みんなは登山中の「手」、どうしてる?
登山の時、みなさんの『手』はどこにありますか? ザックのショルダーベルトを両手でギュっと持ったり、背中の汗がすごくてザックとの接地面に手を挟む……なんて方もいるのではないでしょうか?
実は、そんな「手の所在」が登山のしんどさに深く関係しているそう!? 今まであまり意識したことのなかった人はちょっと驚きかもしれませんが、知っておくと次回の登山からきっと役に立ってくれるはず。きつい登りで少しでも楽になる体勢とは、いったいどんなものなのでしょうか?
実験! バランスが取りやすい体勢は?
まず大前提として、両手を離してフリーな状態にしている方が、体のバランスは取りやすくなります。
片足立ち実験
編集部で片足立ち実験をしてみました。まずは両手をぶらんとさせて片足立ち。
続いて、両手を腰に当てた状態で片足立ちすると、ちょっとぐらつきます。複数人試しても前者の方が圧倒的にバランスが取りやすく、いかに両手で体のバランスを取っているかがわかりました。
“腕組みが楽ちん説”はほんと?
では、きつい登りを攻略したい時に楽な手の位置はいったいどこなのでしょう。みなさんは、ガイドさんや歩荷さん、重い荷物を背負った山岳部の部員達が、登山中腕を組んでいるのを見たことありませんか? もしかしたら「よくやる!」という方もいるかもしれません。あの姿勢、重い荷物やきつい登りを攻略するためのヒミツが隠されていたんです。
普通に歩くのと腕組みして歩くの、どう違うの?
通常歩行 | 腕組み歩行 | |
---|---|---|
歩行速度 | + | – |
歩幅 | + | – |
体幹の回旋 | + | – |
骨盤の回旋 | – | + |
バランス力 | + | – |
上記のようなデータがあります。これは、通常歩行と腕組み歩行の効果を表にしたもの。ほとんどの項目で通常歩行に軍配が上がっていますが、腕組み歩行は唯一『骨盤の回旋』が通常歩行に比べて勝っています。これはいったい、どういうことなのでしょうか?
「肩で風を切る」などという言い方もあるように、通常手を振って歩いていると上半身を左右に振って前進します。イメージとしては体の芯(体幹)も、それにより右、左と回旋しているイメージ。
これが、腕を組むことにより上半身の回旋がロックされます。それにより、前に進むには骨盤から下の下半身を動かさざるを得ません。そのため、腕組み歩行は骨盤の回旋が勝るのです。
体幹がブレないと疲れにくい!
登山は平地のウォーキングよりも歩行速度が遅く、歩幅が小さいです。さらに、重いザックを背負っているので、上半身が左右に振られると疲れやすくなります。そのため、体幹の回旋は小さい方がよく、その動作を行いやすくするために腕組み歩行が「楽」だと感じることが予想されるのです。
また腰パッドに手を置いたり、ポケットに手を入れたりという動作も無意識に行ってはいませんか? これも同様の理由が考えられます。
両手が塞がることの危険性
しかし、ここで思い出して頂きたいのが先ほどの片足立ち実験。バランスが取りやすいのは、間違いなく両手が空いている状態です。そのため、険しい岩稜帯や木の根が張り出した樹林帯など、足元が不整地であるほどつまづく可能性は大きくなります。そんな時、両手が塞がっていれば怪我の原因になることは想像に難くありませんよね。
また、疲労がたまってくると「自分が思ったより足が上がっていなかった」という理由で段差や岩、枝などに引っかかり転倒、というケースも珍しくありません。咄嗟の出来事に手を出せない状況はとても危険です。
以上をふまえた上で、比較的隆起のない登りの道で『きつい!』と感じたときのみ、上半身がブレない(体幹が回旋しない)ような体勢になるのはOK。険しく切れ落ちた岩場、ガラ場、足場の悪い箇所では避けましょう。
ガイドに聞いてみた! 腕が楽になる裏ワザ、ある?
一般の登山者に比べ、山に入る日数が圧倒的に多いガイドさんたちは、何か“楽な手の位置”を知っているのでは……? そこで、社団法人日本山岳ガイド協会認定国際ガイド/フランス国家認定アルパインガイドの熊田光治ガイドに聞いてみました。
力を抜いた状態で両腕の重さを支えることは、少なからず負担になります。また、血流が下方に行きすぎて疲れたり、手がむくむことも。そんな時は手を曲げて休ませてあげるのがいいのだそう。
持っているスリングや、もしヌンチャクがあればこんな風にザックのショルダー部分につけて親指を引っかけると、グッと楽になります。
また、ミレーのザックにはもともと『ハンドレストループ』といってその名の通り手を休めるための輪っかが付属したザックもあります。
ミレー サースフェー 30+5
素材 | ナイロン 210 CORDURA® OX |
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重量 | 1500g |
サイズ | W27_H64_D17cm |
バックレングス(背面長) | M=48cm, L=51cm |
キャパシティ | 30+5L |
使い分けが、攻略のカギ!