モウセンゴケ

”コケのようでコケじゃない”湿原の隠れた人気もの「モウセンゴケ」その特徴や観賞地を紹介!

2022/10/12 更新

湿原を歩くとよく聞く植物の名前「モウセンゴケ」。でも実際にはよく見たことがある人は少ないのではないでしょうか?確かにまわりの華やかな花々に比べると小さく地味で、地面を覗き込まないとよくわかりません。そんなモウセンゴケですが、好きな人は意外と多く湿原の隠れた人気者でもあります。

ちょっと変わった生態を持つモウセンゴケ、その特徴や観賞地を紹介します。

 

目次

アイキャッチ画像撮影:筆者

”コケ”と付くけどコケじゃない!虫を食べるちょっと変わった「モウセンゴケ」

湿原のモウセンゴケ

撮影:筆者

この画像の中にあるモウセンゴケ、どれかわかりますか?
ヨシなどの植物や花の下に、隠れるようにして赤くみえるのが、今回紹介するモウセンゴケ。
葉をもっと拡大したのが下の画像ですが、なんだかミステリアスというかちょっと怖い印象も受けますが……アートのような美しさも感じてしまいます。

モウセンゴケの拡大画像
撮影:筆者

モウセンゴケ(毛氈苔)は、モウセンゴケ科モウセンゴケ属の多年草。日本での分布は北海道から九州までの日当たりの良い湿地帯に自生しています。分布域は広いですが、各地で絶滅危惧種に指定される貴重な植物。
高さは2cmから高くても8cm程度。別名「マルバモウセンゴケ」ともいい、他のモウセンゴケと区別するときはこの名前を使います。

名前はコケでもコケではなく、花も咲くし紅葉もする

モウセンゴケの花

撮影:筆者

湿地帯の地面に這うよう自生することからコケのように見えますが、実は種子植物で花が咲き種子ができます。コケ植物は花が咲かず胞子で殖えますので、コケでは無いことがよくわかります。

モウセンゴケの花

出典:PIXTA

花期は6~8月。葉の見た目とは違い、直径1cm程度の5弁の白い花はとっても可憐です。

茶室の緋毛氈

出典:PIXTA(茶室の緋毛氈)

名前の由来は、おひなさま飾りや茶室で使われる赤い敷物の「緋毛氈(ひもうせん)」から。群生するとこの緋毛氈のように見える事から、その名が付きました。

紅葉し始めたモウセンゴケ

出典:PIXTA(紅葉し始めたモウセンゴケ)

モウセンゴケは寒くなると紅葉します
紅葉する前は繊毛部分のみが赤く、紐毛氈……?という感じもありましたが、紅葉すると全体が紅くなります。この状態で群生している景色を見ると、緋毛氈に見立てた事がよくわかります。

虫はサプリメント!?食虫植物のモンセンゴケ

虫を捕まえたモウセンゴケ

出典:PIXTA(虫を捕まえたモウセンゴケ)

見た目でなんとなく気づいた人もいるかもしれませんが、モウセンゴケは食虫植物
虫を捕食する方法は、

1.丸い葉にたくさんある粘液を出す腺毛から、虫が好む香りを出す

2.その香りに誘われて寄ってきた虫を腺毛の粘液が、糊のようにくっつき虫を粘着
3.葉で虫を包み消化吸収

小さな虫をはじめ、トンボのようなちょっと大きな虫まで捕食し、トンボなど大型の虫は1週間ほどかけてゆっくり体液を吸うそうです……ちょっと怖いですね。

トンボを捕まえたモウセンゴケ

出典:PIXTA(トンボを捕まえたモウセンゴケ)

モウセンゴケは食虫だけで生きているわけではなく、主に光合成で成長します。日当たりの良いところを好むのもそのせい。サプリメントのようにプラスアルファの栄養素として虫で補っているといわれています。したがって、虫を捕らえられなくても枯れることはありません。

ちなみに花言葉は「詐欺」「不誠実」「無神経」など。虫を甘い匂いでだまして捕獲することに由来していますが、なかなか手厳しい花言葉ですね。

貴重なナガバノモウセンゴケなど、近似種は4つ

ナガバノモウセンゴケ(長葉の毛氈苔)

出典:PIXTA(ナガバノモウセンゴケ)

モウセンゴケの近似種「ナガバノモウセンゴケ(長葉の毛氈苔)」はかなりレアな存在。名前の通り葉が長く高く伸びあがるので、比較的見つけやすいのが特徴です。
自生地は北海道サロベツ原野や尾瀬に限られる、とっても貴重なモウセンゴケ。その他にも近似種があり、特徴や分布は以下の通りです。

【サジバモウセンゴケ(匙葉毛氈苔)】
ナガバノモウセンゴケとモウセンゴケの自然交配種といわれています。したがって、ナガバノモウセンゴケが自生する北海道と尾瀬にしか分布していません。モウセウンゴケとナガバノモウセンゴケの中間的な葉が特徴です。
【コモウセンゴケ(小毛氈苔)】
宮城県以南に分布。モウセンゴケに比べると小ぶりで茎と葉の区別がほとんどなく、ピンク色の花が特徴です。
【トウカイコモウセンゴケ(東海小毛氈苔)】
コモウセンゴケによく似ており、モウセンゴケとコモウセンゴケの交配に由来する独立の種とされています。花もコモウセンゴケと同じピンク色です。

モウセンゴケを見るならココ

モウセンゴケは希少ながらも日本各地で見ることができます。その中でもおすすめの自生地を紹介します。

尾瀬ヶ原・尾瀬沼(福島県・群馬県)

尾瀬ヶ原

出典:PIXTA

高山植物の宝庫「尾瀬」。尾瀬ヶ原・尾瀬沼一帯では、モウセンゴケと一緒に、貴重なナガバナノモウセンゴケも見ることができます。

モウセンゴケとナガバノモウセンゴケ

出典:PIXTA(尾瀬のモウセンゴケとナガバノモウセンゴケ)


サロベツ原生花園(北海道)

サロベツ原生花園

出典:PXITA

北海道の最北端、日本最大の高層湿原のサロベツ湿原にある「サロベツ原生花園」。北海道の自然の宝庫ともいわれ、様々な花や植物が自生しています。モウセンゴケもそのひとつ。サロベツ湿原には貴重なナガバノモウセンゴケも自生しています。

利尻礼文サロベツ国立公園 サロベツ湿原センター

栂池自然園(長野県)

栂池自然園モウセン池

出典:PIXTA(栂池自然園モウセン池)

白馬岳への登山口のひとつ栂池登山口のそばにある「栂池自然園」は、標高約1,900mにひろがる日本有数の高層湿原です。モウセンゴケは各所で見ることができますが、モウセン池では、その名の通りモウセンゴケの群生を見ることができます。

栂池自然園

赤城山 小沼湖畔(群馬県)

小沼湖畔のモウセンゴケ

出典:(小沼湖畔のモウセンゴケ)

小沼は長七郎山の火山活動でできた火口湖、静かなスポットとして人気です。1周30分から40分で回れる小道の途中、湖畔にモウセンゴケを見ることができます。

八甲田山 田代平湿原(青森県)

八甲田山 田代平湿原のモウセンゴケ

出典:PIXTA(八甲田山 田代平湿原のモウセンゴケ群生)

八甲田山の火山活動によってできた田代平湿原では、赤く地面を染めるモウセンゴケの群生を見ることができます。夏から秋にかけ、さらに赤く染まり、まさに緋毛氈のような姿を見せてくれます。


志賀高原 四十八池(長野県)

四十八池のモウセンゴケ

出典:PIXTA(四十八池のモウセンゴケ)

志賀高原の四十八池は多くの池塘が点在する湿原で、多くの貴重な動植物の生息地です。志賀山をバックに、たくさんの高山植物の中の赤いモウセンゴケを見ることができます。

平ヶ岳山頂湿原(新潟県・群馬県)

平ヶ岳山頂湿原のモウセンゴケ

出典:PIXTA(平ヶ岳山頂湿原のモウセンゴケ)

平ヶ岳(標高2,141m)の山頂はなだらかな草原状で、池塘が点在する天空の湿原。この湿原一帯にモウセンゴケがたくさん自生しています。

山室湿原(滋賀県)

山室湿原

出典:PIXTA

滋賀県の山室湿原は、手軽に行ける湿原として人気。特に8月はハッチョウトンボとサギソウを見る事ができ多くの人が訪れます。そんな人気の花やトンボとともに、モウセンゴケも人気で、それを目当てに訪れる人も多くいます。

米原市公式サイト|山室湿原

鯉が窪湿原(岡山県)

鯉が窪湿原

出典:PIXTA

鯉が窪湿原は西の尾瀬とも呼ばれる、300以上の貴重な植物が自生する湿原です。西日本特産の「オグラセンノウ」とともに、モウセンゴケの群落も見る事ができます。

岡山観光WEB|鯉ヶ窪湿原

樫原湿原 (佐賀県)

樫原湿原

出典:PIXTA

温暖な事から湿原が少ない九州で、貴重な湿原の一つ「樫原(かしばる)湿原」。コンパクトな湿原ですが、たくさんの植物が多く自生することから多くの人が訪れます。モウセンゴケも自生しており、九州では貴重な観察地になっています。

佐賀県観光総合情報サイト「あそぼーさが」

神秘的なモウセンゴケの世界を覗いてみよう

モウセンゴケを拡大

出典:PIXTA

モウセンゴケは木道から下を覗き込んでも、とても小さくよくわかりません。そんな時は、ルーペを持って拡大すると粘液が付いた繊毛もくっきり。観察するのはちょっと大変ですが、神秘的な世界に魅せられます。
ぜひ、あなたもちょっとマニアックなモウセンゴケの世界を覗いてみませんか?なお、木道にかがみこむ時は周りの人に迷惑にならないよう注意してくださいね。