今回のケースでは、コースロストから約30分でKさんの発見に成功しました。そこで浮き彫りになったのは、
〈1〉ココヘリ
〈2〉ホイッスル
という2つのアイテムの重要性です。
〈1〉持っていて良かった!大会参加者に携帯が義務付けられたココヘリ
今回の大会では全ランナーにココヘリ端末携帯が義務化されており、ココヘリ探索ドローンチームも設置されていました。Kさんがコースロストしたという一報が入ってすかさず、ココヘリ受信機を搭載したドローンでの探索が開始。
瞬時にKさんが携帯していたココヘリ端末の電波をとらえ、Kさんから送られてきたジオグラフィカの位置情報と一致していることが確認できたのです。
結果として第1報から約30分で、無事Kさんと合流。これはまさにココヘリがあったからこそと、実際に捜索したスイーパー(制限時間に合わせて最後尾を走るスタッフ)の方は実感したそうです。
*スイーパーBさんの手記
携帯に本⼈の居場所の⼊った地図とココヘリの ID が送られてきた。 私は持っていたココヘリ受信機ですぐにIDを⼊⼒し探すが、受信機は「近くにいません」と表⽰される。
少しして受信機が反応︕「発⾒しました」と表⽰が出た。
指す⽅向の場所は登⼭道を進んだその先が不明瞭になりついに藪になる。その場所で受信機は10時⽅向を指し、探索対象までの推定距離が随分と縮まった時、藪の中から⼥性の声が聞こえた。
Kさんのいる場所は笹の急斜面を下りたところでした。ジオグラフィカのGPSにより本人から居場所の地図は送られていたとはいえ、目印のない藪の中で人を発見するのは容易ではありません。
道に迷った人を「早く見つける対策」として、ココヘリの携帯はとても心強いアイテムということがわかりますね。
〈2〉声よりも届いたホイッスルの音
Kさんが待機していた場所は稜線から離れた斜面の藪の中。視界の悪い場所でKさんが応答したのは、スイーパーBさんの「声」ではなく「ホイッスルの音」でした。
*スイーパーBさんの手記
私達はホイッスルを持っていたので(必携装備品にはホイッスルなし)、やはり声よりも通るホイッスルはよく聞こえたようです。
最近はザックのチェストベルトにホイッスルが付いているタイプもあります。ココヘリとは対照的なアナログなアイテムですが、この2つを合わせて使うことで、今回は早期発見が実現したのです。
もしもの時に備えた対策を普段の登山にも取り入れよう
『The 4100D マウンテントレイル in 野沢温泉』では、今後の対策として、引続きのココヘリ携帯義務とドローン探索チームの設置・コースを示すマーキングの明確化と徹底に加え、ホイッスルの携帯必須も検討しているとのことです。
今回はトレイルレースでの事例をご紹介しましたが、山の中という点では登山と同じ。
遭難リスクが低いと思われがちな、歩行時間や標高差が少ない低山。実はこうした山ほど、登山とは違う目的の赤やピンクのテープが設置されていることが多いものです。
普段の登山でも、事前に道に迷いやすいポイントを把握したり、分岐や地形の変わる場所では、地図やコンパス方向を確認したりと道迷いを起こさないように対策を。
それでも万が一迷ってしまった場合に、ココヘリやホイッスルを装備するなど「早く見つけてもらうための対策」を備えていきたいですね。