日本山岳耐久レース、通称「ハセツネCUP」
ハセツネCUPとは、東京奥多摩エリアで開催される「日本山岳耐久レース 長谷川恒男カップ」の愛称です。日本におけるトレイルランニングレースとしては長い歴史を持ち、距離71.5km、累積標高差4582m、平均傾斜6.4%という過酷なコースが特徴です。日本最高峰のレースとして毎年多くのアスリートが参加しています。
ハセツネこと長谷川恒男
ハセツネCUPは毎年10月に開催されます。これは、長谷川恒男がカラコルムで落命した10月10日に由来しています。ハセツネCUPは、日本登山史に輝かしい功績を残した天才クライマー長谷川恒男を記念したレースなのです。
天才クライマー・長谷川恒男
登山歴
1975年:谷川岳一ノ倉沢滝沢第2スラブ単独登頂(冬季初)
1977年:マッターホルン北壁 冬期単独登頂(世界で2人目)
1978年:アイガー北壁 冬期単独初登頂
1979年:グランド・ジョラス北壁 冬期単独登頂(世界初)
1980年:アンデス アコンカグア北面ノーマルルート冬季単独登頂(世界初)
1981年:アンデス アコンカグア南壁南壁フランスルート冬季単独登攀(世界初)
1982年:パタゴニア フィッツロイ北東壁新ルート試登。
*以降の遠征は成功しなかった
1983年 ダウラギリI峰 北東稜
1984年 ナンガパルバット 南東稜
1985年 エベレスト 北東稜
1987年 エベレスト 北東クーロワール
1988年 エベレスト 北東クーロワール
1990年 パキスタン ウルタール・サール第2峰南西壁
1991年 パキスタン ウルタール・サール第2峰南西壁(雪崩により遭難死 享年43歳)
数々の登攀を成功
長谷川恒男は、1947年神奈川県に生まれました。15歳で初めて丹沢を登り、山の素晴らしさに開眼します。単独行を得意とし、谷川岳一ノ倉沢に唯一残された冬季未踏ルートの単独登頂。1977年から79年にかけて、マッターホルン北壁、アイガー北壁、グランド・ジョラス北壁を立て続けに登頂します。
アルプス三大北壁の冬季単独登頂を世界で初めて成功させたことにより、長谷川恒男は世界に名が知られる日本人クライマーとなりました。その後もアンデス、ヒマラヤと挑戦の舞台を移していきますが、1991年カラコルム山脈ウルタール・サール第2峰で雪崩に巻き込まれ遭難死してしまいます。43年の鮮烈な生涯を駆け抜けていきました。
エベレスト遭難寸前の救出劇
長谷川恒男のほぼ同世代、加藤保男もまた日本を代表するクライマーです。エベレストを春秋冬の3回登頂する偉業を成し遂げています。1973年この時代まだ未踏だったエベレストの南西壁に挑むため大規模な遠征隊が組まれました。予定していた南西壁は断念したものの、東南壁からの登頂に成功します。しかし強行軍だったため8000mを超える場所で加藤はビバークを余儀なくされました。このときサポートメンバーだった長谷川恒男に翌日救助され、加藤は一命を取り留めたのです。
長谷川恒男に関する著書もたくさんある!
長谷川恒男自身の著作や、ノンフィクション作家の手によるもの、また長谷川をモデルにしたフィクションまで、多くの書籍、映像作品があります。
北壁に舞う―生きぬくことが冒険だ
1979年のグランドジョラス北壁への挑戦を長谷川自身が綴っています。アルプス三大北壁の最後となる登攀の状況と心情を臨場感たっぷりに語り上げています。
生きぬくことは冒険だよ
長谷川恒男が亡くなってから発刊されたいわゆる遺稿集です。三大北壁登攀の記録や、講演録が収録されています。
岩壁よ おはよう
15歳で初めて登山を経験し徐々に山にのめり込む長谷川、谷川や穂高など国内の岩壁への挑戦が、本人の手によって活写されています。
北壁からのメッセージ
山登りを通じた教育論といった趣の本です。自身の子ども時代の話から、長谷川が当時取り組んでいた「ジュニア・アルピニスト・スクール」のエピソードが収録されています。
虚空の登攀者
山岳ジャンルの作品を多く手がけたノンフィクションライターの手による長谷川恒男伝です。長谷川の偉業、生き方、性格について深く掘り下げています。
神々の山嶺
夢枕漠の傑作山岳小説です。主人公のライバルのモデルが長谷川恒男と言われています。その名も長谷常雄。長谷川にまつわる実際のエピソードが物語に取り入れられています。
エヴェレスト 神々の山嶺
小説「神々の山嶺」の映画版です。小説版の長谷常雄は長谷渉という名前になり、佐々木蔵之介が扮しています。
ハセツネCUP詳細情報
10月に開催されるハセツネCUPのエントリーは6月1日から。またハセツネCUPの入門レースにあたるハセツネ30Kもご紹介します。
レース詳細情報
ハセツネCUP(2018年の開催は終了しました)
日程:2018年10月7日・8日 (暴風雨を除く雨天決行)
コース:奥多摩山域(71.5km)
参加料:一般15,000円/高校生6,000円/東京都山岳連盟員(団体/個人)13,000円
参加定員:2500人
エントリー期間(一般申込):2018年6月1日AM10:00~2018年6月15日23:59
ハセツネ30K(2018年の開催は終了しました)
日程:2018年4月1日 (暴風雨を除く雨天決行)
コース:奥多摩山域
参加費:一般10,000円/高校生2,000円
東京都山岳連盟団体員・個人会員は1,000円引きとなります。
長谷川恒男の思いは次世代に
パキスタン北部の村カリマバード。この村から望むことができるウルタール・サール第2峰で長谷川恒男は命を落としました。カリマバードの村にはハセガワ記念学校があります。長谷川の遺志を受けて夫人が中心になり建てられました。10月10日の長谷川の命日には、教師と生徒がウルタール・サールの麓にあるお墓にお参りをするそうです。