3.棒ノ嶺~御嶽駅(埼玉県・東京都)|素朴ながら最高に気持ちいい東京の山と森

東京は奥多摩方面の低山というと、御岳山、奥の院、大岳山あたりはメジャーな存在でしょう。これらの山々は縦走することもできるし、御岳山を起点として東西南北にのびる尾根や谷から最寄りの駅に向かって下山するルートも多岐にわたります。ぼくは低山にハマった当初、そのほとんどを集中的に歩きました。大都会・東京で楽しむ山歩きが、これまたいいんですよね。
そんな中でも、棒ノ嶺から高水三山の一角を経て御嶽駅へと下山するコースは大のお気に入り。埼玉から東京へと、いくつもの山を越えていく道のりです。

棒ノ嶺、またの名を棒の折山。埼玉県と東京都の境にあり、奥武蔵と奥多摩の山域をまたにかける標高969mの山です。どちらからでもアプローチすることができますが、ポピュラーなのは埼玉側から登るコース。名栗湖のそばにある白谷沢登山口から入山し、ピストンまたは滝ノ平尾根を周回して下山するコースは、首都圏のYAMA HACK読者の多くが経験していることでしょう。下山してすぐ日帰り温泉に寄れるのも嬉しいポイントですね。
打って変わって、今回は「縦走」するコースです。白谷沢コースから迫力のゴルジュ帯を登り、棒ノ嶺で奥武蔵の絶景に別れを告げ、いくつかの峠と峰を乗り越えながら南進を続け、高水三山の一座でもある岩茸石山と惣岳山を経ると、ようやくJR御嶽駅でゴール。ざっと13km、YAMAPベースで1200m以上の登り。標準コースタイムで8時間超の山旅です。

棒ノ嶺までいたたくさんの登山者は、このコースに入ったとたん激減。大都会で静かな山歩きを楽しむひととき。極上です。
ときおり視界が開けたり、尾根で風を浴びたりと、道のりはいたって素朴。とはいえ、かえってそれが魅力のコースでもあります。じっくり自然と自分に向き合うことができる、首都圏でも玄人好みなコースなのです。
おすすめコース

技術的難易度: ★★★☆☆
・ハシゴ、くさり場、雪渓、渡渉箇所のいずれかがある
・転んだ場合に転落・滑落事故につながる箇所がある
・ハシゴ、くさり場を通過できる身体能力が必要
・地図読み能力が必要
凡例:グレーディング表
コース概要
ノーラ名栗・さわらびの湯(35分)→白谷沢登山口(45分)→天狗の滝(60分)→岩茸石(60分)→棒ノ嶺(40分)→黒山(35分)→雨沢山(55分)→興越山(35分)→岩茸石山(60分)→惣岳山(85分)→御嶽駅
4.天城峠~八丁池(静岡県)|緑旺盛な森に浮かぶ、神秘の瞳

天城の瞳と形容される神秘の水辺。伊豆半島のほぼ中央に位置する八丁池のことです。濃密な森に囲まれた丸い姿は、まさしく大地の瞳のよう。展望台から見下ろすと、八幡平のドラゴンアイこと鏡沼を彷彿とさせます。見落とせないのは、その向こうの富士の山。山頂部がひょっこり顔をのぞかせていますよ。

八丁池は、天城峠から登ると地味な山歩きになるため、多くの週末ハイカーにしてみれば選択肢としての優先度は高くないかもしれません。しかしながら実際に歩いてみると、樹林帯の気持ちよさは群を抜いています。自称「森好き」のぼくも、はじめて歩いたときは想像以上の好印象にノックアウト。それもこれも、新緑の気持ちいいシーズンに訪れたからかもしれません。
天城峠バス停の手前にある水生地下駐車場から先は、いわばふつうの登山になります。標高差600m以上の山道をコツコツと積み上げる、素朴な道のり。

伊豆の成り立ちには、もともと南の海の火山が噴火を繰り返し、陸地を形成しながら日本列島に衝突したという大地創生の物語があります。あたたかい黒潮に囲まれ、雨が多く、ブナやヒメシャラの苔むした根っこ。独特です。
陽ざしを遮るほどに深い森、複雑に刻まれた深い谷など、つぶさに地形を観察しながら歩くのも一興。より興味が芽生えたら、帰宅後に調べてみるのもいいですね。登山は、日本を知る最高の手段のひとつですから。
おすすめコース

コース概要
旧道入口(55分)→天城峠(45分)→向峠(80分)→大見分岐点(55分)→青スズ台(20分)→八丁池(40分)→大見分岐点(45分)→水生地歩道入口(35分)→旧道入口
山に行けないときは、自然に囲まれる身近な環境へ

多くの物質に囲まれ、多くの情報に囲まれ、多くの人に囲まれた日常生活は、知らず知らずのうちにストレスを増大させていきます。そんなとき、新緑の低山は疲れた心身を癒してくれる最強の相棒です。もう山のない人生なんて、考えられません。
とはいえ、山まで出かけていくことがストレスになることもしばしば。本末転倒ですが、腰が重い日ってたまにあるんですよね。
ぼくは、30分程度の移動で行ける範囲に、ホームと呼べる小さな山や丘陵地、あるいは住宅街を流れる河川敷や公園をいくつか定めています。山にいく予定はなくても、朝起きて気が向いたらすぐに行けちゃう場所。気分転換に散歩したり、走りにいったり、おやつとコーヒーをもってぼんやりしに行ったり。
大切なのは、自分を囲んでいるのが「自然」だということです。物質ではなく、情報でもなく、もちろん人でもない、そんな環境が理想的。自分とは“自然の分身”と書きます。そう考えると“自分”から離れてしてしまった自然環境をとり戻したくなる理由が、ちょっとわかるような気がします。もちろん、好きなところに出かけていって、好きな低山を歩ければ、それが一番ですね。
