「夏の思い出」・・・実は春に咲くミズバショウ
ミズバショウ(水芭蕉)は山地帯や亜高山帯の湿原や湿った林で自生する、サトイモ科ミズバショウ属の多年草。日本では中部以北から北海道に分布していますが、兵庫県養父市の加保坂峠にも隔離分布(離れた場所に不連続に分布していること)しています。
間違えやすい!尾瀬では夏ではなく春に咲く花
ミズバショウといえば思い浮かぶのが有名な童謡「夏の思い出」。尾瀬の夏を歌った歌で「ミズバショウの花が咲いている」という部分があります。
しかし、尾瀬では雪解け後の5~6月が花期。ミズバショウが夏の季語になっているので、作詞家の江間章子氏が夏と解釈したそうです。

「夏の思い出」のイメージから夏休みに尾瀬に訪れ、ミズバショウが無くてガッカリと言う人もチラホラ。尾瀬以外では4月頃から開花するところもある春の花なのです。間違えないようにしましょう。
見た目は清楚、でも個性的な特徴がたくさん!
清楚な緑と白の姿で佇むミズバショウですが、ちょっと驚きの個性的な特徴がたくさん。
一番の特徴、白い部分は「仏炎苞(ぶつえんほう)」
ミズバショウの最大の特徴は清楚な白い容姿。ここは仏炎苞(ぶつえんほう)と呼ばれる「苞」で花びらではありません。苞はつぼみを包むように葉が変化したもので、それが大型化したものが仏炎苞です。

バショウの葉に似ているのが名前の由来

似ているといえば似ているかも・・・?
ミズバショウ属は世界に2つだけ
前述したようにミズバショウはサトイモ科ミズバショウ属。このミズバショウ属の植物は世界に2つだけなのです。ひとつは、おなじみのミズバショウ。

もうひとつが上の画像のアメリカミズバショウ。日本のミズバショウとはかなり印象が違い派手。しかも、かなりの悪臭がするので別名「スカンクキャベツ」と呼ばれるそう。
ツキノワグマが下剤に使う!?実は危険なミズバショウ
清楚な佇まいからはちょっと想像できませんが、ミズバショウの葉の汁は触ると皮膚炎、根茎は誤食すると嘔吐や下痢になるなど、実は危険。冬眠から覚めたツキノワグマが老廃物排出のため、敢えてミズバショウを食べて下剤にするほどです。
特徴が多すぎて紹介しきれませんが、ここまでにしておきます。次からはミズバショウのおすすめ観賞スポットの紹介です。
自生地から栽培地まで、ミズバショウを鑑賞するならココ!
ミズバショウの自生地は主に中部以北から北海道に限られますが、人工栽培している場所も多く、様々な地方でも鑑賞可能。全国各地のおすすめ観賞スポットを紹介します。
ミズバショウといえばココ(自生)|尾瀬ヶ原・尾瀬沼(群馬県・福島県)
北海道一の大群落(自生)|マクンベツ湿原(北海道)
尾瀬以上の密集度(自生)|奥裾花自然園(長野県)
【花期:4月下旬から6月上旬】
奥裾花自然園はブナの原生林の中、春はミズバショウ、秋は紅葉が有名な自然公園。ミズバショウの数は尾瀬を凌ぎ、本州随一と言わる大群落です。最盛期は例年5月10日から5月20日頃、今池湿原、こうみ平湿原一帯が観賞地です。
雄大な白馬三山をバックに(自生)|栂池自然園(長野県)
【花期:6月上旬から7月中旬】
白馬岳の登山口でもある栂池の高層湿原が栂池自然園。標高1900mの高地にあることから、7月中旬までミズバショウを鑑賞することができます。一番の見ごろは6月中旬、雄大な白馬の山並みをバックにミズバショウの群落を楽しむことができます。
気軽に歩けるミズバショウの公園(自生)|水芭蕉公園(新潟県)
【花期:3月下旬から4月上旬】
ミズバショウが自生していた湿地帯に木道を整備し、だれでも気軽に観賞できるようにした水芭蕉公園。花期は早く3月には咲き始めます。4月上旬には付近の山桜との共演も見ることができ、多くの人が訪れます。
休耕田に咲くミズバショウ(人工栽培)|ハチ北みずばしょうの里(兵庫県)
【花期:4月上旬頃から4月下旬】
ハチ北高原の「ハチ北みずばしょうの里」では、棚田の休耕田に12000本のミズバショウを人工栽培しています。同じサトイモ科のザゼンソウも植えられているので同時に楽しめるのが特徴です。ミズバショウの苗も販売されているので、栽培に挑戦してみては?
九州では珍しいミズバショウ(人工栽培)|白水湿性花園(大分県)
【花期:4月】