冬山の定番「フリース」はまだまだ進化する!?
冬の登山は防寒が欠かせません。ダウンや化繊中綿などの保温素材がありますが、中でも定番なのがフリースではないでしょうか。
かく言う私も、冬山では必ずレイヤリングに取り入れているほどのフリース好き。この冬、「新しいフリースが欲しいな」と考えていたところ、なにやら気になるアイテムを見つけました。
それがこちら
『カリマー(karrimor)』から今シーズン登場したGRPNシリーズです。「GRPN ハーフジップ プルオーバー」「GRPN トレイル ミッドレイヤー」「GRPN ジップアップ パーカー」の3モデルが展開されています。
注目したのが、このフリースに採用されている生地。“地球上で最強の物質”との異名を持つ、〈グラフェン(Graphene)〉という次世代素材が使われているんです。
“理論上の物質”と言われた奇跡の素材「グラフェン」とは
グラフェンとは、炭素原子がハチの巣のように六角形に結びついた薄く透明なシート状の素材。このシートが重なり合った物質はグラファイト(黒鉛)と呼ばれ、鉛筆の芯などにも使われており、私たちの身近にも存在しています。
グラフェンは60年以上も前から研究されていたそうですが、その生成方法が確立されず、理論上にのみ存在する物質とされてきました。
その製法が確立されたのが2004年。そこからグラフェンの物性を研究した発明者は2010年にノーベル物理学賞を受賞しました。
薄さ・強靭さ・熱伝導性で地球一。しかもそれだけじゃない
そんなグラフェンは地球上に存在する物質の中で、「最も薄く、強靭で、熱伝導に優れている」と言われ、そのほかにも様々な機能を有しています。
このように、“地球上で最強の物質”というのも大袈裟ではない規格外の機能を持っています。
そんなグラフェンを採用した「GRPN」フリースをさっそく入手してみました。
まずはフリースをじっくり観察
まず驚いたのはその質感です。ふんわりした起毛となめらかな風合いがとってもいい感じ。グラフェンが使われているので、何か独特な触り心地があるかと思っていたのですが、いい意味で“普通のフリース”だと感じました。
でも、ここで「どこにどうやって、グラフェンが使われているんだ?」という疑問が。
ここはカリマーの担当者さんに聞いてみました。
上の画像はイメージですが、糸の中にある白い粒がグラフェンだと思ってください。

なるほど、2種類の繊維で交編されているから、フリースらしい自然な風合いがそのまま残されているようですね。
このグラフェンが山でどんなパフォーマンスを発揮するのか非常に楽しみなところ。構造もわかったことですし、その実力を確かめてみました。
「GRPN トレイル ミッドレイヤー」を山で試してみた
今回、メインで使用したのは「GRPN トレイル ミッドレイヤー」。シンプルなジャケットタイプで、3モデルの中で最も登山を想定した設計になっています。
使った感想は、特に熱を逃がす機能に優れ、着心地の良さや動きやすさ、静電気や臭いの抑制など、寒い季節の行動着として非常にバランスの取れた使い勝手のよいフリースだと感じました。
詳しくみていきましょう。
通気と熱伝導で素早く熱を逃す
まず、最も実用的だと感じた機能が余分な熱を素早く逃がしてくれること。
フィールドテストの日は寒波とぶつかってしまい、登山口で気温は2℃程度。「寒そうだな〜」と感じましたが、ハイクアップするとすぐに体は温まり、「ドライ系インナー+薄手の長袖ベースレイヤー+トレイルミッドレイヤー」でも特段寒さを感じることはありませんでした。
また急登などでの激しい動きでも、余分な熱がこもることなく外へ逃げてくれている感覚がありました。フリース自体に充分な保温性がありながらも通気性に優れ、さらにグラフェンの熱伝導性によって、より衣類内を快適に保つ効果が高そうです。
ということで、熱伝導性の高さを確かめるべく、「GRPN トレイル ミッドレイヤー」と「ポリエステル100%の他社フリース」で、裏面にホッカイロの貼った場合の表面温度の違いを実験してみました。
個人的な実験なので細かいところは見逃していただきたいのですが、明らかに「ポリエステル100%」に比べて「GRPN トレイル ミッドレイヤー」の方が表面温度が高いことがわかりました。熱が伝わりやすい生地なのは確かなようです。
熱しやすく冷めやすい?寒さはアウターでカバー
ここで間違えないでおきたいのが、「熱伝導率が高い=熱が伝わりやすい=熱が逃げやすい」ということ。熱伝導率が低い服ほど、人の肌は温かさを感じやすくなります。逆を言えば、熱伝導率が高い=冷めやすいということにもなります。
例えば今回も、小雪が舞う中で写真撮影のために止まっていたら、割とすぐに体が冷えてしまいました。これが熱伝導率の影響かは定かではありませんが、普段の体感よりも早い段階で寒くなる感じはしました。
そんな停滞時も、熱の放出を防ぐ壁を一枚作ってしまえばOK。「GRPN トレイル ミッドレイヤー」はアウターとの相性が非常によく、アウターを着用するとすぐに温かさが体に広がりました。ちょっとした休憩時なども積極的にアウターを着用した方が良さそうです。
着心地が良くて動きやすい
着た感覚はゆったりとした中厚手のフリースといった印象で、レイヤリング時の着膨れ感もありません。ソフトな生地が体を優しく包み、行動中のストレスは皆無。動きに合わせてほどよく伸縮してくれるので、鎖場などでの腕を上げる動作も安心してこなせました。
裏地の体の前面や首回りなどの冷えやすい部分には、生地の上にもう1層起毛生地があてがわれています。温かくて肌ざわりもよく、快適でした。
フロントの開閉は便利なダブルジッパータイプ。行動時でも素早く衣服内の換気が可能で、より温度調整がしやすい仕様になっています。
また、肩部分は耐摩耗性に優れたポリエステル素材で補強されています。このため、ザックを背負った場合でもショルダーハーネスとの摩擦を軽減し、フリースのピリングを防いでくれます。
こういった面も含めて、行動着としてガシガシ使っていけるのは嬉しいポイントです。
静電気が抑えられて、汗もニオイにくい
その他に「いいな」と感じたのが、静電気が発生しにくかったこと。今回、計5回ほどこのフリースを着用しましたが、脱いだときのバチバチするいや〜な感覚はありませんでした。
女性など、静電気が気になる方にもおすすめできそうです。グラフェンの導電性による効果だと考えられますが、体感には個人差がある点だけご了承ください。
また登山でしっかり汗をかいたあと、2日ほど置いても、ニオイが気になることはありませんでした。
念のため、妻にも嗅いでもらったところ、「無臭」とのことでした。グラフェンの抗菌・防臭効果がしっかりと効いていそうです。
汗は残留しにくく、速乾スピードも上々
裏地に特別な汗処理加工は見受けられませんでしたが、6時間ほどの登山でしっかり汗をかいた後も、背中が湿っている様子はなくドライな状態が持続されていました。
試しに裏地に水を吹きかけて乾く時間をチェックしたところ、しっかり濡れた状態でも30分ほどで乾燥。速乾スピードもミドルレイヤーとして申し分ないレベルだと思われます。
「GRPN トレイル ミッドレイヤー」の細かい機能もチェック
ポケットは胸に1箇所とフロントの左右に2箇所。どれも比較的大きめで、大型のスマホでも問題なく収納できそうです。
裾口はドローコードで調整が可能。今回使った感じでは、風が入り込んでくるようなことはありませんでしたが、全体的にゆったりしたシルエットなので、風が気になるときは活用しても良さそうです。
少しだけ気になったのが袖口の形状。ゴムなどが入っていないので、やや拳の方に袖口がかかってしまいました。
また、袖口から水が入ってきやすい形状でもあるので、雪山などで使用する場合は積極的に袖口が隠れるグローブを使った方が良さそうです。
※)「ハーフジップ プルオーバー」「ジップアップ パーカー」は袖口にゴムシャーリングが採用されています。
地味に気に入っているのが、襟まわりが大きめに設計されていること。フリースによっては、ジッパーを上まで閉めるとキツくて呼吸が苦しくなることもあるのですが、これはアゴ辺りをすっぽり覆うことができました。
「ハーフジップ プルオーバー」「ジップアップ パーカー」もチェック!
GRPN ハーフジップ プルオーバー
性別を問わず、ラフに使いやすいと感じたのがこちらのモデル。ハーフジップなので、「登山」という観点で見ると着脱の煩わしさはありますが、自然な風合いで、街でもアウトドアでも使いやすいデザインです。
ポケットは胸に1箇所と、大容量のハンドポケットが2箇所。ハンドポケットは思わず手を入れたくなるような使い心地の良さです。
ハーフジップはジッパーの上にボタン式のフラップが付いており、風の侵入を軽減します。
やわらかい見た目でありながらもグラフェンの機能は健在なので、秋冬のハイキングなどでも充分に活躍できそうです。
GRPN ジップアップ パーカー
オールラウンドに使いやすいと感じたのが、こちらのモデル。フード付きなので、街も野外も山も、これ1着で幅広く活用できそうです。
ゆったりめのフードはドローコードで調整が可能。フードも起毛素材なので、ニット帽をかぶっているような温かさがたまりません。
ダブルジッパーで体温調節もしやすい設計に。サッと羽織れるのも嬉しいポイントです。
秋冬の自転車やキャンプ、散策など、寒さが気になるアウトドアシーンで幅広く活躍してくれそうなアイテムでした。
カリマーのGRPNシリーズで、冬のアウトドアを温かく快適に
純粋に「フリース」という観点からみても、用途が分かれた3種のバリエーションとナチュラルなカラー展開が揃った使い勝手の良いアイテムだと感じました。
そこに、グラフェンという強力な素材が加わることで、新たな価値をプラス。寒さの気になる登山シーンで快適な行動をサポートする唯一無二の個性を持ったフリースと言えそうです。
保温性だけをみると他の選択肢も考えられそうですが、行動や快適性を重視したフリース・中間着を求める人に特におすすめです。
登場した商品はこちら
カリマー GRPN トレイル ミッドレイヤー
重量 | 410g |
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サイズ | S〜XL(ユニセックス) |
カラー | ベージュ系、ブルー系、ブラックの3色 |
カリマー GRPN ハーフジップ プルオーバー
重量 | 370g |
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サイズ | S〜XL(ユニセックス) |
カラー | ベージュ系、ブルー系、ブラックの3色 |
カリマー GRPN ジップアップ パーカー
重量 | 390g |
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サイズ | S〜XL(ユニセックス) |
カラー | ベージュ系、ブルー系、ブラックの3色 |