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ゴールデンウィークは“花登山”がおすすめ!

例年ゴールデンウィークの登山といえば、上高地の開山や立山黒部アルペンルートの開通にあわせて、北アルプスをはじめとする高山がSNS上でも目立ちます。けれどもこれらの山はまだまだ残雪に覆われた白銀の世界。天候が荒れると真冬に逆戻りすることもあり、雪山登山の確かなスキルが必要です。
けれども少し標高を下げれば、いち早く春の訪れを迎える山もたくさんあります。心地よい風に吹かれつつ、その山ならではの花を愛でながら歩けば、雪山に負けないフォトジェニックな光景を楽しむことができますよ。
がっつり登山するだけでなく周辺の観光スポットも楽しもう!

せっかく長期休暇を取得して遠征するのであれば、登山だけでなく“旅そのもの”も楽しみたいものですよね。そこで今回は、歩行時間が短い低山やロープウェイなどでアクセスできる山を中心にチョイスしました。
さらに、それぞれの旅先で時間的にゆとりがあれば登山以外でも楽しむことができる絶景スポットやパワースポットも紹介。ゴールデンウイークの旅が充実すること請け合いですよ。
おすすめの山①|突哨山(とっしょうざん・北海道)

コース概要
突哨山公共駐車場(5分)→突哨山登山口(4分)→谷渡り分岐(5分)→木もれび分岐(6分)→南折り返し(5分)→三角点分岐(5分)→稜線分岐(7分)→突哨山(7分)→稜線分岐(18分)→谷渡り分岐(3分)→突哨山登山口(5分)→突哨山公共駐車場

北海道・旭川市と比布(ぴっぷ)町にまたがる突哨山(とっしょうざん・239m)周辺は、例年ゴールデンウィークに全国でも指折りのカタクリの大群落が広がります。同時に見頃を迎えるエゾエンゴサクの青い花と紫のカタクリの花の共演は、この場所ならではの花風景です。
今回は南側の公共駐車場からの周回コースを紹介しましたが、西側のカタクリ広場駐車場からの縦走コースもおすすめ。厳しい冬を越えて春先に咲き、夏には枯れてしまう儚い生命という意味を持つ、スプリングエフェメラル(春の妖精)であるカタクリやエゾエンゴサクを山腹や稜線の随所で満喫できる山です。

稜線や山頂からは、真っ白な雪をまとった北海道の屋根・大雪山も一望。南麓にある男山自然公園にも大規模なカタクリの群落が広がり、こちらも見応え抜群です。コースタイムは短い山ですが、一面に咲き乱れる春の妖精に、時が経つのを忘れてしまいますよ。
あわせて楽しみたい周辺のおすすめスポット|美瑛の丘と青い池

出典:PIXTA(美瑛の丘に咲く桜)
突哨山と同じく旭川市が玄関口となるのが、北海道を代表する景勝地である富良野と美瑛です。丘陵地帯に田園風景が広がる「美瑛の丘」は、牧歌的な自然の美しさがあり、数々のポスターやテレビCMにも登場しています。

さらに十勝岳山麓の白金温泉に向かう途中にあるのが、近年SNSなどでも注目度が急上昇の白金青い池。神秘的な色合いの水面と、それが映し出す周囲の木々の見事なコントラストは、一度は訪れてみたい絶景スポットです。
おすすめの山②|金北山(きんぽくさん・新潟県)

コース概要
白雲台登山口(125分)→金北山(95分)→白雲台登山口

新潟県西部の日本海に浮かぶ佐渡島(さどがしま)は、佐渡金山や朱鷺(とき)のイメージが先行しがち。しかし島内最高峰の金北山(きんぽくさん・1172m)などの山間部は、例年ゴールデンウィークに数多くの高山植物が咲き乱れ、場所によっては足の踏み場もないほど。初めてこの季節に佐渡島を訪れた登山者が鮮烈な印象を抱く「花の島」でもあるのです。
この時期にはカタクリなどの山野草はもちろん、シラネアオイ・キクザキイチゲなどの高山植物も見頃に。本州では初夏の高山でしか見ることができない貴重な花々を、間近で鑑賞することができます。

白雲台登山口からの往復コースは、大半が防衛省管理道路という未舗装ながら車両も通行できる林道。距離やアップダウンはそれなりにあるものの、歩きやすさも魅力です。山頂からは日本海の大海原も一望できます。
あわせて楽しみたい周辺のおすすめスポット|ドンデン高原の花々

金北山の北東に位置するドンデン高原も、春の花々の群生地として魅力的なスポット。クルマでアクセス可能なドンデン高原ロッジ 自然リゾート(ドンデン山荘)からドンデン池をめぐるなだらかなトレッキングコースが整備されています。
今回はクルマやレンタカーでのアクセスを考慮して金北山の往復コースを紹介しましたが、ドンデン山荘に宿泊して金北山〜ドンデン高原〜金剛山と「大佐渡山脈」を縦走すれば、さらに多くのスプリングエフェメラルや高山植物を楽しみながらの花登山を満喫することができますよ。
おすすめの山③|御在所岳(ございしょだけ・三重県/滋賀県)

コース概要
山上公園駅(26分)→御在所岳(24分)→山上公園駅

アカヤシオは東北南部から紀伊半島のおもに太平洋側に咲くツツジの一種。新緑の芽吹きよりも早く稜線をピンク色に彩る魅力的な花ですが、西上州など関東近郊では生育地が難所をともなう岩稜にあることも多く、初心者が鑑賞するのには難しい山もあります。
そんなアカヤシオを気軽に満喫できるのが、鈴鹿山脈にあり日本二百名山にも選定されている御在所岳(ございしょだけ・1212m)です。山頂直下の標高1190mにある山上公園駅までロープウェイでアクセス可能。その車窓からもアカヤシオの美しい花を鑑賞することができます。登山には物足りなければ、片道だけでもロープウェイを使わずに歩いても良いでしょう。

御在所ロープウェイ自体も、お楽しみ要素が満点です。車窓から振り返れば伊勢湾の青い海を一望できるほか、レストランからアウトドアショップまで充実の施設が完備。山麓の湯の山温泉で、登山後の汗を流すのもおすすめです。
あわせて楽しみたい周辺のおすすめスポット|伊勢神宮&英虞湾の海岸美

せっかく三重県に来たのならば、伊勢志摩国立公園まで足を延ばしてみましょう。パワースポットに興味がある人であれば、伊勢神宮はぜひ参拝したいところです。
絶景を求めるならば、伊勢志摩スカイラインのドライブがおすすめ。SNSで話題の「天空のポスト」がある朝熊山(あさまやま・555m)などの展望所から、リアス式海岸が美しい英虞湾(あごわん)を一望できます。
おすすめの山④|大和葛城山(やまとかつらぎさん・奈良県/大阪府)

コース概要
葛城山上駅(3分)→くじらの滝コース入口(10分)→天狗谷道分岐(5分)→大和葛城山(4分)→天狗谷道分岐(6分)→くじらの滝コース入口(2分)→葛城山上駅

奈良県と大阪府の境に位置し日本三百名山にも選定されている大和葛城山(やまとかつらぎさん・959m)の山頂部は広い高原になっており、「一目百万本」とも呼ばれるヤマツツジの大群落が5月上旬〜中旬に見頃を迎えます。
奈良県側の葛城山ロープウェイに乗れば標高874mの葛城山上駅までアクセスすることができ、真紅に染まる山肌を前景にそびえる金剛山や大阪平野の眺望を手軽に満喫することが可能。早春のカタクリ・秋のススキ・冬の樹氷など、四季を通じて楽しむことができる山でもあります。

大和葛城山の山頂にはポストが設置されており、旅先の思い出を大切な人や未来の自分に送るのも素敵な記念になるでしょう。
山頂直下にある葛城高原ロッジに宿泊すれば、大阪平野のきらめく夜景やご来光を楽しむこともできますよ。
あわせて楽しみたい周辺のおすすめスポット|古道と花の寺

奈良を訪れたならばぜひ歩きたいのが、いにしえに人々も歩いた古道です。山麓の「葛城古道」や日本最古の道といわれる「山の辺の道」を歩けば、神話が伝わる神社や古墳が点在し、太古へのロマンをかきたてられることでしょう。
また歴史ある社寺も奈良の旅の醍醐味です。特にゴールデンウィークは室生寺のシャクナゲや長谷寺のボタンなど、由緒ある大寺院が春の花に彩られて、境内を色鮮やかに染め上げます。
おすすめの山⑤|石鎚山(いしづちさん・愛媛県)

技術的難易度:★★★☆☆
・ハシゴ、くさり場、雪渓、渡渉箇所のいずれかがある
・転んだ場合に転落・滑落事故につながる箇所がある
・ハシゴ、くさり場を通過できる身体能力が必要
・地図読み能力が必要
凡例:グレーディング表
コース概要
土小屋(85分)→東稜分岐(43分)→二ノ鎖元小屋(38分)→石鎚山・弥山(22分)→二ノ鎖元小屋(30分)→東稜分岐(67分)→土小屋

アケボノツツジは、四国と紀伊半島の山岳地帯にのみ生育する花。四国の屋根ともいえる日本百名山・石鎚山(いしづちさん・1982m)でも、例年ゴールデンウィークに見頃を迎え、標高1700m付近から山頂にかけての岩肌を彩ります。
登山コースは石鎚登山ロープウェイからの成就ルート(表参道)と石鎚スカイラインからの土小屋ルート(裏参道)がメインですが、今回は標高差や歩行時間が少ない後者を紹介します。

土小屋から木道が整備された稜線を進むと、二ノ鎖元小屋で成就ルートと合流します。ここからは鎖場も現れますが、すべて迂回路が整備されているので、難所に自信がなければこちらを利用することがおすすめ。最高地点の天狗岳(1982m)へも、切り立った稜線を通過します。石鎚神社山頂社が座する弥山(みせん・1972m)まででも十分アケボノツツジを楽しむことができますよ。
あわせて楽しみたい周辺のおすすめスポット|神秘の渓谷美・面河渓

石鎚山から流れ出た水を集めて流れるのが、国指定名勝で四国最大の渓谷である面河渓(おもごけい)。吉野川や四万十川と並ぶ清流・仁淀川の上流部にあたる面河川は、まさに石鎚山の恵みであり、透明度も高くフォトジェニックな流れです。
エメラルドグリーンの水をたたえた清流と奇岩が織りなす絶景を、関門遊歩道などの散策コースで満喫することができ、石鎚山とあわせてぜひ立ち寄りたいスポットです。
混雑するゴールデンウィークはゆとりを持った計画を

行き先に違いはあれども、登山者も観光客も旅行者であることに変わりはなく、魅力的な長期休暇となるゴールデンウィーク。飛行機・列車・フェリーなどの混雑はもちろん、道路渋滞やロープウェイの乗車待ちといったタイムロスの可能性もあります。
今回は「あわせて楽しみたい周辺のおすすめスポット」も紹介しましたが、これらをすべて訪れるタイトなスケジューリングを無理に推奨するつもりはありません。天候や開花状況にも左右されがちな本命の「花登山」に照準を絞って、ゆとりがあればついでに訪れてみようというスタンスで、あるいは悪天候に見舞われてしまった山の代わりに周辺のおすすめスポットだけを満喫するつもりで、ゴールデンウイークを楽しんでもらえれば幸いです。