うっかり触らないで!”真っ赤なクワガタ”の姿をもつ謎多き「ヒラズゲンセイ」の生態と応急処置

2021/05/06 更新

クワガタに似た真っ赤な昆虫を知っていますか?その名はヒラズゲンセイ!キムネクマバチに寄生しながら成長し、その生態はいまだに不明なことが多い貴重な昆虫です。今回は、毒液を出すことでも知られるヒラズゲンセイの生態や、触れてしまった時の応急処置をご紹介します。

アイキャッチ画像出典:photolibrary

黄色の体液に要注意!ヒラズゲンセイとは

撮影:西海太介
ひときわ目立つ特徴的な赤い色の昆虫「ヒラズゲンセイ」。全国に分布しているわけではないので、初めて目にする方も多いのではないでしょうか。
ヒラズゲンセイは鮮やかな朱色をしており、特にオスは頭部と大顎が大きく、その姿は真っ赤なクワガタ“と称されることもあります。

大きさは18〜30mmほどで、顎や足、触覚は艶のある黒色。クワガタやカブトムシと同じ甲虫で、ツチハンミョウ科の仲間です。東南アジアから日本まで広く分布する種類ですが、これまで日本では西日本の一部でしかみられなかったことから、あまり有名な虫ではありませんでした。

子どもや虫好きの方であれば、思わず捕まえに行ってしまいそうですが…絶対触らないで!!
今回はヒラズゲンセイの生態、うっかり触れてしまった際の応急処置について学んでいきましょう。

クマバチに寄生するヒラズゲンセイ

キムネクマバチ
出典:PIXTA(キムネクマバチ)
ヒラズゲンセイの生態特徴として、“キムネクマバチに寄生”する習性が挙げられます。

ヒラズゲンセイはキムネクマバチの巣の側で繁殖行動を終えると、そのまま巣に忍び込んで産卵。孵化した幼虫たちは、クマバチが集めた花粉団子をエサとして成長していきます。幼虫の時に一度クマバチにしがみついて巣から出ていき、どこかで過ごしたのちに再びクマバチの体に付いて巣に戻ることが確認されています。

その後、サナギから成虫になるまでクマバチの巣に寄生。謎の多い生態の全容は未だに解明されていません。過去の研究者によると、羽化直後のヒラズゲンセイはホオズキに似たニオイがするんだとか…。

温暖化とともに北上中?

関西地域クローズアップ
出典:PIXTA(関西地域)
もともとヒラズゲンセイは、九州や四国などの温暖な地域で発見され、特に高知では多くの数が発見されていました。
しかし、最近では滋賀や京都あたりまで北上しながら分布を拡大中。北上についてはまだ謎が多く、温暖化によってクマバチとヒラズゲンセイの生活周期に、なんらかの変化が起きたことが原因とする見解もあります。

ヒラズゲンセイの生息場所と活動時期


遭遇しやすい生息場所と時期

出典:photolibrary
ヒラズゲンセイの活動時期は、5月中旬から7月下旬ごろとそれほど長い期間ではありません。広葉樹林や時には街中の公園でも見かけることがあります。寄生するキムネクマバチが巣を作るサクラやマツの立ち枯れした木で発見されることが多く、木造家屋やあずまやの軒下で見かけることも。

幻の昆虫、ヒラズゲンセイ

ヒラズゲンセイ
撮影:西海太介
国内では、1936年に高知県で初めて発見されたヒラズゲンセイ。まだ生態について謎が多く、幻の昆虫と呼ばれることもあります。生息数も少なく、貴重な昆虫ということもあって、高知県では「県の準絶滅危惧種」に指定。

出会うことも稀な昆虫なので、登山道にいることはあまりないですが、キムネクマバチが巣を作るエリアではみかけることもあるかもしれません。

関節から出す黄色の体液に注意

出典:photolibrary
貴重な昆虫、ということもあり、その目を引く赤い姿にうっかり手を出してしまうと危険。
実は、ヒラズゲンセイは外敵から刺激を受けると、足や体の関節から毒を含んだ黄色い体液を出します。体液には「カンタリジン」という有毒物質が含まれ、肌に触れるとかぶれたり水ぶくれができる可能性もあるので要注意!

ヒラズゲンセイに遭遇したら

止まったらそっと振り払おう

出典:photolibrary
万が一、登山中にヒラズゲンセイが体に止まってしまった場合は、体液が肌につかないようそっと振り払いましょう。驚いて、勢いあまって払ってつぶしてしまうと、ヒラズゲンセイの体液が肌につく可能性がありますので慎重に。

出会っても興味本位で触らない

出典:PIXTA
基本的には、ヒラズゲンセイから人間に危害を加えることはありません。真っ赤な珍しい虫だとこちら側から近寄り、興味本位で触らない限り危険はありません。山中で遭遇した場合には、そっと遠くから観察する程度にしておきましょう。

毒液に接触した時の応急処置

出典:photolibrary
不運にも、ヒラズゲンセイの体液に触れてしまった場合に備えて、応急処置の方法をチェックしておきましょう。

①患部を水洗い

水洗い
出典:PIXTA
ヒラズゲンセイの体液に触れてしまったら、すぐに水道水で患部をよく水洗いしましょう。水道がない場所ではペットボトルや水筒の水でできる限り患部を洗い流します。このとき、ざっと洗うのではなく、たくさんの水でしっかりと洗えば洗うほど効果的です。

②ステロイド軟膏を塗布

ステロイド軟膏塗布
出典:PIXTA
よく水洗いしたら、体液に触れた患部に抗ヒスタミン配合のステロイド軟膏を塗ってください。その後水ぶくれやかぶれが酷くならなければ、経過観察で大丈夫でしょう。

【抗ヒスタミン剤を含むステロイド剤例】

ITEM
ムヒアルファEX
【第2類医薬品】
効能・効果:かゆみ、しっしん、皮ふ炎、かぶれ、あせも、じんましん、虫刺され
用法・用量:一日数回、適量を患部に塗布してください
※医薬品は使用上の注意をよく読み用法・用量を守って正しくお使い下さい

③重い症状の場合は病院へ

病院イメージ
出典:PIXTA
水洗いやステロイド軟膏を塗布する等の応急処置をした後も、かぶれや水膨れが酷い場合は病院を受診した方がよいでしょう。体液がついた手などで目などの粘膜を触って症状がある場合も、受診をおすすめします。

攻撃性はゼロ、でも手を出してはダメ

兵庫県の山中
出典:PIXTA(兵庫県の山中)
まるで真っ赤なクワガタ、そんな見た目にちょっと触ってみたい!子どもなら昆虫採集として家に持ち帰りたいと思うかもしれません。
でも、ヒラズゲンセイには毒があります。
『知ることは最初の事故予防』
この虫は知っているだけで事故を防げます。離れた場所から観察するだけにとどめ、そっとしておいてあげましょう。

今回教えてくれた人

ウミ先生
提供:西海太介
一社)セルズ環境教育デザイン研究所|西海太介氏
神奈川県横浜市生まれ。
『危険生物対策』や『アカデミックな自然教育』を専門とする生物学習指導者。
 
昆虫学を玉川大学農学部で学んだ後、高尾ビジターセンターや横須賀2公園での自然解説員経験を経て、2015年「セルズ環境教育デザイン研究所」を創業。
現在、危険生物のリスクマネジメントをはじめとした指導者養成、小中学生向けの「生物学研究コース」などの専門講座を開講するほか、メディア出演や執筆・監修、中華人民共和国内の自然学校の指導者養成を行うなど幅広く携わる。
監修書籍に『すごく危険な毒せいぶつ図鑑』(世界文化社)。
著書に、『身近にあふれる危険な生き物が3時間でわかる本』(明日香出版社)など。

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emi

山や自然が大好きで、今までにたくさんの楽しみや感動をもらってます。山で見る満天の星空と朝焼は格別!大自然のパワーを多くの人に感じて欲しいです。読んだ人が、山に行きたくなるような記事を執筆できるよう頑張ります。

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