テント泊登山はじめの一歩|心得編

「テント泊をしてみたいけれど、自分にもできるだろうか?」「何から準備してどうやって始めればいいのだろう?」 そんな登山者のお悩みに、ベテランガイドがアドバイス。安全で楽しいテント泊をいつまでも続けられるよう、最初に知っておくべき心構えについて考えていきましょう。
山小屋泊と何が違う? 魅力と課題を理解しよう
■山にどっぷりと浸る感覚を味わえる
多くの魅力がある反面、当然リスクや代償も付きまといます。小さなミスや準備不足が、結果として安全面にまで影響を及ぼすことを、しっかりと理解しておかなくてはなりません。
山小屋泊と比較して、テント泊で注意しなくてはならないのは…
■天候の影響をダイレクトに受ける
■荷物が重くなり歩くペースが遅くなる
■とにかくやることが多い
■必要な知識や技術が増える
■道具にお金がかかる
などの要素。これらの解決なしに、安全で快適なテント泊登山は成り立たないのです。
「私、テント泊に行けますか?」 テント泊デビューの条件とは
いつかはテント泊、今シーズンこそはテント泊などと考えていても、初めの一歩を踏み出すのには勇気がいります。逆に、何の不安も感じずに始められると思うのもよくありません。充分は準備なしで始めて、山中でトラブルに見舞われたら、取り返しのつかないことにもなりかねません。
では、何を目安に山小屋泊からテント泊にステップアップしたらいいのでしょうか? いくつかの目安となるポイントをチェックしましょう。
基本的な登山技術が身についている
歩き方、給水、パッキングのノウハウや、先を見て判断し行動することなど、登山全般に必要な知識や技術が、充分身についていることが大前提。軽い荷物でスムーズにできないことが、荷物が重くなり疲れた状態でできるはずがありません。
常にコースタイムで歩ける
目安のひとつとなるのが、コースタイム。日帰りや山小屋泊の登山で行程時間通りに歩けないことがある人は、残念ながらテント泊デビューの条件を満たしているとはいえません。荷物が増えるテント泊では歩行スピードが低下するため、通常のコースタイムの2割増しの行動時間で行程を組む必要があります。
軽い荷物でさえペースが守れなければ、テント場にたどり着けない危険も。まずは日帰りや山小屋泊で、どんな条件でもコースタイムを下回らずに歩ける体力をつけることが先決です。
必要な荷物を背負える筋力がある
テント泊登山には、筋力も必須です。特に重要なのが上半身の筋肉。下半身の筋力ばかりに注目しがちですが、荷物を背負うのに使うのは、背筋や腹筋、腕や肩回りの筋肉です。
テント泊の荷物は、1泊2日でもおおよそ20㎏前後。地面に置いたその重さを背負ってみれば、いかに上半身の筋力が必要かを実感できるでしょう。歩いている間も、荷重を支えるために上半身の筋力への負荷がかかり続けます。
トレイルランナーなどのスピードに自信のある人ほど、テント泊でいきなり動けなくなることがあります。日ごろ軽い荷物で登っていると、心肺機能は上がっても筋力が不足して、荷重の負荷に対応できません。ペース配分も空身のときとは違います。
テント泊登山ならではの力が必要だということを意識することを忘れずに。普段軽い荷物で歩いている人は、あえて日帰りで荷物を増やして歩く練習をおすすめします。
このように、テント泊には魅力と同時にリスクを充分理解して、準備を怠らないことが重要です。
荷物を背負いきる体力、テント場に着くまで持ちこたえる精神力、到着後の手早く正確な段取りと設営技術など、総合的に自分に備わっているか、また不足する部分を補う努力ができるのか、自分の能力を客観的に判断する力も必要なのかもしれません。
テント泊デビューは『ステップ バイ ステップ』がマスト!
テント泊デビューには、充分な心構えと準備が必要なのがわかったところで、具体的にはどのようなことから始めればいいのかを考えていきましょう。