自分の足に合わせて作ったテクニカの「熱成型シューズ」。その履き心地は?
シューズ内部に熱を加えると変形するサーモプラスチックのパーツが組み込まれ、自分の足に合わせて熱成型することで「自分だけの一足」ができるテクニカのフォージGTX。
以前の記事では、ライターの僕・高橋庄太郎がテクニカのオフィスを訪れ、実際にカスタムしてもらう様子をお伝えしました。
熱成型シューズの製作についての詳細は、そちらの記事を見ていただくことにして、今回は完成した”僕専用”フォージGTXの履き心地についてリポートしていきます。
▼”僕専用”のフォージGTXを作る工程はコチラ

では、そのフォージGTXを改めて見てみましょう。見た目はもちろん一般的なフォージGTXと変わりありませんが、内部の形状は世界にひとつなのです。
原型は、多用なシチュエーションに対応するトレッキングモデル
フォージGTXは、登山靴のなかでも汎用性が高いトレッキングタイプ。
アッパー、ソールともに比較的柔らかく、高山の岩稜隊には少し華奢ですが、森林限界を越えていない低山から標高2,000mくらいの山に程よく、雪がない時期に向いたブーツです。
最大の特徴はやはり「熱成型できること」ですが、それ以外にもうひとつおもしろい工夫があります。それはアッパーとタンが一体になり、足首を巻き込むようにしてフィットさせる「オーバーラップカラー」といわれる仕組みです。
タンを足首の左右からアッパーで挟み込む一般的なシューズとは異なり、歩いているうちにタンがズレてフィット感が損なわれることがないのが、大きなメリット。
ただし、このようにアッパーとタンが一体化した構造だと、前屈したときにタンといっしょにアッパーにも力がかかりやすいため、一般的なシューズほど足首が曲がりにくい可能性もあります。
フィット感と引き換えのこの問題は、フォージGTXの気になる点です。
この点もしっかり検証してみたいと思います。
実際に足を入れる前に、熱成型されたインソールを改めてチェックしました。
じつに平面的ですが、これは僕の足が偏平足であるため。もっと立体的なほうが、効果が高そうに思う方もいらっしゃるかもしれませんが、実際はこのほうが僕の足に合っているのですね。
足を入れた途端にわかる。これこそ”シンデレラ・フィット”!
さて、足を合わせてみましょう。
足入れしてすぐに体感できるのは、足の甲からサイド、足の裏まで、足全体が均一な圧力で包み込まれていること。どこにも違和感はありません!
こういう感じのことを、「シンデレラフィット」というのでしょうね。いや、それどころか素材が硬いガラスではない分だけ、僕はシンデレラ以上に心地よいフィット感を得ているはずです。
さすが、使う人の足に合わせて熱成型したシューズですね。しかし熱成型されているのは足首からかかと、足の両サイドまで。つま先部分はラバーの硬いトゥガードで覆われているために熱成型できません。
だけど、登山靴というものはもともと指先に余裕があったほうがよく、熱成型する必要はあまりないともいえます。
初めて使うのに、数年履きこんだシューズのような感覚
僕専用のフォージGTXのデビューは、紀伊半島の伯母子山。
登山道を歩き始めてから10分もしないで、早くもフォージGTXの履き心地がわかってきました。
フィット感のすばらしさは、ここで初めて履いたシューズだとは思えないほど。それどころか、履き始めて数年たち、アッパーが足になじみ切ったレザーシューズのような感覚なんですね。ちょっと予想以上でした。
ときおり平坦な場所を交えつつ、登山道には急登が続きます。土や石がむき出しの場所だけではなく、しっとりと苔むした場所も多く、地面はバリエーションに飛んでいます。
岩の上でのグリップ力を判断しやすい石畳や石段も点在していました。
フォージGTXのソールに使われているビブラム・メガグリップは濡れた地面に強いのが売りですが、このときは濡れた地面がない乾燥した登山道ばかりで、その真価があまりわからず……。
しかし柔らかめのソールは乾いた岩の表面をとらえ、安定感はなかなかのものです。
靴紐を少しキツめに結び直し、少し休憩してから来た道を折り返しました。