6月だけの特別企画 ココヘリ入会金無料キャンペーン 今すぐ申し込み
腕組み歩行

死ぬほどきつい急登を攻略!登ってる時の「手」はどうするのが正解?

みなさんは登山中、どこに手を置いていますか? ぶらぶらさせている人もいれば、ショルダーベルトをぎゅっと掴んだり、腰パッドに親指を入れて体重をかけている方もいるかと思います。今回はそんな『登山中の手の位置』に着目! みなさんが無意識にとっているその体勢、実は登山が楽になる秘密が隠されていた!? きつい登りを攻略するための『手の位置』を解明していきましょう。

目次

アイキャッチ画像撮影:YAMA HACK編集部

みんなは登山中の「手」、どうしてる?

男女の登山者

出典:PIXTA

登山の時、みなさんの『手』はどこにありますか? ザックのショルダーベルトを両手でギュっと持ったり、背中の汗がすごくてザックとの接地面に手を挟む……なんて方もいるのではないでしょうか?

手の所在

出典:PIXTA

実は、そんな「手の所在」が登山のしんどさに深く関係しているそう!? 今まであまり意識したことのなかった人はちょっと驚きかもしれませんが、知っておくと次回の登山からきっと役に立ってくれるはず。きつい登りで少しでも楽になる体勢とは、いったいどんなものなのでしょうか?

実験! バランスが取りやすい体勢は?

まず大前提として、両手を離してフリーな状態にしている方が、体のバランスは取りやすくなります。

片足立ち実験

片足立ち

撮影:YAMA HACK編集部

編集部で片足立ち実験をしてみました。まずは両手をぶらんとさせて片足立ち。

両手を腰に

撮影:YAMA HACK編集部

続いて、両手を腰に当てた状態で片足立ちすると、ちょっとぐらつきます。複数人試しても前者の方が圧倒的にバランスが取りやすく、いかに両手で体のバランスを取っているかがわかりました。

“腕組みが楽ちん説”はほんと?

腕組みで歩く

撮影:YAMA HACK編集部

では、きつい登りを攻略したい時に楽な手の位置はいったいどこなのでしょう。みなさんは、ガイドさんや歩荷さん、重い荷物を背負った山岳部の部員達が、登山中腕を組んでいるのを見たことありませんか? もしかしたら「よくやる!」という方もいるかもしれません。あの姿勢、重い荷物やきつい登りを攻略するためのヒミツが隠されていたんです。

普通に歩くのと腕組みして歩くの、どう違うの?

通常歩行腕組み歩行
歩行速度+
歩幅+
体幹の回旋+
骨盤の回旋+
バランス力+
出典:安彦ほか,「登山中の手の位置が歩行パラメータに与える影響」より改定

上記のようなデータがあります。これは、通常歩行と腕組み歩行の効果を表にしたもの。ほとんどの項目で通常歩行に軍配が上がっていますが、腕組み歩行は唯一『骨盤の回旋』が通常歩行に比べて勝っています。これはいったい、どういうことなのでしょうか?

通常歩行

撮影:YAMA HACK編集部

「肩で風を切る」などという言い方もあるように、通常手を振って歩いていると上半身を左右に振って前進します。イメージとしては体の芯(体幹)も、それにより右、左と回旋しているイメージ。

腕組み歩行

撮影:YAMA HACK編集部

これが、腕を組むことにより上半身の回旋がロックされます。それにより、前に進むには骨盤から下の下半身を動かさざるを得ません。そのため、腕組み歩行は骨盤の回旋が勝るのです。

体幹がブレないと疲れにくい!

腰パッドに手をあてる女性登山者

出典:PIXTA

登山は平地のウォーキングよりも歩行速度が遅く、歩幅が小さいです。さらに、重いザックを背負っているので、上半身が左右に振られると疲れやすくなります。そのため、体幹の回旋は小さい方がよく、その動作を行いやすくするために腕組み歩行が「楽」だと感じることが予想されるのです。

また腰パッドに手を置いたり、ポケットに手を入れたりという動作も無意識に行ってはいませんか? これも同様の理由が考えられます。

両手が塞がることの危険性

ガラ場

出典:PIXTA

しかし、ここで思い出して頂きたいのが先ほどの片足立ち実験。バランスが取りやすいのは、間違いなく両手が空いている状態です。そのため、険しい岩稜帯や木の根が張り出した樹林帯など、足元が不整地であるほどつまづく可能性は大きくなります。そんな時、両手が塞がっていれば怪我の原因になることは想像に難くありませんよね。

岩場に手を置く女性登山者

出典:PIXTA

また、疲労がたまってくると「自分が思ったより足が上がっていなかった」という理由で段差や岩、枝などに引っかかり転倒、というケースも珍しくありません。咄嗟の出来事に手を出せない状況はとても危険です。

以上をふまえた上で、比較的隆起のない登りの道で『きつい!』と感じたときのみ、上半身がブレない(体幹が回旋しない)ような体勢になるのはOK。険しく切れ落ちた岩場、ガラ場、足場の悪い箇所では避けましょう。

ガイドに聞いてみた! 腕が楽になる裏ワザ、ある?

鳥海山をいく登山パーティ

出典:PIXTA

一般の登山者に比べ、山に入る日数が圧倒的に多いガイドさんたちは、何か“楽な手の位置”を知っているのでは……? そこで、社団法人日本山岳ガイド協会認定国際ガイド/フランス国家認定アルパインガイドの熊田光治ガイドに聞いてみました。

登山中の手

出典:PIXTA

力を抜いた状態で両腕の重さを支えることは、少なからず負担になります。また、血流が下方に行きすぎて疲れたり、手がむくむことも。そんな時は手を曲げて休ませてあげるのがいいのだそう。

スリングとヌンチャクで手を休める

撮影:YAMA HACK編集部

持っているスリングや、もしヌンチャクがあればこんな風にザックのショルダー部分につけて親指を引っかけると、グッと楽になります。

ミレーのザックのハンドレストループ

撮影:YAMA HACK編集部

また、ミレーのザックにはもともと『ハンドレストループ』といってその名の通り手を休めるための輪っかが付属したザックもあります。

ミレー サースフェー 30+5

素材ナイロン 210 CORDURA® OX
重量1500g
サイズW27_H64_D17cm
バックレングス(背面長)M=48cm, L=51cm
キャパシティ30+5L

使い分けが、攻略のカギ!

登頂した男性

出典:PIXTA
登山中の『手の位置』、特に意識したことのない方がほとんどですよね。しかし本当にしんどい時は、人は無意識に楽な体勢になろうとするもの。記事に挙がったような体勢を何かしら実践していた人もいるかと思います。しかしそれは、体の構造的には理にかなっていることでした。もちろん危険も伴うため、すべての登山道で、というわけにはいきません。コース上のしんどそうな箇所を事前に把握しておいて、上手く使い分けるのが登頂の秘訣、かも!
監修/ミウラ・ドルフィンズ 安藤 真由子