「神々が遊ぶ庭」大雪山
標高 | 所在地 | 山系 | 最高気温(6月‐8月) | 最低気温(6月‐8月) |
---|---|---|---|---|
2,291m(旭岳) | 北海道川上郡東川町 | 石狩山地 | 11.5℃ | -2.3℃ |
「大雪山」は北海道の中央部に位置する2,000m級の火山群で、1つの”大雪山”という山があるわけではありません。最高峰は標高2,291mの旭岳。これは北海道の最高峰でもあります。かつて北海道の先住民アイヌは、大雪山のことを「ヌタップカウシペ」と呼び、十勝岳連峰と合わせて「オプタテシケ」とも呼んでいました。
とにかく広大!神奈川県と同じ面積?
火山群の総称として「大雪山系」という名称もよく使われます。広義の意味では表大雪・北大雪・東大雪・十勝岳連峰を全て含み、その範囲は南北63km・東西59kmにも及んで神奈川県の大きさに匹敵します。このように広大な範囲にそびえる複数の山から構成されることから、登山のコース取りもバリエーションが豊富です。
本州の3,000m級。大雪山の厳しさに要注意!
大雪山は緯度の高い北海道にあるため、北アルプスの穂高岳のような本州3,000m級の山の気候に相当し、真夏でも風が吹けば震えるほど寒くなります。必ず防寒着を用意し、一般的な夏シーズンの登山と同じように捉えないよう注意してください。また、9月~6月の時期は冬山と認識して行動する必要があります。
てんきとくらす(旭岳付近の週間天気)
初心者も気軽に!自然散策トレッキングコース
ここでは、初心者の方も大雪山の雄大な自然を楽しめる散策コースを紹介します。
池や展望台をめぐるコース
旭岳へは、ロープウェイを用いて、山麓駅(1,100m)から姿見駅(1,600m)まで一気に標高を稼げます。姿見駅からは本格的な登山道となりますが、初心者の方はこの姿見駅周辺を散策するのもおすすめです。
1周/約1.7km、所要時間/約1時間
姿見駅からは道が二手に分かれ、姿見の池でつながる周回コースとなっています。時計回りに歩くと5つある各展望台を順に巡っていく形となり、のんびりとハイキングを楽しめますよ!
2つで1つの夫婦池
姿見駅から展望台を順に巡っていくと、寄り添うように並んだ2つの池に辿り着きます。一方は擂鉢みたいに窪んだ形をした「擂鉢池」。もう片方は旭岳の姿を鏡のように水面に映す「鏡池」。それぞれに名前がありますが、2つ合わせて「夫婦池」と呼ばれています。
広大な姿見の池
姿見の池の近くには湖畔よりも少し高くなっている丘があり、定番の記念撮影スポットとして人気があります。天気が良ければ姿見の池の水面がエメラルドグリーンに輝いて見えますよ!
本格的な登山装備ではなくても、家族やカップルで気軽に大雪山を味わえるエリアとしてこのトレッキングコースはおすすめです。大雪山の見所がギュッと詰まっているので、来て良かったときっと満足できるはずです。
ロープウェイで標高を稼ぐ!初級者向けおすすめ登山コース2選
続いて登山装備が必要なコースを紹介します。ここでは比較的登山初級者におすすめな2つのコースを見ていきましょう!
旭岳ロープウェイ+旭岳山頂往復コース
最高点の標高: 2266 m
最低点の標高: 1607 m
累積標高(上り): 705 m
累積標高(下り): -705 m
- 【体力レベル】★★☆☆☆
- 日帰り
- コースタイム:4時間55分
- 【技術的難易度】★★☆☆☆
- ・登山装備が必要
・登山経験、地図読み能力があることが望ましい
姿見駅(20分)→姿見の池(150分)→旭岳
※散策路を歩いてから登る場合:姿見駅(10分)→夫婦池(15分)→姿見の池(150分)→旭岳
コース全般ガレ場や岩場を歩きます。姿見の池から山頂まで約2kmの距離で高度を600m上げるので、中々の急登となります。視界は開けており、天候が良ければ周囲の山脈や遠くにある湖まで見渡せます。
【ロープウェイ未使用の場合】
最高点の標高: 2266 m
最低点の標高: 1099 m
累積標高(上り): 1437 m
累積標高(下り): -1437 m
- 【体力レベル】★★☆☆☆
- 日帰り
- コースタイム:4時間55分
- 【技術的難易度】★★☆☆☆
- ・登山装備が必要
・登山経験、地図読み能力があることが望ましい
旭岳登山口(150分)→姿見(20分)→姿見の池(150分)→旭岳(110分)→姿見の池(15分)→姿見(100分)→旭岳登山口
途中にある旭岳石室は緊急時以外の宿泊はできないため、日帰りの行程が可能な健脚者向きです。▼旭岳のコースについての詳細はコチラの記事もチェック!
リフトとロープウェイで黒岳登頂コース
最高点の標高: 1952 m
最低点の標高: 1506 m
累積標高(上り): 798 m
累積標高(下り): -798 m
- 【体力レベル】★☆☆☆☆
- 日帰り
- コースタイム:2時間
- 【技術的難易度】★★☆☆☆
- ・登山装備が必要
・登山経験、地図読み能力があることが望ましい
七合目登山事務所(70分)→黒岳
黒岳は旭岳の北東に位置し、標高1,984mを誇る秀峰です。標高による植物や樹木の生育分布(垂直分布)がはっきりとしているのが大きな特徴です。8合目から頂上にかけて広がっているお花畑も美しく見ごたえばっちり!麓には層雲峡温泉街があります。
黒岳は、標高670mの麓から1,300mの5合目までロープウェイで登れ、5合目から標高1,520mの7合目まではリフトが運行しています。一気に7合目まで高度を稼げることから、大雪山系の中でも最も短時間で頂上まで登ることができます。ロープウェイやリフトからも黒岳の植物分布の移り変わりが見て取れますよ!
7合目から本格的な登山がスタート!登山道は良く整備されています。8合目辺りから高山植物のお花畑が目にでき、9合目には独特の形をしたマネキ岩の姿も!山頂からは北鎮岳中腹にできる白鳥の雪渓が眺望でき、登るにつれ次々と移り変わる景色を満喫できるでしょう。
▼黒岳のコースについてはこちらの記事をチェック!
中上級者向け・おすすめ登山コース2選
続いて、もう少し長く歩きたい!という中級者の方におすすめ登山コースをご紹介します。
【日帰り】旭岳~黒岳コース
最高点の標高: 2266 m
最低点の標高: 1506 m
累積標高(上り): 1547 m
累積標高(下り): -1640 m
- 【体力レベル】★★★☆☆
- 日帰り
- コースタイム:6時間50分
- 【技術的難易度】★★☆☆☆
- ・登山装備が必要
・登山経験、地図読み能力があることが望ましい
姿見(170分)→旭岳(60分)→間宮岳分岐(50分)→北海岳(60分)→黒岳石室(20分)→黒岳(50分)→七合目登山事務所
旭岳から黒岳までは標高差もあまりなく、ハイキング気分で視界の開けた道を歩くことができます。展望は、大雪山の峰々の合間なので、高所から見下ろす感じではなく高原を歩く感じです。ガレた道やハイマツなどの低木林、高山植物が咲いている風景の中で所々に残っている雪渓がアクセントとなり美しい景色を見せています。
黒岳の手前・南西800mの位置には、トイレや水場を備えた黒岳石室と呼ばれる避難小屋があり、その隣には野営地もあります。道が4方向へ分岐している地点でもあり、旭岳に繋がる歩いてきた道、お鉢平の淵を歩いて北鎮岳や中岳へ繋がる道、黒岳への道、標高1,938mの桂月岳へ登る道が分岐しています。
【1泊2日】ぐるっとお鉢まわりコース
最高点の標高: 2266 m
最低点の標高: 1607 m
累積標高(上り): 2281 m
累積標高(下り): -2281 m
- 【体力レベル】★★★★☆
- 1泊2日
- コースタイム:13時間5分
- 【技術的難易度】★★☆☆☆
- ・登山装備が必要
・登山経験、地図読み能力があることが望ましい
【1日目】
姿見(170分)→旭岳(60分)→間宮岳分岐(20分)→中岳分岐(75分)→北鎮岳(85分)→黒岳石室
【2日目】
黒岳石室(100分)→北海岳(50分)→間宮岳分岐(100分)→旭岳(125分)→姿見
※1日目は黒岳石室泊、テントがある場合は裏旭キャンプ指定地泊でも可
姿見を出発して旭岳を登った後、北鎮岳、北海岳、間宮岳を巡り、直径が2kmもある大噴火口のお鉢平をぐるりと周回するコースです。北鎮岳は北海道で2番目に高いピークで、標高ツートップを踏めますよ!日程は1泊2日の行程となり、黒岳石室に宿泊します。
北鎮岳と黒岳の間には、様々な種類の高山植物が群生している雲ノ平と呼ばれる場所があり、美しく咲き誇るお花畑の姿は圧巻です!
標高2,149mの北海岳からは、天気が良ければお鉢平の全景とその向こうに北鎮岳の姿を眺望できます。また、反対側に目を向ければ遠くにトムラウシ山の姿も!
ここで紹介した2つのコースは、大雪山のメインどころを満喫できるおすすめのコースなので、程よい難易度で大雪山をより深く味わいたいときは是非このコースを歩いてみてください!
健脚者向け!2泊3日で大雪山の植物と自然を楽しむコース
大雪山は、高山植物の宝庫!季節によって美しい花々を見せてくれる大雪山の自然を楽しむ縦走コースをご紹介します。
花畑を楽しむ縦走コース
最高点の標高: 2266 m
最低点の標高: 610 m
累積標高(上り): 3190 m
累積標高(下り): -4169 m
- 【体力レベル】★★★★☆
- 2泊3日
- コースタイム:19時間35分
- 【技術的難易度】★★☆☆☆
- ・登山装備が必要
・登山経験、地図読み能力があることが望ましい
【1日目】
姿見(170分)→旭岳(110分)→北海岳(80分)→白雲岳分岐(20分)→白雲岳避難小屋
【2日目】
白雲岳避難小屋(60分)→高根ヶ原分岐(120分)→忠別沼(50分)→忠別岳(55分)→忠別岳避難小屋
【3日目】
忠別岳避難小屋(80分)→五色岳(90分)→化雲岳(60分)→ポン沼(270分)→化雲岳登山口
1日目:白雲岳避難小屋泊
2日目:忠別岳避難小屋泊
写真はチングルマと白雲岳の姿。北海岳から進路を南東に取り進んでいくと、白雲岳分岐に辿り着きます。白雲岳のピークへ達するには縦走路から逸れる必要があります。この辺りも見晴らしの良い高原ハイクが楽しめます。
2日目、白雲岳避難小屋を出発して南へ進んでいくと高根ヶ原と呼ばれる一帯に差し掛かります。ここは植物の宝庫で、様々な種類の高山植物の姿を見られますよ!
高根ヶ原の東側(進行方向左手)にはお花畑や美しい沼地が広がっており、白雲岳避難小屋から緑岳を通って下って行くことで辿り着きます。高根ヶ原分岐から三笠新道を下ることもできますが、現在熊の出没により当面の間立ち入り規制中です。
また、高根ヶ原は秋には紅葉が美しいエリアでもあります。高原沼など様々な沼があり、沼の畔に立って沼とセットで眺める紅葉も格別!
引き続き進路を南に歩いていきます。左手に高原沼、遠くに忠別岳が見えます。2日目の宿泊地である忠別岳避難小屋は、忠別岳を少し越えたところにあります。
道中、シマリスが姿を見せるかも?!他にも、主に道央の大雪山系に生息すると言われる生きた化石エゾナキウサギや、灌木の先にとまって囀るノゴマ、大雪山系のハイマツ帯に生息する赤みを帯びた鳥ギンザンマシコなど、珍しい生き物が出迎えてくれるかもしれません。
3日目、五色岳を経由して化雲岳に到着。北側に目を向ければ旭岳や白雲岳の堂々たる姿を視界に収めることができます。
南東方向には、標高2,013mの急峻な独立峰「ニペソツ山」の姿が見られます。
また、南に目を向ければトムラウシ山の姿も見えます。十勝岳方向へ縦走する場合は、化雲岳からトムラウシ山へ向かいます。
化雲岳から今度は進路を北へ取り、天人峡温泉へ下山していきます。
ヒグマに注意
このルートは熊が出没する可能性があるコースです。化雲岳付近には「神遊びの庭」と呼ばれる場所があり、ここで言う神とはヒグマのこと。しっかりと対策をして臨んでください。
コース上の山小屋情報
ここでは、紹介したコース上にある山小屋を紹介します。いずれも基本的には無人の避難小屋で、食事や寝具は自分で用意する必要があります。また、シーズン時は混雑するので注意しましょう。
旭岳石室
姿見の池のすぐ近くに建っており、緊急時の避難小屋としての役割を担っています。緊急時以外は宿泊できません。
収容人数:20人
トイレ:なし
黒岳石室
黒岳の南西800mに位置し、6~9月のシーズン時は管理人が常駐しています。管理協力費として1,500円必要です。また、水場も備わっており、横手に野営地もあります。
収容人数:150人
トイレ:あり
白雲岳避難小屋
白雲岳の南約1kmの地点にある避難小屋で、6~9月のシーズン時には管理人が常駐しています。管理協力費として1,000円必要です。水場は時期により涸れるため注意が必要です。横手には野営地があります。
収容人数:60人
トイレ:あり
忠別岳避難小屋
忠別岳の南約1.5kmの位置にある無人の避難小屋です。トイレや水場も備わっています。また、横手には野営地もあります。
収容人数:40人
トイレ:あり
ロープウェイ情報&登山口までのアクセス
ここでは、大雪山の入り口となる旭岳と黒岳それぞれの登山口までのアクセス方法やロープウェイについて紹介します。
旭岳ロープウェイ
普通運賃 大人:往復2,900円/片道1,800円
運行予定表
黒岳ロープウェイ&リフト
ロープウェイ
普通運賃 大人:往復1,950円/片道1,100円
リフト
普通運賃 大人:往復600円/片道400円
営業時間
旭岳登山口<車の場合>
旭川北IC(道央自動車道)―道道37号―道道1160号―道道213号―道道1116号―道道1160号―登山口(約51km)
<駐車場情報>
旭岳温泉公共駐車場(無料)
住所:北海道上川郡東川町旭岳温泉
旭岳ビジターセンター向かいにあり、約80台停められます。冬期は閉鎖されます。
旭岳ロープウェイ駐車場(500円)
住所:北海道上川郡東川町旭岳温泉
約150台停められます。
旭岳登山口<公共交通機関の場合>
JR旭川駅から「いで湯号バス」に乗車、旭岳下車。(1,430円)
いで湯号(バス)時刻表
黒岳登山口(層雲峡)<車の場合>
上川層雲峡IC(愛別上川道路)―道道849号―国道39号―登山口(約22km)
<駐車場情報>
層雲峡温泉 朝陽リゾートホテル駐車場(無料)
住所:北海道上川郡 上川町層雲峡温泉
約100台停められます。
黒岳登山口(層雲峡)<公共交通機関の場合>
JR上川駅から道北バス「層雲峡・上川線」に乗車、層雲峡下車。(870円)
道北バス 時刻表
大雪山周辺のホテル・日帰り温泉
ここでは、大雪山周辺にあるホテルや日帰り温泉について紹介します。
大雪山白金観光ホテル
大雪山・旭岳の南西に位置する十勝岳の麓の白金温泉街にある立ち寄り湯です。完全放流式の天然温泉で、内湯の大浴場から露天風呂まで完備。昼食と入浴がセットになったプランもあります。
住所:北海道上川郡美瑛町白金温泉
日帰り入浴:11:30~21:00、大人1,000円/小学生400円
※昼食セットプラン1,300円~
1泊料金:4,000円~
大雪山白金観光ホテル
旭岳温泉 ホテルベアモンテ
日本では珍しい含正苦味食塩石膏泉の温泉で、さらりとした無色無臭のお湯にゆったり浸かることができます。自由にいただくことができる名水「大雪旭岳源水」は湯上りに最適!高級感溢れる客室がそろっているところもGOOD!
住所:北海道上川郡東川町旭岳温泉
日帰り入浴:12:30~19:00(最終受付18:00)、大人1,080円/子供490円/小学生未満・幼児 無料
1泊料金:6,000円~
旭岳温泉 ホテルベアモンテ
旭岳温泉 湯元 湧駒荘
旭岳温泉で最も古い温泉旅館で、源泉100%かけ流しで5種類の泉質の温泉を楽しめます。17もの多彩な浴場を備え、中でも開湯当時からずっと守り続けているユコマンの湯には、人気が高くリピーターも多い寝そべって入浴できる寝湯もあります。
住所:北海道上川郡東川町勇駒別旭岳温泉
日帰り入浴:12:00~19:00、大人800円/小学生350円/小学生未満 無料
1泊料金:5,000円~
旭岳温泉 湯元 湧駒荘
層雲閣グランドホテル
黒岳の麓、層雲峡にある温泉宿で、5階に設けられた露天風呂は迫力ある峡谷の景観を堪能しながら浸かることができます。
住所:北海道上川郡上川町層雲峡温泉
日帰り入浴:12:00~17:00、1,000円
1泊料金:11,800円~
層雲閣グランドホテル
黒岳の湯
公共の日帰り入浴施設「黒岳の湯」は、リーズナブルな価格で温泉を楽しむことができます。露天風呂や大浴場、サウナ、水風呂を完備し、併設されたレストランでは地元で採れた食材を使ったおいしい料理がいただけます。
住所:北海道上川郡上川町層雲峡温泉
電話:01658-5-3333
日帰り入浴:10:00~21:30、大人・12歳以上600円/4歳以上12歳未満300円/4歳未満 無料
黒岳の湯
大自然の宝庫、大雪山へ!
北海道一高く、大きな広がりを見せる大雪山は、初心者から上級者まで楽しめる様々な顔を持った山です。様々な種類の高山植物が咲き誇る姿や視界の開けた高原の風景、カルデラ、山肌に残る様々な形の雪渓、遠くまで見渡せる大パノラマなど、これでもかというくらい大自然を満喫できるでしょう!この地域に生息するシマリスなどの珍しい動物の姿も見られるかも?!