ですが、レインパンツは軽さ+耐久性を選択

多くのアウトドアブランドのレインウエアは、上下セット販売です。しかしモンベルのレインウエアは、上下セットではなく、レインジャケットとレインパンツ単体での販売です。その理由は、体型に合わせて選べること、破れがちなレインパンツのみの買い替え等に対応するためです。
モンベルでは、そのレインパンツのラインナップも豊富です。ジャケット同様にゴアテックス、スーパードライテック、ドライテックと素材違いがあり、さらにシューズを履いたままでも着用しやすいパンツのサイドフルジップ、裾をたくし上げて履く必要のあるハーフジップと仕様違いもあります。
しかし、ジャケットを選んだ後なので、パンツ選びは難しくありません。ジャケット同様にムレにくいスーパードライテックで、軽さを重視してハーフジップ……と思ったのですが、なんと!
「スーパードライテック レインパンツ(¥14,000/194g/30D)」
だけでなく、
「スーパードライテック U.L.レインパンツ(¥16,500/116g/7D)」
と、薄くて、軽いモデルもラインナップされていたのです!
重量は約80g、厚さは4倍以上も違います。
ジャケットの④トレントフライヤー(186g/15D)、⑥バーサライト(143g/7D)よりも、その違いが大きいんです。

シンプルさ、軽さを重視して選ぶなら、迷わずU.L.モデルです。
試着してみると、U.L.モデルのほうが薄い分動きやすく感じはしますが、スタンダードモデルも他の多くのレインパンツよりも薄く、軽く、しなやかで、十分に動きやすいんです。
近年の私は、トレイルランニングをするものの、レースには参加していません。だから、重さにシビアになる必要はありません。一方で、レインパンツは、雨天時の滑りやすいトレイルで転倒して破けてしまう可能性があり、岩場や低木に覆われた稜線上の狭いトレイルでは、ジャケット以上に負荷が掛かります。
80gの軽さを選ぶよりも、破けにくさ=耐久性を重視した方が、ヒドいめに遭いにくそうだと、スタンダードモデルを選ぶことにしました。
実際に着用して山を歩いてみて感じた3つのポイント
①ストレッチ素材である必要のない動きやすいパターン

冒頭で書いた、この10年余愛用したOMMのレインウエアは、ストレッチ素材で、ソフトシェル同様の動きやすさがありました。それからの乗り換えなので、バーサライトジャケットは多少のストレスを感じるのではないか?と覚悟していましたが、それは杞憂でした。
7Dの表地を持つバーサライトジャケットは、その薄さゆえに防水透湿素材にありがちなゴアゴアした着用感が、かなり軽減されています。またウィンドシェルに比べれば歩行時のガサガサ音はしますが、こちらもかなり軽減されています。
そしてモンベルのレインウエアはいずれも、肩まわりに縫い目がなく動きやすいカットパターン「K-Monoカット」」を採用しています。歩行だけでなく、岩場等で腕を大きく使う際に、ジャケットの裾が上がったり、背中が突っ張ったりもしません。ストレッチ生地でなくても、動きを考慮したパターンであれば、問題ないのです。素材の薄さも加わって、軽い着心地は運動性の高さを感じられました。
②レインウエアの機能の要、フードのフィット感は秀逸!

どんなに高い防水性、透湿性を誇る素材を使用していても、雨天時に被るフードのフィット感がイマイチだと、レインウエアとしての機能を果たせません。
その点でモンベルのレインウエアは、フィット感の要となる後頭部のストレッチコード、ヘルメットにも対応する深さを調節できる頭頂部の面テープ、顔部分の開きを調節するストレッチコードを装備。さらには顔に掛かる雨を防ぎ、視界を確保する樹脂入りのヒサシも機能します。
これにより顔を左右に振っても、フードが顔に掛かることなく、広い視野を提供してくれます。その構造は簡単ですが、だからこそ軽さを維持しながら、調節もしやすいフードになっています。案外中途半端なつくりのフードが多いなかで、コレは秀逸です。
③ムレにくさは十分、反面で保温力をプラスする必要も

気温が20℃以上あって、心拍数を上げて移動していれば、高い透湿性を誇る素材でも、当然ムレます。でも20℃以下の涼しさを感じる気温で、私であれば息が切れることのない心拍数120くらい、少しだけ早歩きするようなペースでは、気になるムレは発生しませんでした。
バーサライトジャケットは表地の厚さが7Dと極薄。外気温の涼しさを感じられるため、ムレの原因となる体温上昇を抑えることに役立っていそうです。ただし気温の低い状況、10℃以下で風に吹かれるような場合には、極薄のウィンドシェル着用時同様に、中間着にいつもより厚手の行動保温着をレイヤリング。保温力を調整する必要がありそうです。
もし寒がりだったり、冷えで身体の調子を落としがちな人は、軽さよりも保温力を重視して、表地の厚いトレントフライヤーやストームクルーザーを選ぶとよいと思います。
収納袋の色、コンパクトさがパック内迷子を誘発

ひとつ気になったことがあります。上画像の通り、収納袋はウエアのカラーが底部の生地と一緒になっていますが、それ以外は黒です。カラー部の底を上にしてバックパック内に収納すればよいのかもしれませんが、私は横置きして収納します。すると黒の生地が上側になるため、パック内部から取り出す際に「あれ、どこ行った?ジャケットはどっちだ?」と、迷いがちです。
バックパックが明るい色であれば、黒い収納袋でも問題ないのですが、濃い色、黒色のバックパックでは、難儀します。レインウエアとは思えないコンパクトさも原因のひとつで、バックパック内迷子を防ぐために、収納袋に反射テープを張ったり、文字や絵を描いて対処しようかと思います。
PFASフリーの撥水機能だから、気を付けるべきことがあります

2025年はレインウエアの新時代を迎えた年です。防水透湿素材の性能を維持するために必要な撥水素材に、環境への悪影響が疑われるPFAS(有機フッ素化合物)の使用に対する欧米での規制がはじまりました。日本でもアウトドアブランドを中心にPFASを使用していないレインウエア、アウトドアウエアに切り替わってきています。
モンベルではPFASフリーのスーパードライテックを独自開発。長くゴアテックス製だったストームクルーザーも、スーパードライテック製へと変更されました。
ただし、スーパードライテックをはじめとする現在のPFASフリーの撥水剤には、課題があります。撥水機能は従来素材同等ながら、撥油性能が低く、皮脂や汚れが付着した際に生地表面に残りやすいそう。そのため結果的に撥水性も低下、さらに表地が水分を吸収してしまうため透湿性も低下してしまうそうです。
小まめな洗濯とメンテナンスで、撥水性&機能維持

そこでポイントとなるのがメンテナンスです。これまではレインウエアを洗濯したことがないという方が多くいたかもしれませんが、これからはレインウエアを使用したら洗濯することで、撥水性を維持してください。
もし雨等の弾きが悪くなってきて、生地に染み込むと感じたら、撥水剤を塗布または漬け込んで、撥水性を戻してください。
モンベルであれば、専用洗剤やはっ水剤も用意されています。
さらにモンベルでは動画でメンテナンス方法を解説しているので、参考にしてください。
重さとしての軽さだけでなく、動きやすさとしての軽さがいい

今回私が買い換えたレインウエアは、
バーサライト ジャケット Men’s 143g
スーパードライテック レインパンツ Men’s 194g
です。上下の合計重量は337g。OMMのレインスーツよりも、108gの軽量化ができました。コンパクト性も高いので、デイハイクはもちろん、テント泊縦走では30Lパックを使用しても、少し余裕ができそうです。
もしさらなる軽量コンパクト化を求めるなら、レインパンツをU.L.モデルにして上下合計259gという、多くのレインジャケット1枚分同等の軽さを実現できるのですから、驚きです。
と、その軽さを改めて知ると、レインパンツはやはりU.L.モデルにすべきだったか……と思ってしまいます。が、この選択の結果は、この先1~2年でわかるでしょう。それがわかったら、また記事化してお知らせしたいと思います。
それではみなさん、よい山を!