触れるだけでかゆ~い危険植物!「ウルシ」の生態・対処法・応急処置について

2022/08/31 更新

登山の際に、植物によってかゆみやかぶれるなどの症状が出たと聞くと、真っ先に思い浮かぶのが「ウルシ」ではないでしょうか。名前は知っていてもあまり理解していないウルシのこと、もう少し詳しく学んでみませんか?今回は、国内で出会いやすいウルシの種類についてや、予防策・応急処置などについてお伝えします。

制作者

ライター

emi

21歳の時に初めて登った北岳に感動!その後地元山梨や長野などの山々を仲間と登り、すっかり山好きになりました。鳳凰三山や穂高岳の様な有名な高山も大好きですが、現在は、近場の低山をのんびりハイクがちょうどいい感じ。これからは、簡単で美味しい山ごはんにチャレンジしたいです!

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アイキャッチ画像出典:PIXTA(ヌルデ)

ウルシの基礎知識について学ぼう

登山 森のイメージ
出典:PIXTA
登山時にはさまざまな動植物・虫に出会います。動物や虫はよく対策されることが多いですが、実は植物にも注意が必要。中には気をつけなければいけない危険な植物も。
今回はその代表的な存在と言える「ウルシ」について、基礎知識や対処法などを学んでいきましょう。

 
\教えてくれた専門家/
セルズ研究所 西海氏
一社)セルズ環境教育デザイン研究所|西海太介氏
 
神奈川県横浜市生まれ。
『危険生物対策』や『アカデミックな自然教育』を専門とする生物学習指導者。
昆虫学を玉川大学農学部で学んだ後、高尾ビジターセンターや横須賀2公園での自然解説員経験を経て、2015年「セルズ環境教育デザイン研究所」を創業。
現在、危険生物のリスクマネジメントをはじめとした指導者養成、小中学生向けの「生物学研究コース」などの専門講座を開講するほか、メディア出演や執筆・監修、中華人民共和国内の自然学校の指導者養成を行うなど幅広く携わる。
監修書籍にすごく危険な毒せいぶつ図鑑(世界文化社)。 著書に、身近にあふれる危険な生き物が3時間でわかる本(明日香出版社)など。

日本に自生するウルシ科の植物

ハゼノキ
出典:PIXTA(ハゼノキ)
ウルシというと、伝統工芸に使用される「漆」を思い浮かべる方が多いでしょう。しかし、実はウルシは中国やインドが原産国のため、日本で野生化した樹を見かけることはほとんどありません。国内に自生していて、私たちが接触する危険性があるのは、同じウルシの仲間でも別の種類のものになります。

その代表的な植物は、「ツタウルシ」、「ヤマウルシ」、「ハゼノキ」、「ヌルデ」
これらのウルシ類は、どれも乳白色の樹液を出し、触れることによってかぶれの症状を引き起こすことがあります。

漆器の塗料となるウルシの樹液

ウルシの樹液
出典:PIXTA(ウルシの乳白色の樹液)
現在、日本で使用するウルシの90%以上が中国からの輸入ですが、以前は日本でもウルシを生産していました。樹皮に傷をつけることで出る、乳白色の樹液がウルシ液の元になります。
酵素の働きによって硬化すると黒くなり、天然のプラスチックとも言われる膜が形成され、工芸品や文化財などに役立てられています。

危険なウルシ科の仲間を覚えよう!

代表的なウルシ科の植物についてみていきましょう。特に被害の多い「ツタウルシ」や「ヤマウルシ」だけでも覚えておきたいですね。
注意が必要な順としては「ツタウルシ → ヤマウルシ → ヌルデ → ハゼノキ」になります。

被害が出やすい「ツタウルシ」

幹に絡まるツタウルシ
出典:PIXTA(幹に絡まるツタウルシ)
ツタウルシは、北海道から九州までの各地に生息し、比較的標高の高い落葉樹林で出会います。
3枚の葉っぱで1セットとなる「三出複葉」と呼ばれる葉の形をしていることが特徴(楕円形の3枚の小葉から成り立つ)で、つる性のため、他の木に巻きついて成長していきます。

他のウルシ科の植物と比べ、最もかぶれやすいと言われ、敏感な人は近くを通っただけでかぶれることもあるとされます。非常によく似た植物で、「ツタ」という植物がありますが、このツタの場合は、葉の先にトゲ状の突起があるのが特徴です。

<ツタウルシの葉>
ツタウルシの葉
出典:PIXTA(ツタウルシの葉)

放射状に生える「ヤマウルシ」

ヤマウルシ
出典:PIXTA(ヤマウルシ)
沖縄を除く日本全国に生息し、樹高は通常高くても3mほど。日当たりの良い場所を好むので、登山道脇でも出会いやすいでしょう。
ヤマウルシは日本原産のウルシで、鳥の羽のような「羽状複葉(うじょうふくよう)」という形状の葉っぱが、放射状に広がる形をしています。

また、一枚一枚の葉「小葉」は、根本側に行けば行くほど短くなります。こちらも、体質によっては、そばを通過しただけでもかぶれることがあるので要注意。

<ヤマウルシの葉>
ヤマウルシの葉 撮影:西海太介(ヤマウルシの葉)

出会う確率No.1「ヌルデ」

ヌルデの木
出典:PIXTA(ヌルデの木)
ヌルデは、北海道から沖縄まで各地の平地から低山の道端などに生息しており、最も出会う確率が高いウルシの仲間。
樹高は高くても5〜6mほどで、ヤマウルシと同じような「羽状複葉(うじょうふくよう)」で、葉にはギザギザした「鋸歯(きょし)」があり、葉の軸には「翼(よく)」と呼ばれる葉のような膨らみが付いています。

他のウルシに比べてかぶれにくいとされますが、身近な住宅地近くの公園などでもよく見られ、最も出逢いやすいウルシの仲間と言えます。

<ヌルデの葉>
ヌルデの葉
出典:PIXTA(ヌルデの葉)

ロウが採取できる「ハゼノキ」

ハゼノキ
出典:PIXTA(ハゼノキ)
関東地方以西の低山で出会いやすく、道端や明るい林内に生息しています。
樹高は7〜10mほどで、果実から蝋が採取できることから「ロウノキ」とも呼ばれ、江戸時代には数多く植林されました。その後各地で野生化し、数は少ないですが意外と都市公園でも見られます。

ツタウルシに比べるとかぶれにくいとされますが、樹液にはかぶれの原因となる成分が含まれるため、触れないように注意しましょう。

<ハゼノキの実>
ハゼノキの実
出典:PIXTA(ハゼノキの実)

かゆ〜いウルシの被害について

かゆいイメージ
出典:PIXTA(かゆいイメージ)
ウルシと聞くとまず思い浮かぶのが、かゆみかぶれのイメージですね。
乳白色の樹液には「ウルシオール」や「ラッコール」という成分が含まれており、アレルギー反応としてかぶれの症状を引き起こします。アレルギーのため、体質によって症状の程度が変化しますが、弱い方は樹液に触れなくても発症する恐れがあります。
マンゴー
出典:PIXTA(マンゴー)
また、ウルシ科の果物であるマンゴーにも似たような成分が含まれるので、マンゴーでかゆみを感じる人は、ウルシにも反応を起こしやすい傾向があるとされています。
ちなみに、ウルシがかぶれ成分を持つ理由は、森に住んでいる虫や鳥などから自分の身を守るため。

ウルシにかぶれた患部の症状(14日目)

ウルシにかぶれた腕
撮影:西海太介(ウルシにかぶれて14日目)
ウルシの葉や枝に触れると症状が出ますが、敏感な人は木の下を通ることでもかぶれることがあります。一般的には1〜数日後に症状が現れますが、遅いと1週間程度経ってから発症するケースも。

かぶれの症状も人によって異なり、「赤く腫れる」、「水疱が生じる」、「痛みやかゆみを伴う」などの被害があります。上記の症例は樹液が点々とつけられた例ですが、ウルシの横を通過する際に皮膚に触れ、線状に症状が出ることもあります。

患部の症状は、2週間程度で治ってきますが、かゆみが強く出るケースもあり、掻くことによって症状が悪化する場合もあるため、酷い場合は無理せずに病院に行ってください。

触るな危険!ウルシへの対策とは

ウルシ科の植物は、秋になると赤や黄色の紅葉が鮮やかで美しく、山中で私たちの目を楽しませてくれます。
でも、近づき過ぎは禁物。事前にできるだけ対策を行うことが予防につながります。

露出をできるだけ避ける服装

登山ウエア
出典:PIXTA(登山イメージ)
登山の際は、不意にウルシに身体が触れても大丈夫なように、できるだけ長袖と長ズボンを着用してください。肌の露出を抑えることが大切です。手袋をしたり、首元にタオルを巻くのも対策のひとつでしょう。

むやみに登山道の葉を触らない

ウルシ
出典:PIXTA(ウルシ)
ウルシに気づかないこともあるので、登山道の脇に生えている植物の葉に触れたり、枝などを折るのはやめましょう。
ツタウルシは林床(林の足元)に蔓延っているケースもあるので、登山道を外れて、むやみに草むらに入るのも危険です。休憩で腰を下ろす時などにも、直接座らないように気をつけてください。

ウルシに触れた時の応急処置

誤ってウルシに触れてしまった場合の応急処置をお伝えします。もしもの際の参考にしてください。

 石けんを使って患部を洗う

石けんで腕を洗う
出典:PIXTA(石けんで患部を洗うイメージ)
かぶれ成分が付着してる患部を、石けんを用いてよく洗浄しましょう。さっさと軽く洗うのではなく、丁寧に洗うことが大切です。軽いかぶれ程度であれば、数日で自然治癒します。
石けんがない場合でも、水でしっかりと洗いましょう。

抗ヒスタミン薬を塗る

抗ヒスタミン薬を塗る
出典:PIXTA(抗ヒスタミン薬を塗る)
ウルシによるかゆみや炎症を抑えるためには、ステロイド外用薬などを患部に塗布するのが一般的な処置になります。また、かゆみの緩和には、患部を氷などで冷やすことも効果的です。

池田模範堂 ムヒアルファ®EX

医薬品分類第②類医薬品
内容量15g
効能虫さされ、かゆみ、しっしん、皮ふ炎、かぶれ、じんましん、あせも

症状が治らない時は病院へ

受診イメージ
出典:PIXTA(受診のイメージ)
患部の症状がひどい場合や、かぶれなどの症状が1週間以上続くような場合は、早めに皮膚科を受診しましょう。かゆみを我慢できずに掻いてしまうと症状が悪化したり、跡が残ったりする場合も考えられるため、悪化する前に医師の診断を仰ぐと安心です。

安全で快適な登山のために

ツタウルシの紅葉
出典:PIXTA(ツタウルシの紅葉)
登山ライフを満喫するためには、山で想定される危険を回避することが大切です。ウルシに対しても知識を身につけておくこと、そのために出来ることを実践するのが1番の防御策になります。そして、思わず見惚れてしまう紅葉のウルシに出会ったら、遠くから観察して楽しみましょう。

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