自分だけの”専用シューズ”の実力は?テクニカ「熱成型シューズ」を山で履いてみた!

2020/01/04 更新

自分の足に合わせて、靴の形を熱成型する登山靴。左右で足の形が違う…なんて悩みにも嬉しいサービスですよね。そんなテクニカの熱成型シューズ「フォージGTX」を前回作成した、ライターの高橋庄太郎さん。自分専用シューズの実力はどうなのか…実際に山で試し徹底リポート!


自分の足に合わせて作ったテクニカの「熱成型シューズ」。その履き心地は?


シューズ内部に熱を加えると変形するサーモプラスチックのパーツが組み込まれ、自分の足に合わせて熱成型することで「自分だけの一足」ができるテクニカのフォージGTX。
以前の記事では、ライターの僕・高橋庄太郎がテクニカのオフィスを訪れ、実際にカスタムしてもらう様子をお伝えしました。

熱成型シューズの製作についての詳細は、そちらの記事を見ていただくことにして、今回は完成した”僕専用”フォージGTXの履き心地についてリポートしていきます。

▼”僕専用”のフォージGTXを作る工程はコチラ

こちらが僕の足に合わせて作られたフォージGTX
では、そのフォージGTXを改めて見てみましょう。見た目はもちろん一般的なフォージGTXと変わりありませんが、内部の形状は世界にひとつなのです。

原型は、多用なシチュエーションに対応するトレッキングモデル

フォージGTXは、登山靴のなかでも汎用性が高いトレッキングタイプ。
アッパー、ソールともに比較的柔らかく、高山の岩稜隊には少し華奢ですが、森林限界を越えていない低山から標高2,000mくらいの山に程よく、雪がない時期に向いたブーツです。

最大の特徴はやはり「熱成型できること」ですが、それ以外にもうひとつおもしろい工夫があります。それはアッパーとタンが一体になり、足首を巻き込むようにしてフィットさせる「オーバーラップカラー」といわれる仕組みです。
フォージGTXのひとつの特徴は、まるで渦のような形状でアッパーと一体化したタンの部分。足首の太さにかかわらず、フィット感が高まります。
タンを足首の左右からアッパーで挟み込む一般的なシューズとは異なり、歩いているうちにタンがズレてフィット感が損なわれることがないのが、大きなメリット。
ただし、このようにアッパーとタンが一体化した構造だと、前屈したときにタンといっしょにアッパーにも力がかかりやすいため、一般的なシューズほど足首が曲がりにくい可能性もあります。

フィット感と引き換えのこの問題は、フォージGTXの気になる点です。
この点もしっかり検証してみたいと思います。
熱成型する前はもっと立体的だったインソール。僕の足をリアルに再現して、かなり平らになりました。
実際に足を入れる前に、熱成型されたインソールを改めてチェックしました。
じつに平面的ですが、これは僕の足が偏平足であるため。もっと立体的なほうが、効果が高そうに思う方もいらっしゃるかもしれませんが、実際はこのほうが僕の足に合っているのですね。
足を置いてみると、足裏の凹凸にぴったり。足裏のすべての面へ均一に体重が乗っている印象です。

足を入れた途端にわかる。これこそ”シンデレラ・フィット”!

さて、足を合わせてみましょう。

足入れしてすぐに体感できるのは、足の甲からサイド、足の裏まで、足全体が均一な圧力で包み込まれていること。どこにも違和感はありません!
こういう感じのことを、「シンデレラフィット」というのでしょうね。いや、それどころか素材が硬いガラスではない分だけ、僕はシンデレラ以上に心地よいフィット感を得ているはずです。

見た目もカッコいいフォージGTX。アッパーは柔らかなヌバックレザーで、この素材もまた足の形状によくなじみます。
さすが、使う人の足に合わせて熱成型したシューズですね。しかし熱成型されているのは足首からかかと、足の両サイドまで。つま先部分はラバーの硬いトゥガードで覆われているために熱成型できません。
だけど、登山靴というものはもともと指先に余裕があったほうがよく、熱成型する必要はあまりないともいえます。
靴紐およびD環代わりに紐を通す部分は、ともにケブラー。表面にザラつきによって摩擦感が高まり、締めた靴紐が緩みにくいのが長所です。

初めて使うのに、数年履きこんだシューズのような感覚

僕専用のフォージGTXのデビューは、紀伊半島の伯母子山。
登山道を歩き始めてから10分もしないで、早くもフォージGTXの履き心地がわかってきました。

フィット感のすばらしさは、ここで初めて履いたシューズだとは思えないほど。それどころか、履き始めて数年たち、アッパーが足になじみ切ったレザーシューズのような感覚なんですね。ちょっと予想以上でした。

表面のアッパーはまだほとんど汚れていないのに、履いた感触はすでに数年使いこんだシューズのよう。
ときおり平坦な場所を交えつつ、登山道には急登が続きます。土や石がむき出しの場所だけではなく、しっとりと苔むした場所も多く、地面はバリエーションに飛んでいます。

岩の上でのグリップ力を判断しやすい石畳や石段も点在していました。
アッパーとタンが一体化されているため、これくらい足首を曲げるとアッパーが強く前に引かれる感じも。石の上でのグリップ力は充分でした。
地面の上も快調。ソールが比較的柔らかいので、前方への蹴り出しはスムーズ。
ソールは定評のあるビブラム製。そのなかでもビブラム・メガグリップといわれる滑りにくいタイプを使っています。
フォージGTXのソールに使われているビブラム・メガグリップは濡れた地面に強いのが売りですが、このときは濡れた地面がない乾燥した登山道ばかりで、その真価があまりわからず……。
しかし柔らかめのソールは乾いた岩の表面をとらえ、安定感はなかなかのものです。

今回のテストのメインステージは、紀伊半島にある伯母子山。山頂直下に熊野古道・小辺路が通っている日本200名山です。
その後、数時間歩いて、山頂に到着。 靴紐を少しキツめに結び直し、少し休憩してから来た道を折り返しました。
 

山頂を出発する前、フォージGTXの靴紐は少し強めに締め付けました。足首をしっかりと固定して捻挫を防ぐための、下り道の鉄則通りです。

あれ!? 下山直前には少しだけ違和感も

下り道でもフォージGTXは、なかなか快調!
湿気が抜けにくいオールレザーのシューズとあって、内部が少し蒸れるのは仕方ありませんが、気になるほどではありません。歩行はスムーズで、どんどん標高を下げていくことができました。

しかし……。あと少しで登山口に戻れるというころに、足首部分に少し違和感が。左足の足首が曲がる部分、金属のフックが取り付けられているあたりが圧迫され、わずかに痛みを感じてきたのです。

違和感を覚えたのは、シューズの左足の外側、指先で示した部分。右足のほうはまったく問題ありませんでした。
長い下り道に備えて靴紐を強めに結んでおいたからでしょう。僕は他のシューズでもときどき同じ部分が痛くなることがあるので、ここは僕の足のウィークポイントなのかもしれません。
また、この部分はタンに使われているクッション素材が、他の箇所に比べて薄い部分でもあり、サーモプラスチック越しに圧力が足首へかかりやすかったのだとも思われます。

タンの箇所で言えば青い丸の部分に痛みを感じました。靴紐をしっかりと結べば、最下部のフックの真下になる部分です。
ともあれ、このときはもう少し歩けば下山できる地点にいたので、そのまま歩き切ってしまいましたが、あと数時間歩かねばならなかったら、もっと痛くなってしまったかもしれません。

なんでも相談!小さな問題も、きっと解消できる

こんな風に一度痛さを感じてしまうと、他のシューズだったら今後履くのはかなり心配になった気もします。
しかし! フォージGTXがすばらしいのは、熱成型をもう一度やり直せば、フィット感がより向上して、違和感がなくなる可能性が高いということ。アフターケアとして、「焼き直し」は基本的には無料で行なえるのです。(※靴の状況によっては、買い替えをお勧めする場合もあります。また手数料が発生する場合もあるため、店舗にご確認ください。)

だけど、もう少し履き続ければ、この違和感はなくなるかもしれません。焼き直しに行くのはちょっと面倒ですしね。
そこで僕は焼き直しをする前に、他の山でもフォージGTXを何度か試して、様子を見ることにしました。
高川山での1カット。この山の岩場でもフォージGTXのソールのグリップ力は充分に発揮されていました。
妙義山の石門巡りでも使用。この山の稜線は急な岩場が続く危険地帯ですが、山腹を歩く石門巡りにはちょうどよい感じでした。
山梨百名山の高川山、日本200名山の妙義山などでは、伯母子山のときほどの痛みは出てきません。しかし長時間歩いていると、やはり左足の足首部分に違和感を覚えます。気のせいなのかもしれないとも思う、わずかなものですが……。

う~ん、せっかくだから、近々焼き直ししてもらおうかな。無料でますます履き心地がよくなる可能性があるのならば、やってもらわない手はありません。
再び熱成型用のマシンの前に座り、エアーサックに足を入れるのが、今から楽しみです。
写真撮影:高橋庄太郎

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高橋庄太郎
高橋庄太郎

山岳/アウトドアライター。高校の山岳部から山歩きを始め、登山歴は30年以上に。好きな山域は北アルプスで、テント泊をこよなく愛する。テレビやイベントへの出演も多く、各メーカーとのコラボでアウトドアギア作りも。『トレッキング実践学 改訂版』『山道具 選び方、使い方』『テント泊登山の基本』など、著書も多数。https://www.instagram.com/shotarotakahashi/

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