あー! またほどけてる!
登山中、靴紐がよくほどける……そんな現象はありませんか?
さっき休憩した時、かなりしっかり結んだはずなのに! しかも、1回ほどけたらその後何回もほどける気がする……。そもそも、かなりの力をこめて結んだ靴紐がなぜ簡単にほどけてしまうのでしょうか?
ほどける原因①歩行の振動
アメリカ・カリフォルニア大学の研究者によって発表されている原因の1つが『歩行の振動』。
足を前に出す、足にグッと力を入れて岩場を登る……登山中の何気ない動作によって、靴紐の結び目には力が加わっています。『足を前に出す』というのは足をスイングさせることで、この時結び目に力が加わります。また段差を踏み込むとそのスイングが突然止まり、ここでも結び目に力が加わるのです。
この繰り返しにより、次第に固く結ばれた靴紐も徐々に緩んできて、気づいたらほどけていた……という現象に繋がると考えられています。
ほどける原因②歩行する足の動き
登山靴は、ソールが固く足の屈曲がしにくいものがほとんど。理由は、足の屈曲は長時間歩く登山において疲労が蓄積される原因になるためです。
しかし本来私たちが歩行をする時は、前に出した足を蹴り出すことで前進します(写真の動き)。母指球あたりを境に、足の甲が反るイメージ。これが屈曲です。
登山靴の中で、知らず知らずこの『自然な歩行の動き』を取ろうと足が中から靴を押し上げている場合があるのです。もちろんきつく締めた靴紐にも、この中からの押し上げのインパクトが加わります。
相反する力がぶつかると……靴紐が緩むのは何となくイメージできますよね。
ほどける原因③靴紐の素材
3つめは靴紐の素材です。一般的にナイロン製の紐は滑りがよいため、ほどけやすいと言われています。綿素材で摩擦があり、平べったい紐はほどけにくいのですが、泥が付いたり雨に濡れる登山には適していません。素材は、諦めるしかなさそう……。
では、残された道は1つ。ほどけにくい“結び方”をマスターすればいいのです!
ほどけない結び方その①イアン・ノット
まずは“イアン・ノット”を覚えましょう。スポーツ選手も実践している、もっとも基本的な結び方です。
①まずは1度普通に結ぶ
②左右で輪っかをつくる
この時、両方のひもの右側が上に出る様な形にしましょう。
③右の輪っかを左の輪っかに通す
④その状態で、左の輪っかも右の輪っかに通す
⑤左右に引っ張って完成!
ポイント
全部『右』と覚えておきましょう。(輪っかも右側が上、右の輪っかから通す・・・)
動画で確認!
ほどけない結び方その②イアン・セキュア・ノット
イアン・ノットのさらに強力バージョンです。心配性の方はこちらをおすすめ。
①まずは1度普通に結ぶ
②左右で輪っかを作る
③輪っかを交差させる
ここでも右が上!と覚えましょう。
④後ろの輪っかをぐるりと前へ
⑤手前の輪っかをぐるりと後ろへ
⑥両方を中央の穴に通す
⑦引っ張って完成!
動画で確認!
ほどけない結び方その③ベルルッティ結び
フランスのブランド・ベルルッティの名を冠したこの結び方。簡単かつ結び目、見た目がエレガント! しかも名前もオシャレです。フランスのシューズブランドは、全てこの結び方だそうですよ。
①まずは1度普通に結ぶ
②…と見せかけてもう1回まわす!
両方の紐を引っ張る前にもう1度ぐるりとくぐらせましょう。
③普通の蝶々結びの形を作る
④輪っかにくぐらせた方をもう1回まわす
蝶々の片方をもう1度中央の穴にぐるりと回し入れます。
⑤引っ張って完成!
ポイント
最初と最後の動作を2回ずつ行う、と覚えておくだけ! 簡単でかつ綺麗な結び目の方法です。
動画で確認!
靴紐を気にしない山行を!
最初はとにかく練習あるのみ! 1つ1つの行程を確かめながら、家で何度も練習をしましょう。慣れてきたら、指をうまく使って輪っかをサッと作れるようになりますし、感覚的に覚えて素早くできるようになります。
体に染み込ませるために、「普段のスニーカーもこの結び方しかしない!」と決めて慣れてしまいましょう。登山中のストレスがグッと減ること間違いなしですよ!