チングルマってどんな植物?

森林限界を超えるとそこは高木のない別世界。夏になるとさまざまな高山植物が美しい花を咲かせ、山の景色をあざやかに彩ります。チングルマは高山植物の中では比較的ポピュラーな存在です。気付いていないだけで、ひょっとしたら見かけたこともあるかもしれません。チングルマはいったいどんな植物なのでしょうか。

チングルマの背丈は10cm~20cmほどで、葉は小さな葉が7枚~9枚ほど集まって1枚となる複葉。6月~8月ごろの開花期となると白く小さな花をたくさん咲かせます。花は直径2cm~3cmくらいで花びらが5枚、花の中央部分は黄色く、雌しべと雄しべがたくさん並んでいるのが特徴です。
チングルマは実は“木”

這うように枝を伸ばし、地面をマット状に覆うので群落となることも多く、夏になると一斉に開花します。
綿毛や紅葉も美しいチングルマ
一面に咲く白い花がとても美しいチングルマ。ですが、見どころはそれだけではありません。
チングルマの花は、咲き終わると雌しべの部分が伸びてきて種子のついた長い綿毛をつくります。はじめは丸まっている綿毛はやがて放射状に広がるのですが、白い綿毛がそよそよと風に揺られる姿はなんともかわいらしく、登山者にも人気です。
チングルマは漢字で「珍車」または「稚児車」と書きます。稚児車とは子どもが遊びに使う風車を指しており、綿毛が風車のように見えることがチングルマ(稚児車)の名前の由来になっている、という説があります。

花に綿毛、そして紅葉と、季節ごとに違った姿を見せてくれるのもチングルマの大きな魅力です。

一度は訪れたい!チングルマの名所
日本には、チングルマが大群落を形成するチングルマの名所がいくつもあります。チングルマが一面に広がる景色は圧巻で、「ここは日本なのか?」と錯覚してしまうかも。そんなチングルマの名所をいくつかご紹介しますので、機会があればぜひ訪れてみてください。大雪山 旭岳の裾合平

花の見頃は例年7月中旬~7月下旬あたり。裾合平は旭岳の中腹にあり、「大雪山旭岳ロープウェイ」を利用することで標高1,600mの高山帯まで一気に進めます。ロープウェイの駅を降りてから裾合平までは3kmほどの距離がありますが、散策路が設けられた駅周辺でもチングルマの群落を楽しむことができます。
秋田駒ヶ岳 ムーミン谷

中でも、男岳南東側の谷間、標高1,300mほどにある馬場の小路は「ムーミン谷」の愛称でよばれるチングルマの名所です。花の見頃は例年6月中旬~7月上旬ごろで、木道の左右にはチングルマの大群落が広がります。
立山 天狗平のチングルマロード

標高は2,300mほどありますが、高原バスが通っているのでアクセスも容易。天狗平から室堂にかけては「チングルマロード」とよばれる石畳の道が続いており、チングルマをはじめたくさんの高山植物に出会うことができます。花の見頃は例年7月中旬~8月上旬ごろといわれています。
北アルプスの最奥地 雲ノ平

北アルプスの最奥地にある雲ノ平。雲ノ平は標高2,500m~2,700mにある溶岩台地で、「日本最後の秘境」ともよばれています。アクセスが容易ではなく、どの登山口からでもたどり着くのに2日は必要で、時間と体力をかなり使うため初心者の方には厳しい場所です。 しかし、最後の秘境といわれるだけあって、日本離れしたその景色の美しさは多くの登山者の憧れるところでもあり、7月下旬~8月上旬にかけてはチングルマをはじめ数多くの高山植物が咲き誇ります。
ポピュラーだけど実は貴重!大切に楽しみたいチングルマ

チングルマは高山植物の中では比較的目にする機会の多い部類に入りますが、幹が1mm太くなるのに10年を要するといわれています。背が高くならないためイメージがわきにくいですが、大きな群落をつくっているものは樹齢何十年、という場合も。
あたり前のように広がるチングルマの群落も、ここまでの大きさになるのに一体どれほどの時間がかかったのか…、大切にしながら楽しみたいですね。