自生するのは日本だけ! 大きな紫色の花を咲かせる日本の固有種「シラネアオイ」

2022/08/19 更新

シラネアオイは、世界で日本だけに自生する日本の固有種です。大きな紫色の花が美しく登山者にも人気ですが、近年個体数が減少しているシラネアオイ。シラネアオイはどんな植物なのでしょうか。名所とともに紹介します

制作者

ライター・フォトグラファー

なかさく

大学時代にタイの山を駆け回って熱帯林を研究し、その後理科(生物)の教員に。現在はライター・フォトグラファーとして活動中。生きものが好きで、ゆるいものからかたいものまで、書いたり撮ったりしています。アウトドアはまだまだ初心者。勉強中です。

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アイキャッチ画像出典:PIXTA

シラネアオイってどんな植物?

群生するシラネアオイ
出典:PIXTA(群生するシラネアオイ)
シラネアオイ(白根葵)は、キンポウゲ科(かつては独立したシラネアオイ科とされたことも)シラネアオイ属に分類される多年生の植物です。
草丈は20cm~60cmほどで、葉は丸く葉径20cm~25cm程度、葉には7個~11個程度の大きな切れ込みが入っており、葉の縁には鋸歯(ギザギザ)があります。

シラネアオイの葉
出典:PIXTA(シラネアオイの葉)
「シラネアオイ」の名は、日光の白根山に多く生育していることと、その花がアオイ科のタチアオイ(立葵)という植物の花と似ていることに由来します。しかし、科が異なることからお気づきかもしれませんが、シラネアオイとタチアオイは同じ植物のグループではありません。

また、シラネアオイは世界中で日本にしか自生していない、1属1種の日本固有種です。
日本でも全国的にみられるわけではなく、北海道から本州中部以北の亜高山帯(高山帯の下にある地帯)などに分布します。水はけと風通しがよく、強い日射のあたらない場所を好むため、斜面の林床などの環境によく生育しています。

実は花びらがない? シラネアオイの花

シラネアオイの花
出典:PIXTA(シラネアオイの花)
地域によって異なりますが、シラネアオイの花期はおおむね5月~7月ごろです。この頃は、シラネアオイの背丈も20cmほど。茎の先端に、直径10cm~15cmほどの紫色の花を咲かせます。

実は、シラネアオイの花には花弁(花びら)がありません。花弁のような構造は、シラネアオイの“がく”の部分です。発達した4枚の大きながくが、花弁のように見えている、というわけです。

シロバナシラネアオイ
出典:PIXTA(シロバナシラネアオイ)
一般に花は紫色をしていますが、まれに白色の個体もあります。これは突然変異によるもので、とくに「シロバナシラネアオイ」とよばれています。

絶滅の危機に瀕するシラネアオイ

群馬県野反湖のシラネアオイ
出典:PIXTA(群馬県野反湖のシラネアオイ)
日本だけに自生するシラネアオイ。しかし、日本でもシラネアオイを取り巻く環境はだんだんと厳しくなっています。
栃木県や宮城県、長野県では絶滅危惧種に指定され、とくに栃木県では、近い将来に絶滅の危険性が高いとされる絶滅危惧Ⅰ類とされました。また、秋田県や群馬県、福島県では準絶滅危惧種に指定されており、今後状況が変われば絶滅危惧種となる可能性もあります。

丹沢 シカ
出典:PIXTA
シラネアオイの個体数が減少している原因は大きく2つあります。ひとつは、シカによる食害です。
近年シカの個体数が増加しており、シラネアオイもその被害にあっています。たとえばシラネアオイの名前の由来となった白根山でもシカによる大規模な食害が起こっており、シラネアオイの個体数を減少させる大きな原因となっています。

もうひとつの原因は盗掘です。日本の固有種であり、希少性も高く美しい花を咲かせることから、シラネアオイの盗掘の被害があとを絶たちません。絶滅してしまったら、二度とシラネアオイの姿を見ることはできません。シラネアオイを守っていくために、私たちの関わり方もとても大切です。

シラネアオイの名所

大きな紫色の花を咲かせるシラネアオイ。個体数の減少は続いていますが、保護や植栽の活動も行われています。群生するシラネアオイが美しい、シラネアオイの名所をご紹介します。

日光白根山 弥陀ヶ池周辺、ロープウェー山頂駅周辺

日光白根山のシラネアオイ
出典:PIXTA(日光白根山のシラネアオイ)
日光白根山は栃木県と群馬県の県境にある標高2,578mの活火山です。近年シラネアオイの個体数は減少が著しいですが、保護や植栽が進められています。登山道はいくつかありますが、ロープウェーを使って一気に山頂付近までアクセスすることも可能です。ロープウェーの乗り場は群馬県の丸沼高原にある山麓駅にあり、そこから標高2,000mにある山頂駅まではおよそ15分。シラネアオイは、弥陀ヶ池の周辺やロープウェー山頂駅の周辺などで見られます。

斑尾高原 シラネアオイの小径

斑尾高原は、新潟県と長野県の県境に位置する高原です。斑尾高原にある八坊塚トレイルは通称「シラネアオイの小径」とよばれる400mのほどの遊歩道で、10年以上前からシラネアオイが保護、植栽されてきました。八坊塚トレイルは、斑尾高原の総合案内所「ビジターセンター山の家」から歩いて5分ほどのところに入口があります。

釜臥山

標高878mの釜臥山は、青森県下北半島の最高峰です。釜臥山には釜臥山スキー場から登ることができ、第1リフトの降り場周辺などにシラネアオイが群生しています。

シラネアオイの咲く景色が失われないように

シラネアオイ
出典:PIXTA(満開のシラネアオイ)
日本の固有種であるシラネアオイ。がくが発達した大きな紫色の花はとても美しく、多くの登山者を癒してくれます。しかし、そんな人気もあって盗掘の被害が絶えないこともまた事実です。一面に咲くシラネアオイが失われてしまわないように、大切にしていきたいですね。


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