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御嶽山の様子

《あの噴火から5年》とうとう規制解除される”御嶽山”山頂への道

2014年9月に御嶽山が突如噴火。この噴火は死者58名、行方不明者5名を出した山岳史上に残る大惨事となりました。しかし多くの関係者の復興への努力のすえ、今年(2019年)は7月1日~10月16日の間、山頂への立ち入りが一部解除されます。今回は噴火前後の御嶽山の様子を見てきた山岳ライターが、復興に携わった方の思いを聞き、御嶽山を登るときにすべき事について考えました。

目次

【噴火警戒レベル1(2022/6/23 現在)】
地獄谷火口内では、突発的な火山灰等の噴出に注意が必要です。地元自治体等が行う立入規制等に従い、また、登山する際はヘルメットを持参するなどの安全対策をしてください。
その他入山規制や警戒事項に関しては、王滝村のHPをご確認ください。
御嶽山に関する王滝村のお知らせはこちら
アイキャッチ画像撮影:YAMA HACK編集部

2014年9月、突然噴火した”御嶽山”

御嶽山の様子

撮影:高橋庄太郎(噴石で破壊されたままの御嶽頂上山荘 2018年撮影)

2014年9月27日11時52分、長野県と岐阜県の間にある御嶽山が噴火レベル1の段階から噴火し、死者58名、行方不明者5名を出した山岳史上に残る大惨事となりました。

昨年(2018年)には一時的に封鎖されていた山頂までの登山道を規制解除して話題になり、とうとう今年は山開きの7月1日から10月16日14時まで、山頂への立ち入りが一部解除されます。

ここに至るまでには、木曽御嶽山を愛する多くの関係者の復興への努力が陰にありました。

あの大噴火から、今年の9月で丸5年。今回は噴火前、噴火後の御嶽山を見てきた山岳ライターの立場からこれまでの流れを振り返りつつ、復興作業に携わった方に御嶽山復興に対する思いを聞き、そして登山者がどのような気持ちで御嶽山に登ればよいのかを考えます。

ひっそりしていた噴火前の御嶽山

御嶽山の様子

撮影:高橋庄太郎

僕が初めて御嶽山に登ったのは、2014年の6月。さすが天下の日本百名山とあって、山頂から見える爆裂火口は迫力があり、残雪に囲まれた二ノ池はとてもきれいでした。

ただ、それほど天気はよくなかったので、近いうちに再訪しようと思っていたのですが…。

しかし、再訪の機会はなかなか訪れませんでした。3カ月後の9月27日御嶽山が水蒸気爆発を起こしたからです。

他人事ではない噴火の可能性

御嶽山の様子

撮影:高橋庄太郎(劔岳山頂からの御嶽山の噴火の様子)

そのとき、僕は北アルプスの剱岳の山頂で周囲の景色をのんびり楽しんでいましたが、突然遠くに噴煙が上がっていることに気付きました。それが70km以上離れた御嶽山の噴火だとわかると周囲の登山者も騒ぎ出し、その日は一日中、落ち着かない気持ちでした。

剱岳は巨大な火山である立山の隣にあり、火山ガスがつねに発生している地獄谷は数年前から立ち入り禁止。火山噴火の危険は、遠い場所の問題ではなかったのです。

噴火直後の登山者の救援活動は、次第に御嶽山山頂付近を中心とした復興作業へと移り、昨年は9月26日から10月8日までの限定的な期間ながら、とうとう山頂までの登山が解禁。その陰には、御嶽山復興にかける多くの人の努力と熱意があったのです。

山小屋のご主人に聞く《火山に登るということ》

御嶽山の様子

撮影:YAMA HACK編集部(左が女人堂のご主人、起さん)

今回僕がお会いしたのは、御岳ロープウェイがある黒沢口の八合目の山小屋「女人堂」のご主人、起信幸さん。噴火後から登山道整備などの作業に関わり、御嶽山安全パトロール隊の一員としても活動されている方です。今はとても穏やかな雰囲気の御嶽山を眺めながら、御岳ロープウェイ鹿ノ瀬駅でお話をうかがいました。

御嶽山の様子
撮影:YAMA HACK編集部(取材当日は穏やかな雰囲気の御嶽山の姿が)

噴火直後はもちろん、噴火の翌年になっても、女人堂がある八合目で2~3㎝の降灰が残っていました。九合目以上では、その倍以上。登山道は火山灰で埋まり、とても歩きにくい状態だったので、まずは九合目まで歩けるように作業をしていきました。

灰によって道が荒れやすくなっていたので大変でした。灰が積もった場所には水が浸透せず、池のようにたまった水があふれだすと、道が深く掘れてしまうんです。それでも整備して、より登りやすい道にしたいと頑張りました。

でも、ときどきそれがいいことなのかわからなくなります。少しくらい足場が悪いほうが皆さん注意深く歩くようになるので、むしろ安全かもしれませんから。

御嶽山の様子

提供:起さん(灰で荒れた登山道を整備している様子)

結局、登山道の火山灰の除去だけでも3シーズンかかったそうです。また荒廃が激しく、廃業を選択することになった山小屋も。

それでも徐々に復旧が進み、昨年はとうとう多くの登山者が4年ぶりに開放された山頂を目指せるようになりました。

頂上への道が短期間ながら再開!

御嶽山の様子

撮影:高橋庄太郎(火山灰が除去された登山道。山頂や小屋までの距離が書かれた看板が設置され、避難時の目安に。)

じつは僕もそのときに登った1人。あいにく天気には恵まれませんでしたが、起さんたちの活動により修復された登山道は、とても歩きやすい状態になっているのがわかりました。

噴火当時に報道写真で見ていた火山灰に埋もれた殺伐とした雰囲気は薄れ、ここまで復興させた関係者のみなさんの努力には頭が下がるばかりです。その一方で、いまだ修復できない傷跡に心が重くなることも否めません。

忘れてはいけない、火山に登るという心構え

御嶽山の様子

撮影:高橋庄太郎(山頂の神社の近くには、今も灰に埋もれたままの碑や灯篭がある。)

頂上が多くの登山者の最終的な目的地ですし、我々の整備も頂上を最終目標に進めました。その結果、山頂までの登山道はやっと整備できたんです。

しかし現在の山頂付近は、昔とはまったく違う状態です。とくに二ノ池より上は完全に変わってしまい、以前のようなきれいな御嶽山を取り戻すには時間がかかります。今は噴火の跡を見に行くために登るようなものですが、それは”火山”ということを意識してもらうためにも必要なことだと思うんです。

御嶽山の様子

撮影:高橋庄太郎(立ち入り禁止の登山道と区域はまだまだ多い。)

日本は世界有数の火山国です。日本百名山のうち、とくに有名な活火山だけでも20座以上。ここ数年で、噴火警戒レベルが上がったり、実際に噴火したりしてニュースになった山には蔵王山、浅間山、草津白根山、阿蘇山、霧島山などがあげられます。日本に温泉が多いのは火山があるからですし、山を趣味にする限り、火山との付き合いは切り離せません。

噴火の痕を安全に活かす気持ちを

御嶽山の様子

撮影:高橋庄太郎(山頂にある御嶽神社。工事用の資材が積まれた一角には噴火によって首が落ちた像も。)

昨年の9月にはシェルターもでき、その隣には慰霊碑も建てられました。避難施設を兼ねた二ノ池山荘の建設も終わり、今年の7月1日の開山祭と同時にオープンします。
昨年の規制緩和の最終日などは九合目から頂上まで行列になってしまい、登れない方もいらっしゃいました。でも、今年は7月1日から登れますから余裕をもって計画を立てられるでしょう。

撮影:高橋庄太郎(シェルターの隣にある御嶽山噴火災害慰霊碑。)

本当はただ楽しく登ってもらいたいところですが、やはり亡くなった方もいらっしゃいます。犠牲になられた方のお気持ちも考えながら、大きな災害が起きた山の今の姿を見ていただきたいですね。

出発前の心構えと準備とは?

御嶽山の様子

撮影:高橋庄太郎(越さんが運営する「女人堂」でも最新の情報を確認可能。)

あのときの噴火を経験した方が、今も登りにいらっしゃるんです。あれだけのことを体験して、まだ登ってくれるなんて…。感謝というか、うれしいですよね。そんなことが本当に励みになります。

そういう方のためにも自分たちはできることをやっていかねばなりませんし、もっと多くの登山者に御嶽山の良さを知ってもらいたいとも思います。

起さんが取り組んでいる御嶽山の復興への行動は、これからも続きます。

ところで、再び頂上まで行けるようになった御嶽山には、どんな心構えと準備で登ればいいのでしょうか?

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