目次
コンパスワークはGPSアプリの活用にも有効!?

そんな時にも、心強い味方になってくれるのが地図とコンパス。進むべき方向を導き出す「ナビゲーション」ができれば、GPSアプリをもっと活用できるようになります。
また雪山やバリエーションルートでも応用できるので、登山スキルのレベルアップにも直結。
今回は登山者Aさんと共に、ナビゲーションのテクニックについて学んでいきましょう。

▼前回学んだコンパスワークの基本
“登山者Aさん”
手間のかかるコンパスよりGPSアプリの方が使いやすく感じます。
“ガイド鷲尾”
そうだね。ただGPSアプリは常に移動しているからこそ、知らぬ間に設定したルートを外れてしまうことは意外と多い。
そんな時の救世主が、地図とコンパスなんだ。
今回は…
・事前に準備しておくこと
・山での実践の仕方
・街での練習の仕方
の3つに分けてナビゲーションのテクニックを紹介。
まずは登山のどんな時に役立つのか、具体的なシーンを見てみよう。
そんな時の救世主が、地図とコンパスなんだ。
今回は…
・事前に準備しておくこと
・山での実践の仕方
・街での練習の仕方
の3つに分けてナビゲーションのテクニックを紹介。
まずは登山のどんな時に役立つのか、具体的なシーンを見てみよう。
ナビゲーションによって、ルート外れを起こしにくくなる

“ガイド鷲尾”
道の分岐点は、間違えいやすいから要注意。
“登山者Aさん”
左の青矢印の方向に進むべきなのに、まっすぐピンク矢印の方向に進んでしまうんですね。
“ガイド鷲尾”
ここは尾根が分岐している場所で、青矢印の主稜線に進むべきなんだけど、地形が明確なピンク矢印の支尾根を進んでしまいがち。
こうした場所をあらかじめ“チェックポイント”にして、常に次の方向をコンパスで確認しながら進むナビゲーションを実践することで、ルート外れを少なくできるんだよ。
こうした場所をあらかじめ“チェックポイント”にして、常に次の方向をコンパスで確認しながら進むナビゲーションを実践することで、ルート外れを少なくできるんだよ。
道が埋もれた雪山登山でも活躍!

“ガイド鷲尾”
登山道が雪に埋もれてしまって先行者のトレースもない場合は、自分でルート開拓をするんだ。
“登山者Aさん”
自分の知識と判断で、登山ルートを設定しないといけない訳ですね。
“ガイド鷲尾”
たとえば北アルプスの八方尾根。積雪時には雪崩や滑落の危険があるため、画像のように冬は地図に載っていない尾根上を進む必要がある。
地形的に判断することもあるけど、ホワイトアウトの時なんかはコンパスを使いながら随時方向を確認して、尾根から外れないように歩くんだ。
地形的に判断することもあるけど、ホワイトアウトの時なんかはコンパスを使いながら随時方向を確認して、尾根から外れないように歩くんだ。
“登山者Aさん”
視界がわからなくなった時、ナビゲーションができなかったら…と考えると怖いですね。
“ガイド鷲尾”
緊急時にも、落ち着いて正しい道を導けるように、普段からこのスキルを身につけておくことが大切なんだ。それじゃあ事前に準備しておくポイントから見ていこうか。
準備編|まずは地形図から歩くルートを表にまとめてみよう
登山で“ナビゲーション”を実践するには、ぶっつけ本番は許されません。磁北線が書かれた地形図を元に、緻密な準備が必要です。▼ナビゲーション準備の4ステップ
①地形図からルートを設定する
②チェックポイントを決める
③チェックポイント間の角度を計測する
③地図から読み取れる情報を言語化して表をつくる
チェックポイントとは、実際行動する時に方向や角度を確認するポイントのこと。これを細かく設定することによって、道に迷いづらくなります。
それでは実際の登山コースを使って、実践してみましょう。
①地形図からルートを設定する

“ガイド鷲尾”
今回はわかりやすいように、高尾駅から高尾山口駅まで、登山道をたどって縦走するコース(S地点〜G地点までの黒い点線)に設定しよう。
②ルート上にチェックポイントを定めてみよう

“ガイド鷲尾”
チェックポイントを設ける場所は…
・ルートの進む方角が変わる場所
・地形が変わる場所
・分岐がある場所
などに置くのが基本。
・ルートの進む方角が変わる場所
・地形が変わる場所
・分岐がある場所
などに置くのが基本。
“登山者Aさん”
実際進む時に、方向があっているかを確認するためのポイントですね。
“ガイド鷲尾”
あらかじめルートが設定されている登山道でここまで細かいルート設定は必要ないけれどね。
雪山やバリエーションルートの時には、このくらい細かくやっておくと安心だよ。
雪山やバリエーションルートの時には、このくらい細かくやっておくと安心だよ。
③チェックポイントの間の角度を計測してみよう

“ガイド鷲尾”
次に、それぞれのチェックポイントを矢印で結ぶ。
そしてその矢印が指す方向の角度を計測するんだ。
そしてその矢印が指す方向の角度を計測するんだ。
“登山者Aさん”
チェックポイントの間が短ければ、定規を使わずにコンパスの長辺(へり)でも結べますね。

“ガイド鷲尾”
たとえば(11)と(12)の角度を計測する場合。
(11)と(12)をベースプレートの長辺(へり)で結ぶ=青い矢印。
(11)と(12)をベースプレートの長辺(へり)で結ぶ=青い矢印。

“ガイド鷲尾”
次に、回転盤を磁北線と平行になるまで回す=赤い矢印。

“ガイド鷲尾”
そして、コンパスの目盛りを見る。
この場合(11)から(12)の方角は、磁北から197°の方向だということになる。
この場合(11)から(12)の方角は、磁北から197°の方向だということになる。

“ガイド鷲尾”
すべてのチェックポイント間の角度を測定してみると、こうなる。
“登山者Aさん”
普段は何気なくたどっている登山道も、進んでいる方角は絶え間なく変化しているんですね。
④調べた情報を言語化しよう

“ガイド鷲尾”
最後に
・チェックポイント
・チェックポイント間の角度
・チェックポイント間の情報
をこんな感じでまとめた表にしてみて、地形図・コンパスと一緒に携行しながら歩くと良い。
・チェックポイント
・チェックポイント間の角度
・チェックポイント間の情報
をこんな感じでまとめた表にしてみて、地形図・コンパスと一緒に携行しながら歩くと良い。
“登山者Aさん”
ここまで準備すれば、カーナビ的に地図とコンパスを使えそうですね、
実践編|準備した情報を元に山でナビゲーションしてみよう

▼ナビゲーションの実践3ステップ
①次のチェックポイントへの角度まで回転盤を回す
②回転盤矢印と磁針が重なるまで自分が回る
③進行線の指す方向へ次のチェックポイントまで進む
コンパスを操作しながら、ナビゲーションしていく様子をみていきましょう。

“ガイド鷲尾”
ナビゲーションの手順は、チェックポイントに立ったら…3ステップを実行してみよう。地形図上で準備した情報を実際の景色にあてはめていくんだ。
“登山者Aさん”
スタート地点の高尾駅南口から①のポイントの角度は173°だから…。

“ガイド鷲尾”
スタート地点に立ったら…
①次のチェックポイントへの角度(173°)まで回転盤を回す
②回転盤矢印と磁針が重なるまで自分が回る
③進行線の指す方向が次のチェックポイント場所なので、そちらへ進む
この後は、どんどん行くね。
写真の番号がチェックポイントの番号と一緒になっているよ。
①次のチェックポイントへの角度(173°)まで回転盤を回す
②回転盤矢印と磁針が重なるまで自分が回る
③進行線の指す方向が次のチェックポイント場所なので、そちらへ進む
この後は、どんどん行くね。
写真の番号がチェックポイントの番号と一緒になっているよ。
1〜5のチェックポイント






6〜11のチェックポイント






12〜16のチェックポイント






17〜21のチェックポイント






22〜26のチェックポイント







“ガイド鷲尾”
ざっとこんな感じ。
事前に調べた角度の通りに進めば、次のチェックポイントへの道につながることがわかったかな?
ただし…
・チェックポイント5.ピークB(256m)の山頂が神社だった
・チェックポイント17.ピークE(302m)の先の分岐に直進するルートはなかった
とか、当日歩いてみないとわからない発見もある。
事前に調べた角度の通りに進めば、次のチェックポイントへの道につながることがわかったかな?
ただし…
・チェックポイント5.ピークB(256m)の山頂が神社だった
・チェックポイント17.ピークE(302m)の先の分岐に直進するルートはなかった
とか、当日歩いてみないとわからない発見もある。
“登山者Aさん”
自分が地図上で定めたチェックポイントが、実際に自分がいる現在地かを把握することが大切だし、難しくもありますね。
“ガイド鷲尾”
ナビゲーションは、これまで学んできた等高線から地形を立体的にイメージして実際の景色と照合するという、高い技術が必要なんだ。
だから慣れないうちは…
・現在地だけはGPSアプリを併用して把握しつつ、ナビゲーションする
・もしチェックポイントを通り過ぎてしてしまったら、自分が把握できる次のチェックポイントからやりなおす
というのもアリだね。
だから慣れないうちは…
・現在地だけはGPSアプリを併用して把握しつつ、ナビゲーションする
・もしチェックポイントを通り過ぎてしてしまったら、自分が把握できる次のチェックポイントからやりなおす
というのもアリだね。
まとめ
▼ナビゲーションは地形図を見ながらの準備が大切
▼ナビゲーション準備の4ステップ
1.地形図の上に自分が歩くルートを設定する
2.設定したルート上にチェックポイントを定める
3.チェックポイント間の角度を計測する
4.ルート・チェックポイント・角度などの情報を言語化する
▼ナビゲーション実践の3ステップ
チェックポイントに立ったら…
1.次のチェックポイントへの角度まで、回転盤を回す
2.回転盤矢印と磁針が重なるまで、自分が回る
3.進行線が指す方向へ、次のチェックポイントまで進む
ポイントがわかりやすいから簡単!街での練習方法もチェック

今回はJR山手線の目白駅から池袋駅まで、鬼子母神や雑司ヶ谷霊園などの史跡を巡る“山手ぶらり散歩”を楽しみながら、Aさんと一緒にナビゲーションを実践してみました。
地図に没頭しすぎて通行人の邪魔にならないように、気をつけながら行いましょう。

“ガイド鷲尾”
チェックポイントに警察署や交番も設定して来たから道に迷っても安心。
街歩きを楽しむつもりで、気軽にナビゲーションにチャレンジしてね。
まずは最初のチェックポイント、目白警察署をめざしてみよう。
街歩きを楽しむつもりで、気軽にナビゲーションにチャレンジしてね。
まずは最初のチェックポイント、目白警察署をめざしてみよう。

“登山者Aさん”
えっと…
①回転盤を次のチェックポイントへの角度である122°まで回す
②回転盤矢印と磁針が重なるまで自分が回る
③進行線が指している方向へ進む
あの横断歩道を渡って直進ですね!
①回転盤を次のチェックポイントへの角度である122°まで回す
②回転盤矢印と磁針が重なるまで自分が回る
③進行線が指している方向へ進む
あの横断歩道を渡って直進ですね!

“ガイド鷲尾”
無事警察署に到着。
この脇から路地に入っていこう。
この脇から路地に入っていこう。
“登山者Aさん”
回転盤を15°に回して、回転盤矢印と磁針が重なるまで回って…この路地で合っていますね。

“登山者Aさん”
地形図の通り、クランク状の路地を通過すると明治通りに出ましたね。

“ガイド鷲尾”
明治通りは近くの信号を渡って迂回してきたから、この路地で大丈夫か確認してみよう。
“登山者Aさん”
53°の方角だから…この路地で合っていますね。

“ガイド鷲尾”
あらら、鬼子母神は裏側からも入れたんだね。
“登山者Aさん”
でもせっかくだから、準備で設定したルートを行ってみましょう。
140°の方角だから、こちらの路地ですね。
140°の方角だから、こちらの路地ですね。

“ガイド鷲尾”
チェックポイント(5)に到着。
ここから、鬼子母神の境内にお邪魔しよう。
ここから、鬼子母神の境内にお邪魔しよう。

“登山者Aさん”
まずはお参り。
イチョウの黄葉も見頃で良かったですね。
イチョウの黄葉も見頃で良かったですね。
“ガイド鷲尾”
Aさんが楽しみながら読図スキルを身に付けてくれますように…。

“ガイド鷲尾”
鬼子母神様、お邪魔しました。
次は表参道を都電荒川線の鬼子母神前駅に向かって進んでいこう。
次は表参道を都電荒川線の鬼子母神前駅に向かって進んでいこう。
“登山者Aさん”
ちょうど180°の方向ですね。

“ガイド鷲尾”
鬼子母神前駅に到着。
おっ!都電が走ってきたね。
おっ!都電が走ってきたね。
“登山者Aさん”
ここからは40°の方向を都電荒川線に沿って、まっすぐ進む…と。

“登山者Aさん”
無事に雑司ヶ谷霊園に着きましたね。

“ガイド鷲尾”
チェックポイント(8)の交番に到着。
“登山者Aさん”
交番を背にして、3°の方向へ進んで都電の線路を渡る訳ですね。

“ガイド鷲尾”
首都高速の高架が見えてきたね。
これを潜ったら…。
これを潜ったら…。
“登山者Aさん”
313°の方向へひたすらまっすぐ進んでいくだけですね。

“ガイド鷲尾”
お疲れ様!
無事に池袋駅に到着だね。
無事に池袋駅に到着だね。
“登山者Aさん”
これなら気軽にチャレンジできますね。
自宅の近くの地形図も購入して、またやってみようっと。
自宅の近くの地形図も購入して、またやってみようっと。
コンパスマスターになって、登山をより楽しもう!

今回ご紹介したように、ナビゲーションは一般登山道や街の中でも体験可能。普段から練習をして、慣れておくことでいざという時に安心です。何度も繰り返しながら、習得していきましょう。