アイキャッチ画像撮影:鷲尾 太輔
意外と知らない!人気な山の“どこが危険?”クイズ!

個性あふれたる名山が連なる北アルプス。登山者の中でも人気なエリアとして、毎年多くの人々が訪れています。なかでも、日本百名山の屈指の難易度として知られる剱岳、同じ富山県にある立山・薬師岳・白馬岳・鷲羽岳は、高度感あふれる岩稜や高山植物、日本海までを望むパノラマで人気があります。
とはいえ、これらの山々には危険箇所などのリスクが潜んでいるのも事実です。そこで、富山県警山岳警備隊の方に要注意ポイントのインタビューを実施。その解答は、みなさんにも知ってもらいたい内容ばかりでした。
今回は、人気な山5座における危険箇所のクイズを作成!全問正解できたら、あなたも富山県の山岳マスター?!さあ、チャレンジしてみましょう。
険しい岩稜が連続する剱岳、転倒・滑落・転落の要注意ポイントは?

最難関の日本百名山と呼ばれる剱岳(2999m)へは別山尾根コースと早月尾根コースが一般ルート。なかでも、距離や高低差の少ない別山尾根コースが人気です。
山岳警備隊が語る剱岳の魅力
数多くのルートから山頂へ登ることができるのが魅力だと思います。どのルートも山頂までの道のりは険しく難易度が高い分、山頂へ着き、無事に下山できた時は、言葉では言い表せないほどの達成感があります。
ただし、人気であるとはいえ、別山尾根コースは鎖場や岩場が断続的に続く、全体的に危険度の高いルート。その中でも、特に危険な2箇所について、クイズで紹介します。
剱岳クイズ|第1問

ここは前剱の下にある大岩と呼ばれる場所です。この場所に潜んでいる危険ポイント、あなたにはわかりますか?
以下のうち、より可能性が高いと思われる危険は、どちらでしょう。
A.鎖場での転倒
B.岩場での転倒・滑落
剱岳クイズ|第2問

ここは剱岳から下山する際に通過する、カニノヨコバイと呼ばれる鎖場です。この場所に潜んでいる危険ポイント、あなたにはわかりますか?
以下のうち、より可能性が高いと思われる危険は、どちらでしょう。
A.鎖から手を離してしまっての転落
B.落雷による感電
初心者にも人気の雄山(立山)、転ばないための要注意ポイントは?

標高2450mの室堂平までは立山黒部アルペンルートで到達できるため、初心者にも人気の雄山(立山)。富山県の小学生の多くは、学校登山でも登るそうです。山頂には雄山神社があり、眼下の室堂平から日本海までの眺望が魅力です。
山岳警備隊が語る雄山(立山)の魅力
アルペンルートを利用すれば、標高2450mの室堂平まで一気にアクセスでき、気軽に3000m級の登山を楽しむことができる点が魅力だと思います。また、雄山山頂から見る、富山湾、後立山連峰、富士山などの絶景も格別です。
雄山(立山)クイズ|第1問

この写真は一ノ越山荘から雄山へと続く稜線です。この場所に潜んでいる危険ポイント、あなたにはわかりますか?
以下のうち、より可能性が高いと思われる危険は、どちらでしょう。
A.高山病による行動不能
B.ガレ場での転倒
雄山(立山)クイズ|第2問

この写真は一ノ越山荘から振り返った立山室堂山荘から続く登山道です。この場所に潜んでいる危険ポイント、あなたにはわかりますか?
以下のうち、より可能性が高いと思われる危険は、どちらでしょう。
A.残雪での転倒
B.石畳状の登山道での転倒
堂々たる山容の薬師岳、スケールが大きな山での要注意ポイントは?

のびやかで優美な稜線を広げる薬師岳。北側の立山連峰・南側の槍ヶ岳、どちらから縦走しても数日かかる奥深い山でしたが、西麓の有峰ダム完成がきっかけで折立登山口まで林道が延び、アクセスしやすい日本百名山になりました。
山岳警備隊が語る薬師岳の魅力
薬師岳は、大きく優美な山です。山頂からは、日本最後の秘境と呼ばれる雲ノ平などの黒部源流の山々の眺望を楽しむことができます。また、折立からであれば、一泊二日の登山で無理なく登頂できるというアプローチの良さも魅力の一つです。
薬師岳クイズ

この写真は折立登山口から薬師岳のベースキャンプ・太郎兵衛平へと続く登山道です。この場所に潜んでいる危険は、次のうちどちらでしょうか。
A.長い登りでの疲労による行動不能
B.下りの樹林帯での転倒
多彩なルートがある白馬連峰、安全に歩くための要注意ポイントは?

花の名山としても人気が高い白馬岳には、様々な登山コースがあります。白馬岳のみではなく、白馬三山や不帰嶮(かえらずのけん)を越えて唐松岳をめざす縦走ルートもスリリングな岩稜歩きが魅力的。富山県側の祖母谷温泉からの清水尾根コースなど、多彩な登山ルートがあります。
山岳警備隊が語る白馬岳の魅力
日本海から通じる栂海新道、沢登りの名渓である柳又谷、夏でも残雪豊富な白馬大雪渓、賑やかな白馬大池コース、静かな清水尾根コース、積雪期バリエーション最初の一歩である白馬主稜など多面的な性格を見せてくれる山であり、様々な登山の楽しみ方を与えてくれる山であることが魅力だと思います。
白馬連峰クイズ|第1問

この写真は白馬三山の南にある天狗ノ頭と唐松岳の間にある不帰キレットです。この場所に潜んでいる危険ポイント、あなたにはわかりますか?
以下のうち、より可能性が高いと思われる危険は、どちらでしょう。
A.不安定な岩場での落石
B.稜線からの転落・滑落
白馬連峰クイズ|第2問

この写真は白馬岳から西の富山県側へ延びる清水尾根を経由して、不帰岳避難小屋から祖母谷温泉へ向かう場所。山の斜面をトラバース(横断)するように登山道が続いています。この場所に潜んでいる危険ポイント、あなたにはわかりますか?
以下のうち、より可能性が高いと思われる危険は、どちらでしょう。
A.沢筋の湿った登山道での転倒・滑落
B.ロングコースでの疲労による行動不能
奥深い日本百名山・鷲羽岳、長距離縦走での要注意ポイントは?

北アルプスでも奥深くに位置する日本百名山が鷲羽岳です。三俣蓮華岳・双六岳など南側から眺めた堂々とした山容はもちろん、山頂直下の鷲羽池を前景にそびえる槍ヶ岳など絶景の宝庫。その山懐には黒部川の源流があり、上ノ廊下・下ノ廊下へと続いています。
山岳警備隊が語る鷲羽岳の魅力
多くの魅力と歴史を秘めた黒部川の最初の一滴を生み出す山であることが魅力だと思います。また、富山県、長野県、岐阜県のどこからでも入山可能であるが、そのどれからも等しく奥深い位置に存在する山であり、存分に北アルプスを登山している喜びを与えてくれる山であることも魅力に感じます。
鷲羽岳クイズ|第1問

この写真は鷲羽岳の北に連なるワリモ岳です。2つの山に挟まれた鞍部、この場所に潜んでいる危険ポイント、あなたにはわかりますか?
以下のうち、より可能性が高いと思われる危険は、どちらでしょう。
A.悪天候時の低体温症
B.浮石が多い急峻な稜線上での転倒
鷲羽岳クイズ|第2問

この写真は鷲羽岳の北側にある岩苔乗越から、三俣山荘に向かう途中にある黒部川源流です。この場所に潜んでいる危険ポイント、あなたにはわかりますか?
以下のうち、より可能性が高いと思われる危険は、どちらでしょう。
A.増水した沢に流される
B.濡れた岩でのスリップによる転倒
特定の場所以外にも気を付けたい!注意すべきポイントは?

ここまでは、それぞれの山の「場所」にフォーカスして、その地形や地理的条件ならではの危険性を紹介しました。しかし、悪天候や体調不良など「場所」以外の要因で山岳遭難が発生することもあります。
例えば、2006年10月には「白馬連峰クイズ|第2問」で紹介した祖母谷温泉から清水尾根経由で白馬岳をめざした7名の登山グループが、悪天候による吹雪に遭遇。白馬山荘を目前にした祖母谷分岐手前で、低体温症により4名が亡くなるという痛ましい事故も発生しています。

出典:山岳遭難白書・山巓(富山県山岳遭難対策協議会発行)
また上記の資料の通り、ここ数年は負傷者の割合が増加し、無事救出の割合が減少しているという傾向も見逃せません。
富山県警察 山岳警備隊
遭難の統計には反映されていませんが、私たちの勤務する室堂警備派出所では、高山病の症状を訴えて訪れる方が多い印象です。
立山黒部アルペンルートを利用して、標高2450mの室堂平まで気軽に来ることができる反面、急激に標高を上げるため、体は高所に順応していない状態となっています。この状態で、いきなり登山を始めると徐々に高山病の症状が表れ、登山を継続できなくなったり、登山を終えて山小屋に着いてから症状がひどくなったりします。
室堂平に着き、絶景を目の前にして、すぐに歩きだしたくなる気持ちもわかりますが、まずは室堂平周辺で1時間程度、体を高所に慣らしてから登山を開始することをオススメします。
安全に登山を楽しむために、注意ポイントを知っておこう

今回は富山県内の北アルプス・日本百名山を例に要注意ポイントを紹介しましたが、他の県や山域でも似たような地形や地理的条件が当てはまるケースは多数あります。今回のクイズを通じて気をつけるべきポイントを知って、安全に登山を楽しんで頂くことを願っています。
山岳警備隊が語る「登山者へのメッセージ」
登山は、老若男女問わず楽しむことができるのが魅力だと思います。特に富山県の山は、3000m級の稜線の縦走、クライミング、沢登り、低山のハイキングなどバラエティに富んだ登山を味わうことができます。
しかし、ひとたび事故を起こしてしまうと、楽しいはずの登山も楽しくなくなってしまいます。そうならないためにも、事前にトレーニングを行い、天候や山岳地帯の状況の情報を収集し、自分の実力に見合った無理のない楽しい登山をして頂けたらと思います。
富山県警察山岳警備隊は、県内どこかの稜線でみなさんにお会いするのを楽しみにしています。