【山だビールだ酒盛りだ!】その前に知りたい、山で悪酔いしないコツ

2019/07/23 更新

山で飲むお酒、とりわけ山頂についた直後のビールのおいしさは格別ですよね。でもうっかり調子に乗って飲みすぎてしまったことはありませんか?高所での気圧の変化に始まり、発汗による脱水や疲れなど、登山後の飲酒には「悪酔い」を引き起こす原因がいっぱい。今回は白馬診療所で登山者の体調を診てきた先生に、「悪酔いしないコツ」をうかがいました!


アイキャッチ画像撮影:YAMA HACK編集部

山頂のビールはうまい!!!でも飲みすぎると……

撮影:YAMA HACK編集部
蒸し暑い樹林帯を越え、遠くに見えていた山小屋に着いたときに飲むビールのうまさは、吞兵衛の登山者にとって最高のご褒美。

でも山頂に着くのは午後はやい時間帯。寝るには早いしもう1杯、いやいや柿ピーもあるしさらに1杯、おっと焼き鳥缶ですか!と追加で1杯……。そんなこんなで「酒に飲まれた」経験、みなさんもありませんか?

YAMA HACK編集部でも聞いてみたところ、猛者たちの“やらかしエピソード”がすぐに集まりました。

ケース① 「ワインいかがですか?」。おごられ酒に飲まれてしまった(編集F)

出典:いらすとや
燕山荘でたまたま近くで飲んでいたおじさまに五一ワインをごちそうになり、どれくらい飲んだか覚えてないんですが、記憶なくすくらい飲んでしまって、夜中気持ちが悪くて起きました。が、その日は山小屋が混んでいて、トイレに行ったら寝場所がなくなって戻れなくなりそうだったので、一晩中気持ち悪さと戦い続けました……。翌朝のお味噌汁がおいしかったです

ケース② 担いだ分は飲み干す!その心意気がアダとなった(編集K)

出典:いらすとや
残雪の涸沢に食べ物や酒をめちゃくちゃ担いでいって宴会してたんですが、達成感と絶景でテンション上がって焼酎を水のように飲んだら、その晩シュラフ内でびっちゃびちゃに汗かいてシュラフが濡れて寒かった、もう二度と山であんなに飲まないと決めたできごとでした

ケース③ 「山頂なんて登らなくてもいい……」。翌朝の山行が苦行に(編集R)

出典:いらすとや(作成:YAMA HACK編集部)
初テント泊の爺ヶ岳~鹿島槍。ビール2本目あたりから記憶がなくなり、友人がそっと荷物や靴を片付けてくれていた。翌朝の気持ち悪さは言うまでもなく、鹿島槍はパスしようとしたが、友人の励ましでかろうじて登頂できました

 

山で飲みたいのは人情。でも「悪酔いしない飲み方」があれば知りたい!

「テントとトイレの往復」なんてせっかくの山行がもったいない!!でもお酒は飲みたい!!
そこで思ったのです、「悪酔いしない飲み方」を学べば、いいんじゃないかと……。

長年登山者の体調を診てきた「昭和大学白馬診療所」に訊いてみました

提供:昭和大学白馬診療部
取材を受けてくださったのは、昭和大学白馬診療部。
毎年白馬岳にある日本最大の山小屋・白馬山荘に「夏山診療所」を開設し、登山者や観光客の救護や応急措置を行っていますが、その歴史はなんと1931年にさかのぼります。この診療所は医学生と医師・看護師のボランティアによって運営されています。
今回は長年診療所の活動に携わり、登山医学に関する研究を行っている三輪裕介先生(昭和大学医学部准教授、リウマチ膠原病内科)に教えてもらいました

編集部
村岡
ところで先生。北アルプスでも人気の白馬岳。登山者も多ければ、お酒で診療所にお世話になる人も多いのですか?

三輪先生
実はあまり多くありません。昨年は10人ぐらいです。そのうち、高山病様の症状を合わせていた患者さんは8人、外傷(けがなど)を合わせていた患者さんは2人でした

「悪酔いしても診療所に来るほどではないのかもしれません。登山の技術や経験によるのかもしれませんが、白馬岳を目指す方々は標高とアルコールや自己の身体機能についてある程度予測と管理ができているように思われます。
登山はスポーツであり、生命の危険も含めたものと理解している方々が白馬岳レベルを目指しているともいえるのかと思います」

まず「山と平地の違い」を心得ましょう

出典:PIXTA

質問1 山では酔いのまわり方が早い気がするのですが……

編集部
村岡
平地(街)と山(高所)では酔いのまわり方が違うという実感がありますが、これは事実でしょうか? また酔いやすいのはどういう理由からでしょうか?


三輪先生
平地(街)と山(高所)では酔いのまわり方が違うのは事実です

「これにはいろいろな理由が考えられます。まず、標高が高くなると気圧が低くなります。酸素も薄くなります。どのくらいの標高から変化を感じやすいかは個人差がありますが、3,000m級であれば、ほとんどの人が感じます。
また、長時間歩いたことによる疲れ、アルコールによる利尿作用、脱水も加わって酔いやすくなります

下の表は、渋谷区と白馬岳頂上の気圧を比較したもの(海面気圧は1013.25=1気圧、気温は1kmにつき6.5℃低下で計算)。こうやって数値で見ると、標高によって気圧が下がることがはっきりとわかります

参考サイト:keisan

質問2 山の酒酔いは症状が違いますか?

編集部
村岡
通常の酒酔いでは、嘔吐・発汗・頭痛・下痢などの症状が考えられますが、山での酒酔いでは症状に違いはありますか?

三輪先生
症状は変わりありません。しかし、高山病を合併していることも多いです。高山病と見分けがつかないことがあります


高山病は頭痛が最もポピュラーな症状ですが、食欲不振や吐き気、倦怠感やめまいなど、悪酔い(二日酔い)の症状ともかなり似ています。お酒を飲むことで「高山で体調が悪い」ということを見逃してしまいそうですね。

質問3 山で悪酔いすると、どんな危険がありますか?

編集部
村岡
最悪どういったリスクが考えられますか? また持病がある場合、症状悪化や重篤化しやすいことはありますか?

三輪先生
アルコールが回りやすいので、通常の酒酔い以上に症状が強く出ます

「脱水症状はもちろんのこと、テント場で悪酔いした場合、転倒によるけが、火の不始末などがあります。飲酒しながら登山する方はまずいないので、登山途中で滑落することはありませんが、やめましょう。
持病がある場合、単なる悪酔いなのか持病が悪化したのか判断できないので、無理は禁物です」

テント場とトイレが離れているということはよくあります。ヘッドライトを付けていても歩きづらい夜の道、トイレに行く回数の分だけ転倒のリスクも増えますね。

悪酔いを防ぐためにできることはあります

出典:PIXTA

質問5 悪酔いしないお酒の種類や飲み方、適量はありますか?

編集部
村岡
山では最初はビール、そしてはるばる持ち込んだワインや日本酒、果てはウイスキーといろんなお酒をちゃんぽんしちゃうんです(反省)。どんなお酒の飲み方だったら悪酔いしにくいですか?


三輪先生
山頂に到着した時は脱水になっているので、先に水分をとってからお酒を飲みましょう

「また高山病予防のために、山頂に到着してすぐに横になって休まないことです。深呼吸を繰り返して、高地の環境にからだを慣らしましょう。そのあとも山行を続ける場合には、あまり多く飲まないようにしましょう。
脱水になりやすいので、お酒のあと水などを飲んで脱水を補いつつアルコールを薄くしましょう。なので、アルコール度数が高いお酒は避けたほうが良いです

質問6 飲むのを控えた方がいいのはどんな時ですか?

出典:PIXTA
編集部
村岡
そういえば、悪酔いするときって暑くて汗をたくさんかいたときとか、体調が自分でも微妙かな?って兆候があるんですが……


三輪先生
高山病の症状があるとき、風邪の症状があるときです。また、とても疲れているとき、脱水になっているときも控えましょう。
雨に打たれた時は低体温になりやすいので、水分の補給を優先しましょう

質問7 お酒を飲む登山者に伝えておきたいことはありますか?

編集部
村岡
気分の高揚感もあり、ついつい飲んでしまうお酒。でもリスクを冒してまで飲むのはご法度ですよね。登山者が心に留めておくといいことはありますか?


三輪先生
「飲んだら乗るな」という標語のように、「飲んだら、水分プラスで危険減少&安全な楽しい登山」とつぶやいてもらえるといいですね

山で悪酔いしないための4カ条
・深呼吸して、体を高地に順応させる
・まずは歩行時の脱水を解消するために水を飲む
・お酒を飲むときは、水でアルコールを薄めながら!
・高山病の疑いがあるときや体調が悪いときは自粛することも必要

悪酔いさえしなければ、山のお酒は最高です!

出典:PIXTA
登山での悪酔いは、何か特別なことをするというのではなく、「平地と高山という環境の違い」「脱水や疲労など普段との体調の違い」に十分注意を払う、ということで防げるもののようです。

最後に医師でもあり登山者でもある三輪先生ご自身の「登山とお酒のエピソード」をうかがいました。

三輪先生
夕暮れ時、雲海の上の山に太陽が沈んでいくのをみながら一緒に登山した仲間と飲んだお酒は自己陶酔しそうでした。『よくここまで登ってきたなぁ~、地球にいるんだなぁ』と生きているという濃さがありました

しかしお酒と水分をたっぷりとったその後……トイレまでの暗い道を恐々歩き、あっという間にトイレを済ませたことは、今となっては苦笑いできる山での良い思い出です



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YAMA HACK編集部 村岡

YAMA HACK運営&記事編集担当。スキー好きが嵩じて北アルプス山麓に移住し、まんまと夏山登山にもはまる。アクティビティとしての登山の楽しみとともに、ライフスタイルとしての「山暮らし」についても発信していきます。

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