テント泊登山はじめの一歩|装備編
いざテント泊に挑戦しようと思ったとき、頭を悩ませるのが道具の準備。「いったい何を揃えたらいいの?」というテント泊ビギナーの疑問を解消すべく、多くのテント泊講習会などで講師を務める登山ガイドの平川陽一郎さんに、テント泊道具の基本を教えていだだきました。
日帰りと何が違う? テント泊装備に必要なアイテムをチェック!
簡単にいえば、テント泊は家を自分で背負って歩くようなもの。衣・食・住をまかなうための、さまざまな道具が必要です。
行動中に必要なものは、いつもの日帰り登山と同じですが、空の下で長い夜を過ごすために必要なものを、『必ず準備するもの』と『あると便利なもの』に分けてチェックしていきましょう。
必ず準備するもの
テント【住】
建物のない場所に、安心して過ごせるスペースを作るのがテント。これなしでテント泊は始まりません。登山で使うなら、軽さと耐候性を備えた、山岳用テントのなかから選びましょう。
テントには大きく分けて、「自立式」と「非自立式」があり、また「シングルウォール」と「ダブルウォール」の2タイプがありますが、ビギナーが最初に手に入れるなら、ズバリ、「ダブルウォールの自立式」を選ぶのが正解! 設営が簡単で居住性が高く、初心者でも扱いやすいことが理由です。
シュラフ【住】
シュラフ選びで最も重要なのは、安眠できる充分な温かさがあること。季節や標高、天候など、使用する環境に合わせて選びます。登山用モデルのほとんどは、軽量コンパクトで保温性に優れるマミー型です。
モデルによって快適温度が異なりますが、迷ったら保温力の高いほうを選びましょう。寒くて寝られないと、次の日の行動にも影響し、事故を起こすきかっけにもなりかねません。暑ければ中に入らず、布団のようにかけて使えばいいのです。
シュラフマット【住】
寝心地と保温性を高めるため、シュラフの下に敷くマット。ベッドや敷布団の役割を果たし、寝心地を大きく左右します。大きく分けて3つのタイプ(クローズドセル/インフレータブル/エアー)があります。
軽さと収納性、保温性や寝心地の好みも大切。ショップなどで実際に寝心地を試してみることをおすすめします。寝心地と保温力を考えると、ある程度厚みのあるものがいいでしょう。
火器・燃料【食】
お湯を沸かしたり調理をしたりするために、火を起こす道具はマストアイテム。日帰りや小屋泊でお茶を飲む程度なら、保温ポットで過ごすこともできますが、テント泊ではそうはいきません。
食事はすべて山小屋で食べる場合でも、山で長時間過ごすときは、エマージェンシー的な意味合いからも、火を起こすものは必要です。

初心者にはコンパクトで扱いやすく、パワーのあるOD缶(アウトドア缶)直結型のバーナーがおすすめ。湯沸かしだけでなく調理もするのなら、加熱面積が広く、火加減の微調整がしやすいものが便利です。
クッカー・食器類【食】
コッヘルやシェラカップなど、火にかけられる調理器具類。何を作るかや量(人数)によって必要な道具が違うので、実際に調理する場面を考えて、必要なものを取りそろえましょう。スプーンや箸なども忘れずに。
さまざまなタイプがありますが、最初からあまり多くを揃える必要はありません。経験を重ねるうちに、必要なもの、ほしいものがわかってくるはずです。
食材【食】
軽量化のためには、フリーズドライやレトルトなど、湯沸かしだけで手軽に食べられる食品を選ぶと、調理器具や燃料の量も減らせて効果的。テントに泊まって食事だけを食べられる小屋もあるので、うまく利用するといいでしょう。
コーヒーやお酒などの嗜好品にこだわったり、1点豪華主義やちょい足しで味の変化を楽しんだり、おいしく食べる工夫ができると、テント泊の楽しさが格段にアップします。
防寒着【衣】
真夏でも標高の高いところでは、夜間や早朝は想像以上に冷え込みます。行動中は使わなくても、テントの設営や食事の準備の間、夜寒くて寝られないときのために、防寒着は絶対に忘れてはいけない重要アイテム。小屋泊と違い、屋外で一夜を過ごすのだということをしっかりと意識しておきましょう。
フリースは代表的な防寒着ですが、少しかさばるのがネック。軽量ダウンや化繊綿入りのものなど、保温力に優れコンパクトに収納できるものが最近の主流です。
最低限の着替え【衣】
普通の旅行と違い、一般的に山では行動着を毎日は着替えません。1~2泊程度の山行なら、同じものを着るのは当たり前。メリノウール製など防臭効果のあるものを選べば、ニオイもさほど気になりません。
ただし、大量に汗をかく季節や、雨が降る可能性が高い場合など、山行の内容によっては、直接肌に着けるアンダーウェアとソックスだけ、着替えを用意しておくと快適に過ごせます。
昼間汗をかいて湿気を帯びた衣類を着たままだと、夜になって体が冷え、寒くて寝られないということも。就寝用に着替えを用意して、乾いたシャツとボトムス、靴下に着替えれば、リラックスできて疲れも取れます。昼間着ていたものは、テント内で干しておけば朝までに乾くでしょう。