びて体に追従
驚異的なストレッチ性とやわらかな肌触りが持ち味の『パワーストレッチプロ』。そのストレッチは引っ張ればどこまでも伸び続けるほどで、登山のあらゆる動きにウェアが追従します。
行動着に必要とされる「通気性」「速乾性」も兼ね備えた、ソフトな着心地のフリース素材です。
パワーストレッチプロのテクノロジーは?
あらゆる方向にどこまでも伸びる「4方向ストレッチ」を搭載。形状保持機能により、すぐに元の形状へと回復します。
表面は耐久性に優れ、裏面はソフトな着心地の良さと素早い吸水拡散性が特徴です。
こんなアイテムで採用されています!
▼フーディニ|アウトライト フーディ▼
スウェーデン発のアウトドアブランド「フーディニ」の、パワーストレッチプロを全面に採用したフリース。驚くほどの伸縮性と、耐久性・透湿性を備え、魔法のような着心地を実現します。あらゆるシーズンで活躍する一着です。
フーディニ アウトライト フーディ
▼マウンテンハードウェア|ポーラテック パワーストレッチ M FZ▼
優れた伸縮性をもつフルジップタイプのフリースジャケット。登山をサポートする動きやすさと素早い吸水拡散により、秋山のアウターや冬山のミッドレイヤーとしても活躍します。袖はかさばりを押さえたサムホール付き。
4.ポーラテック・パワーウール|化繊とウールのいいとこ取り!
『パワーウール』は「ウール」と「ポリエステル」を配合したハイブリッド素材。ウールには汗冷えがしにくく保温と防臭効果の特徴があり、速乾性と耐久性に優れたポリエステルと組み合わさることで、両者の特性を保持。
2種の異なる素材をいいとこ取りした、理想的な次世代ファブリックです。
パワーウール・ファブリックの特徴は?
表面にポリエステル、裏面には極細のウールをグリッド状に配置。グリッド構造が素早い吸汗を可能にし、速乾性の高いポリエステルへと流れていくことで、スムーズな拡散を可能にします。
またウール単体ではメンテナンスが難しいデメリットもありますが、ハイブリッドにすることでこの欠点をカバー。化繊ウェアと同様に、自宅で気軽に洗濯できます。
こんなアイテムで採用されています!
▼ホグロフス|パワーウール マルチフリース プルオーバー▼
パワーウール採用のフーディプルオーバー。裏面をボーダー状に凸凹させることで空気の層を作り出し、行動時のオーナーヒートを防ぎます。フード部分は、バラクラバ、ハイネック、クルーネックなどの着回しができる仕様。
5.ポーラテック・アルファ|アクティブに使える保温素材
「冬山のレイヤリングを快適にしたい」そんな要望に応えるのが『アルファ』。保温性と通気性・蒸れを逃がす機能を備えた中綿素材で、ほどよい温かさとムレにくい快適感が持続しアクティブインサレーションとして活躍します。
また、保温力はダウンに劣るものの、ダウンのように濡れによる機能低下が少なくメンテナンスも容易。ガシガシ使えて、汚れたら洗濯機で洗えるのもポイントです。
アルファ・ファブリックのテクノロジーは?
アルファの正体は毛足を短く揃えた極薄のフリース繊維。適度な保温力を持ちながらも、空気が抜けやすい構造になっています。暑すぎず寒すぎず、人が最も快適に感じる温度帯をつねにキープし、発汗によるオーバーヒートを抑制します。
元々はアメリカ特殊部隊のために開発された素材で、素材名の「アルファ」は部隊のコードネームにちなんでいます。
こんなアイテムで採用されています!
▼ミレー|アルファライトスウェットクルー▼
中綿に「ポーラテック アルファ」、表地には吸い上げた汗を拡散させる「ドライナミック エアメッシュ」を採用したテクニカルウェア。着心地も良く、サラサラ裏地は一日着用しても不快感がありません。
ほどよく温かく、トレーナー感覚で着られるインサレーションウェアです。ジャケットタイプもあり。
6.ポーラテック・クラシック|多くの人に愛用される定番フリース
『クラシックシリーズ』は約30年にわたって愛されつづけてきた、ポーラテックの原点ともいえるフリース。両面起毛のフリースらしい温もりが特徴。軽量で通気性に優れ、まさにフリースのスタンダードといえる素材です。
ロフトの高さによって「クラシック100」「クラシック200」「クラシック300」などに分類されています。
クラシックシリーズのテクノロジーは?
ポーラテックが発明したフリース加工技術が、現代に継承。魔法のように柔らかな生地は、体温をその空間に閉じ込め、蒸れを外へと排出させます。
また、90年代初頭からリサイクルフリースを市場に投入したポーラテック。その環境への高い意識は今も残り続け、本素材にもリサイクル素材が使用されています。
こんなアイテムで採用されています!
▼ホグロフス|コンビネーションフリースジャケット▼
ホグロフスが日本限定で開発した「ポーラテック・クラシック300」採用の厚手フリースジャケット。前傾部や肘にはストレッチツイルをあてがうことで耐久性を強化されています。
登山よりもキャンプなどのアウトドアや街着がメイン。幅広いシーンで上品に着こなせるジャケットです。
7.ポーラテック・ウインドプロ|高次元で風を防ぐフリース素材
『ウインドプロ』は従来のフリースの4倍の防風性が大きな特徴。風に強いからといって、分厚くて汗が抜けないことはなく、ポーラテックらしい通気の良さと軽さも健在です。
ウインドプロのテクノロジーは?
ウインドプロは特殊なフィルムを使用せず、糸と編み方、仕上げ方法により高い防風性を発揮。
風速1mの風が吹くと、人の体感温度は1度下がるとされており、防風性を高めることは体温の保持にも直結します。風の強い山岳環境では一層重要度を増す機能と言えるでしょう。
こんなアイテムで採用されています!
▼マウンテンハードウェア|オゾンジャケット▼
やわらかな着心地と高い防風性が特徴のフリースジャケット。ミドルレイヤーやアウターなど、環境によって使い分けのできる汎用性も魅力です。肩と袖口には擦れに強い布帛素材を使用。ポケットはハーネスに干渉しない高い位置に配置されています。
8.ポーラテック・ウインドブロック|卓越したプロテクションで外気をガード
ほぼ100%の風を防ぎ、寒さや悪天候から身を守るプロテクションとなるのが『ウインドブロック』です。
優れた撥水性は多少の雨の侵入を遮断。伸縮性のあるソフトな素材で、過酷な天候でも高いパフォーマンスを発揮します。
ウインドブロックのテクノロジーは?
ポリウレタンの無孔質メンブレンをサンドイッチすることで、ほぼ100%の風をガード。耐水圧と透湿性も兼ね備えた防風素材です。
また、ファブリックの表地にはDWR加工(撥水加工)を施すことで高い撥水性を発揮。完全防水ではないものの悪天候下で体を保護します。
こんなアイテムで採用されています!
▼マウンテンハードウェア|ドームペリニョン▼
ポーラテック・ウィンドブロック素材のニットキャップ。薄型のドーム形状により、ヘルメットやフードの下でも心地よいフィット感を実現します。耳をフルカバーできるので冬のアクティビティに最適。
ポーラテックで安心・快適!山を楽しもう
多種多様なファブリックを生み出し、今も進化を止めないポーラテック。一貫した通気の良さとムレない快適さに加え、ストレッチや防風、高い保温性など、素材によってさまざまな使い分けができるのは大きな魅力です。
あらゆる用途で存在感を示すポーラテックは、きっとあなたを満足させる山の相棒になるでしょう。