アイキャッチ画像撮影:YAMA HACK編集部
アイゼンを正しく装着していないと、こんなに危険!

撮影:YAMA HACK編集部(アイゼンを正しく装着していないと……!)
雪山登山でスリップを防止するために欠かせない滑り止め、「アイゼン」。爪を岩・枝・反対側の足に引っかけないためのアイゼンワークなど「歩き方」も重要ですが、そもそもの「装着方法」を正しく実践できていますか?
アイゼンがきちんと装着できていないと、歩行中にズレてしまい滑りやすい雪面をうまくとらえることができません。またアイゼンが登山靴から外れてしまい、気づかずに紛失したり斜面から滑落してしまうと、さらに危険な状況に。
滑り止めがない状態での雪上歩行、考えただけでも恐ろしいですね。
様々な装着方法があるアイゼン。その正しい手順を知ることは、安全な雪山登山の第一歩といえるでしょう。
アイゼンの基本的な種類をまずはチェック

撮影:YAMA HACK編集部(左上から時計回りにチェーンスパイク・6本爪・12本爪・10本爪)
アイゼンには様々な爪の本数があり、それぞれ適した使用フィールドがあります。
一般的には爪の本数が増えるほど爪自体も長く鋭利になり、急傾斜や凍結した斜面にも対応できるようになります。

撮影:YAMA HACK編集部(左上から時計回りにバンド式・ラチェット式・フルワンタッチ式・セミワンタッチ式)
さらに、同じ本数のアイゼンであっても、登山靴への装着方法が異なる場合もあります。
特にワンタッチ式は、装着できない登山靴もあり注意が必要。
ここからは以下のアイテムごとに、アイゼンの装着方法を画像と動画で紹介していきます。
※各アイテムをクリックすると、その装着方法にジャンプできます。
アイゼンを装着する前に

撮影:YAMA HACK編集部(靴底に付着した雪をしっかり落としてから装着)
どんなアイゼンであっても靴底にたくさんの雪が付着したまま装着すると、靴底とアイゼンの間にすき間ができて緩みの原因になります。
ピッケルのブレードやスパイク、トレッキングポールの石突きなどで靴底をたたいて、付着した雪をしっかり落としてから装着してください。
チェーンスパイクアイゼンの装着方法

撮影:鷲尾 太輔(チェーンスパイクアイゼンは凍結した林道などで活躍)
靴底全体を短い爪で覆うチェーンスパイクアイゼン。傾斜がある登山道ではズレやすいため、平坦な路面での使用に適しています。写真のような凍結した林道では、特に重宝するでしょう。
チェーンスパイクアイゼンの装着方法
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撮影:YAMA HACK編集部(チェーンスパイクアイゼンの装着方法)
1.バンドの前部を爪先にかぶせます
2.ガイド(横方向のワイヤー)を爪先の上に合わせて固定します
3.バンドの後部の突起を引っぱります
バンドのゴムが硬い場合はバンドに両手の親指を添えて、靴下を履く要領で親指を少しずつ後にずらしていくとよりスムーズです
4.バンドの後部をかかとにかぶせ、引き上げながらチェーンをピンと張ります
6本爪アイゼンの装着方法

撮影:鷲尾 太輔(夏の北アルプス・白馬大雪渓)
土踏まずとその前後に、両側3本ずつ計6本の爪が付いている6本爪アイゼン。傾斜の緩やかな雪山や、夏の高山にある雪渓を通過する際に活躍します。

撮影:YAMA HACK編集部(左下:バンド式/右上:ラチェット式)
6本爪アイゼンの装着方式は、「バンド式」と「ラチェット式」があります。それぞれの装着方法を紹介します。
バンド式6本爪アイゼンの装着方法
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撮影:YAMA HACK編集部(バンド式6本爪アイゼンの装着方法)
※バンドが分かりやすいようにパンツの上から締めてしますが、ズレてしまうので必ずバンドはパンツの下で止めましょう
1.中央の突起と土踏まず後部を合わせてアイゼンに登山靴を置きます
2.バンド後部を引き上げてかかとに合わせます
3.バンドをかかと内側から爪先外側に引っぱります
4.バンドの先端を爪先外側のワイヤーに外側から内側に通します
5.バンドの先端を爪先内側のワイヤーに外側から内側に通します
6.バンドの先端をかかと外側に引っぱります
7.バンドの先端をかかと外側のバックルに通します
8.バンドの先端を引いて全体をピンと張ります
9.バンドの先端をバックルの金具に通します
ラチェット式6本爪アイゼンの装着方法
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撮影:YAMA HACK編集部(ラチェット式6本爪アイゼンの装着方法)
※バンドが分かりやすいようにパンツの上から締めてしますが、ズレてしまうので必ずバンドはパンツの下で止めましょう
1.中央の突起と土踏まず後部を合わせてアイゼンに登山靴を置きます
2.ヒールピースを持ち上げてかかとに合わせます
3.後側のバックルをラチェット金具に通します
4.レバーについたひもを内側に引きながらバックルを締めます
5.前側のバックルを同様にラチェット金具に通します
6.レバーについたひもを内側に引きながらバックルを締めます
バックルは足が締め付けられて痛くならない程度に、しっかり締めるのがコツです
10本爪アイゼンの装着方法

撮影:鷲尾 太輔(急斜面が続く谷川岳)
前後に4本ずつ、爪先に2本の前爪がある10本爪アイゼン。急斜面を登降する本格的な雪山登山で活躍します。

撮影:YAMA HACK編集部(左下:バンド式/右上:ラチェット式)
10本爪アイゼンの装着方式は、「バンド式」と「ラチェット式」があります。それぞれの装着方法を紹介します。
バンド式10本爪アイゼンの装着方法
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撮影:YAMA HACK編集部(バンド式10本爪アイゼンの装着方法)
※バンドが分かりやすいようにパンツの上から締めてしますが、ズレてしまうので必ずバンドはパンツの下で止めましょう
1.アイゼンに登山靴を置いてトゥハーネスに爪先を入れます
2.ヒールハーネスを持ち上げてかかとに合わせます
3.バンドの先端をトゥハーネスの下から上に通します
4.バンドの先端を引いてトゥハーネスを爪先をフィットさせます
5.バンドの先端をヒールハーネスの内側から外側に通します
6.バンドの先端をかかと外側に引っぱりヒールハーネスをかかとにフィットさせます
7.バンドの先端を引いて全体をピンと張ります
8.バンドの先端をバックルの金具に通します
ラチェット式10本爪アイゼンの装着方法
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撮影:YAMA HACK編集部(ラチェット式10本爪アイゼンの装着方法)
※バンドが分かりやすいようにパンツの上から締めてしますが、ズレてしまうので必ずバンドはパンツの下で止めましょう
1.アイゼンに登山靴を置いたらヒールハーネスを持ち上げてかかとに合わせます
2.トゥハーネスを持ち上げて爪先に合わせます
3.トゥハーネスから延びたバックルをラチェット金具に通します
4.レバーについたひもを内側に引きながらバックルを締めます
5.反対側のバックルもラチェット金具に通します
6.レバーについたひもを内側に引きながらバックルを締めます
バックルは足が締め付けられて痛くならない程度に、しっかり締めるのがコツです
12本爪アイゼンの装着方法

撮影:鷲尾 太輔(凍結した急斜面もある北アルプス・立山連峰)
前に6本、後に4本、爪先に2本の前爪がある12本爪アイゼン。急斜面で凍結している場合もある日本アルプス・八ヶ岳などの高山での雪山登山で活躍します。

撮影:YAMA HACK編集部(左奥からバンド式/セミワンタッチ式/フルワンタッチ式)
12本爪アイゼンの装着方式は、「バンド式」・「セミワンタッチ式」・「フルワンタッチ式」があります。

撮影:YAMA HACK編集部(上:かかと・つま先両方にコバという溝がある登山靴、下:どちらにもコバがないスノーブーツ)
バンド式は防寒性能を備えていればどんな登山靴でも装着可能ですが、セミワンタッチ式はかかとに、フルワンタッチ式はかかと・爪先両方に、”コバ”という溝がある登山靴でないと装着できません。
それぞれの装着方法を紹介します。
バンド式12本爪アイゼンの装着方法
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撮影:YAMA HACK編集部(バンド式12本爪アイゼンの装着方法)
※バンドが分かりやすいようにパンツの上から締めてしますが、ズレてしまうので必ずバンドはパンツの下で止めましょう
1.アイゼンに登山靴を置いてヒールハーネスでかかとを固定します
2.バンドの先端をトゥハーネスの下から上に通します
3.バンドの先端を引いてトゥハーネスを爪先にフィットさせます
4.バンドの先端をヒールハーネスの内側から外側に通します
5.バンドの先端をかかと外側に引っぱりヒールハーネスをかかとにフィットさせます
6.バンドの先端をかかと外側の2本のリングに通します
7.バンドを折り返して内側のリングに通します
8.バンドの先端を引っぱり緩みがないよう全体を固定します
9.余ったバンドの先端は固定したバンドの下に折り込んでおきます
セミワンタッチ式12本爪アイゼンの装着方法
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撮影:YAMA HACK編集部(セミワンタッチ式12本爪アイゼンの装着方法)
※バンドが分かりやすいようにパンツの上から締めてしますが、ズレてしまうので必ずバンドはパンツの下で止めましょう
1.バインディングをかかとのコバに合わせます
2.バインディングを立ててカカトのコバに固定します
3.バンドの先端をトゥハーネスの下から上に通します
4.バンドの先端を引いてトゥハーネスを爪先にフィットさせます
5.バンドの先端をかかと外側の2本のリングに通しますす
6.バンドを折り返して内側のリングに通します
7.バンドの先端を引っぱり緩みがないよう全体を固定します
8.余ったバンドの先端は固定したバンドの下に折り込んでおきます
フルワンタッチ式アイゼンの装着方法
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撮影:YAMA HACK編集部(フルワンタッチ式12本爪アイゼンの装着方法)
※バンドが分かりやすいようにパンツの上から締めてしますが、ズレてしまうので必ずバンドはパンツの下で止めましょう
1.他のアイゼン以上に爪先とかかとをアイゼンに合わせて登山靴に置きます
2.トゥベイルを引き上げて爪先のコバに密着させます
3.バインディングをかかとのコバに合わせます
4.バインディングを立ててカカトのコバに固定します
5.バンドの先端をトゥベイルのリングに通します
6.バンドの先端を引いてトゥベイルを爪先に固定します
5.バンドの先端をかかと外側の2本のリングに通しますす
6.バンドの先端をかかと外側に引っぱります
7.バンドの先端をかかと外側のバックルに通します
8.バンドの先端を引いてピンと張ります
9.バンドの先端をバックルの金具に通します
アイゼン装着時の注意点
さまざまなアイゼンの装着方法について紹介してきましたが、最後に注意点を2つ紹介します。
①素手はNG!必ずグローブを付けて練習しておこう

撮影:YAMA HACK編集部(グローブをつけたままアイゼンの装着ができるように練習を)
アイゼンの装着には慣れが必要。雪山登山の当日に買ったばかりのアイゼンを現地で開封すると、思うように装着できず行動開始できません。本番に近い環境で練習しておくことが重要です。
また、気温が低い雪山では素手での作業はNG!必ずグローブを付けた手で装着できるように練習しましょう。フィット感の高いインナーグローブはアイゼン装着で雪が付着して濡れてしまうこともあるので、必ず予備のグローブも持参しましょう(オーバーグローブを着用しての練習も合わせてしておきましょう)。

撮影:YAMA HACK編集部(しゃがんだ状態で装着できるように練習を)
自宅で練習するとなると、ついつい玄関の上がりかまちに腰かけてしまいがち。けれども雪山にベンチがあるとは限りません。地面にしゃがんだ姿勢での装着に慣れておくようにしましょう。
②バンド式アイゼンは”ねじれ”に注意

撮影:YAMA HACK編集部(バンドはねじれがないように装着を)
バンド式アイゼン全てに該当する注意点として、写真のようにバンドがねじれた状態にならないよう装着することが挙げられます。ねじれた部分が盛り上がって、アイゼンの爪を引っかける原因になります。

撮影:YAMA HACK編集部(余ったバンドは短く切っておこう)
登山靴のサイズが小さい人などはバンドが長く余ってしまうこともあり、これがぶら下がった状態での歩行もアイゼンの爪で踏んでしまい転倒の原因になります。握りこぶし2つ分程度の余りを残しておき、その先端は予め切って断面を炎であぶっておきましょう。
正しい装着方法をスムーズに実践できるよう練習や準備をして、安全で楽しい雪山登山を満喫してください。
今回の説明で使用したアイゼンはこちら!
チェーンスパイク
重量 |
280g(S)、325g(M)、360g(L)、405g(XL) |
対応サイズ |
20.5〜23.5cm(S)、23.0〜26.0cm(M)、25.5〜28.5cm(L)、28.0〜31.0cm(XL) |
6本爪アイゼン
重量 |
420g |
対応サイズ |
フリーサイズ(21cm~30cm) |
重量 |
500g(S)、520g(L) |
対応サイズ |
22.0〜24.5cm(S)、25〜28cm(L) |
10本爪アイゼン
重量 |
770g |
対応サイズ |
20.5〜25.8cm(S/M)、25.8〜31.5cm(M/L) |
重量 |
720g |
対応サイズ |
22.0〜24.5cm(S)、25〜28cm(L) |
12本爪アイゼン
重量 |
870g |
対応サイズ |
18.3〜24cm(S/M)、24〜29cm(M/L) |
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