地図の出典:ヤマレコ
山岳遭難の原因トップは、「道迷い」

作成:YAMA HACK編集部(参考:令和6年における山岳遭難の概況等)
山岳遭難の原因はさまざまですが、長年その上位となっているのが「道迷い」。つまり登山道を間違えてしまったことで、発生しています。GPSアプリで現在地把握が容易になってからも、その割合は変わっていません。
事前に間違いやすいポイントがわかっていれば気をつけられますが、地図を見ただけではなかなか判断ができない……
そんな人にオススメなのが、ヤマレコアプリ「みんなの足跡」機能です。
これは、ユーザーが実際に歩いた軌跡を地図上に示したデータのこと。これを活用すれば、ほかの人が「道を間違えたポイント」も事前に把握することが可能。現場でも意識的に気をつけられるようになるので、道迷いの防止につながりますね。

撮影:washio daisuke、いらすとの出典:いらすとや
これまでの連載で、地形図の読み方やコンパスの使い方を学んだ登山者Aさん。すっかり登山にハマっていますが、どうやら先日山で道に迷ってしまったとのこと。
今回は、Aさんと一緒に「なぜ道を間違えてしまったのか」を振り返っていきましょう。さらに道間違いをしないための「みんなの足跡」機能の活用法について紹介していきます。
▼今までの地図読みやコンパスの使い方のまとめを見たい人はこちらをチェック
実録|私はここで道を間違えた

撮影:washio daisuke(青が正規ルート。Aさんは黄色の看板を勘違いし、赤の方向に進んでしまった)
登山者Aさん
この間、南高尾山稜を縦走していて、危うく道に迷ってしまうところだったんですよ。
途中で間違えたことに気がついて引き返したので、無事元のルートに復帰できたんですが。
ガイド鷲尾
えらい!間違いに気づく=迷わない、が基本だからね。
なぜ迷ってしまったのかを明らかにして、同じようなミスを繰り返さないようにするのも大切。
どんな状況だったか詳しく教えてくれるかな。

撮影:washio daisuke(Aさんが迷い込んだ場所)
登山者Aさん
①最初は踏み跡も明瞭で、普通の登山道みたいな感覚だったんです。
②こんなところに鉄塔はないはずだけど……と少しおかしいと思ったんです。
③ピンクのテープもあるから大丈夫かなと思って進んで行ったら。
④どんどんヤブが深くなり不安に。地図を確認すると別の方向に進んでいたので、引き返したんです。
ガイド鷲尾
なるほど。今回は、
・分岐で地図を確認しなかったこと
・テープや道を見て、登山道と判断したこと
が間違えてしまった要因といえそうだね。
テープだけで登山道と判断するべからず!

撮影:washio daisuke(登山道周辺でもよく見かける木に巻き付けられたテープ)
ピンクのテープは方向の目安とされることも多いですが、これだけで登山道と判断するのはNG。
なかには、林業関係者の方や送電線の鉄塔を点検する方などが目印としてつけたものもあります。これだけを信用すると、ルートから外れてしまう危険が。
登山者Aさん
山の中を人が通った痕跡であることは確かだけど、それが登山目的の人だとは限らないという訳ですね。
ガイド鷲尾
そうだね。少しでも迷ったら、すぐに地図とコンパスでルート確認するクセをつけておくといいよ。
さらにいうと、今回の道間違いは事前の下調べによって防げたかもしれない。
事前チェックで間違え防止!迷いやすいポイントを把握

地図の出典:ヤマレコ(自分のGPSログをふり返ってみよう)
もし道を間違えてしまったら、次に活かすためにも、どこでどう間違えたかのふり返りも大切。繰り返すことで自分の間違えやすい視点を把握できるようになります。
そこで使えるのが、GPSアプリのログ。自分が歩いた軌跡とともに振り返りが可能です。
多くの登山者の歩いた軌跡を見られるヤマレコの「みんなの足跡」を使えば、その山域の道に迷いやすいポイントがわかるのでオススメ。
この機能は、ヤマレコの計画ルート作成機能の「らくルート」のページから見られます。
それではAさんと一緒に、このヤマレコのGPSログを見ながら、間違いルートについて振り返ってみましょう。
ほかにも同じ間違いをしている人が!?

地図の出典:ヤマレコ(青が正規ルート、赤がAさんが迷い込んだ場所)
ガイド鷲尾
では地形図を見ながら、間違えたポイントを当てはめてみよう。
登山者Aさん
ここ(赤矢印で示した場所)ですね。
すぐ手前で送電線の下を潜ってきたので、また鉄塔が現れた時にちょっとおかしいと思ったんです。
ガイド鷲尾
ルートが曲がる場所で、支尾根に入っちゃった典型的な道間違いのパターンだね。
左下の緑色で囲ったアイコンをクリックして、登山(夏道)のラジオボタンを選択してごらん。

地図の出典:ヤマレコ(橙色の軌跡がヤマレコ独自の「みんなの足跡」)
登山者Aさん
おっ!画面が一気にオレンジ色に染まりましたよ。
ガイド鷲尾
これがヤマレコの「みんなの足跡」。
ユーザーの軌跡が、オレンジ色の斑点。多くの人が通っているルートほどオレンジの斑点が太く、少ないほど細くなっているんだ。
Aさんが間違えた場所(赤丸部分)を見てみると……
登山者Aさん
オレンジ色が帯状になっていますね。
しかも途中で途切れている。
ガイド鷲尾
途切れているのは、引き返したということだから、Aさん以外にも間違えた人がいるようだね。
つまりここは間違えやすいポイントであることがわかる。
登山者Aさん
たしかに!事前に知っていれば、意識的に方向を確認したり、チェックポイントとして地図に記載しておいたりと注意できたかもしれない。
ほかにも、登山道以外にけっこうたくさんオレンジ色の帯がありますね。

地図の出典:ヤマレコ(橙色の軌跡がヤマレコ独自の「みんなの足跡」)
ガイド鷲尾
足跡が途切れず続いているのは、きちんと踏破している記録。
青で囲った部分なんかは、いわゆるバリエーションルートを歩いた人の足跡だね。
ただし登山道以外で「みんなの足跡」があっても、誰でも歩ける訳ではない。ルートファインディングに熟達した登山者の足跡の可能性もある。
「誰かが歩いていたから自分も歩ける」と安易に足を踏み入れないように注意しよう。