登山中のヒザ裏の痛みについて
私は40代の男性で登山歴は三年程なのですが、ここ何回かの登山で登りでもヒザが痛くなるようになりました。具体的にはヒザの外側の裏の辺りです。調べてみるとヒザの外側の痛みは腸脛靭帯(ちょうけいじんたい)の炎症などが原因とのことですが、ヒザの真横の側面ではなく、ヒザ裏の筋が痛みます。この部分のみで他に痛みは出ていません。このような痛みが出る原因、出なくなる歩き方、またトレーニング等ありましたら教えていただけますか。
相談者 そろそろソロ さん
ヒザ裏の痛みですが、もし靭帯に炎症が起こっているのであれば登山後の数日から一週間程度、炎症が治るまで痛みが続きます。
筋肉疲労が原因であれば、痛みは登山中と登山後翌日程度で治まります。ご質問が登山中に起こるヒザ裏の痛みということですので、筋肉に強い負荷がかかっていることが痛みの原因だと思います。
結論から言いますと、下の写真の【左側の歩き姿勢がヒザ裏に痛みが出やすい】歩き方です。ヒザ裏に痛みが出る原因が知りたくて、以前私も歩き方を変えて実験してみたことがあります。右側が負荷の少ない理想的な歩き姿勢で、私はいつもこのような姿勢で歩いています。
(右側の歩き姿勢でもう少し歩幅を狭くするのがGOOD!)
試しに左の歩き姿勢でガンガン歩いてみたところ、標高差200m程度でヒザ裏に痛みが出て来てビックリしました。
●写真の2人の歩き姿勢の違い
左右の歩き方では姿勢が曲がっているか、伸びているかの違いがはっきり分かります。ただ、単純に「姿勢良く歩きましょう」と言って解決できるものでもないのが、山歩きの難しいところです。まずは何故、姿勢が崩れるのかを理解することが大事だと思います。
1 右は前足の上にヒザが乗っていますが、左は前足の上にヒザが乗っていません。(赤色で足とヒザの位置を表示)
2 左の方が体幹部の重心点となる腰の位置が前足から離れています。(黄色で足と腰の距離を表示)
3 1、2のヒザと腰が前足から遠いことの代償として、前足に少しでも重心を乗せるために無意識で頭を前に倒します(青色で頭の位置を表示)
登りでは前に出した足にひたすら重心を移していく動きを繰り返します。ですから体重を底部で支えている前足の上に重心を集中させることで筋肉の負担を減らして歩くことがきます。爪先の真上にヒザが来るのが理想的な姿勢であり、ヒザの位置が後ろに離れれば離れるほど、腓腹筋やハムストリングなど、下肢の後面の筋肉への負担が強くなります。
下肢後面の筋肉の疲労が、これらを繋いでいるヒザ裏の腱の部分に痛みを生じさせていると思われます。
●姿勢を改善するには
踵側に重心をかける癖のある方は、つま先側に重心を乗せることを意識して山を歩く練習をしましょう。(あくまで爪先重心であり、靴底はフラットに着地します)
また、足首と股関節の柔軟性も重要です。爪先の真上にヒザを乗せて歩くためには足首を前に倒す柔軟性、前足の近くに腰を乗せるためには股関節周囲筋の柔軟性が必要です。柔軟性を向上させるストレッチの方法は色々ありますので、検索して調べてみてください。バレリーナのような柔軟性は不要ですが、理想的な姿勢を保つことが出来れば、筋力の負担は減って安定した歩行が出来ます。
頭痛について
去年から登山を始めました。冬山以外で月一回のペースで登っているのですが、2000mを超える山に登ると毎回軽い頭痛に悩まされます。高山病の初期症状なのでしょうか。何か良い改善策はありますか?
相談者 かよ さん
高度障害は、標高2000mぐらいから症状が出る方も決して少なくありません。
かく言う私もガイドをやっていながら実は高度に弱く、寝不足だったりすると八ヶ岳の稜線ぐらいの高度で頭痛になる事があります。ざっくり言うと、高度障害は体内の酸素不足によって起こります。予防のポイントは以下の通りです。
・登山の前日は睡眠を十分にとる
・登山の初日、高度を上げる日はゆっくり行動し、休憩を長めにとる(高所順応)
・水分を多めにとる(水分不足→脱水→血液循環悪化→酸素不足となります)
・アルコールは控えめに(アルコールの利尿作用→脱水→以下同様)
・山小屋泊の場合、小屋到着後すぐに寝ない(睡眠中は呼吸が浅くなり酸欠状態になりやすいです)
・深呼吸を心がける(酸素摂取量が増えます)
夏の北アルプスなどでは夏山診療所が何ヶ所かありますので、頭痛がする際にもし近くに診療所があれば、一度診てもらうと良いかも知れません。パルスオキシメーターという機器で血中酸素飽和度という数値を計る事ができ、体内の酸素の状態が分かります。
こむらがえり防止について
月一程度で関東周辺の日帰り登山をしています。登山開始後1時間ぐらい経つと、そんなに酷使したつもりがなくても段差を越えようとした時にふくらはぎが痙攣し、足がつりそうになることがよく起きます。実際完全に攣ってしまって山頂を諦めたこともありました。
それ以降は芍薬甘草湯を含む薬を携行して攣りそうになると服薬するようにしていますが、こむらがえりが起きにくくなる歩き方やトレーニングなどはありますでしょうか。普段から段を登るときに後ろ側の足で蹴り上げてしまう癖があり、それも一因かとは思っています。
相談者 やまひびき さん 40歳/男性
「こむらがえり」はいくつかの要因が考えられます。
1:水分不足
2:塩分不足
3:マグネシウム不足
4:筋力不足
などです。
投稿にもあるとおり、歩き方も要因となるかもしれません。蹴り出すのではなく、太ももから持ち上げるようにすればふくらはぎの負担は軽減されます。しかし、「1時間くらいで・・」とのことですので、筋力不足ということも考えられます。
対策としては、
1:ふくらはぎを鍛えるエクササイズを徐々に行い、登山前には十分にストレッチする
2:水分、塩分を摂る
3:歩き方を工夫してみる
などではないでしょうか。
投稿にあるとおり、芍薬甘草湯は効果があると言われていますので、現場では役立つと思います。
ファーストエイドキットの中身はどんなものを揃えていますか?
登山歴3年目になります。まだまだ知らないことばかりですが、安全登山を続けられるようファーストエイドを身に付けたいと思ってます。プロガイドさんのファーストエイドキットの中身は、どのようなものを揃えてますでしょうか?
相談者 Yoko Serizawa さん
ファーストエイドキットの中身としては、切り傷、擦り傷、出血、打撲、捻挫、骨折、炎症・痛み・かぶれ・アレルギー反応・発熱・咬傷・毒症状・感染症・出血などの様々な怪我や病気を想定した物になります。
・三角巾
・医療用ハサミ(服も切れる)
・サージカルテープ、包帯
・キネシオテープ、テーピング
・サムスプリント
・滅菌ガーゼ
・防水フィルム、バントエイド
・衛生手袋
・ジップロック
・痛み止め、解熱剤、胃腸薬
・圧迫止血用のパッド
・バイタルメモ
・注射器(針のない)
・ポイズンリムーバー
・縫合テープ
・目薬
・塗り薬
・安全ピン、カミソリ、毛抜き
などなど‥‥。
ガイドのファーストエイドキットの中身は想定される様々なリスクに対応する為、一般登山者より重厚な内容になっております。※季節や山行内容により内容を変えます。
『備えあれば憂いなし』ですが、過剰すぎても重くなり逆に別のリスクを生む事もあります。上記内容を参考に、自身でも内容を厳選した最低限必要なファーストエイドキットを作る事をオススメいたします。またファーストエイドキットは持っているだけでは意味がありません。適切な応急処置の方法や、道具の使い方を理解しておくことが大切です。※野外救急や救急法の講習などで学んでください。
自分や仲間に何かあった時、自分達でできる範囲は自分でケアできるだけの用具と知識を持っておくのは大切だと思います。普段の生活の中で役に立つかもしれないですしね。安全登山にむけてがんばってください!
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