北海道から九州に生息するヘビは8種類!
日本には約50種類のヘビが生息していますが、沖縄などの南西諸島を除く、北海道から九州に生息するヘビは8種類のみ。
ヘビの種類は「アオダイショウ、シマヘビ、ジムグリ、シロマダラ、ヤマカガシ、ヒバカリ、タカチホヘビ、マムシ」。
本来はこの8種類を全て覚えたいところですが、その中でも毒を持っているマムシとヤマカガシの2種については、大変危険なので最低限覚えたいヘビになります。
特に注意すべきは毒を持つこの2種
先ほど触れたように、北海道~九州に生息するヘビの中で、特に注意が必要なのが「マムシ」と「ヤマカガシ」です。マムシは古くから毒ヘビとして認知され、焼酎漬けにされるなど民間療法として利用されてきた歴史もあります。
一方ヤマカガシは、1970年代頃まで無毒扱いされていたため、現在でも「昔は無毒ヘビだったよね?」と誤解される方もいる少し特殊なヘビ。
ただし、その毒性はとても強く、LD50(半数致死量)の研究では、同量であればコブラ科のウミヘビ類に近い毒の強さであることが報告されています。
毒ヘビと無毒ヘビの特徴を学ぼう
毒ヘビと無毒ヘビの容姿の違いについて
ヘビの種類 | 毒性 | 容姿の特徴 |
マムシ | 有 | 目が黒い線の上にあり、三角形の頭で鋭い目つき(縦長のネコ目) |
ヤマカガシ | 有 | トラ柄を連想させるような黒と赤の市松模様。幼蛇は首の後ろに黄色いバンド模様あり |
アオダイショウ | 無 | 大型で全身が緑褐色。目の後ろに線あり |
シマヘビ | 無 | 頭から尾に向かって線がつき、目の後ろに線。眉骨が出た感じで、やや「にらみ顔」 |
ジムグリ | 無 | 赤地に黒い線模様の顔。鼻先がやや丸い印象になる |
シロマダラ | 無 | 小型のヘビ。出目で黒と白のまだら模様。あまり見かけない |
タカチホヘビ | 無 | 大人になると背筋に黒色のライン。あまり見かけない |
ヒバカリ | 無 | 頭から首にかけて白い筋状の線模様 |
毒ヘビや無毒ヘビの容姿の違いを知っていると、万が一咬まれた時の判別にもなります。種や地域によっては色彩変異を起こすので、顔の特徴を知っておくと判別に役立つでしょう。
ちなみに、西日本のヤマカガシにはアオダイショウに近い柄になる変異パターンがありますが、どんなにアオダイショウに似たオリーブ色をしていても目の後ろには線がありません。
このように、容姿の特徴を知っているだけで見分けることが可能になります。
最悪毒ヘビに咬まれると…
マムシに咬まれた場合、30分ほどすると激しい痛みを伴い、患部が紫色に腫れあがり、足を咬まれた場合は歩くことが困難になります。必ず死に至るわけではありませんが、腎不全などの後遺症を負う場合もあります。
ヤマカガシについては、咬まれた直後には痛みや腫れは基本的に起こらず、「毒が入らなかったのかな?」と油断すらしそうなくらい。しかし、時間の経過とともに、頭痛や吐き気、血尿、歯茎からの出血などの症状が現れ、しっかりと治療を受けないと死に至るリスクがあります。
しっかりと治療が受けられれば、必ず死に至るわけではありませんが、2種とも咬まれたら基本的に入院不可避な症状に陥る恐ろしいヘビです。
被害報告No.1「マムシ」
◆体長:約40〜65cmほどと短く、太い姿が特徴的
◆頭の形状:頭の先端が尖った三角形をしており、瞳孔は縦型のネコ目タイプ
◆生息地:北海道、本州、四国、九州
マムシの全身は、灰色〜赤色の銭形模様が特徴です。色の変異はあまり大きくないので、どこの地域で遭遇しても比較的分かりやすいでしょう。アオダイショウなどは、探索型のヘビのためよく移動しますが、マムシは待ち伏せ型のヘビなので、基本的にはあまり動き回りません。
そのため、人が近づいてきても逃げ出さない場合も多く、気づかずに踏んだり知らずに近くを歩行することによって咬まれるケースが多いのです。
日本国内で亡くなるケースのほとんどがマムシで、毎年4名ほどの死亡が報告されています。
活動時期と遭遇しやすい場所
マムシの活動時期は、だいたい4月~10月ごろで、春と秋に大きな活動のピークがあります。ただし、冬場でも活動量は極めて低下しますが、他のヘビよりもやや低温に強い傾向があり、2月頃でも活動が見られた事例もあります。
一般的には夜に活動する夜行性とされますが、季節や場所によって日中に活動することもあり、近年の研究では、活動時間の変化があることが報告されています。日当たりのよい場所では、日中に日光浴をするところを目撃されるケースが多いので注意が必要です。
マムシの毒について
マムシの毒の性質は「出血毒」という毒で、わかりやすくいうとタンパク質を溶かす胃液のような存在です。毒によって獲物を殺すのはもちろん、丸飲みした後に獲物の内部から消化するのにも出血毒が一役かっています。
人間が咬まれた場合は、この毒が筋肉などの組織を破壊することによって、様々な症状を引き起こします。
基本的には咬みついたらすぐに獲物を放し、毒で獲物が死んでからゆっくり食事をとるスタイル。ただし、鳥のようにその場を逃げ切れるものに対しては、リリースせずに咬んだままホールドして仕留める技を使いこなします。
猛毒を持つ「ヤマカガシ」
◆体長:通常は体長約60cm〜120cmくらいだが、大きい物は150cmほどに
◆頭の形状:頭はマムシと違い尖っておらず、細めで丸い形状で瞳孔も丸い
◆生息地:九州、四国、本州
東日本のヤマカガシは黒と赤の市松模様が特徴で、幼蛇時代には首に黄色いバンド模様が目立ち、毒ヘビらしい奇抜な模様をしているので覚えやすいヘビでしょう。
地域によって模様に変異があり、西日本は東日本に比べ地味な色合いになる傾向があります。変異パターンがいろいろあるため、ヤマカガシだと判断するには慣れも必要です。
アオダイショウやシマヘビなどと間違えることがありますが、「目の後ろにのびる線がない」など、主に顔や首の線上の模様の違いを理解すると、身体に変異があっても見分けられるようになってきます。
活動時期と遭遇しやすい場所
ヤマカガシは、本州から九州までの広い地域で見られ、水辺や藪、田んぼ周辺に多く生息しています。
主に4月~11月の間に活動し、オタマジャクシやカエルが多くなるシーズンになると、田んぼ周辺などでは目立つようになります。ヤマカガシの活動時間は日中で、温度にもよりますが午前中の方が多くみられます。
ヤマカガシの毒について
性格はとてもおとなしいヤマカガシですが、実はマムシやハブよりも強い猛毒を持っています。
毒は強い「血液凝固作用」があり血管内に血栓を作ります。咬まれてもマムシのように痛みや腫れは無く、最悪の場合、数時間から1日ほどで、脳出血や内臓出血などを引き起こして死に至る可能性が。
また、ヤマカガシが毒を出すのは毒牙からだけではありません。
首の背面にも「頚腺」という毒腺を持ち、エサであるヒキガエル類から得たブフォトキシンと呼ばれる毒を溜めて、防御用に使用しているとされています。毒を飛ばしてくるようなことはありませんが、ヤマカガシはこうした2種類の毒を使いこなす毒ヘビなのです。
マムシとヤマカガシの毒や毒牙の違いとは
同じ毒ヘビであるマムシとヤマカガシですが、毒の性質のほか、毒牙の大きさや生えている場所にも大きな違いがあるんです。
マムシは上顎の手前に、長さ約4mmほど2本(予備用の毒牙もあるため、写真では2本ずつ生えているように見えます)の毒牙を持っていて、咬まれると皮膚に2つの牙の跡がつきます。
一方ヤマカガシの毒牙は、マムシの様に手前ではなく口の奥の方。また、毒の注入の仕方も両社は異なり、マムシは注射器状の毒牙で注入するのに対し、ヤマカガシは毒牙の付け根から出た毒がキズから染み入るように注入させる仕組みです。
そのためヤマカガシは、そもそもおとなしかったり、咬みつかれても毒が入りにくかったり、長く咬まれないと毒が入りにくいという特徴があります。
このような理由から、マムシに比べると格段に死者数が少ないのも特徴で、死亡件数は過去40年ほどでわずか数人。ただし、猛烈な毒を隠し持っているので、油断は禁物です。