雪がたくさん積もれば基本的にどこでも歩ける
雪がそれなりに積もるところならば、薮も埋まり、沢や池も埋まり、自分の好きなように歩いたり滑ったりできるようになります。
上は北穂高岳の無雪期と積雪期のルートを示したものですが、夏は岩稜帯を九十九折りに歩くため斜度が低くなります。一方、冬は斜度は急になりますが直登できます。
どちらがラクかは一長一短ありますが、不安定な岩や土砂が堆積している場所も雪が積もれば歩けるようになり、行動範囲が劇的に広がります。どこを行けばラクで楽しいか、考える楽しみも増えます。
1)地形図を読み、行き先を予測しよう
雪山を楽しむために必要なことは3つあります。まずは、あらかじめ地形図を読んでどこを行けば良いかを予測しておくことです。
事前にこのような「同定表」を作り、ルートを考え、注意点やビバークポイントを予想しておきます。同定表は登山地図には記されていない薮山や沢登りでもよく使います。同定表には確認ポイントでのコンパスの角度も記入しておきます。
2) 現地では臨機応変にルートファインディングしよう
作った同定表とコンパスを使って実際に歩くわけですが、予想と違うこともよくあります。臨機応変に安全で歩きやすいルートを探して進みましょう。
GPSがあるからそれでよいという考え方は禁物です。低温では電池の消耗も早くなりますし、うっかり端末を落とせば雪の中に埋もれてわからなくなったり、雪面を滑って回収不能になることもあります。
端末やコンパスにはストラップなどをつけ、同定表や地形図はうっかり風に飛ばされてなくしても困らないように複数部持っていきましょう。
3) ラッセルは時間がかかる!撤退も視野に入れた行動を
すべてに共通することですが、積雪深によってはラッセル技術が求められます。ラッセルがあると時間を見積もるのが難しく、非常に極端な場合は1時間で数十mしか歩けない、ということもあります。
ラッセルが予想される場合には山行計画にあらかじめ予備日を設定したり、行動中も残された時間と装備を考えて、計画通りに進むのか、ルートを変更するのか、それとも撤退するのかを随時考え直すことも必要です。
とはいえ、これも逆に考えれば登り甲斐につながります。「ラッセル・ハイ」という言葉もあるほどです。
春を待つ「雪の下」への心遣いもお忘れなく
雪が積もればどこでも歩けるとはいっても、雪が薄い場合にはアイゼンやピッケルで地表の植生を痛める可能性があります。節度を守って楽しみましょう。
身体も頭も心もフルに使って、雪山を満喫しよう
雪のない山と比べると必要な技術も知識も装備も増えますが、それを補ってあまりある自由と楽しみを味わえる、それが雪山です。登山道のことに限りませんが、しっかり知識や技術を身に着けながら、みなさんもこの冬に一歩踏み出してみませんか。