チングルマってどんな植物?

チングルマは森林限界を超えた高山帯に生息する植物です。標高が高くなるとそれにともなって風雪が強くなるため、ある一定の高さを超えると背の高い木(高木)は生育することができません。高木が生育できる・できないの境目となる標高を森林限界といい、森林限界から上が高山帯とよばれる領域です。高山帯に生息する植物を高山植物とよんでおり、チングルマもそんな高山植物の一種です。
森林限界を超えるとそこは高木のない別世界。夏になるとさまざまな高山植物が美しい花を咲かせ、山の景色をあざやかに彩ります。チングルマは高山植物の中では比較的ポピュラーな存在です。気付いていないだけで、ひょっとしたら見かけたこともあるかもしれません。チングルマはいったいどんな植物なのでしょうか。

チングルマはバラ科ダイコンソウ属の高山植物です。海外ではカムチャッカ半島やアリューシャン列島などに、日本では中部地方~北海道の高山帯に生息しています。チングルマはほかの高山植物度同様、日本が大陸とつながっていた氷河期に北方からやってきたといわれており、カムチャッカ半島などにもチングルマが存在するのはそのためです。
チングルマの背丈は10cm~20cmほどで、葉は小さな葉が7枚~9枚ほど集まって1枚となる複葉。6月~8月ごろの開花期となると白く小さな花をたくさん咲かせます。花は直径2cm~3cmくらいで花びらが5枚、花の中央部分は黄色く、雌しべと雄しべがたくさん並んでいるのが特徴です。
チングルマは実は“木”
背が低く一見“草”に見えるのですが、実は、チングルマは背の低い“木”(低木)です。緑色の若い茎の下には、細いながらもしっかりとした茶色の枝が姿を見せます。「バラ科」と聞いてお気づきだった方もいるかもしれません。もちろん切ってはいけませんが、幹にはしっかりと年輪が刻まれているそうです。
這うように枝を伸ばし、地面をマット状に覆うので群落となることも多く、夏になると一斉に開花します。
綿毛や紅葉も美しいチングルマ
一面に咲く白い花がとても美しいチングルマ。ですが、見どころはそれだけではありません。
チングルマのもうひとつの魅力は「綿毛」です。
チングルマの花は、咲き終わると雌しべの部分が伸びてきて種子のついた長い綿毛をつくります。はじめは丸まっている綿毛はやがて放射状に広がるのですが、白い綿毛がそよそよと風に揺られる姿はなんともかわいらしく、登山者にも人気です。
チングルマは漢字で「珍車」または「稚児車」と書きます。稚児車とは子どもが遊びに使う風車を指しており、綿毛が風車のように見えることがチングルマ(稚児車)の名前の由来になっている、という説があります。
また、忘れがちですが木に分類されるチングルマ。チングルマは落葉樹で、秋になるとその葉は真っ赤に色づきます。夏には白く可憐な花で私たちを魅了したチングルマは、秋には地表に広がる紅葉で楽しませてくれます。
花に綿毛、そして紅葉と、季節ごとに違った姿を見せてくれるのもチングルマの大きな魅力です。
紅葉の後、葉を落としたチングルマは雪の中で長い冬を過ごします。そして、雪解けとともに葉をつけ、ふたたび花を咲かせます。
一度は訪れたい!チングルマの名所
日本には、チングルマが大群落を形成するチングルマの名所がいくつもあります。チングルマが一面に広がる景色は圧巻で、「ここは日本なのか?」と錯覚してしまうかも。そんなチングルマの名所をいくつかご紹介しますので、機会があればぜひ訪れてみてください。