アイキャッチ撮影:筆者
ユニクロのダウンは登山用にしてもいいの?

撮影:筆者
秋冬シーズンになると、山で休憩する時にけっこう冷えますよね。寒さに負けず快適に過ごすために、ダウンがあると安心です。
でも、「機能が良いのはわかるけれど、正直なところ出費を抑えたい」という人もいるのでは?
そんな人に人気なのが、ユニクロが販売する『ウルトラライトダウン』。
ダウンジャケットが1枚7,990円(2025年現在)で購入できるので、「登山に着ていけるのかな?」と思っている人も多いようなんです。
でも、ちょっと待ってください!

出典:PIXTA
しかし、ウルトラライトダウンジャケット(以下、ウルトラライトダウン)はあくまでも街での着用を想定して作られた商品。
いざ使ってみたら「めちゃくちゃ寒くて耐えられなかった」なんてことも、環境によっては起こりえます。しっかりと、登山用ダウンジャケットとの違いを理解した上で、使って問題ないかを判断する必要があります。
ウルトラライトダウンはこんな商品!

撮影:筆者(身長180cm 体重約60kg、Lサイズ着用)
それでは、まず簡単にユニクロのウルトラライトダウンについてみていきましょう。
公式サイトを見てみると、
- フィルパワー750※のプレミアムダウンで軽くて暖かい。※IDFB法による測定値
- 独自技術でダウンパックをなくし、驚きの軽さに
- 小雨程度の水をはじく撥水加工
- ポケッタブル仕様で持ち運びにも便利
- インナーからミドラーまで幅広く使えるレギュラーフィット
- シンプルなデザインと低めの襟、そして細いキルト幅ですっきりとしたデザインに
参考:ユニクロ(2025年時点)
と記載されており、まとめると……
- 軽い
- コンパクト
- 暖かい
- 少量の雨ならOK
- 見た目もスッキリ
という特徴を持った商品のようです。これだけ見ると登山でも使えそうな気もしますが、もう少し詳しくみていきたいと思います。

撮影:筆者(左:スペリオダウンジャケット Mサイズ、右:ウルトラライトダウン Lサイズ)
今回は、アウトドアメーカーのダウン代表として、「モンベル スペリオダウンジャケット(以下、スペリオダウン)」との比較を交えながら、登山に必要な「①暖かさ」 「②軽さ」 「③コンパクトさ」 「④撥水性」に加えて「⑤見た目とディテール」を調査してみました。
調査①:暖かさ
暖かさの部分は、ウェアの作りを中心にみていきます。
まずは実際に着てみた感想から

撮影:筆者
11月末の早朝に、標高500mほどの山での休憩中に寒さを感じるかどうかをテストしました。当時の気温は約8℃前後。ダウンの中は、ウール素材の長袖ベースレイヤーシャツのみです。
ウルトラライドダウンを着て30分間じっとしていましたが、時折風が吹くと露出している部分が寒く感じるものの、特別に体が冷えた感じはしませんでした。
さすがに登山用のアウターダウンを着ている時のような、暖かい空気に包まれている感覚とまではいきませんでしたが、ジャケットの厚み以上の十分な保温力を感じることができました。
使われているダウンは「高品質」

出典:PIXTA
ダウンの暖かさの指標として、「フィルパワー」というものがあり、この数値が高いほど「空気をたくさん含み、保温性が高いダウン」と言われています。
■ウルトラライトダウン
・750フィルパワー超(2025年時点)
■スペリオダウン
・800フィルパワー
一般的に600~700フィルパワーのダウンが「良質」、700以上のものが「高品質」とされているため、スペリオダウンが高品質であることはもちろん、ウルトラライトダウンも十分品質の高いダウンが使用されていることがわかります。
保温性はスペリオダウンに軍配
同じ環境で着比べてみてると、スペリオダウンの方が暖かに感じられました。それは、ダウンのフィルパワーの違いに加え、構造の違いにも起因していると考えられます。
異なるキルティングパターン
2つのダウンを並べてみると、縫い目に違いがあるのがわかります。

撮影:筆者
一般的なダウンジャケトは中わたの偏りを防ぐためにステッチが入っています。この縫い目からも冷気が侵入してしまうのですが、スペリオダウンは、冷気の侵入を極力抑える独自のステッチパターンになっているんです。
◆ウルトラライトダウン
部屋が大きく膨らみやすい一般的な縫い方を採用。ダウンは膨らんで温かい空気の層を作り保温するため、大きく膨らむというのは暖かさの確保に繋がる。ステッチ幅は狭めで、ダウンの偏りを防ぐ一方で、縫い目が多くなり冷気の侵入口も増える
◆スペリオダウン
縦横に縫い目があるのでダウンがより片寄りにくく、全体を均一に保温できる。また、縫い目を少なくすることで、軽量化しながらコールドスポット(冷えやすい部分)を減らし、保温力を高めている

撮影:筆者

撮影:筆者(厚みを比べてみると、ボディ部分も腕部分もスペリオダウンの方がふっくらとしている)
また、スペリオダウンが使用している「EXダウン」は、一般的なダウンよりダウンボールが大きく、小羽枝の密度が高いため、空気を多く蓄える特性があります。つまり、空気の層により冷気を遮断し、暖かさをキープしてくれるというわけです。
背中の短さが気になる

撮影:筆者
着用時に気になったのは、登山用のものに比べ、ウルトラライトダウンは丈が短いという点です。しゃがんだ時に、背中が出てしまうのでは?と思い、実際に前屈した状態で比較してみました。

撮影:筆者(左:スペリオダウンジャケット Mサイズ、右:ウルトラライトダウン Lサイズ)
ウルトラライトダウン(L)の方がスペリオダウン(M)よりワンサイズ上のはずですが、それでもインナーが見えるまで丈が上がりました。
少しの差ですが気温が下がってきた場合に、腰回りの冷えにつながる可能性も。登山用で購入する場合は、注意しておきましょう。
袖にも若干の違いが

撮影:筆者
隙間が少ない方が、暖かい空気が逃げにくくなるため、保温性は高くなります。未着用の状態で見てみるとどちらも、袖の部分がキュッとしまっていて、フィットしやすい作りになっています。

撮影:筆者
実際に着用してみると、スペリオダウンの方が袖部分の隙間が若干少なくなっています。ただスペリオダウンはMサイズ、ウルトラライトダウンはLサイズのため、サイズの差が結果に影響している可能性もあります。より細かい比較は実際の同サイズを試着してみるのが良さそうです。
さらにジッパーの裏側を見てみると

撮影:筆者
裏側からジッパーを見た様子です。スペリオダウンには裏に1枚布地があるため、隙間風を防いでくれます。一方でウルトラライトダウンは裏地なし。シビアな環境になった場合には、使用には注意が必要でしょう。
調査①:暖かさ|まとめ
どちらも高品質なダウンを使用。ただし、細かな作りに違いがあるので、使用環境によっては注意が必要。
スペリオダウンをはじめ、より過酷な環境で着用することを想定して作られたアウトドアメーカーのダウンは、保温性を最大限に高めるための工夫が随所に施されている点が、ウルトラライトダウンとの大きな違いと言える。
