森の恵みを満喫!森林セラピーロード

これまで感覚的にしか語られることがなかった森林浴の効能を、生理・心理・物理実験などを通して科学的に検証したのが「森林セラピー」です。奥多摩町はこの活動にいち早く取り組み、5ヶ所が森林セラピーロードとして認定されています。癒しを求めて、奥多摩の森を満喫してみませんか。
⑥氷川渓谷〜登計トレイル〜愛宕神社

コース概要
奥多摩駅(10分)→登計橋(20分)→登計トレイル入口(20分)→展望デッキ(25分)→愛宕神社(20分)→登山口(5分)→奥多摩駅

奥多摩駅からほど近く、多摩川と支流の日原(にっぱら)川が合流する付近は、氷川渓谷と呼ばれています。三本杉がシンボルで、武蔵国一ノ宮氷川神社(さいたま市)・中氷川神社(所沢市)と並んで「武蔵三氷川」と称される奥氷川神社が入口です。
日原川を越える吊橋・氷川小橋からは河原に下りることができ、さらに多摩川を越える登計(とけ)橋まで、澄んだ清流を見下ろす遊歩道が続いています。
撮影:鷲尾 太輔(登計トレイルの展望デッキやベンチ)
日本初の森林セラピー専用ロードとして設計された登計(とけ)トレイルは、遊歩道にウッドチップが敷かれ、バリアフリーにも配慮されています。点在する個性的なベンチや展望デッキで休憩しながら、奥多摩の山々を眺めたり木々の葉擦れの音を聴く時間は、まさに森林セラピーの実践といえます。
登計トレイルの最上部から少し登れば、愛宕神社の鳥居です。拝殿へ続く参道は補修中のため鎖が設置された岩場となっていたり、名物の200段近い急階段を下るので注意しましょう。最後にスマホで歩いた軌跡を左に90°倒してみると……奥多摩駅に繋がれた牛の姿にそっくりなGPSアートが出来上がっていますよ。
⑦奥多摩むかし道

コース概要
奥多摩駅(10分)→奥多摩むかし道入口(30分)→槐木(40分)→小中沢(10分)→境(10分)→白髭神社(20分)→惣岳(10分)→しだくら橋(20分)→道所橋(20分)→小河内ダムゲート(80分)→水根(20分)→水根バス停

氷川(現在の奥多摩駅周辺)から小河内(現在の奥多摩湖周辺)へと続く旧青梅街道も、奥多摩むかし道として森林セラピーロードに認定されています。この道はさらに奥多摩湖へ沈んだ小河内村や隣接する丹波山村を経由して大菩薩峠を越え甲府へ至る、甲斐国(山梨県)との交易路でした。
こうした歴史をもつ古道であるため、沿道には白髭神社・惣岳の不動尊などの社寺や、地蔵尊・道祖神・馬頭観音・牛頭観音などの石仏も点在しています。並行して流れる惣岳渓谷にはしだくら橋・道所橋などの吊橋もかかっており、四季折々の森と水の調和も魅力です。

現在の青梅線の終点は奥多摩駅ですが、実は小河内ダム建設の資材運搬のためにかつては奥多摩湖まで線路が延びていたのです。1952年から1957年のわずか4年半だけ利用されたこの路線には、険しい山間部を貫く23のトンネルとそれを結ぶ23の橋が設けられていました。
奥多摩むかし道の随所からも、トンネル・線路・橋桁・鉄橋などの遺構を望むことができます。もちろん現在は廃墟化が進んでおり奥多摩の豊かな自然に飲み込まれつつありますが、いにしえの古道とはまた趣の異なるノスタルジックな光景が魅力です。
一度は登りたい!奥多摩の名峰

ここまで様々なコースを紹介してきましたが、奥多摩エリアにはまだまだ魅力的な山が目白押しです。今回はいずれも関東百名山に選定されている3座を紹介します。
⑧山上のパワースポットと渓谷美・御岳山(929m)

コース概要
御岳山駅(10分)→東京都御岳ビジターセンター(30分)→御岳山(10分)→長尾平分岐(25分)→七代ノ滝(25分)→ロックガーデン(30分)→綾広の滝(30分)→長尾平分岐(5分)→武蔵御嶽神社(20分)→東京都御岳ビジターセンター(10分)→御岳山駅

標高842mの御岳山駅まで御岳登山鉄道のケーブルカーでアクセスできることから、奥多摩エリアで屈指の人気を誇るのが御岳山(929m)です。山頂に鎮座する武蔵御嶽神社は、創建が紀元前91年といわれる歴史ある神社です。
日本武尊(やまとたけるのみこと)がこの山で邪神と闘った際に彼を救った狼の化身は、今も大口真神(おほくちまがみ)として祀られています。江戸時代以降は魔除け・盗難除けにご利益がある「おいぬ様」信仰の山として数多くの人が登拝し、彼らを迎えた宿坊も多数営業しています。

御岳山の魅力は神社だけではありません。七代の滝〜ロックガーデン〜綾広の滝へと、多摩川最大の支流・秋川のさらに支流である養沢川源流部を歩く水辺の道はマイナスイオンたっぷり。荘厳な滝や苔むした岩など潤いに満ちた情景が広がります。
早春(見頃は例年3月中旬から4月上旬頃)の水辺を彩るハナネコノメの可憐な花、夏(見頃は例年7月下旬〜8月下旬)の木陰に咲く森の妖精・レンゲショウマの日本一の群生地、鮮やかな秋の紅葉(見頃は例年10月下旬~ 11月中旬)、冬は宿坊に泊まっての夜景鑑賞……。四季を通じて、楽しむことができる山です。
⑨迫力の滝と山頂からの絶景・川苔山(1,363m)

技術的難易度: ★★★☆☆
・ハシゴ、くさり場、雪渓、渡渉箇所のいずれかがある
・転んだ場合に転落・滑落事故につながる箇所がある
・ハシゴ、くさり場を通過できる身体能力が必要
・地図読み能力が必要
凡例:グレーディング表
コース概要
川乗橋バス停(80分)→細倉橋(85分)→百尋ノ滝(155分)→川苔山(25分)→舟井戸(70分)→大ダワ(70分)→大根ノ山ノ神(35分)→正法院(15分)→鳩ノ巣駅

奥多摩の山でも歩きごたえがあり変化に富んだルートとして人気なのが、川苔山(川乗山・1,363m)です。しかし入山者が多い分、山岳遭難が多発している山でもあり、注意点を交えながら解説していきます。
川乗谷から百尋の滝までは、気持ちの良い清流沿いの登山道となります。しかし川岸の狭い登山道や橋が点在しており、スリップによる転倒や滑落、谷への転落に注意が必要です。百尋の滝周辺も急斜面をトラバース(横断)する箇所が多く、転滑落事故が発生しやすいので慎重に歩きましょう。

川苔山の山頂は、特に西側の眺望が開けています。石尾根や長沢背稜に連なる山々の奥にそびえる東京都最高峰・雲取山(2,017m)の姿は、奥多摩の山の豊かさと奥深さを実感できる光景です。視界がクリアであれば、南西方向に富士山を望むこともできますよ。
下山は急峻な稜線となる鋸尾根や瘤高山へ入り込まないよう、舟井戸・大ダワの分岐をよく確認しながら、青梅線・鳩ノ巣駅へと向かいます。大根ノ山ノ神には小さな祠があり、長い下山を労ってくれているようです。
⑩奥多摩三山の一座・御前山(1,405m)

コース概要
奥多摩湖バス停(15分)→奥多摩湖いこいの路入口(95分)→サス沢山(100分)→惣岳山(5分)→栃寄分岐(20分)→御前山(10分)→御前山避難小屋(50分)→林道終点(20分)→栃寄ノ大滝(100分)→橋詰トンネル(5分)→境橋バス停
【小河内ダム 通行止めのお知らせ】(2026年8月15日現在)
ダム堰堤付近が崩落する恐れがあるため、小河内ダムが通行止めとなっています。奥多摩湖バス停から御前山への登山はできませんのでご注意ください。詳細は、奥多摩ビジターセンターの公式サイトをご確認ください。

三頭山(1,531m)・大岳山(1,266m)と並んで「奥多摩三山」と呼ばれているのが御前山(1,405m)です。劇作家・小説家・脚本家として活躍しつつ山を愛した田中澄江の著作『花の百名山』にも、カタクリの名山として選定されています。
奥多摩湖バス停から小河内ダムを渡り、まずはサス沢山(940m)をめざします。山頂から振り返ると奥多摩湖の青い水面が広がり、ここまでの急登の疲れを忘れさせてくれます。さらに稜線を登り、惣岳山(1,341m・高水三山の同名峰とは別)を越えると、御前山は目前です。

広々とした御前山の山頂にはベンチが設置されており休憩に好適。大岳山はもちろん、南方向には遮るもののない富士山も望むことができます。山頂直下にはトイレが併設された御前山避難小屋があるので、天候次第ではこちらで休憩してもよいでしょう。
苔むした巨岩を切り裂くように流れる栃寄ノ大滝(とちよりのおおだき)付近まで下れば、森の中をトラバースするような林道となります。栃寄森の家の駐車場まで進めば、さらに歩きやすい道が橋詰トンネルまで続き、境橋を渡るとゴールのバス停です。
安全に奥多摩の自然を楽しもう!

東京都内とはいえ、奥多摩の山々は深く急峻で地形も複雑です。死亡・重傷に至る転滑落事故や、道迷いによる行方不明事案も発生しています。都心からアクセスがよい山域という手軽なイメージだけで訪れるのではなく、事前に地図で無理のないルートであるかなど計画を立てて入山するように心がけましょう。
昭文社 山と高原地図 奥多摩 御岳山・大岳山
クマ対策もしっかりと

奥多摩は全域がクマの生息域です。2026年5月には約18年ぶりに登山者のクマによる人的被害があり、登山道が一時閉鎖されました。しかしこれまでの事例はいずれも子グマを連れた母グマに近距離でばったり遭遇したもの。事前の情報収集や、熊鈴など自身の存在を知らせるアイテムを携行するなど「正しく恐れて」登山を楽しんでください。



