現場判断だけでは見落とすかも!事前に地形図から読み取れる雪山ならではの「リスク」って?

2021/04/14 更新

アイキャッチ画像出典:PIXTA

雪山でホワイトアウトになっても、自信を持って歩ける?

撮影:筆者(西穂高岳独標手前から望む朝日)
夏はアルプスや八ヶ岳などの縦走を楽しんでいるけど、雪山は始めたばかり。地図から雪山の状態はどうなっているかわからないからと、現地へ行ってから、雪庇や雪崩など注意すべきポイントを把握していませんか?

ただそんな時、もしも天候が悪化して、ホワイトアウトになってしまったら……

撮影:筆者
こんなふうに辺りが真っ白になってしまうこともあります。これでは現場でも雪山の状態がわからず判断ができなくなってしまいますね。

進むべき方向がわかったとしても、知らぬ間に雪庇を踏み抜いてしまったり、誤った尾根に進んでしまったりと事故に繋がってしまう可能性があります。

こんな時でも自信を持って歩けるように、しっかりと準備をしておくことが大切です。

知ってると知らないとでは大違い!事前に予測する雪山のリスク

撮影:筆者
たしかに雪庇や雪崩など、その場の状況を見て、進む道を決めることも大事。

ただ雪で埋まってしまっているため、周りの地形や景色で判断できない可能性が高く、そこに潜んでいるリスクを見落としてしまいやすいのが雪山の特徴です。

「この道は大丈夫!」と自信を持って進むためにも、地形図を見て、チェックすべきポイントを洗い出しておくことが大切。
そうすることで滑落や雪崩のポイント、道の状況を事前に予想でき、当日も状況に合わせて的確な判断ができるようになるのです。

そこで今回は、事前に地形図から読み取れる「雪山ならではのチェックポイント」をご紹介。
実際の地形図を使って、どんなリスクが考えられるのか、現場はどうだったかを実際の写真と比べてみましょう。

事前に見逃さないで!雪山ならではの2つのチェックポイント

地形図から情報を得ることは、「読図」とか「地図読み」といいます。「見る」ではなく「読む」という字が当てられている通り、地形図に込められているさまざまな情報を読み解くのは立派な登山技術です。

夏山で地形図を読める人も、雪山となるとチェックするポイントが変わってくるので、その違いをしっかりと押さえる必要があります。

①冬の季節風は北西から吹くことを念頭に、雪や風がどう動くかを想像する
②地図記号から注意ポイントを読み取る

それぞれ詳しく見ていきましょう。

冬の季節風は北西から吹くことが多い!雪や風がどう動くかを想像してみよう

冬に天気予報を見ると、「西高東低の気圧配置」「縦縞模様の等圧線」といった言葉をよく聞きます。冬の時期は、大部分がこのような気圧配置。

難しい!と感じるかもしれませんが、簡単にいうと北西からの風が多いということです。

天候状況も考えながら地形図をみると、山の状態を想像できるようになります。


撮影:筆者
たとえば北西から風が吹くことを念頭に、左の地形図を見てみましょう。山が谷になっている部分で雪が吹きつくと予想すると、右側には雪が溜まり、雪庇ができやすいのではと予測が可能。

実際の写真を見ても、左側は吹きさらしになってあまり雪がついていないのに対して、右側は雪が吹き溜まって雪庇ができているのがわかります。

②地図記号から注意ポイントを読み取る

夏でも目印やポイントの把握のために、地図記号を確認しますよね。代表的な7つの地図記号から、雪山だからこそ読み取れるリスクを見てみましょう。


出典:国土地理院の地図記号を使用して作成 ※ツリーホールとは木の周りにできる穴。ハマると自力で抜け出せないこともある。
慣れないうちは、ルート上の地図記号をマークして、チェックすべきリスクを書き込んでおくと、現地の様子と比べられるのでオススメです。

▼地図記号をおさらいするなら、こちらをチェック

いくつ見つけられる?地形図からリスクを予測してみよう

作成:筆者(西穂高岳独標周辺の地形図)
それでは早速、雪山を想定して、実際に地形図からリスクを予測してみましょう。ここでは例として、新穂高温泉からロープウェイを使って北アルプス西穂高岳の独標へ登ることを想定。

・前半|西穂高駅〜西穂山荘
・後半|西穂山荘〜西穂高岳山頂

前半と後半のルートそれぞれに考えられるリスクを書き込んでみましょう。答え合わせは、次のページで!

【前半】西穂高駅〜西穂山荘|6つのポイントをチェック

作成:筆者

1:ロープウェイ乗り遅れ注意(とくに初便や最終便)
2:ロープウェイで一気に標高が上がるので高度障害に注意
3:尾根が広くて迷いやすい
4:分岐ありだが、道標は埋まっていてわからない可能性もある
5:急登のため、汗冷えに注意。急斜面のため雪崩の可能性もある
6:樹林帯を抜けるため、風・雨・雪に備える


各チェックポイントを詳しく見ていきましょう。今回は実際の場所の写真も合わせて紹介していきます。

ポイント1〜3|ロープウェイなどに関する注意/尾根が広い部分は道迷いの恐れあり

地形図から読み取れること
1-2:冬山だから、というわけではないですが、計画段階においてロープウェイに乗ることのリスクを把握しておきましょう。

3:地形図から起伏の少ない広い尾根であることがわかります。夏は登山道を歩けば良いところでも、降雪具合によっては、トレースがないとルートを見失う可能性あり。


●実際の登山道の様子をチェック
撮影:筆者(ポイント3 トレースがあったので、道はわかりやすかったが降雪後でトレースが見つからない場合は判断が難しい)
今回のルートは、通年営業の山小屋が設置してくれていた目印の赤旗がありました。よっぽどの大雪でもない限り、トレースには痕跡が。しかし一般的に、このように尾根が広がっているところでは、地形が雪で埋まってしまうため、ルートを把握するのが難しいです。

そんな時は何度の方角に直線的に何m進むという方法で、目的地を目指しましょう。トレースがない場合に備えて、事前に進む方角と距離を細かく書き込んでおくのもオススメです。

ポイント4|分岐はポイントになるが、見落とす可能性も考えておく

地形図から読み取れること
4:分岐あり。ただし北から合流する登山道は、2,171mのピーク北側で急斜面をトラバースするように道がついているので、冬であれば滑落や雪崩のリスクが高く、使われていない可能性が高い。道標が雪に埋まって見つからないこともありうる。


●実際の登山道の様子をチェック
撮影:筆者
予想した通り、雪に埋まっているためか、分岐の看板は見つかりませんでした。

ポイント5|急斜面は雪崩の可能性がある

地形図から読み取れること
5:等高線の間隔が狭くなっていることから急登とわかる。雪崩のリスクがある。


●実際の登山道の様子をチェック
撮影:筆者
地図記号から樹林帯であることがわかります。樹林帯での急登は、木の生え方や斜度によって雪崩の可能性も。
正確に等高線の間隔を測れば、斜度を計算することもできるので、雪崩のリスクを考える上で参考になります。

実際に行ってみると、積雪状況によってはたしかに雪崩の可能性がある斜度。ただ木が密に生えている部分がほとんどで、あまりリスクは高くなさそうでした。

ポイント6|樹林帯を抜けるので防寒具を用意

地形図から読み取れること
6:西穂山荘手前で地図記号「広葉樹林」から、背丈の低い「ハイマツ帯」に変わっていることから、樹林帯を抜けることがわかる。風に曝される可能性がある。


●実際の登山道の様子をチェック
撮影:筆者
実際も樹林帯を抜けて、吹きさらしの中を進みます。天候によっては、吹雪に備えてにジャケットを着たり、帽子やフードをかぶったりする必要も。

写真を撮った日は荒れていたので、樹林帯を抜けてから小屋までの距離も吹雪かれ、進むのに時間がかかりました。事前にわかっていれば、万全に備えた上で樹林帯を抜けられますね。

【後半】西穂山荘〜西穂高岳山頂|7つのポイントをチェック

作成:筆者

7:山頂までハイマツ帯。雪が浅いと踏み抜いたり、足を取られたりする可能性あり。風も直接当たるので、低体温症や凍傷にも注意。
8:西側は崖になっているので滑落に注意。
9:尾根が広くて迷いやすい。
10:砂礫地。稜線で雪があまり着かないので石や岩が出ているかも。
11:登山道がこの尾根を回り込むようについているので、間違って進んでしまう可能性あり。
12:東側にできる雪庇踏み抜き注意。
13: 西側斜面のトラバースは雪面が固くなっていそう。滑落リスクがあるので尾根通しに歩いた方が安全。
14: 岩稜なので滑落に注意。

それでは、こちらも各チェックポイント詳しくみていきましょう。

ポイント7〜8|ハイマツ帯ではアイゼンを引っ掛けないように注意

地形図から読み取れること
7:ハイマツ帯。枝にアイゼン引っ掛けたり、踏み抜いたりして足を怪我しないように注意が必要。吹きさらしの稜線なので、低体温症や凍傷にも留意。
8:西側は崖になっているので滑落に注意。


●実際の登山道の様子をチェック
撮影:筆者(小屋の直上)
岩やハイマツが出ていたり、浅く埋もれてわかりにくかったりと、引っかけてしまいそうな道でした。

ハイマツが雪に隠れているか出ているかで、景色や歩きやすさはかなり変わります。稜線は北西の季節風が強く当たるためか、雪はあまりついていませんでした。

ポイント9〜10|尾根の広い場所は道迷い、砂礫地は歩行に注意

地形図から読み取れること
9:尾根が広くなっているので、視界がなく、トレースがない場合は道迷いに注意。
10:「砂礫地」で雪面から石が出ている場合もあるので、足をひねらないように注意。


●実際の登山道の様子をチェック
撮影:筆者(吹きさらしの稜線で雪煙が立っている)
2,452mピーク(丸山)までは、多くの方が行くので赤旗が目印に立てられていました。ただそれより上部には目印の旗はなし。視界がなくトレースもない場合には、コンパスで進む方向を定めなければ、とんでもないところに迷い込んでしまうこともあるでしょう。

石が出ているところは、丁寧に足を置かないとつまづいてしまいます。いつでも地面に沿わせて足を置けるように、意識して歩きましょう。

ポイント11|下りの道迷いに注意。下りのことも考えてリスクを洗い出そう

地形図から読み取れること
11: 下る時、登山道が図に示した尾根の方にいったん向かった後でまた主稜線の方向に向きを変えるので、視界が悪い場合にはこれらの尾根に迷い込む可能性がある。


●実際の登山道の様子をチェック
撮影:筆者
雪も降っていて視界が悪い時には、先の様子もわからず、来た時のトレースも消えている場合も。

写真は独標より上部のものです。この写真を撮った日には、図で示した尾根に間違って下ろうとしていた数組の登山者を引き留めました。

ポイント12~14|積雪期のルート変更、岩稜での注意

地形図から読み取れること
12:稜線の東側に崖があるので、稜線の風下で風が巻いて雪庇ができている可能性あり。
13:狭い稜線の西側をトラバースするように登山道がついている。西側斜面は固い雪面になるので、滑落のリスクを低くするために尾根通しを歩いた方が安全かもしれない。
14:岩場の急斜面。岩が出ているかもしれない。急なルンゼ(岩溝)になっていれば雪崩のリスクもあるかも。


●実際の登山道の様子をチェック
撮影:筆者
独標中腹から振り返って下を見た稜線。無雪期の登山道は黄色ですが、固く締まった雪で道が覆われると滑落のリスクが大きいので、稜線通しに赤線を歩きました。

左側(東側)に雪庇ができているのもわかります。

撮影:筆者(独標を間近に望む)
撮影:筆者(独標直下の岩場)
独標直下の岩場では、岩がむき出しになっています。このような場所では、アイゼンの爪を岩に引っかけて立ちこむ必要が。慣れないメンバーがいれば、迷わずロープで確保しましょう。

自信がなければ、すぐそこが山頂でも撤退する勇気も必要です。

撮影:筆者
岩場を抜けると急な雪面に。大雪の後は雪崩のリスクがあります。

また、確実なアイゼンピッケルワークが必要です。登りはなんとか登ったものの、下りは怖くておっかなびっくりという方はかなりいます。登りながら時々振り返って、下りも問題ないか、冷静に自分の技術と相談しながら先に進みましょう。

事前に調べて「リスク」を先読み!雪山を安心安全に楽しもう

撮影:筆者
地形図を読むことで、ガイドブックには書かれていないようなことまで細かく予測できました。事前にチェックすることで、リスクだけでなく必要になりそうな装備も見当づけられますね。

最初は難しいかもしれませんが、一部分でもよいので自分なりにやってみることが大事です。指導者やガイドについて行く時に、事前に下調べをした上でいろいろ質問していくと、だんだんとできるようになってきますよ。

山を自分の力で登れるようになるので、山行中も気持ちに余裕が持てるようになります。事前にしっかり準備をして、安心安全に雪山を楽しみましょう。

地図読みは実際にやることが大切です!講習会への参加もオススメ

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田村茂樹

登山ガイド/山伏。生き方に悩んでいた自分を救ってくれたお山に恩返ししたいと登山ガイドになる。日本の登山のルーツである信仰登山を再び日本によみがえらせることを夢見ている。大学で地学の研究をしていたため、地質や地形の解説も得意。https://www.tam-mountainguide.com/

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