COCOHELI 山岳遭難対策制度(ココヘリ) 550万円までの捜索救助を実施 入会金1,100円OFFで申込む

【世界遺産を歩く】近畿最高峰の聖地へ!「八経ヶ岳トレッキング」で感じる奥大和の神秘

歴史と自然が息づく奈良県南部・東部の奥大和エリア。世界遺産や雄大な山々、伝統文化に彩られた魅力的な地域です。

ただ、「奥大和を歩いてみたい」と思っても、数あるルートの中でどこを選べばいいのか悩んでしまう人も多いもの。豊かな歴史を持つ土地だからこそ、最初の一歩を見つけるのは意外と難しいのです。

今回は、そんな奥大和エリアの魅力を肌で感じるべく、メディアツアーに参加してきました。奥大和の魅力を凝縮した2つのルートを歩き、歴史と自然の豊かさを肌で感じてきました。

ツアー2日目は、山岳信仰の聖地・世界遺産「大峯奥駈道」を歩きながら、近畿最高峰、そして大峰山脈の最高峰でもある八経ヶ岳を目指すトレッキングの様子を紹介します!

目次

※記事内のクレジット表記のない写真はすべて編集部撮影

歴史と自然が息づくフィールド「奥大和エリア」

奈良県の南部・東部に広がる19の市町村からなる自然と歴史・文化の宝庫、奈良の「奥大和(おくやまと)エリア」。世界遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」をはじめ、自然と信仰、歴史が今も息づく地域です。

▼奈良県南部・東部の19市町村から構成される「奥大和エリア」

マップ提供:ジャパンエコトラック

有名どころとしては、桜の名所・吉野山、重要伝統的建造物群保存地区の宇陀松山地区、日本一面積が広い村の十津川村。
さらに修験道の修行の道 大峯奥駈道(おおみねおくがけみち)やユネスコエコパークに登録されている大台ヶ原など、いずれも“日本の原風景”を感じさせる場所ばかり。

山頂と麓の高低差390mと日本一の比高を誇る、“難攻不落”とも言われた名城「高取城跡」を目指す登山道

山々や清流、神社仏閣や古い町並みが織りなす風景は、まさに自然と文化の共存。 季節ごとに表情を変える山里を歩けば、古き良き日本の姿と人々の暮らしがそっと見えてきます。

関東からは少し遠い場所にありますが、近年は登山やサイクリング、カヌーなどを通してその魅力を体感できる、心ときめくフィールドとして注目を集めています。

世界遺産・大峯奥駈道の一部を歩く!山岳信仰の聖地「八経ヶ岳」

そんな奥大和エリアの魅力を肌で感じるべく、メディアツアーに参加してきました。見どころは数え切れないほどありますが、今回はこちらの2か所をご紹介!

マップ提供:ジャパンエコトラック
  1. 奈良県高取町:「高取城跡」を目指す山城トレッキング
  2. 奈良県天川村:日本百名山の一つ「八経ヶ岳」登山

今回紹介するのは、近畿最高峰の「八経ヶ岳(1,915m)」。世界遺産「大峯奥駈道」の一部を歩きながら、深い森と苔むす登山道を抜け、雄大な稜線を経て山頂を目指します。

↓❶の「高取城跡」を目指す山城トレッキングについてはこちら

日本百名山の一座として知られる八経ヶ岳(はっきょうがたけ)は、世界遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」を構成する「大峯奥駈道(おおみねおくがけみち)」の中心的存在。また、日本百名山に選定されている「大峯山」の主峰。

大峯山は本来、山上ヶ岳から南の弥山・八経ヶ岳を含む総称。その最高峰・八経ヶ岳は信仰の山で修験道の霊性と深い自然が共存する山です。

※大峯奥駈道とは
奈良の吉野山を起点とし、紀伊の熊野三山が終点となる全長約100kmの修験道の修行の道。「紀伊山地の霊場と参詣道」(信仰の道)として、2004年に熊野古道や数々の神社仏閣とともに、世界文化遺産に登録されました。

登山を始める前に、ルートマップをダウンロード

提供:ジャパンエコトラック

「ジャパンエコトラック」って知ってますか?
このジャパンエコトラックとは、「トレッキング・サイクリング・パドルスポーツといった人力による移動手段で、日本各地の豊かで多様な自然を体感し、地域の歴史や文化、人々との交流を楽しむ“新しい旅のスタイル“」のことで、今回旅する奥大和エリアは、令和6年度から登録

このジャパンエコトラックに登録されているエリアの場合、出発前に「ジャパンエコトラック」の公式アプリから、ルートマップのダウンロードが可能。
GPS対応の地図やチェックポイント情報を使って、安全かつ快適に歩くことができます。

ジャパンエコトラックのルートマップは、トイレの場所や観光地情報も掲載されています

今回はジャパンエコトラックの大峯奥駈道ルートマップを利用。「奥駈道出合」から大峯奥駈道の一部を歩き、大峰山脈最高峰、さらに近畿地方最高峰でもある八経ヶ岳(はっきょうがたけ)、さらに弥山(みせん)の2座にチャレンジ!

八経ヶ岳トレッキングルート

出典:ジャパンエコトラック(大峯奥駈道

コース概要

❶弥山登山口 → ❷弁天の森・理源大師像 → ❸弥山 → ❹八経ヶ岳 → ❺弁天の森・理源大師像 → ❻弥山登山口 (★の「奥駈道出合」から先が、大峯奥駈道)

※今回の歩いた登山道に合わせて数字を記載しているため、ジャパンエコトラックのマップとは数字が異なります

体力レベル: ★★★☆☆

コースタイムが6時間以上9時間未満

参考: らくルート

技術的難易度: ★★☆☆☆

・急な登下降がある
・案内標識が不十分な箇所が含まれる
・登山装備が必要
・登山経験、地図読み能力があることが望ましい

凡例:グレーディング表

修験の聖地・弥山登山口から出発!

朝7時半ごろ、天川村の弥山登山口(行者還トンネル西口)をスタート。なお、八経ヶ岳は所要時間9時間ほどの本格的な登山コースです。しっかりとした装備と計画が必須。

登山口には弥山一帯の地図のほか、登山届のポストもありました。

登山口の案内板で今日のルートをしっかり確認。澄み切った秋空のもと、修験者が歩いた古の道へと一歩を踏み出します。

八経ヶ岳は稜線に出るまでがとにかく急登。
「序盤と弥山の山頂直下の急登でペースを守ることを意識すれば大丈夫」というガイドの言葉を胸に、じっくりと登っていきます。

急斜面を進む中、幹が冷たい姫沙羅の木が随所に現れます。その幹に抱きつけば、ほてった体もクールダウン。

澄んだ空気の中、1時間ほど登り続け「奥駈道出合」へ。

出合からは、いよいよ大峯奥駈道を歩きます。

多少のアップダウンはあるものの、弥山の山頂直下までは緩やかで歩きやすい静かな森。秋の爽やかな風が吹き、コース上でも特に美しい道でした。

深い森を進むごとに、修験の空気が濃くなる

山中には靡(なびき)という行場があり、修験者はこれらの靡で祈りを捧げて先に進むんだとか。「ここは“行”の道なんだ」と、自然と背筋が伸びるような感覚になります。

ブナやシラビソの木立が美しい弁天の森を散策

木漏れ日が差し込む弁天の森は、足を踏み出すたびに森全体が静かに息づいているのを感じ、清々しい気持ちに。

一度廃れた修験道を再興したのがこの大師様だと伝わっています。

歩みを進めると、修験道中興の祖として知られる理源大師・聖宝(りげんだいし しょうぼう)像が、静かに登山道を見守っています。
周囲には木々がそびえ立ち、ここだけ時間がゆっくりと流れているかのような、厳かな空気が漂います。

修験者が歩いた信仰の道でありながら、手つかずの自然が息づく奥大和の魅力を味わえるトレイル。初対面の仲間ともいつしか打ち解け、会話が弾むのもツアー登山ならでは。

聖宝ノ宿跡から先は、再び急登のつづら折りが行手に立ちはだかります。
黙々と登り続けていくと……

まるで頑張ったご褒美のような大パノラマが目の前に広がります。大台ヶ原をはじめとした紀伊山地の雄大な稜線が一望でき、思わず「これぞ大峯!」と声にしたくなる絶景。
疲れもどこかへ消えていき、心が一気に軽くなる瞬間です。

まずは弥山山頂へ!荘厳な霊気に包まれる時間

弥山は第54番の行場とのこと。

登り始めて約4時間。ついに弥山の山頂へとたどり着きました。ここには避難小屋やトイレも整備されており、ひと息つける拠点になっています。
休憩の前にまず向かいたいのが、山頂から徒歩5分ほどの位置にある弥山神社。

山頂にある弥山神社は天川村にある天河辨財天社の奥宮。

山頂に鎮座する弥山神社は天川村にある天河辨財天社の奥宮。ここには音楽や芸能の神様である弁財天が祀られています。
平坦な山頂はひんやりとした空気が心地よく、行者たちが修行に励んだ“聖域”の雰囲気を色濃く感じる印象的な場所。

天皇も宿泊された「弥山小屋」でランチタイム

弥山神社から先ほどの弥山小屋まで戻り、ランチタイムに。
この小屋は、昭和天皇が行幸された際に宿泊された場所であり、利用しやすいよう大規模に増築された歴史を持ちます。

お昼を済ませたら、弥山小屋からすぐの庭園のように緑が美しいテント場を抜けていきます。

ここで、コースからほんの少し寄り道して絶景スポットの国見八方睨(くにみ はっぽうにらみ)へ足を伸ばしましょう。大台ヶ原のどっしりとした山容を一望できる見晴らしは、立ち寄る価値十分のご褒美ビュー。

弥山から樹林帯を抜けると、一気に視界が開け、目指す八経ヶ岳が目の前に現れます。

景色を堪能したら、再び進路を戻して八経ヶ岳へ向けて歩き出します。
広がる稜線、その先に控えるひときわ高い山容。目指す八経ヶ岳はすぐそこ!

いよいよ八経ヶ岳の山頂へ。

立ち枯れの独特な景観が広がる中、いったん下り、再び八経ヶ岳の山頂へと登り返します。

弥山から稜線をたどること約30分、いよいよ近畿最高峰・八経ヶ岳の山頂へ到着。

岩を踏みしめ、胸を高鳴らせ、 山頂の標柱にタッチ!

山頂に立つと、目の前に広がるのは360度の大パノラマ。東には重なり合う大台ヶ原の山並み、南へは大峯奥駈道が続き、その先には遠く熊野の山々まで見渡せます。

どこまでも連なる山、山、山。その奥深さに、思わず息を呑むほど。
ふと視線を落とすと、遠くに小さく弥山小屋の屋根。さっきまで歩いてきた道のりが、誇らしく蘇ります。

言葉では言い尽くせない満足感。心ゆくまで絶景を味わったら、来た道をゆっくりと下山。

レトロな近鉄の車両に揺られて家に帰ります。お疲れさまでした!

登りでは苦戦した急登を慎重に下り、16時30分頃には無事に弥山登山口へと戻ってきました。
夕方の柔らかな光の中、達成感と静かな感動がゆっくりと体に満ちていきます。

この日に出会えた景色と体験を胸に、近鉄下市口駅で解散。それぞれ帰途につきました。

編集部 大迫

八経ヶ岳は、信仰の道を自分の足で歩き、自然と向き合える山
歩くほどに歴史や祈りが近くなり、遠くまで来た甲斐があった——そう思える特別な時間でした。

限定アイテムも!道の駅隣接『モンベルルーム 吉野路黒滝店』

木彫りのクマがお出迎えしてくれます

時間が許せば立ち寄りたいのが、道の駅 吉野路黒滝内にオープンした『モンベルルーム 吉野路黒滝店』。
入口では珍しい木彫りのモンタベアがお出迎えしてくれます。

ここでしか買えない、限定のご当地デザインアイテムのTシャツやクリアボトルは旅の思い出にぴったり。林業が盛んな吉野ならではのデザインが施されたアイテムも!

なお、隣接する道の駅(営業時間は9:00~16:30)では名物のこんにゃくのほか、特産品や軽食メニューなどが楽しめるそう。

期間限定「奥大和デジタルスタンプラリー」開催中!

スタート前にスタンプラリーへのエントリーをお忘れなく!

ジャパンエコトラックでは、奥大和の各ルートを歩いてスマホでスタンプを集めることで、旅の記録を残しながら楽しむことができる「デジタルスタンプラリー」を開催中。

今回歩いた八経ヶ岳のコースは対象外ですが、他のコースでは応募が可能です。ぜひ一度、利用してみくださいね!

開催期間:2025年8月29日(金)~2026年2月1日(日)
概要:「ジャパンエコトラック奥大和」に登録されているサイクリング・トレッキングルートを含む対象ルートを1回完走し、デジタルスタンプを集めてアンケートに答えるごとに、奥大和地域の特産品やアウトドア用品が当たるプレゼント抽選に応募できます。

<参加方法>

  1. 「ジャパンエコトラック」アプリをダウンロードしてログイン
  2. アプリ内の特設ページからエントリー
  3. 対象ルートを完走
  4. アンケートに回答して応募

世界遺産の道を歩いて感じた、奥大和のディープな魅力

今回歩いた「八経ヶ岳トレッキングルート」は、体力的にはなかなかハード。ですが、そのぶん山岳信仰や修験道の歴史と雄大な自然を全身で感じる、まさに「奥大和の神髄」を体感できる道のりでした。

高取城の城跡を歩いた1日目から、大峯の霊峰に挑んだ2日目まで──
奥大和の奥深い魅力にどっぷりと浸った2日間。

旅を終えた今、もっと奥大和のことを知りたいという気持ちが膨らむばかり。
次はどの道を歩こう……と考えるだけでワクワクします。

ジャパンエコトラックのマップを参考に、ぜひ奥大和の魅力を確かめに出かけてみてください!

取材協力:モンベル奈良県