テント泊登山はじめの一歩【実践編】~テント場での過ごし方&注意点~

2020/10/23 更新

初めてのテント泊は、分からないことだらけ。「テント場についたらまず何をすればいい?」「気をつけなければいけないマナーやルールは?」そんな疑問や不安を解消すべく、多くのテント泊講習会などで講師を務める登山ガイドの平川陽一郎さんに、テント場に到着してから取るべき行動と注意点を教えてもらいました。


テント泊登山はじめの一歩|実践編

大型ザックを背負って歩く登山者
撮影:YAMA HACK編集部
しっかりと準備してパッキングした荷物を背負って、登山道を歩いてきたあなたは、テント場に到着。

さあ、まずは何から始めればいいのでしょうか?

テント場での行動を時系列でチェック!

テント場に着いたらやることリスト
撮影・作成:YAMA HACK編集部(画像クリックで拡大)
テント場に着いてから次の日に出発するまでの行動を、時間を追って見ていきましょう。テント泊のイメージを膨らませながら、注意点も確認してみてくださいね。

1.テント場に到着

テント場到着
撮影:YAMA HACK編集部
1日歩いてようやくたどり着いたテント場。小屋泊ならここからは完全に休憩時間で、夕食ができるのをのんびり待つだけですが、テント泊ではそうはいきません。これからまだまだやることはいっぱい。明るいうちに必要なことを済ませるように、時間を意識して行動しましょう。

2.受付


撮影:YAMA HACK編集部
テント場が混雑しているときなど、まずはテントを張って場所を確保したくなりますが、それはルール違反。とりあえず荷物を降ろしたら、何よりも先にお財布を持って管理小屋へ行き、受付を行ないます。

その際に、トイレや水場の場所や利用ルールなど、必要な情報を確認しておきましょう。
平川ガイド
▼ワンポイントアドバイス
新型コロナウイルス感染症対策のため、除菌グッズで手指を消毒し、マスクを忘れずに着用しましょう。

今は多くのテント場で事前予約が必要ですが、可能なら予約表をプリントアウトして必要事項を記入し、提出するだけの状態にして持って行くのがおすすめ。受付の時間を短縮でき、人との接触を減らすことができます。



3.テントを張る場所を決める

テント場の様子
撮影:YAMA HACK編集部
テントを張る場所によって、快適度は大きく違います。場所選びのポイントを事前にしっかりと頭に入れて、その条件にできるだけ近い場所を選びましょう。

あらかじめ区画が決められているところもありますが、到着が遅くなると、条件のよいところが埋まっているどころか、場合によっては張る場所がないなどということにもなりかねません。快適に過ごしたいなら、できるだけ早く到着することが重要です。

4.テントを張る


撮影:YAMA HACK編集部(テント場によっては受付時に幕営許可証をもらうので、その場合はテントにかける)
テントの張り方は、この時点ですでに習得しているはず。しかし、場所が変われば事情も変わります。練習よりもスムーズに張れるなどということはまずないと考えて、余裕を持った行動をすることが必要です。

忘れ物などがないのは大前提ですが、ペグが打てない、平坦な場所が見つからないなどの場合にも、どのように対処するかをあらかじめ学習しておきましょう。
平川ガイド
▼ワンポイントアドバイス
テントの設営の妨げになるからと、木の枝を折ったり、水はけをよくするために地面に溝を掘ったりするのは絶対にNG。

テント場やっていいのは、地面の石を動かすことだけ。自然や地形に手を加えることは、一切行なってはいけません



5.水を汲む

水場で水をくむ
撮影:YAMA HACK編集部
ここで水の確保をしておきましょう。明日の朝までに使う量を最低限確保しておけば、暗くなってから水場を往復する必要もありません。

行動中に使う水筒やハイドレーションをいっぱいにし、それ以外にも調理などで使う水を汲むためには、空のウォーターバッグがあると便利。サブバッグがあれば、遠い水場での水汲みも楽にできます。
平川ガイド
▼ワンポイントアドバイス
水汲みのタイミングで、必ずやってほしいのが水を飲むこと。テント場に着いて歩くのをやめたとたん、水分補給に意識が及ばず、実際は水分が不足しているのに、気づかないまま就寝して、体調不良を起こすことがあります。

「まずはビール!」といきたいところですが、その前にしっかりと水分補給することを忘れずに。

6.テントの中を整える

テントの中を整える
撮影:YAMA HACK編集部
突然雨が降り出しても慌てないように、早い段階でシュラフを出して寝床を整え、テント内を使いやすい状態に整理しておきましょう。

自分が使いやすいことが第一ですが、“整理整頓”が快適なテント生活の基本。押さえておきたいポイントをいくつがあげておきます。

 
■寝る前にヘッドライトや眼鏡などを置く場所を決めて、すぐに取り出せるようにしておく

■テントマット(テント内全体に敷くもの)がない場合は、シュラフマットからはみ出したシュラフが床面に触れて結露で濡れないように、マットの周りに荷物を置くとよいでしょう。

■シュラフがテントに触れると結露で濡れてしまうので、足元に荷物を置くなどして、寝ている間にテントに触れない工夫をしましょう。

また、テント内で動くときは、コッヘルやガスなどの硬いものを落としたり、硬いものの上から圧力をかけたりしないように注意。床面の生地を傷めることになります。

平川ガイド
▼ワンポイントアドバイス
登山靴は前室に置かず、テント内へ
撮影:YAMA HACK編集部
脱いだ靴を夜も前室に置いたままにする人がいますが、就寝中は前室に置かず、軽く土を落としたらスタッフバッグなどに入れて、テントの中に入れましょう。

前室に置いておくと雨に濡れるばかりでなく、靴の水分が夜の間に冷えて、次の朝に不快な思いをすることがあります。



7.食事の準備をする

食事の準備
撮影:YAMA HACK編集部
今夜の住環境が整ったら、次は食事の準備。季節や山行スケジュールにもよりますが、次の日の行動時間を考えると、6時ごろには就寝するために、遅くとも夕方の5時くらいには、食事の準備を始めたいところです。

基本的にテント内で火器は使えませんので、炊飯も外で行ないます。そのため、明るいうちに済ませることが重要なのです。

火の取り扱いには充分注意しましょう。テントは火に弱く、燃えて溶けたものが体に触れると非常に大きなやけどの原因になります。悪天候時には、小屋の自炊場を使うことができます。

平川ガイド
▼ワンポイントアドバイス

インスタント食品のパッケージを外して携行
撮影:YAMA HACK編集部(必要な湯量を書いておくと便利)
ゴミはすべて、どんな小さなものも残さず持ち帰ります。そのためにも、インスタント食品のパッケージや小分け袋をあらかじめ外しておくなど、できるだけゴミになるものを減らすことも大切です。





8.食事の片づけをする

食事の片づけをする
撮影:YAMA HACK編集部
楽しい食事が終わったら、速やかに片づけをしましょう。調理で出たゴミは水分を含むものが多いので、ファスナー付きのビニール袋などに入れ、他の荷物を濡らさないようにする注意が必要です。夜の間に少し乾燥させておくのもいいいでしょう。

山の食事は、食べきれる量を作り、作ったものは食べきることが大切。ラーメンや鍋の残りを山に捨てるなどもってのほか。麺類のゆで汁を捨てるのも絶対にNG。スープやみそ汁にして飲み干しましょう。

また、近年熊などの野生動物による被害も増加していますので、食品の管理には神経を使う必要があります。食べ物やゴミを出しっぱなしにしないのはもちろん、匂いの出にくいファスナー付きの保存袋やコンテナ―タイプの容器に入れるなどして、動物に食べ物があることを気づかせないようにすることが重要です。

平川ガイド
▼ワンポイントアドバイス
朝は時間が限られているので、朝食の準備もできるだけ前日の夜のうちにしておきましょう。鍋の残りを雑炊にするなど夕飯のメニューを再利用すると、時間も節約でき、ゴミ処理も楽になります。



9.就寝の準備をする

洗面・歯磨きの様子
撮影:YAMA HACK編集部
食事が済んだらあとは寝るだけ。その前にトイレや洗面をすませておきましょう。

山の歯磨きや洗面では、石鹸や歯磨き粉は使えません。日焼け止めやメイクを落とすには、ウェットシートなどを使い、磨いた後にゆすぐ必要のない歯磨き粉を使うなどして、「足跡以外何も残さない」という山の鉄則を守りましょう!

テントの外に、食べものや濡れてはいけないものが残っていないかを確認するのも忘れずに。夜間の行動時に、他のテントの張り綱に足をひっかけたり、自分のテントを見失ったりしないようにしましょう。

平川ガイド
▼ワンポイントアドバイス
寝る前に必ず忘れずにやっておきたいことで、特に大切な2点をご紹介します。

フライシートのテンションを張りなおすこと。
撮影:YAMA HACK編集部
ひとつめは、フライシートのテンションを張りなおすこと。フライシートがたるんでインナーテントに触れることで発生する結露を軽減することができます。しっかり張ったつもりでも、風や湿気で結構たるんでいるもの。、このひと手間で、安眠の度合いが大きく違います。

もうひとつが、テントの入り口のファスナーを、真上にしておくこと。常に同じ場所にあるので迷うことがないだけでなく、開閉時にムダなテンションがかかりにくいので、強引に引き下ろしたりしてファスナーが故障するのを未然に防ぐ事ができます。

また、野生動物に襲われたり、テントが倒れたりといったアクシデントがあったときに、すぐに対応するためにも、すばやく開閉できることはとても重要。テント内の移動もスムーズにでて、飲み物をこぼしてやけどすることなども防げます。



10.就寝

就寝
撮影:YAMA HACK編集部
テント泊は小屋泊よりも荷物が多く行動時間が長くなりがちなのと、テントの設営・撤収に時間がかかる分だけ、就寝時間が短くなりがちです。できるだけ効率よく作業をして、しっかりと眠る時間を作ることがとても重要。準備に慣れないうちは、それを見越した計画をする必要があります。

慣れるまでは、雨や風、雷などの悪天候や、動物の鳴き声や近くを動く気配などで、眠れないことがあるかもしれません。けれどもそれも、テント泊の醍醐味。あまりにひどい天候に見舞われた際は、山小屋に避難の相談をすることも検討しましょう。

平川ガイド
▼ワンポイントアドバイス
1日着ていたものを着たままだと、汗などで冷えて眠れないことがあるので、乾いた上下とソックスに着替え、行動着を乾かして寝るのも安眠のコツ。

寒くて寝られないときは、防寒着やレインウェアなど持っている衣類をすべて着て、荷物をすべて出したバックパックにシュラフごと足を突っ込みましょう。



11.撤収

撤収
撮影:YAMA HACK編集部
予定の時間に目覚めたら、身支度と朝食を済ませ、テントを畳んで出かけましょう。来るときは余裕でパッキングできたのに、なぜか荷物が収まらないというのはよくある話。テントは張るだけでなく、すばやくコンパクトに畳む練習も必要です。靴やクランポンでテントを踏んで穴を開けないよう、充分注意が必要です。

荷造りができたら、テントの張ってあった場所を元の状態に戻しましょう。ゴミや忘れ物がないか、確認したら出発です。
平川ガイド
▼ワンポイントアドバイス
テントを畳む前に、地面に逆さに置いて底を乾かすのは、生地を傷めるのでやめましょう。テントは濡れたまま持ち帰り、家でしっかりメンテナンスするのが正解。濡れの激しいフライは本体と別に収納するといいでしょう。

またテントを逆さにして中のゴミを出している人がいますが、ポールに負担がかかって破損の原因になるので厳禁。伸ばしたままのポールを地面に置くと、誤って踏んで破損しかねないのですぐに折りたたみましょう。

その他の注意点や覚えておきたいTIPSは?

テント内で具合が悪そうな人
撮影:YAMA HACK編集部

一酸化炭素中毒に注意!

悪天候時にベンチレーションを完全に閉じているときなど、酸欠で体調を崩すことがあります。体調の変化に気を配り、換気不足には充分注意しましょう。

意外と多い熱中症

昼間のうちにテントを張ってうっかり中で寝てしまい、テント内の温度が上がって熱中症になるケースがあります。テント場に着いたら必ず水分補給をする習慣を付けましょう。


張ったままのテントには防犯対策を

ダイヤル式チェーンロック
撮影:YAMA HACK編集部
テント場を基点にいくつかのピークをピストンするようなとき、テントを張ったまま荷物をおいて留守にすることがありますが、残念ながら盗難などの被害が報告されています。

ファスナーに目立つ鍵を付ける、見えるように名前を書くなど、簡単に持って行かれないような工夫をしておく必要があるかもしれません。


テント泊で大自然を身近に感じよう!

テント泊を楽しむ登山者
撮影:YAMA HACK編集部
テント場での行動を、到着から出発まで時間を追って解説してきましたが、実際の場面を想像できたでしょうか?

どれだけ学習しても最初は思い通りに行かないこともありますが、イメージトレーニングをすることで、必要なことや疑問点を明確にすることができます。

最初は時間に余裕を持って、季節や天候の条件の良い時を選んで、少しずつテント泊の経験を積んでいきましょう。小屋泊とは比べ物にならないくらいの山との一体感を得られるはずです。

教えてくれた人|登山ガイド・平川陽一郎さん

平川ガイド
(公)日本山岳ガイド協会 正団体マウンテンガイド協会 会長
(公)日本山岳ガイド協会 認定登山ガイドⅡ
(公)日本山岳ガイド協会 危急時対応技術指導員
(株)finetrack  直営店ゼネラルマネージャー
(公)日本山岳会 埼玉支部国内山行委員
登山クラブ やま塾 代表
日本ノルディックウォーキング協会認定インストラクター
 
高校・大学の山学部、社会人山岳会で登山を学び、国内では剱岳や穂高岳を始めアルプスの山々や谷川岳などで夏冬クライミングを中心に登山活動を行なう。海外は、チベットやカラコルム ヒマラヤの山々に登る。大学卒業後は登山業界に入り、登山用具やウエアの企画・制作開発・販売、製品コンサルタント、登山ライター、スキーインストラクター、登山講習会の講師など登山や自然に関する事なら何でも行なう。
 
好きな山域は、学生時代からずっと通っている北アルプスと谷川連峰。以前は夏冬クライミング一本だったが、最近は日本の自然の良さを再確認し、積雪期登山、アイスクライミングも楽しむが、沢登りやテント泊縦走、バックカントリースキーやテレマークスキーとマルチに山と自然を愉しむ。
 
現在は、ガイドの他にfinetrack直営店ゼネラルマネージャーとして、TOKYO BASEと全国各地で年間100回を超える安全登山啓蒙関係の講習会を行っている。




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小川 郁代
小川 郁代

犬と音楽とお酒大好きのインドア派が、クライミングと出会ってアウトドアの世界へ。登山、ハイキング、最近は沢登りとBCクロカンに夢中。山に行くだけじゃわからない「山のコト」を伝えたい。

登山専用コミュニティサイト「ヤマレコ」

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