分水嶺

図で解説!雨の分かれ道「分水嶺」とは?知れば知るほどおもしろいその秘密

あなたは「分水嶺」とは何かを知っていますか? 山行計画を立てる際、登る山を調べるうちにこの言葉にたどり着いたことがある人もいるのではないでしょうか。しかし、なんだか意味がよく分からない……と感じる人が多いのも事実。

そこで今回は、「分水嶺」について紹介します。イメージしにくい部分は図で解説。知れば知るほどおもしろい、山の地理にまつわる発見があるかも!?

目次

アイキャッチ画像出典:PIXTA

「分水嶺」って知ってる?

分水嶺

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あなたは「分水嶺」という言葉を耳にしたことがありますか? “山の頂き”を意味する「嶺」という文字で察したかもしれませんが、山と深い関係がある言葉なんです。登山をきっかけにその意味を知った人もいるのではないでしょうか。

とはいえ、普段あまり使うことがない言葉なので知らない人も多いはず。今日は、そんな「分水嶺」とは何なのか、一緒に見ていきましょう。知れば知るほど、きっと山に行くのが楽しみになりますよ!

「分水嶺」は文字通りの水が分かれる嶺

「分水嶺」とは……

分水嶺

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分水嶺を辞書で引いてみると……

分水界となっている山脈。分水山脈。

引用:『広辞苑』第7版、新村出 偏岩波書店、2018

ん? なんだか簡潔すぎて逆に難しい! そもそも分水界って何?という疑問を抱く人もいるのではないでしょうか。

図で詳しく見てみよう!

分水嶺

図:YAMA HACK編集部

雨や雪が降ると、その水は地上や川を流れて海に出ていきますよね? そのときに全ての水が同じ方向へ流れるわけではなく、異なる方向へと流れていきます。どの方向に流れるか、その境界線こそが図の緑線「分水界」です。

青線が川であり、「分水界」を隔ててそれぞれ流れる「本流」と「支流」を合わせて、その河川の「水系」といいます。その「水系」が流れる全範囲が『流域』で、赤で囲った部分です。そして、となりあった「流域」を分ける境界のことも「分水界」と呼びます。

そんな、降水の別れ道である「分水界」が、山頂や山の尾根に沿ってのびている場合に、「分水嶺」と呼ぶんです。

列島横断!? 日本の背骨「中央分水嶺」

分水嶺の概要はなんとなく分かったでしょうか? 次は、分水嶺に並び、ふとしたところで目にする「中央分水嶺」という言葉。中央分水界ともいわれますが、これは何のことを指すのでしょう!?

「中央分水嶺」とは……

中央分水嶺

出典:PIXTA中央分水嶺踏査を基に編集部作成/中央分水嶺のイメージ)

中央分水嶺(中央分水界)とは、日本列島において太平洋と日本海に分ける分水嶺の連続線のこと。北は北海道の宗谷岬から、南は鹿児島県の佐多岬まで一本の線でつながる様は、まさに日本の背骨! 未踏で調査されていない場所もあったのですが、日本山岳会が3年がかりで中央分水嶺踏査を行い、2006年に全ての調査を終えました。

1つの山で見てみると……

分水嶺

図のように、山に降った雨水が「中央分水嶺」を堺に一方は日本海へ、もう一方は太平洋に流れていきます。「中央分水嶺」に限らず、太平洋と日本海へ分かれる境界は「大分水嶺」、同じ海洋に流れる異なる河川の流域の境界は「中分水嶺」と分類され、その他にも様々な定義で分類された名称があります。

同じ場所に降っているのに、反対の海へ流れていくなんて、なんだかおもしろいですよね。そんな分水嶺を見ることができる場所に行ってみたいと思いませんか?

「分水嶺」を見に行こう!トレイルできる山にも注目

分水嶺は山にある場合が多く、登山と一緒に楽しむことができるんです。さらに、登らずに見ることができる面白い分水嶺もありますよ。

全国的に珍しい!●●な場所にある「分水嶺」

分水嶺

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分水嶺は山の稜線にあるものが多いのですが、堺田(山形県)の分水嶺は平たんな場所にあるので気軽に見ることができます。しかも、JR堺田駅の目の前なんです。堺田分水嶺広場になっていて、すぐそばには松尾芭蕉が投宿した家として有名な「封人の家」も。のどかな景色を見ながら散策するのがおすすめです。

観光地としても人気! 公園になっている「分水嶺」

分水嶺

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ひるがの分水嶺公園(岐阜県)は、水が別れる様子が一目で分かる人気スポット。きれいに整備された公園の周辺は、春にはカタクリやミズバショウ、梅雨時期のササユリなどの草花がきれいで、秋の紅葉も見事な場所です。分水嶺がある“ひるがの高原”は、自然の見どころやグルメがたくさんある観光地としても有名。お出かけついでに分水嶺を見てみましょう。

3つの川の源流地!甲武信ヶ岳へ

分水嶺

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甲武信ヶ岳は、富士川の支流である笛吹川(山梨県)、荒川(埼玉県)、千曲川(長野県)の三大河川の源であり分水嶺。自身も日本百名山ですが、山頂からは富士山や日本アルプスなどを望むことができ、日本百名山だけでも43座見えると言われています。

「分水嶺トレイル」というレースもある!

分水嶺

そんな甲武信ヶ岳と雲取山・金峰山・瑞牆山の4つの百名山と、多摩川・荒川・富士川・千曲川の4つの分水嶺を3日以内に縦走するというタフな大会があるんです。それが「分水嶺トレイル」。 必要な装備は全て自分で背負い、ルートも自分で確認しながら進むため、登山経験豊富な人だけが参加資格を得られます。

 

分水嶺トレイル詳細

眺望の良い小さな分水嶺! 笠取山へ

分水嶺

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奥秩父主脈のひとつである笠取山。山頂から西にある雁坂峠への分岐付近の小高い丘に、「小さな分水嶺」はあります。ここから、富士川の支流である笛吹川と荒川、多摩川に分かれて流れています。周辺は草地で、目の前に笠取山の山頂があり、富士山の眺望も抜群! 撮影スポットとしても人気です。

さらに、日本三大峠の1つである雁坂峠からは、標高ベスト3の山(富士山・北岳・間ノ岳)を全て眺めることができるんです!

八ヶ岳全景が見渡せる!平沢峠から飯盛山へ

分水嶺

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飯盛山(めしもりやま)は、秩父山地の西の端にある山。分水嶺は登山口の基点ともなっている平沢峠にあります。ここまできたら、短時間で登れて360度の大パノラマを満喫できる飯盛山に登りましょう! 一面草原に覆われた山頂からは、八ヶ岳の全景、富士山や浅間山まで見渡すことができます。

中央分水嶺をロングトレイル! 霧ヶ峰・美ヶ原へ

分水嶺

中央分水嶺トレイルは、長野県にある長門牧場から美ケ原高原までの全長38kmのトレイル。樹林帯や広大な草原などの稜線歩きをしながら、高原の美しさを堪能できる贅沢なコースです。距離や高低差がさまざまな5つのコースが設定されているので、体力や時間に合わせて歩けるのも魅力です。

中央分水嶺トレイル

分水嶺を歩いてみよう!

分水嶺

出典:PIXTA(笠取山と分水嶺のある丘)

山の地理的な面に注目してみると、とても興味深い分水嶺。この場所から太平洋と日本海に分かれるなんて、なんともロマンチック! そんな分かれた水も、またどこかで再会するのでしょうか。観光ついでに行ける場所や、景色がきれいな場所もたくさんあるので、ぜひ訪れてみてください。

山と溪谷社 日本の分水嶺 堀公俊(著)