【専門家監修】山道で足首をグキッ……。もしもの時のために覚えておきたい!軽度の捻挫に使えるテーピング術

2021/11/17 更新

山登り中、気が緩んだ瞬間に足首をひねってしまった。こんなときテーピングを使った固定方法を覚えておくと、症状が軽い場合は自力で下山できるかもしれません。今回は専門家監修のもと、足首をひねったときに役立つテーピングの固定方法を紹介。「もしも」を想定して応急処置の知識を増やしましょう!

制作者

山岳ライター

吉澤英晃

群馬県出身。大学時代に所属した探検部で登山を開始。以降、沢登り、クライミング、雪山、アイスクライミング、山スキーなど、オールジャンルで山を楽しむ。登山用品の営業職を経て、現在はフリーの編集・ライターとして活動中。

吉澤英晃のプロフィール

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アイキャッチ撮影:YAMA HACK編集部

登山中にまさかの転倒! 同時に足首を痛めてしまった

捻挫
出典:PIXTA
どれだけ注意していても、山でケガは起きるもの。とくに多いと言われているのが下山中の足首の捻挫で、このケガで行動不能に陥り、救助を要請、なんてこともあり得ます。

そこで覚えておきたいのがテーピングや三角巾を使った固定方法。症状の程度にもよりますが、軽度の捻挫であれば、患部の炎症を抑えつつ下山できる場合があります。

岡田さん
撮影:筆者   (今回監修をお願いした岡田智一さん)
そこで今回は、東京都山岳連盟主催の講習会でテーピング実習の講師をしている医療マッサージ研究所の岡田智一さんに、軽度の捻挫に効果的なテーピングによる足首の固定方法を教えていただきました。

「軽度の捻挫」ってどんな症状?

ちなみに、今回の記事では以下のような状態を「軽度の捻挫」と呼ぶこととします。

・内出血がない
・痛みが小さく、自力で歩ける
・負傷部位など関節が変形していない
・骨が飛び出しているといった骨折も見られない

もし、ひとつでも当てはまらない項目がある場合は、消毒や止血、足を高く上げて患部を冷やすなど、テーピングや三角巾を使う固定とは別の応急処置が必要です。

また、登山中に足首をひねった場合、捻挫と思っていても骨折していることもあり、山の中で正しく判断することは医師であっても難しいと言われています。無事に自力下山できても痛みがなくならないようなら、迷わず病院へ行き、医師の診断を受けましょう。

足首の固定には「テーピング」と「三角巾」どっちがいいの?

捻挫
撮影:筆者
捻挫した足首を固定する「テーピング」と「三角巾」。テーピングの巻き方を学ぶ前に、それぞれの違いも確認しておきましょう。いずれもメリットとデメリットがあるので、それぞれを理解して臨機応変に使い分けることが重要です。

【テーピング】
メリット:三角巾より固定力が強い。
デメリット:靴の脱ぎ履きに時間を要する。長時間歩くとテーピングが緩んでくる。


【三角巾】
メリット:靴の上から巻けるので簡易。途中で緩んだら
締め直すこともできる。
デメリット:固定力はテーピングより弱い。
負傷した際、痛みが強くて自力で歩けなければ無理して靴を脱がさない方が良いでしょう。靴を脱げると判断したあと、患部の状態を観察しながら腫れや内出血がなければ、テーピングを巻いてみてください。

テーピングを巻いてから靴を履き、それでもまだ不安があれば、三角巾を組み合わせると良いでしょう。
岡田先生
岡田先生

▼三角巾を使った固定方法はこちらをチェック

応急処置の前に行うべき3つの行動

実際に山道で足首をひねった場合は、テーピングで固定しよう!と真っ先に考えたくなるかもしれませんが、実は身の安全を守ることの方が先決です。これはすべてのケガに当てはまること。

応急処置の方法を学ぶ前に、現場で行うべき行動をきちんと把握しましょう。

①落ち着く

捻挫
出典:PIXTA
万が一ケガをしたら、突然の事態に気が動転しているかもしれません。まずは大きく深呼吸して、気持ちを落ち着かせてから冷静になりましょう。

②安全な場所へ移動する

捻挫
出典:PIXTA
平常心を取り戻したら、周囲の状況を確認します。もし、いまいる場所が急斜面や崩落地、もしくは崖の下で落石の危険があるといった場合は、安全な場所へ移動しましょう。

③負傷箇所を確認する

捻挫
出典:PIXTA
安全な場所へ移動したら、負傷箇所を確認します。このとき冒頭で述べた「軽度の捻挫」と考えられる場合は、負傷箇所を固定して自力下山を試みます。症状がひどい場合は救助要請を検討しましょう。

練習必須! テーピングでの固定方法

足首の捻挫は、どこの靭帯を痛めたかによって固定の仕方が異なります。今回紹介するのは、登山中の捻挫で多いと言われている「内反し捻挫(足首を内側にひねってしまう捻挫)」を想定した方法です。

▼内反し捻挫について詳しく知りたい人はこちら

内反し捻挫以外のプロセスで足首をひねった場合、ここで紹介する固定方法を行うと、負傷箇所の症状が悪化することもあるので要注意。より専門的な知識は、講習会などに参加して習得するのがオススメです。

それでは、テーピングによる内反し捻挫の固定方法を説明します。
使うのは「38mm幅」のテーピングテープ。はじめに動画を見て、手順のイメージをつかみましょう。
出典:YouTube/YAMA HACK
テーピングの手順
①テーピングを巻きやすい状態にする
②「アンカー」を巻いて、テープの起点をつくる
③「スターアップ」を巻いて、つま先の向きを固定
④「ヒールロック」でかかとを固定
⑤「フィギュアエイト」で足首の関節全体を固定して完成
それでは、手順ごとに画像で細かくポイントをみていきましょう。

①テーピングを巻きやすい状態する

段差などにつま先をかけて、足首を90度に固定します。

捻挫
撮影:筆者
★ワンポイントアドバイス
90度の角度をキープして、ふくらはぎに力を入れた状態でテーピングを巻くことが大切です。

②「アンカー」を巻いて、テープの起点をつくる

アンカーとは、足首に巻くテープのこと。これから貼るテープの起点となり、テープ同士の粘着力を高める役目があります。

くるぶしから指3本分くらい上の位置にテープを1周巻きます。
捻挫
撮影:筆者
捻挫
撮影:筆者
捻挫
撮影:筆者
捻挫
撮影:筆者
半分重ねて下方向にも1周巻きます。
捻挫
撮影:筆者

③「スターアップ」を巻いて、つま先の向きを固定

スターアップとは、つま先が足の甲の向きに曲がっている状態(背屈)をキープするテープのこと。

②で巻いたアンカーの内側を起点に、内くるぶしの中心から、かかとの真下を通り、引っ張りながら外くるぶしが隠れるように外側のアンカーに貼り付けます。
★ワンポイントアドバイス
必ず内側から外側に貼ることが大切です。逆にすると足首が外側に倒れる状態を作ってしまうので、かえって負傷箇所の症状悪化につながる場合があります。
捻挫
撮影:筆者
捻挫
撮影:筆者
1本目のスターアップが剥がれないように、上からアンカーを1周巻きます。
捻挫
撮影:筆者
捻挫
撮影:筆者
再びスターアップを貼ります。スタートの位置を前後させて合計3本貼ってください。貼り終わりは同じ位置でOKです。
撮影:筆者
捻挫
撮影:筆者
捻挫
撮影:筆者
捻挫
撮影:筆者
すべてのスターアップが剥がれないように、再びアンカーを1周巻きます。
捻挫
撮影:筆者
捻挫
撮影:筆者

④「ヒールロック」でかかとを固定

ヒールロックとは、かかとが左右に倒れないように固定するテープです。外側と内側からかかとを包み、左右対称になるように2本貼っていきます。

写真のように引き伸ばしたテープの真ん中を、かかとの内側に当てます。
捻挫
撮影:筆者
写真左手のテープの末端は甲の上部で固定。
捻挫
撮影:筆者
もう一方のテープはアキレス腱の後ろ側を通って、すねの位置で固定します。
捻挫
撮影:筆者
捻挫
撮影:筆者
同じ巻き方を、今度はかかとの外側から行います。
捻挫
撮影:筆者
捻挫
撮影:筆者
捻挫
撮影:筆者
捻挫
撮影:筆者
★ワンポイントアドバイス
ここでは、テープが通る正確な位置を覚えましょう。写真の✕印(アキレス腱の付着部と足底腱膜の付着部)の下側を通るのが正しい位置になります。捻挫
撮影:筆者
捻挫
撮影:筆者
下の写真の状態は間違った位置。神経や血管を圧迫してしまうので注意しましょう。
捻挫
撮影:筆者

⑤「フィギュアエイト」で足首の関節全体を固定して完成

フィギュアエイトとは、足首の関節全体を安定させるテープです。名前の通り8の字を描くように巻いていきます。

テープを写真のように引き伸ばし、土踏まずの裏側に中心を当てます。
捻挫
撮影:筆者
右手側のテープは足首の中心に固定します。
捻挫
撮影:筆者
左手に持ったテープは、足首を1周するように巻きつけます。
捻挫
撮影:筆者
捻挫
撮影:筆者
最後に、足首の中心に末端を貼り付ければ完成です。
捻挫
撮影:筆者

最終チェック

歩き始める前に、巻いたところや爪にしびれや痛みがないか、爪を指で押して離したとき、爪の色がピンクや白からすぐに元に戻るか(ブランチテスト)、などをチェックしましょう。

もし、痛みやしびれ、血行障害が見受けられる場合はきつく巻きすぎです。テープの端に切れ目を入れるか、テープをはがして巻き直してください。

テープをはがすとき

テープを持ってはがすと肌を痛めることがあるので、テープから皮膚を少しずつはがすイメージで取り外きましょう。

実践あるのみ!何度も練習して習得しよう

捻挫
出典:PIXTA
今回は軽度な足首の捻挫を想定して、内反し捻挫に効果的なテーピングでの固定方法を紹介しました。万が一のときのためにぜひ覚えておきたい知識なのですが、いざ現場で使うためには、事前の練習が欠かせません。

岡田先生は「紹介した方法を実際に巻いたことがない人は、現場で行わない方がいい」と言います。これは、間違った巻き方を行うと患部が悪化することがあるからです。

どんな応急処置も、文章で読む、動画を見る、だけで習得することは難しく、実践して体で覚えることが大切です。ぜひ今回の記事を読んだら自宅で試してみてください。分からないことがあれば、講習会などに参加して疑問を解決しましょう。正しい方法を身に付けて、いざというときに役立ててください。

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