劔岳の攻略

”剱岳”のプロと登頂者が語る!一般登山道の国内最難関ルート攻略の秘訣

日本百名山でも屈指の難易度として知られる、北アルプスの岩峰・剱岳。険しい稜線と深い谷が織り成す迫力ある姿は、多くの登山者やクライマーの心を惹きつけ、あるいはその威圧感で登山初心者を拒んでいるようでもあります。「いつかは剱岳に登りたい」そんなチャレンジ精神旺盛な登山者にとって気になる”どんな人が、どのように登頂を果たしたか”という情報を、実際に劔岳に訪れてあれこれ聞いてみました。

目次

新型コロナウイルス感染拡大防止のため、山小屋営業ならびに交通状況などに変更が生じている可能性があります。
山小屋や行政・関連機関が発信する最新情報を入手したうえで登山計画を立て、安全登山をしましょう。
アイキャッチ画像撮影:washio daisuke

多くの登山者やクライマーが惹きつけられる《剱岳》

劒岳を眺める

撮影:washio daisuke(剱岳)

日本百名山でも屈指の難易度として知られる、北アルプスの岩峰・剱岳。険しい稜線と深い谷が織り成す迫力ある姿は、多くの登山者やクライマーの心を惹きつけ、あるいはその威圧感で登山初心者を拒んでいるようでもあります。

いつかは挑戦したい憧れの山

険しく美しい稜線

撮影:washio daisuke(剱岳の険しい稜線)

剱岳は富山県東部の立山連峰にある標高2,999mの山。一般登山道としては国内最難関と言われ、滑落などによる遭難事故も。日本三大雪渓のひとつである剱沢雪渓を擁し「岩と雪の殿堂」とも呼ばれています。

「登ってみたいけど、手の届かない山」そんなイメージを抱きがちですが、登山好きなら一度はその頂上を目指してみたいですよね。

剱岳への初チャレンジは「別山尾根ルート」がおすすめ!

別山尾根ルート

撮影:washio daisuke(別山尾根と剱沢)
初めて剱岳にチャレンジするなら、南側から山頂を目指す別山尾根ルートがおすすめ。

 

その理由は

▼登り約3時間・下り約2時間半のコースタイムで他ルートと比べて短い(剱沢から剱岳山頂)
▼比較的標高差が少ない(それでも片道のみで単純標高差で約500m強・累積標高差では登り約685m・下り約180mの数値となります)
▼2軒の山小屋(剱澤小屋・剣山荘)とキャンプ指定地があり、ベースキャンプに荷物を置いて必要最小限の装備で往復登山可能

 

別山尾根以外のルートは健脚者や登山熟達者向けであり、多くの登山者が2回目以降やプロガイド・ベテランの先輩登山者と一緒に挑戦しています。

 

しかし裏を返せば、別山尾根は剱岳登山のメジャールートです。登山シーズンの週末や連休には難所で登山者の渋滞が発生することも多いため、必ずゆとりを持った計画をたてましょう

本当に自分でも登れるの…?

カニノタテバイ

出典:PIXTA(カニノタテバイ)
とはいえ、別山尾根ルートも難所や危険箇所が連続する登山道です。多くの登山者が切り立った断崖にかけられた鎖場の様子から、剱岳へのチャレンジを躊躇しているようです。

 

「自分でも登れるのかな?」と不安な方のために
①剱岳へクライアント(=顧客)を引率して登山するプロガイド
②剱岳を知り尽くした剱澤小屋のご主人
③剱岳の登頂経験者(登山歴は様々)

に、それぞれの視点からのアドバイスや体験談を語ってもらいました。
そして記事の最後には具体的なルートのイメージをつかめるように、詳細なルートの写真を用意しています。

プロガイドが案内の時に気をつけていることって?

劒岳の登山道

撮影:washio daisuke(浮石の多いガレ場と前剱・大岩)

現役で剱岳を案内しているプロガイド3名に、剱岳・別山尾根ルートの注意点や経験すべき山・身につけておくべきスキルを教えてもらいました。

すると意外なことに、未経験者が恐怖心を抱く危険箇所での転滑落よりも、気の緩みや人工落石の危険に対しての警鐘が集中。

さらに、剱岳をガイドをする時に注意していることについても聞いてみました。

「落石に遭わないようによく観察する」

川崎たくへいガイド

提供:川﨑たくへいガイド

【川﨑たくへいガイド】

公益社団法人日本山岳ガイド協会・山岳ガイドステージⅠ/スキーガイドステージⅠ、オフィスカワサキ MountainGuide代表
登山初級から中級向け登山教室「やまんど」の運営やマンツーマンからグループ向けの個人ガイドを行っている。沢登り・岩稜登山・雪山登山・バリエーションルートを得意としている。

 

剱岳・別山尾根ルートでのガイディングで最も注意を払うポイントは?

場所を問わず、落石に遭わないように上方や危ない登山者の動きをよく観察すること

剱岳にチャレンジする前に、経験しておくべき山や身に付けておくべきスキルはありますか?

経験しておくべき山:八ヶ岳・権現岳~阿弥陀岳縦走。
身につけておくスキル:岩稜やザレ場の登降に対応できる歩行技術。

「他の登山者の真下には入らない」

佐藤勇介ガイド

提供:佐藤勇介ガイド

【佐藤勇介ガイド】

公益社団法人日本山岳ガイド協会・山岳ガイドステージⅡ、クライミングジム・カメロパルダリス経営、佐藤ガイドのホームページ
正しい技術や知識を身に着けた自立した登山者へ成長できるようサポート。剱岳・穂高岳周辺バリエーションルート、長期縦走コース、クライミングマルチピッチを得意としている。

 

剱岳・別山尾根ルートでのガイディングで最も注意を払うポイントは?

鎖場などはロープで確保などで危険性は排除できるが、落石はコントロールすることができないため、前剱・大岩の付近からの落石(他の登山者の真下になるべく入らない、距離を一定以上空ける)。

剱岳にチャレンジする前に、経験しておくべき山や身に付けておくべきスキルはありますか?

経験しておくべき山:不帰ノ険、八峰キレット(後立山)、穂高周辺。
身につけておくスキル:インドア含むクライミングスキルでバランスのとり方、ゲレンデ講習(屋外講習)で高度感や傾斜のある岩場に慣れたり、ホールドの見極め方・使い方を覚える。

「下りでも確実に石を踏んで歩く」

松山信ガイド

提供:松山信ガイド

【松山信ガイド】

山岳会や山の学校 マウナ・グリンプを立ち上げて、自立した登山者の育成を行なっている。北アルプス、バリエーションルートが得意。

 

剱岳・別山尾根ルートでのガイディングで最も注意を払うポイントは?

前剱・大岩からの下りです。剱岳山頂を踏んで気持ちもゆるみがちで疲れも出ているところなので、ザレ場などを確実に石を踏んで歩いてもらうようにしています。

剱岳にチャレンジする前に、経験しておくべき山や身に付けておくべきスキルはありますか?

経験しておくべき山:岩場に慣れてもらうために、岩歩きや簡単なクライミング。長時間、緊張感が必要なので変化のある山行を少し長い時間経験してほしい。
身につけておくスキル:ハーネス・セルフビレイを信じてもらう練習もしてほしい。

小屋番が語る登山者へのアドバイス

劔澤小屋ご主人の佐伯さん

撮影:washio daisuke(剱澤小屋3代目主人・佐伯新平さん)

山小屋のご主人やスタッフは、登山道の整備はもちろん、遭難事故が発生した際には警察・消防と連携して救助活動を行う民間救助隊の役割も担っています。

今回、剱岳を知り尽くした剱澤小屋の3代目主人・佐伯新平さんに剱岳の特徴を伺いました。

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