8.食事の片づけをする

楽しい食事が終わったら、速やかに片づけをしましょう。調理で出たゴミは水分を含むものが多いので、ファスナー付きのビニール袋などに入れ、他の荷物を濡らさないようにする注意が必要です。夜の間に少し乾燥させておくのもいいいでしょう。
山の食事は、食べきれる量を作り、作ったものは食べきることが大切。ラーメンや鍋の残りを山に捨てるなどもってのほか。麺類のゆで汁を捨てるのも絶対にNG。スープやみそ汁にして飲み干しましょう。
また、近年熊などの野生動物による被害も増加していますので、食品の管理には神経を使う必要があります。食べ物やゴミを出しっぱなしにしないのはもちろん、匂いの出にくいファスナー付きの保存袋やコンテナ―タイプの容器に入れるなどして、動物に食べ物があることを気づかせないようにすることが重要です。
朝は時間が限られているので、朝食の準備もできるだけ前日の夜のうちにしておきましょう。鍋の残りを雑炊にするなど夕飯のメニューを再利用すると、時間も節約でき、ゴミ処理も楽になります。
9.就寝の準備をする

食事が済んだらあとは寝るだけ。その前にトイレや洗面をすませておきましょう。
山の歯磨きや洗面では、石鹸や歯磨き粉は使えません。日焼け止めやメイクを落とすには、ウェットシートなどを使い、磨いた後にゆすぐ必要のない歯磨き粉を使うなどして、「足跡以外何も残さない」という山の鉄則を守りましょう!
テントの外に、食べものや濡れてはいけないものが残っていないかを確認するのも忘れずに。夜間の行動時に、他のテントの張り綱に足をひっかけたり、自分のテントを見失ったりしないようにしましょう。
寝る前に必ず忘れずにやっておきたいことで、特に大切な2点をご紹介します。

ひとつめは、フライシートのテンションを張りなおすこと。フライシートがたるんでインナーテントに触れることで発生する結露を軽減することができます。しっかり張ったつもりでも、風や湿気で結構たるんでいるもの。、このひと手間で、安眠の度合いが大きく違います。
もうひとつが、テントの入り口のファスナーを、真上にしておくこと。常に同じ場所にあるので迷うことがないだけでなく、開閉時にムダなテンションがかかりにくいので、強引に引き下ろしたりしてファスナーが故障するのを未然に防ぐ事ができます。
また、野生動物に襲われたり、テントが倒れたりといったアクシデントがあったときに、すぐに対応するためにも、すばやく開閉できることはとても重要。テント内の移動もスムーズにでて、飲み物をこぼしてやけどすることなども防げます。
10.就寝

テント泊は小屋泊よりも荷物が多く行動時間が長くなりがちなのと、テントの設営・撤収に時間がかかる分だけ、就寝時間が短くなりがちです。できるだけ効率よく作業をして、しっかりと眠る時間を作ることがとても重要。準備に慣れないうちは、それを見越した計画をする必要があります。
慣れるまでは、雨や風、雷などの悪天候や、動物の鳴き声や近くを動く気配などで、眠れないことがあるかもしれません。けれどもそれも、テント泊の醍醐味。あまりにひどい天候に見舞われた際は、山小屋に避難の相談をすることも検討しましょう。
1日着ていたものを着たままだと、汗などで冷えて眠れないことがあるので、乾いた上下とソックスに着替え、行動着を乾かして寝るのも安眠のコツ。
寒くて寝られないときは、防寒着やレインウェアなど持っている衣類をすべて着て、荷物をすべて出したバックパックにシュラフごと足を突っ込みましょう。
11.撤収

予定の時間に目覚めたら、身支度と朝食を済ませ、テントを畳んで出かけましょう。来るときは余裕でパッキングできたのに、なぜか荷物が収まらないというのはよくある話。テントは張るだけでなく、すばやくコンパクトに畳む練習も必要です。靴やクランポンでテントを踏んで穴を開けないよう、充分注意が必要です。
荷造りができたら、テントの張ってあった場所を元の状態に戻しましょう。ゴミや忘れ物がないか、確認したら出発です。
テントを畳む前に、地面に逆さに置いて底を乾かすのは、生地を傷めるのでやめましょう。テントは濡れたまま持ち帰り、家でしっかりメンテナンスするのが正解。濡れの激しいフライは本体と別に収納するといいでしょう。
またテントを逆さにして中のゴミを出している人がいますが、ポールに負担がかかって破損の原因になるので厳禁。伸ばしたままのポールを地面に置くと、誤って踏んで破損しかねないのですぐに折りたたみましょう。
その他の注意点や覚えておきたいTIPSは?

一酸化炭素中毒に注意!
悪天候時にベンチレーションを完全に閉じているときなど、酸欠で体調を崩すことがあります。体調の変化に気を配り、換気不足には充分注意しましょう。
意外と多い熱中症
昼間のうちにテントを張ってうっかり中で寝てしまい、テント内の温度が上がって熱中症になるケースがあります。テント場に着いたら必ず水分補給をする習慣を付けましょう。
張ったままのテントには防犯対策を

テント場を基点にいくつかのピークをピストンするようなとき、テントを張ったまま荷物をおいて留守にすることがありますが、残念ながら盗難などの被害が報告されています。
ファスナーに目立つ鍵を付ける、見えるように名前を書くなど、簡単に持って行かれないような工夫をしておく必要があるかもしれません。
テント泊で大自然を身近に感じよう!

テント場での行動を、到着から出発まで時間を追って解説してきましたが、実際の場面を想像できたでしょうか?
どれだけ学習しても最初は思い通りに行かないこともありますが、イメージトレーニングをすることで、必要なことや疑問点を明確にすることができます。
最初は時間に余裕を持って、季節や天候の条件の良い時を選んで、少しずつテント泊の経験を積んでいきましょう。小屋泊とは比べ物にならないくらいの山との一体感を得られるはずです。
教えてくれた人|登山ガイド・平川陽一郎さん

