苦手意識をガイドが解決!地図読みのキホンはそんなに難しくない【地図・磁北線・コンパス編】

2020/11/06 更新

登山装備のチェックリストに必ずと言っていいほど記載されている地図とコンパス。けれども、どの地図を見たら良いの?コンパスの使い方って?その答えが曖昧なまま、いつの間にかその存在にハードルを感じていませんか。シチュエーションに応じた地図の使い分けや、コンパスを使うために必要な知識を、わかりやすく解説します。


アイキャッチ画像撮影:washio daisuke・地図の出典:YAMAP

どうしたらいい…?地図の使い分け&コンパスの使い方

山の地形を立体的に捉えてルートや現在地を認識したり、これから進むべき方向を把握したりと「安全で楽しい登山」に大切なのが地図とコンパス。しかし、大切だとはわかっていながらも苦手意識を感じている人が多いのも事実です。

この記事では、登山ガイドとして「地図読みとコンパスワーク」を教えてきた自称“等高線フェチ”の筆者が「登山地図と地形図の違い」「磁北線の引き方」「ベースプレートコンパス」について解説していきます。

■「地形」や「地名」に関する情報は前編をCHECK!

登場人物
撮影:washio daisuke・いらすとの出典:いらすとや
今回も登場人物は筆者の高校時代の後輩である登山者Aさん。地形についてはわかってきたようですが、まだまだ地図読みでわからないことが多いみたいです。

登山地図と地形図、何が違って何が便利?

左の登山地図は多くが50000分の1、右の地形図は25000分の1の縮尺
撮影:washio daisuke(左の登山地図は多くが50000分の1、右の地形図は25000分の1の縮尺)
登山中に使われる地図は25000分の1の縮尺。様々な縮尺の地図がある中で、GPSアプリにも採用されているのにはもちろん理由があります。他の地図と比べて、どんな特徴や利便性があるのかみていきましょう。

縮尺が違うと知れる情報が変わる

コースタイムなど登山に役立つ情報満載の登山地図
出典:PIXTA・イラストの出典:いらすとや(コースタイムなど登山に役立つ情報満載の登山地図)
“登山者Aさん”
地形図のことは少しずつわかってきたんですが、同じ紙の地図なら登山地図の方がわかりやすくないですか。

“ガイド鷲尾”
登山地図はポイント間のコースタイムや山小屋・テント場・水場などの場所、お花畑や危険箇所など登山に必要な情報が書き込まれていて便利だよね。

もちろん、これを併用するのは大アリ。でも細かい地形を把握するには、やっぱり地形図がいいんだ。

“登山者Aさん”
登山地図と地形図は何が違うんですか?

“ガイド鷲尾”
いちばんの違いは縮尺。
登山におすすめの地形図は25000分の1なんだけど、登山地図は多くの場合50000分の1なんだ。

わかりやすい違いが等高線なんだけど、25000分の1は10m間隔、50000分の1は20m間隔で描かれている。
だから同じ山でもそれぞれの地図で描かれ方が全然違うんだ。例えば、こんな感じ。

同じ山でも等高線間隔の違いで地図上の描かれ方が変わります
作成:washio daisuke・イラストの出典:いらすとや(同じ山でも等高線間隔の違いで地図上の描かれ方が変わります)
“登山者Aさん”
何か、別の山みたいです。

“ガイド鷲尾”
実際には50000分の1は同じ山でも4分の1の大きさで描かれるよ。

※地形図にも50000分の1があり、1枚で25000分の1地形図4枚分の面積が掲載されています。
“登山者Aさん”
登山地図は50000分の1だから、広範囲の情報がわかりますね。

“ガイド鷲尾”
そう。逆に25000分の1は等高線が倍の密度で描かれるから、山の凸凹がよりはっきりわかるんだ。

あと登山地図の等高線は、そもそも印刷が薄いから読みにくいっていうのもある。

ルート全体を把握するなら50000分の1の登山地図、細かい地形の起伏を読み取るなら25000分の1地形図と、上手く使い分けて欲しいね。

大切なのは2つの地図の使い分け

縮尺が小さい分、広範囲を収録している登山地図
撮影・作成:washio daisuke(縮尺が小さい分、広範囲を収録している登山地図)
“ガイド鷲尾”
例えば、代表的な登山地図「山と高原地図」(昭文社)の『八ヶ岳』表面(縮尺:50000分の1/サイズ:54.6cm×78.8cm)に描かれている範囲を、国土地理院発行の地形図(縮尺:25000分の1/サイズ:46cm×58cm)で網羅しようとすると、上の12枚が必要になる。

“登山者Aさん”
ずいぶんな枚数の地形図が必要になりますね。

“ガイド鷲尾”
実際に登る時は、自分の歩くルートの部分だけ用意しておけばOK。

八ヶ岳全山を縦走する場合でもなければ、数枚で網羅可能。例えば、美濃戸口〜硫黄岳〜横岳〜赤岳〜阿弥陀岳〜美濃戸口の周回であれば「八ヶ岳西部」1枚でカバーできるよ。

“登山者Aさん”
いずれにせよ地形図は必要なんですね。
そう言われると思って、地形図も用意してきましたよ。

“ガイド鷲尾”
えらい!もう磁北線は描き込んだ?

“登山者Aさん”
ジホクセン…?

▶地形図の購入はこちら|日本地図センター


磁北って何モノ?北とは別モノなの?

真北と磁北
作成:washio daisuke・イラストの出典:PIXTA(真北と磁北)
方位磁針(コンパス)の赤い針が指す方向は北!そう思っているあなた、その知識は半分本当で半分嘘です。
経度を示す経線を上に辿ると到達するのが北極点。この方向を「真北」と呼びますが、コンパスの赤い針が示す方向は「磁北」という別の方角なのです。

地形図とコンパスを組み合わせて使うには、この原則を理解する必要があるので、もう少し詳しくみていきましょう。

地図の真上が「真北」、コンパスの針が指すのが「磁北」

真北と磁北
撮影・作成:washio daisuke(真北と磁北)
“ガイド鷲尾”
地形図をはじめ、一般的な地図は「真北」が真上になるように作られている。だから地図上の真上に向かってひたすら進むと、北極点(北緯90度)に到着するようになっている。

でも、コンパスの赤い針が示す北は別なんだ。

“登山者Aさん”
コンパスの針が指す方向に向かって進むとどこに行くんですか?

“ガイド鷲尾”
北磁極という場所に着いちゃう。

実はこの北磁極はカナダ北西部にあって周期的に移動していたりするんだけど、とにかく北には「真北」と「磁北」の2種類があるということを覚えておいて欲しい。

“登山者Aさん”
ややこしいなあ。

“ガイド鷲尾”
だからコンパスワークを正確に行うためには、地図上の真上(真北)とコンパスの赤い針が示す北(磁北)がどれだけずれているかを可視化する「磁北線」を書きこむ必要があるんだ。

“登山者Aさん”
実際どれだけずれているんですか。

“ガイド鷲尾”
緯度によってずれは変わってくる。日本の場合、磁北は真北に対して5度から10度西にずれている。

そして、このずれは北(高緯度)ほど大きく、南(低緯度)ほど小さくなるんだ。

“登山者Aさん”
つまり、北海道の地形図と九州の地形図では、書きこむ磁北線の角度が違うという訳ですか?

“ガイド鷲尾”
そう。地形図のここ(赤枠部)に磁針方位とか西偏角度とか磁気偏角という言葉で何度ずれているか書いてあるよ。

この地形図の場合は西に約7度0分ずれていますね
撮影・作成:washio daisuke(この地形図の場合は西に約7度0分ずれていますね)
“ガイド鷲尾”
この地形図の場合は、7度ちょうどだね。つまり、西に7度ずれている磁北線を書けばいいってこと。

さあ、磁北線を引いてみよう!

真北と磁北の違いがわかったところで、次は実際に磁北線を地図に書きこんでいきます。
〈磁北線を引くための流れ〉
①地図のタテ幅の長さを求める
②縦幅と地図に書いてあるズレの角度を計算サイトに入力する(自分で計算してもOK)
③計算で出た数字を使って磁北線を引く
④等間隔で磁北線を引いていく
それでは、詳しい磁北線の引き方の手順を見ていきしょう。
西に約7度ずれている磁北線を引くには…
撮影・作成:washio daisuke(西に約7度ずれている磁北線を引くには…)
“ガイド鷲尾”
この地図は西に7度ずれているから、こんな感じで磁北線を引けばOK。

“登山者Aさん”
なるほど。でもどうやって角度を測るんですか?

“ガイド鷲尾”
三角関数を使うのがいちばん正確でわかりやすいよ。

“登山者Aさん”
サイン!コサイン!タンジェント!ですね。


〜数学の苦手な方!少しスクロールすると簡単な答えが書いてあります。読むのをやめないでください!〜

“ガイド鷲尾”
そう!例えばこの地図の場合だと、こうなるね。

サイン!コサイン!タンジェント!
撮影・作成:washio daisuke
“登山者Aさん”
この場合、地図のタテ幅がXですね。

“ガイド鷲尾”
そう!ただし旧地形図と新地形図では地図の印刷されている部分のタテ幅が変わってくるので注意が必要だよ。
余白の広い旧地形図は37cm(370mm)、余白の狭い新地形図は42cm(420mm)になる。

左下は新地形図・右上は旧地形図
撮影・作成:washio daisuke(左下は新地形図・右上は旧地形図)
“登山者Aさん”
でも、知りたいのはzの長さですよね…。
つまり、タンジェントか!

“ガイド鷲尾”
さすが数学が得意だっただけあるねえ。

僕の場合は計算するのが大変だから下記のようなサイトを使っている。角度のところに、この地図の場合は「7」を入力して算出された数値のうちタンジェント(tan)を見てみよう。

▶生活や実務に役立つ計算サイト|CASIO
“登山者Aさん”
0.122785…ずいぶん細かい数値ですね。

“ガイド鷲尾”
この数値にxを掛けるとzの長さになるんだ。

“登山者Aさん”
つまり新地形図で7度の場合は、タンジェントの数値0.122785×地図のタテ幅42cmだから…。
地図の右上から約5.16cmのところと地図の右下を結べば、自動的に7度の磁北線になる訳ですね。


〜ややこしい話は、ここでおしまいです!〜
磁北線の書き方
撮影・作成:washio daisuke(磁北線の書き方)
“ガイド鷲尾”
その通り!ただ、磁針方位が変わる度にいちいち計算するのも大変だから、ここに一覧表を載せておくね。

ただし定規とかで5.16cmをピタリと当てるのも大変だと思うから、大体5.2cm弱とかで十分だからね。

偏差タンジェント表
作成:washio daisuke(偏差タンジェント表)
“ガイド鷲尾”
最初の一本が引けたら、あとは平行に追加して引いていくだけ。

磁北線はコンパスの透明プラスチック越しでも見やすいように濃く、赤とか目立つ色で書き込もう。

追加する間隔はお任せだけど、25000分の1の地形図の場合は4cm間隔がオススメ。
縮尺的に1cmが250mだから、4cmがちょうど1kmになるんだ。

撮影・作成:washio daisuke(磁北線を4cm間隔で追加していく)
“ガイド鷲尾”
自動的に磁北線が書き込めて印刷できるサイトもあるので、必要に応じて使ってみると良いよ。

地図プリ|ヤマレコ
YAMAP
▶ヤマタイム|Yamakei Online
“ガイド鷲尾”
地形図に磁北線を引いて、ようやくコンパスの出番だね。

登山での地図読みに適したコンパスって…?

いよいよコンパスの登場!
撮影:washio daisuke(いよいよコンパスの登場!)
さあ、いよいよコンパスの出番です。登山での地図読みにおすすめなのが、ベースプレート付コンパス。ベースプレートなしの丸いコンパスや、最近はスマホアプリでもコンパスがありますが、まずは基本になるベースプレートコンパスについて理解しましょう。

ベースプレート付コンパスってこんなアイテム

“登山者Aさん”
コンパスって、いまいち使い方がわからないんですよね…。

“ガイド鷲尾”
難しいよね。でもまずは、ベースプレート付コンパスの部品の名前から覚えよう。
基本的に写真の5つを覚えてくれればOK!

ベースプレート付コンパスの部品の名称
撮影・作成:washio daisuke(ベースプレート付コンパスの部品の名称)
“登山者Aさん”
ベースプレートの中心にある進行線と回転盤矢印のふたつの矢印があるんですね。

“ガイド鷲尾”
そこがキモ!!
進行線が指すのは行きたい場所や目標物の方向回転盤矢印が指すのは磁北の方向このふたつの方向の「角度の差」を測定できるのが、ベースプレート付コンパスの最大の強みなんだ。

目標物の方向と磁北の方向の「角度の差」を計測できるのがベースプレート付きコンパスの強み
撮影・作成:washio daisuke(八ヶ岳)
“登山者Aさん”
わかったような、わからないような…。

“ガイド鷲尾”
これは直感的に理解できるまで、しつこく教えるから!
とりあえずマストハブアイテムとして、大切に登山の時は携行してね。

地形図とコンパスを持っていざ山へ!でもその前に…?

地形図&コンパスを持って登山へ!その前に必要なことは…?
出典:PIXTA(地形図&コンパスを持って登山へ!その前に必要なことは…?)
いかがでしたか。「登山地図と地形図の使い分け」と「コンパスと地形図を一緒に使うための知識」を理解することで、今まで感じて来たハードルが少し低くなったでしょうか。
しかし、これだけで「いざ登山へ!」という訳には行きません。次回は、登山前のシュミレーションにおける地図の活用法をお伝えします。
まとめ
▼地図の縮尺が違うと、読み取れる情報が変わる▼地図の北とコンパスの磁針が指す北のズレを表すのが磁北線▼ベースプレートコンパスは進みたい方向と磁北の角度の差を測定して使う
 

地図読みは実際にやることが大切です!

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washio daisuke
washio daisuke

登山の総合プロダクション・Allein Adler代表。 登山ガイド・登山教室講師・山岳ライターなど山の「何でも屋」です。 得意分野は読図(等高線フェチ)、チカラを入れているのは安全啓蒙(事故防止・ファーストエイド)。 山と人をつなぐ架け橋をめざしています。

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