赤テープに沿って進んでいったらコースアウトに……実録から学ぶ!遭難しないために登山者が注意&装備することって?

2022/10/27 更新

樹林帯で見かける木に巻かれた赤テープ、正しい登山ルートを示すものだと思い込んでいませんか。実はこれは大きな間違い!テープに沿って進んでしまい、思わぬ場所に迷い込んでしまうことも。今回は2021年7月に開催されたトレイルレースで実際に発生した事案を元に、その原因と登山者が注意&装備すべきものを紹介していきます。

鷲尾 太輔

制作者

山岳ライター・登山ガイド

鷲尾 太輔

登山の総合プロダクション・Allein Adler代表。登山ガイド・登山教室講師・山岳ライターなど山の「何でも屋」です。登山歴は30年以上、ガイド歴は10年以上。得意分野は読図(等高線フェチ)、チカラを入れているのは安全啓蒙(事故防止・ファーストエイド)。山と人をつなぐ架け橋をめざして活動しています。 公益社団法人日本山岳ガイド協会認定登山ガイドステージⅠ 総合旅行業務取扱管理者

鷲尾 太輔のプロフィール

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アイキャッチ画像撮影:washio daisuke

赤テープは正規ルートにあらず!樹林帯での「思わぬ落とし穴」

テープに沿って進んだら、とんでもないことに…という経験はありませんか 撮影:washio daisuke(テープに沿って進んだら、とんでもないことに…という経験はありませんか)
樹林帯の登山道を歩いていて、よく見かけるのが赤やピンクのビニールテープ。登山道の目印として目で追いかけているという人も多いのではないでしょうか。

けれども、これらは登山道の目印とは限らないのです。林業・狩猟・測量・送電線管理・林道整備など、さまざまな「登山以外」の目的で巻かれていることもあります。そのため、これを目印に進んでしまうと登山道から外れ、道に迷ってしまうことも。

赤テープを辿って道迷いに。多くの参加者が集う大会で発生した、コースロスト

ピンクで囲った部分でコースロストが発生
提供:The 4100D マウンテントレイル in 野沢温泉 コースMAP(ピンクで囲った部分でコースロストが発生)
『The 4100D マウンテントレイル in 野沢温泉』は、長野県野沢温泉村と飯山市にまたがる山間部を、3つのセクションに分けて走るトレイルレースです。

2021年7月16日に開催された大会では多くの人が参加していましたが、そんな中で赤テープを辿っていってしまったことによるコースロスト事象が発生。

道から外れてしまったKさんは、今回は幸運にも

・スマートフォンの通信圏内だった
・大会がココヘリの携帯を義務付けていた


上記2点によって早期に発見され、無事救助されました。

ただ電波が入らないエリアだったり、ココヘリがなかったりと状況が少しでも違えば、もしものことが起きていたかもしれません。

今回はなぜ道を間違えてしまったのか、当時の状況をKさんと捜索者の手記から検証。登山者が気をつけるべき点や備えておくべきことを事例とともに紹介していきます。

何故コースロストしたのか?Kさんの証言

最近ではGPSアプリと連動するスマートウォッチも登場
撮影:washio daisuke(最近ではGPSアプリと連動するスマートウォッチも登場)
今回のコースロストから、以下の点がとても大切であるということがわかりました。

〈1〉分岐、地形が変わる場所では必ず方向確認をすること
〈2〉電子機器の充電を行い、バッテリー切れを起こさないようにすること


登山者であれば、上記は意識している点かもしれませんが、実際の事例とともに「なぜ必要なのか」をそれぞれ深堀していきましょう。

〈1〉分岐、地形が変わる場所では必ず方向確認をすること

正規ルートと真逆に進んでしまったKさん
地図の出典:YAMAP(正規ルートと真逆に進んでしまったKさん)
Kさんが分岐を間違えてしまった時、ランナーがバラけて単独走になった状態だったとのこと。水色で示した給水ポイントである小菅神社で飲料水を補給して、赤丸で示した稜線上のコル(鞍部)で休憩した後に、方向や周囲の状況確認を怠ったってしまったことからルートを間違えてしまいました。

青色で示した北西方向の正規ルートとは真逆のピンク色で示した南東方向の尾根へ。Kさんは木に巻かれた赤いテープを頼りに進んでしまったのです。これは登山道の目印ではなく、国有林の境界線のため、森林管理署が境界を示す為に付けたものでした。

 

*Kさんの手記*

赤いマークが付いている木を目印に前に進んで行きましたがやがて木が折れて、薮が多くなってくるなどどんどん厳しいコースになり不安になりました。

初めてトレイルランニングの大会に参加したこともあって、こんなものなのかな?と思い1km程進みましたが やはり何か違う気がして、周りにランナーさん居ますか?と叫びましたが応答もなく、ジオグラフィカ(GPSアプリ)を立ち上げるとやっぱりルートから外れていると感じました。

 

地形や景観があまり変わらない稜線(尾根)では、休憩で座り込んだ際に「これから進む道」の方向を誤ってしまう遭難事例が、これまでも複数発生しています。

展望のある場所であれば山の形や位置、樹林帯であれば木が作り出す影の方向など、休憩後は広い視野で周囲を確認、さらに地図やコンパスで方向を確認してから行動を開始するようにしましょう。

〈2〉電子機器の充電を行い、バッテリー切れを起こさないようにすること

もしもスマホが使えない状況だったら…
出典:PIXTA(もしもスマートフォンが使えない状況だったら…)
コースロストが発覚したのは、同じ大会に出場していた友人にKさんから「コースロスト(ルート外れ)したかも知れない」と連絡があったため。

友人や救助の方と連絡をとることができた、スマートフォンの存在がKさんにとって心の支えだったそうです。

 

*Kさんの手記*

一緒に大会に参加しているラン友のグループLINE にジオグラフィカに出ている現在地と木にくくり付けてある赤いリボンと赤い矢印の写真を撮り、合っているか確認してもらいましたがどうやらコースロストしているようでした。

仲間のアドバイスとして一人で動くなと言われて、水分量の確認と上着を着てその場で待機することにしました。

走行中は機内モードにしていた為、充電も充分で待機中は友達と連絡も取れたので、不安は無かったですが、これが圏外地域だったり、携帯の充電が無かったり、夜間だと私はどうなっていたのか?我に帰ると不安になりました。

 

電波の不安定な山岳地域では、通話モードのままだとスマートフォンが電波を探そうと普段以上にバッテリーを消費してしまいます。いざという時のために、行動中はKさんのように機内モードにしておき、バッテリーの消耗をおさえることが大切ですね。

またそもそも圏外エリアで道迷いしてしまった場合、連絡をとれません。遭難前に家族や知人にあなたが送った写真・メール・通話の内容などが、警察による捜索活動の手がかりになる場合もあります。登山前には自身のキャリアがルートのどの箇所で通話可能なのかをチェックしておくのもいいでしょう。

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コースロストから30分!早期発見に成功した捜索者の証言



ココヘリ探索ドローンチーム
提供:The 4100D マウンテントレイル in 野沢温泉(ココヘリ探索ドローンチーム)
今回のケースでは、コースロストから約30分でKさんの発見に成功しました。そこで浮き彫りになったのは、

〈1〉ココヘリ
〈2〉ホイッスル


という2つのアイテムの重要性です。

〈1〉持っていて良かった!大会参加者に携帯が義務付けられたココヘリ

スイーパーの動き
地図の出典:YAMAP(捜索者の動き)
今回の大会では全ランナーにココヘリ端末携帯が義務化されており、ココヘリ探索ドローンチームも設置されていました。Kさんがコースロストしたという一報が入ってすかさず、ココヘリ受信機を搭載したドローンでの探索が開始。

瞬時にKさんが携帯していたココヘリ端末の電波をとらえ、Kさんから送られてきたジオグラフィカの位置情報と一致していることが確認できたのです。

結果として第1報から約30分で、無事Kさんと合流。これはまさにココヘリがあったからこそと、実際に捜索したスイーパー(制限時間に合わせて最後尾を走るスタッフ)の方は実感したそうです。

 

*スイーパーBさんの手記

携帯に本⼈の居場所の⼊った地図とココヘリの ID が送られてきた。 私は持っていたココヘリ受信機ですぐにIDを⼊⼒し探すが、受信機は「近くにいません」と表⽰される。

少しして受信機が反応︕「発⾒しました」と表⽰が出た。

指す⽅向の場所は登⼭道を進んだその先が不明瞭になりついに藪になる。その場所で受信機は10時⽅向を指し、探索対象までの推定距離が随分と縮まった時、藪の中から⼥性の声が聞こえた。

 

Kさんのいる場所は笹の急斜面を下りたところでした。ジオグラフィカのGPSにより本人から居場所の地図は送られていたとはいえ、目印のない藪の中で人を発見するのは容易ではありません。

道に迷った人を「早く見つける対策」として、ココヘリの携帯はとても心強いアイテムということがわかりますね。

〈2〉声よりも届いたホイッスルの音

早期発見に役立ったもうひとつのアイテムがホイッスル
出典:PIXTA(早期発見に役立ったもうひとつのアイテムがホイッスル)
Kさんが待機していた場所は稜線から離れた斜面の藪の中。視界の悪い場所でKさんが応答したのは、スイーパーBさんの「声」ではなく「ホイッスルの音」でした。

 

*スイーパーBさんの手記

私達はホイッスルを持っていたので(必携装備品にはホイッスルなし)、やはり声よりも通るホイッスルはよく聞こえたようです。

 

最近はザックのチェストベルトにホイッスルが付いているタイプもあります。ココヘリとは対照的なアナログなアイテムですが、この2つを合わせて使うことで、今回は早期発見が実現したのです。

もしもの時に備えた対策を普段の登山にも取り入れよう

普段の登山でもココヘリ端末の携帯を
撮影:YAMA HACK編集部(普段の登山でもココヘリ端末の携帯を)
『The 4100D マウンテントレイル in 野沢温泉』では、今後の対策として、引続きのココヘリ携帯義務とドローン探索チームの設置・コースを示すマーキングの明確化と徹底に加え、ホイッスルの携帯必須も検討しているとのことです。

今回はトレイルレースでの事例をご紹介しましたが、山の中という点では登山と同じ。

遭難リスクが低いと思われがちな、歩行時間や標高差が少ない低山。実はこうした山ほど、登山とは違う目的の赤やピンクのテープが設置されていることが多いものです。

普段の登山でも、事前に道に迷いやすいポイントを把握したり、分岐や地形の変わる場所では、地図やコンパス方向を確認したりと道迷いを起こさないように対策を。
それでも万が一迷ってしまった場合に、ココヘリやホイッスルを装備するなど「早く見つけてもらうための対策」を備えていきたいですね。

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