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年間テント泊数100日の山岳ライターが語る! 本当にあった嘘のようなテント場での迷惑話(2ページ目)

もしも”催した”とき、悪条件が重なっていたら?

このテント場にはいくつかの特徴があります。ひとつは小さなスペースが段々になっていること。もうひとつはペグも打ちにくい岩石のうえで、その代わり水が浸透しやすいこと。
そして悪天候時に風雨にさらされやすいこと。僕が遭遇した問題は、そのすべての要因が悪い方向で重なって生まれました。

その日の夜は暴風雨。トイレに行きたくなっても、出ていくのがためらわれる状況です。そんなとき、ひとりでテントを使っている男性ならば、「ペットボトル」が活躍します。わかりますよね?

もちろん、よほどの悪条件のとき以外は面倒でもトイレを利用すべきですが、無理にトイレに行こうとして危険な目に合う場合は仕方ありません。この手の処理は昔から山では行われていたことでもあり、汚物は最後に適切な処理をすればいいのです。

ペットボトル

撮影:高橋庄太郎(男がトクだと思えるのは、緊急時のペットボトルとの相性! 口が大きいほうが便利ですよね)

ところが! 段々になったテント場で僕の上に泊まっていた40代くらいの男性は面倒くさかったのでしょう。どうやらテントのそばの岩の隙間にペットボトルの内容物(つまり「小」)を流し込んで、立ち去ったようなのです。
僕はテント内にいて、直接その現場を見たわけではありませんが、ペットボトルの中身をジャバジャバと外に流しだす音は聞こえていました。

朝は晴れていました。しかし夜の雨で地中はすでに水がたっぷり浸透しており、それ以上浸透しきれない彼由来の水分は、少しずつ下の段の僕のテントのほうへ流れ出し……。テント場にありえない異臭が漂い始めたのでした。

緊急時の行為でも、常識とマナーは守りたい

小屋の方がきれいに整備してくれ、他の人も利用する場所に、どうして平気で流してしまうのでしょう。下界まで運ぶか、出発前に“内容物”だけ小屋のトイレに捨てさせてもらい、汚れたペットボトルだけゴミとして持ち帰ればいいのに……。

山小屋のトイレ

撮影:高橋庄太郎(山小屋のトイレ。通常のトイレ料金を払いつつ、衛生的な配慮をして処理しましょう。注/穂高岳山荘のトイレではありません)

話はズレますが、ソロテント泊ならば、緊急時は携帯トイレを使って「大」すらテント内でできなくもありません。その際、使用後に小屋のトイレに捨てるのはマナー違反! 絶対に持ち帰りましょう。

《3》テントの設営は基本的に「先着順」。それなのに……

トムラウシ山に近いヒサゴ沼のテント場

撮影:高橋庄太郎(トムラウシ山に近いヒサゴ沼のテント場。中央は僕のテントで、問題はその右前のスペース)

最後は北海道の大雪山系・ヒサゴ沼のテント場での話です。

夏の混雑期のある日、僕はテント場が空いてる早めの時間帯に到着。そして無事に、沼のほとりのよいスペースを確保。昼寝をしているうちに、テント場に多くの登山者が到着してきました。

気付くと、僕のテントの前には石か何かで地面を引っかいて描いた大きな丸がありました。どうやらグループ山行をしている登山者の一団のうち、先についた人が後続の人のためにテント設営の場所取りをしたようなのです。

テント場の場所取りはマナー違反

場所取りのために描かれた丸

撮影:高橋庄太郎(上の写真の右下を拡大したカット。青丸の部分が、場所取りのために描かれた丸です)

一部のテント場を除き、山中のテント場は「先着順」。明確な決まりがあるわけではないので、場所取りはルール違反とまでは言いませんが、明らかにマナー違反です。

その線を描いた人は近くにいないようですが、見張っている人はいなくても、ほかの登山者がその上にテントを張ることはないでしょう。それにしても、まだまだテントを張るスペースは残っていた時間帯なのに、気が早いこと……。

同じ丸を別の角度から

撮影:高橋庄太郎(同じ丸を別の角度から。これ以上大きな場所取りが、小屋近くで行なわれていました)

僕はこれまでに何百泊も山中のテント場で寝泊まりしてきましたが、場所取りされているテント場を見ることはそれほどありません。だけど、北海道ではときどき見かけるんですよね? 大雪山系は全国から多くの登山者が集まる人気山域だから、地域性ではないはずなのですが……。

これを機に、テント場の様子が気になった僕は、周囲をうろうろして状況をチェック! すると、そんな大きな丸は僕のテントのそばだけではありませんでした。
人が多くて写真撮影はできませんでしたが、さらに巨大な長方形の場所取りの線もヒサゴ沼避難小屋近くのスペースには描かれていたのです。そして、夜になって問題を起こしたのは、そこで場所取りをしていた人たちだったのでした!

その避難小屋近くの巨大スペースを確保していたのは、札幌の某山岳会。どうやら数パーティに分かれて行動していたようで、いちばん遅い人はなんと21時過ぎに到着。それから大声で宴会を始めました。

その後の流れは、先に述べた「餓鬼岳」とほぼ同じ。別の登山者に注意されて逆ギレした山岳会メンバーの一部は「だから、こんな場所でテン泊なんかしたくなかった!」「つまんねえ!」と叫び始め、興奮が収まらず……。

幸い、同じ山岳会のなかからも騒ぎ立てるメンバーを注意する声が上がり、その後はなんとか静かになったのでした。

継続するテント泊人気。だからこそ、みんなでマナーを守ろう!

テント場

撮影:高橋庄太郎(山中のテント場では、テント同士が至近距離。ますますマナーが問われます)

テント場で見かけるマナー違反の登山者は、年代や性別を問いません。ただ、女性よりも男性、若い人よりは年配のほうが多いようです。そして、若い人の多くは注意されればすぐに身を正してくれますが、年配の方には逆ギレする人も珍しくなく、僕も怖くて注意できないほどで……。ほとほと困ることがあります。

それでも近年、登山者のマナーは確実に向上しています。ほとんどの登山者は適切にテント場を利用していますし、これから山のテント場はもっと気持ちよく使えるようになるはずですよ。

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