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寒い季節の山を楽しむための服装、どう選ぶ?

冬に登山をする場合、雪のない低山だとしても、何時間も外を歩き続けるとなると寒さが心配になるもの。
しかし、着込み過ぎても動きにくかったり汗をかいたりとストレスになってしまいます。だからと言って、薄着すぎると低体温症のリスクとなってしまうため、「冬山の適切なウェアがわからない……」と悩みがち。
冬は体感温度の差が激しい! だから汗冷え対策も必須

気温の低い冬でも、風の無い晴天下を歩き続ければ汗が出ます。だけど、止まると寒さを感じますし、風を遮るものがない尾根など吹きさらしの場所では風が体に当たると冷えてしまいます。つまり、冬は体感気温の差がより激しいんです。
だから、冬のウェア選びは「寒さ対策」だけでなく「汗冷え対策」も重要!
ポイントは「レイヤリング」+「小物で微調整」すること

「標高が高くなれば気温は下がるし、風が当たれば体温は奪われ寒くなる」しかし「動けば暑くなる」ということを念頭に、簡単に脱ぎ着して少しずつ調整できる状態となるウェア選びが理想的。
少しずつ体温調整するためには、帽子やグローブなどの小物も欠かせないアイテムです。
冬登山の服装選びのコツ
⚫︎適度な体温をキープするために簡単に着脱できるウェアを準備
⚫︎保温性と通気性のバランスを重視
⚫︎小物で保温力を微調整
⚫︎これが正解!という決まりはなく、基本のレイヤリングをカスタマイズする
基本のレイヤリング|4つの層で調整

呼び方 | 役割 | 必要な機能 | |
---|---|---|---|
① | ドライインナー | 汗を素早く肌から離し、不快感や汗冷えを軽減する役割 | 吸汗性・速乾性 |
② | ベースレイヤー | かいた汗を吸い上げて拡散し、肌をドライな状態に保つ役割 | 吸汗性・速乾性 |
③ | ミドルレイヤー | ベースレイヤーの上に着て、保温と汗処理を行う調整役 | 保温性・通気性 |
④ | アウターレイヤー | 雨・雪や風のほか冷たい外気から身を守る役割 | 防水性・防風性・透湿性 |
レイヤリングとは、重ね着することで快適性を高めるという考え方。
基本のレイヤリングは、肌に近い方から「ドライインナー+ベースレイヤー+ミドルレイヤー+アウターレイヤー」の順に重ねていきます。
各レイヤーには異なる役割があり、それぞれのウェアを組み合わせ、状況によって着脱することで、オーバーヒートや汗冷えを防ぎ最適なコンディションを維持します。
これらは基本的にトップスの例ですが、ボトムスも同じように組み合わせを考えていきます。次の項目からは、トップス、ボトムスの組み合わせ方、小物の調整方法を具体的に紹介していきます。
トップスの例|寒さに合わせてミドルレイヤーを調整

今回は、積雪のない冬山で着るウェアの基本的なレイヤリング例や身体の各部位ごとにおすすめのアイテムをご紹介。まずは上半身から見ていきましょう。
ドライインナー|肌をドライにキープ

ベースレイヤーの下、素肌に直接着るウェアがドライインナー。かいた汗を素早く吸い上げてベースレイヤーに移動させることで、汗冷えや嫌なベトつきを軽減させる役割を持ちます。そのため、速乾性があることが非常に重要。さらに、水を含まない性質の繊維でつくられていたり、撥水加工が施されていたりします。
▼ドライインナーのおすすめアイテム
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ベースレイヤー|汗冷えを防ぐ

タイプ | 化繊 | メリノウール | 混紡タイプ |
---|---|---|---|
素材 | 主にポリエステル製 | 天然ウール素材 | 化繊+ウール素材 |
特徴 | 速乾性に優れている 汗冷えを防ぐ | 保温性に優れている 天然の防臭効果 | 化繊とメリノの いいとこどり |
ベースレイヤーは肌をドライに保ちつつ、身体を冷やさないためのウェア。そのため、速乾性と保温性のバランスが良いものを選びましょう。積雪のない冬山であれば、極厚のベースレイヤーよりは薄手〜中厚手程度がおすすめ。
上記の表の通り、生地の素材には主に3タイプでそれぞれ特徴があります。自身にあったものを選んでください。
▼ベースレイヤーのおすすめアイテム
▼ベースレイヤーについてさらに詳しく知りたい方は、こちら
ミドルレイヤー|保温性を調整する
タイプ | フリース | インサレーション | |
化繊インサレーション | ダウンジャケット | ||
保温性 | 〇 | 〇 | ◎ |
通気性 | ◎ | 〇 | △ |
収納性 | △ | 〇 | ◎ |
寒さ対策や保温性を調整するのがミドルレイヤーの役割。体温を維持する保温性とベースレイヤーから移動してきた汗を放出する通気性のバランスが大切。冬におすすめのミドルレイヤーは「フリース」と「インサレーション(化繊/ダウン)」ですが、場合によっては両方着用することも。
フリース

フリースは柔らかな起毛が特徴。保温性が高く汗抜けも良好。着心地がよく着ていてストレスが少ないのもメリットです。冬の使用なら、より保温力の高い中厚手モデルを選ぶといいでしょう。
インサレーションに比べてやや重たく収納性は高くないので、着脱の多くないシーンに適しています。
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インサレーション(化繊/ダウン)
インサレーションには中綿が化学繊維の「化繊インサレーション」とダウンを使用した「ダウンジャケット」があります。
◆化繊インサレーション

化繊インサレーションの化学繊維で作られた中綿入りのウェア。保温性と通気性、透湿性を備え、濡れても保温性能が落ちにくいことが特徴。最近では、アクティブインサレーションとも呼ばれる、着たまま行動し続けても蒸れにくいウェアも登場しています。
撥水機能を備えアウターレイヤーに近い機能を持つモデルも。
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◆ダウンジャケット

圧倒的な温かさを持っているのがダウン。軽くコンパクトになるため収納性も良いが濡れには弱い。行動着というよりは休憩時の保温着としてあると頼もしいウェアです。
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アウターレイヤー|冷たい外気をシャットアウト

アウターレイヤーは冷たい外気から身を守るアイテム。防水性・防風性・撥水性だけでなく、下のレイヤーから移行された汗を外気へ逃すための透湿性も欠かせない機能です。
積雪のない晴れた低山であれば、行動中に着用するよりは休憩時の防風・防寒対策として着用することが多いかもしれません。
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ボトムスの例|オーバーパンツをうまく使って寒さ対策

積雪のない冬の登山であれば、冬用の登山パンツにオーバーパンツの組み合わせがベター。
ベースレイヤーとしてタイツなどを合わせるのも寒さ対策になります。ただし、タイツは途中で着脱しての調整が難しいため、パンツは厚手の冬用ではなく通年タイプを選ぶなど、登山日の天候状況や自分の体感に応じて調整します。
なお、本格的な冬山登山の場合は「保温性のあるインナータイツ+中厚手の登山用パンツ」、さらに停滞時に備えてオーバーパンツまたはシェルパンツを携行する組み合わせが基本です。
冬用の登山パンツ|保温性と動きやすさを備えたモデル

中厚手程度の生地や、気温に応じて裏側が微起毛タイプのパンツがおすすめ。また、冬の稜線では風にさらされ体感温度も下がることも多いため、防風性を備えたモデルが安心。ストレッチ性のあるパンツで動きやすさも確保しましょう。
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オーバーパンツ|アウターレイヤー

休憩時や寒さが厳しい状況下での防寒には、オーバーパンツやシェルパンツが必須。稜線上などで着用することで冷えを防ぐことに一役買います。
そもそも、冬山に限らず防水機能を持ったシェルパンツ(レインパンツ)は登山の必携アイテム。さらに、保温に特化した中綿入りのパンツを携行すればより安心です。
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頭・首・手の例|末端まで装備は万全に

早朝や日暮れ後に気温が下がった時に、防寒用の小物類があるだけで保温効果が違ってきます。グローブやネックゲイターなど必要に応じて用意しましょう。
帽子|熱がこもりやすい頭部は、暖かさだけでなく通気性も確保

まだ体温が上がりきっていない登山開始時や休憩の際に、防寒用の帽子があると重宝します。ただし、もこもこすぎるキャップを選んでしまうとムレてしまう原因に。保温性とともに適度に通気性のあるものを選びましょう。
また、帽子をかぶるだけでなくミドルレイヤーやアウタージャケットのフードを組み合わせても頭部の保温力アップにつながりますよ。
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ネックゲイター|首の冷えは全身の冷えにつながることも

首が冷えると冷たい血液が全身へ流れ、体全体の冷えにつながることも。逆に首が温かくなるだけで防寒性が格段にアップします。
ネックゲイターは小さくなるのでザックの隙間に忍ばせておけば、山の行き帰りなどにも使えて便利。
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グローブ|手先の冷えはしもやけなどの原因にも

手先は冷えやすく、血行が悪くなるとしもやけの原因に繋がります。積雪のない冬山で使用する場合には、保温性と操作性のバランスが取れた中厚手タイプが便利です。天候や気温によってはインナーグローブも併用すると安心です。
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自分に合ったレイヤリングで冬も山を楽しもう!

冬登山の服装はレイヤリングが大切ですが、“絶対にこれ”という正解はありません。その日の状況に最適な組み合わせを知るには経験を重ねるのが一番です。レイヤリングのコツを覚えて、自身のスタイルを見つけていきましょう。自分に合った服装なら、より山を安全に楽しめますよ!
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