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【冬山の悩み】手先・足先の「冷え」がつらい!

寒い時期の登山では、しっかりと防寒をしていても手足が冷えてしまうなんてこともしばしば。「行動しているうちに体はポカポカしてきたのに、手先や足先が全然温まらない……」そんな経験はありませんか? 冷えたままでは力が出ないですし、気分も上がりませんよね。
そこで今回は、つらい末端の冷えを改善する方法を調査。スポーツ科学の専門家に、原因と対策、そして簡単にできるホカホカ術を教えてもらいました。
そもそも、どうして冷える? 体温調整のメカニズム
体が冷えてしまう理由は、大きく以下の2つが考えられます。【1】筋肉量が少なく、体内で熱を十分に作れていない
私たちは食べ物などから栄養素を取り込み、他の物質を合成したり、エネルギーに変換しています。この体内で起こる化学反応が「代謝」であり、代謝が行われる際に体熱が生み出されます。代謝は主に、体を動かしたときに発生する「身体活動量」、生きるために最低限必要な機能を維持するための「基礎代謝」、食事をした後に発生する「食事誘発性熱産生(DIT)」で構成されています。中でも「基礎代謝」は代謝の60%を占めており、代謝量の内訳は、約20%以上が筋肉なんです。

【2】自律神経の乱れにより血流が悪くなり、体内で作られた熱が全身に上手く届いていない

交換神経は活動時に、副交感神経はリラックス時に活発になります。副交感神経が優位のリラックス状態の方が血圧が安定し、体も温かく感じられます。

こうして自律神経のバランスが乱れることで体温調整が正常に行われなくなってしまい、体の冷えに繋がります。
“末端”が冷えやすいのはどうして?

そして、脳や心臓など生命維持のために重要な器官の温度を保つことを優先。末梢への血流を抑制し、血液を体の中心部に集中させようとします。手先や足先は心臓から最も遠いだけでなく、血管が細く、収縮するとさらに血流が悪くなってしまう場所。そのため、手足の末端は特に冷えやすいのです。
冷やさないようにすることが大前提! やっておきたい2つの予防
人の体、特に手先や足先は一度冷えるとなかなか温まりません。そのため冷やさないようにすることが重要です。では、登山のときはどうしたらよいでしょうか? まずは、事前にできる末端の冷え対策を2つご紹介します。【1】3つの「首」を温める

冷えた血液が体内に巡ってしまうと体温が下がり、これ以上冷やさないようにと血管が収縮。前述の通り、末端の冷えに繋がってきます。
冬の登山では、極厚手のウールの靴下や冬用インソール、カイロや手袋で手先・足先の防寒をしていると思いますが、これらは一時的であることも。「手首」「足首」だけでなく、ネックウォーマーやバラクラバで「首」もしっかり保温しましょう。
【2】お腹を温める

また、温かい飲み物を持参する人も多いと思いますが、温かければなんでもよいという訳ではありません。コーヒーや緑茶はホットでも過剰摂取しすぎると体を冷やすといわれていますので、冬山には紅茶やほうじ茶がおすすめです。
冷えた手先・足先の血流アップ! 山で簡単ほかほかストレッチ
ここでは、登山中に冷えてしまった手先や足先を簡単にあたためるストレッチを3つご紹介します。手先を温める動き➀

第一関節や第二関節のところで手を組み、指の間を刺激する。
手先を温める動き➁

手の指のグーパーを繰り返す。
足先を温める動き

「えっ、これだけ!?」と思うかもしれませんが、本当にこれだけ! 登山中、足や体幹などの活動している筋肉や脳などの臓器に積極的に血液が流れます。そのため、末端の手先・足先には血液が行き届かずに、冷たくなってしまいがち。手先・足先を動かすことで血流を促すことが重要なんです。
「にわかには信じがたい……」 本当に温まるのかどうかを実験!
手先や足先をちょっと動かすだけで、本当に温まるのでしょうか? グーパー効果による手の温度変化をサーモグラフィーで確認してみました。グーパーするとどうなる?

とはいえ、もともと手が冷えていたわけでなないので、「こんなものなのかな?」という印象。冬の山のように冷えきった手の場合はどうなのでしょうか?
冷えた手だとどうなる?

「いやいや、実際の冬山だったらもっと手が冷えているから“グーパー”くらいだと温まらないでしょ?」そんな声が聞こえてきそうです。そこでもうひとつ実験。

その結果、室内での計測ということもあり、何もせずとも表面温度はアップ。しかし指先はまだ冷えた状態です。その後の“グーパー”により、手のひらの表面温度こそ変わりませんでしたが、指の冷えた部分(水色)が消えて全体が温まりました。
試してみる価値あり!

何より手先を動かすことで、内側から手がぽかぽかしてくるのを実感! サーモグラフィーの結果だけでは見て取れない変化です。
もちろん体質によって温まる度合いや速さは異なります。実際の冬山では、動かす時間をもう少し長くする必要があるかもしれません。
ちょっとの工夫で血行促進! 冬の登山を思いっきり楽しもう!

監修/ミウラ・ドルフィンズ 安藤 真由子氏
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