天狗岳ってどんな山?
標高 | 所在地 | 最高気温 (6月-8月) | 最低気温 (6月-8月) |
---|---|---|---|
2,646m | 長野県茅野市 | 15.7℃ | 3.2℃ |
北八ヶ岳と南八ヶ岳の境界線・夏沢峠の北側に位置する天狗岳。三角点がある円錐形の「西天狗岳」と、天狗の鼻と呼ばれる巨岩がシンボルの「東天狗岳」と2つのピークからなる双耳峰です。
日本二百名山にも選定されており、八ヶ岳の魅力を手軽に堪能できる入門的存在といわれています。苔むした原生林が続く山腹や展望の良いハイマツ帯の山頂部など、北八ヶ岳・南八ヶ岳両方の異なる景観を楽しめるのが魅力です。
初心者でも大丈夫?難易度をチェック
天狗岳の主要登山口の標高は1,600m〜2,000m台と、山頂との標高差が少なく登山初心者にも人気の山。ただし最短でも日帰りで約6時間、また山頂付近は岩場の急登が続くため、しっかりとした登山装備で臨む必要があります。
6時間以上の歩行に不安がある人は、1泊2日のスケジュールがおすすめ。1日のコースタイムも少なくすむので、心に余裕を持ってチャレンジができます。さらに設備が豊富で、個性あふれる魅力的な山小屋が多いため、実は初めての小屋泊登山にももってこいの山なんです!
そこで今回は、1日あたりのコースタイムが約3〜5時間の1泊2日コースを3つピックアップ。自分の体力やレベルを考慮しながら、ベストなコースを選びましょう。
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おすすめコース3選!まずは山小屋の魅力をチェック
今回は3つの天狗岳登頂コースを、歩行時間が短い順番に紹介していきます。
番号 | 宿泊する山小屋 | コース | コースタイム |
---|---|---|---|
《1》 | 黒百合ヒュッテ | 唐沢鉱泉〜黒百合ヒュッテ 周遊コース | 1日目:約2時間、2日目:約4時間15分 |
《2》 | 根石岳山荘 | 桜平〜硫黄岳・根石岳周回コース | 1日目:約3時間50分、2日目:約3時間50分 |
《3》 | 黒百合ヒュッテ | 白駒池〜渋の湯縦走コース | 1日目 約2時間55分・2日目 約5時間05分 |
初めての小屋泊だと、どんな場所に宿泊するのか気になりますよね。まずは上記のコースで利用する2つの山小屋をチェック!気になる小屋をベースにコースを選ぶのもおすすめですよ。
黒百合ヒュッテ 《1》・《3》のコースで宿泊
天狗岳のベースキャンプ的存在の黒百合ヒュッテ。通年営業のため、雪山シーズン含め年間を通して利用できます。薪ストーブや本棚に並ぶたくさんの本など癒しのアイテムが満載。ゆったり本を読んだり、仲間と談話を楽しんだりと憩いの時間を過ごせるでしょう。ハンバーグやビーフシチューをはじめとした肉料理や、朝食の炊き立て白米と生卵など、食事も絶品です。小屋限定で販売しているオリジナルワインも、夜の晩酌時にぜひ飲みたい1杯。
さらに宿泊だけでなく、カフェとしても人気。昼食からドリンク・スイーツまで魅惑的なメニューが勢揃いしています。名物のコケモモマフィンやコケモモティーも1度は味わってみたい逸品です。
根石岳山荘 《2》のコースで宿泊
天狗岳にもっとも近い山小屋が根石岳山荘。箕冠山と根石岳のなだらかな鞍部に位置し、例年7月には可憐なコマクサが咲き誇ります。御来光や夕日など、開けた稜線上にあるからこそ抜群の眺望。部屋からは、諏訪盆地の夜景も見渡せます。
また例年6月上旬〜10月中旬は、なんとお風呂に入浴可能。初めての山小屋泊する人にとって、入浴できるのはうれしいポイントです。
オーナーによる採りたて野菜や手作り味噌を使った料理なども絶品。ホッと一息つけるくつろぎ空間が広がっています。
根石岳山荘|ホームページ
このほかにも紹介するコース上には、宿泊可能な山小屋がたくさんあります。それぞれのコース詳細ともに見ていきましょう。
《1》天狗岳の王道コース|唐沢鉱泉〜黒百合ヒュッテ周遊
最高点の標高: 2598 m
最低点の標高: 1885 m
累積標高(上り): 1049 m
累積標高(下り): -1049 m
- 【体力レベル】★★★☆☆
- 1泊2日
- コースタイム:約6時間15分
- 【技術的難易度】★★★☆☆
- ・ハシゴ、くさり場を通過できる身体能力が必要
・地図読み能力が必要
天狗岳にもっとも近い登山口である唐沢鉱泉からスタートします。とくに1日目の歩行時間が短いので、首都圏や中京圏を朝出発しても余裕を持ったスケジュールで登山が可能。全行程約6時間15分を2日間で歩くので、のんびりゆったりペースで楽しめますよ。
標高1,870mにある唐沢鉱泉には、「日本秘湯を守る会(朝日旅行・一般社団法人日本秘湯を守る会運営)」の宿もあり、八ヶ岳の秘湯が湧き出ています。登山前に前泊するもよし、下山後に疲れを癒すのもよし、このコースで天狗岳をめざすならぜひ入浴したい名湯の1つ。
唐沢の渓流沿いを登りながら約60分ほど進んで行くと、唐沢鉱泉分岐に到着します。
分岐後は北八ヶ岳の特徴である苔むした樹林帯へ。沢を渡る箇所には、鉄製や木製の橋など道が整備されています。樹林がまばらになり、左手に大岩のつづくゴーロ帯が現れると黒百合ヒュッテまであと少しです。
近くの中山展望台や摺鉢池まで散歩がてら足を伸ばし、めざす天狗岳の絶景を望みながらゆったりとした時間を過ごしましょう。時間に余裕ができるのも宿泊登山の醍醐味ですね。
翌日、黒百合平から5分ほど樹林帯を進むと中山峠に到着。東側(佐久側)の展望が一気に開け、稜線歩きが始まります。

背後を振り返ると、迫力ある稲子岳の岩壁と、背後にニュウの岩峰を望めます。
登山道は森林限界を超え、ガレ場に。摺鉢池経由のコースと合流すれば、東天狗岳は目前です。

天狗の鼻と呼ばれる巨岩をトラバースして、いよいよ東天狗岳山頂に到着。眼前に広がる硫黄岳の爆裂火口とや赤岳・阿弥陀岳の展望が広がります。
いったん鞍部へ下り、三角点のある西天狗岳までは片道約20分の道のり。最後のピークを踏んだあとは、2つの展望スポットをめぐりながら下って行けば唐沢鉱泉にゴールです。
唐沢鉱泉へのアクセス
【クルマの場合】
中央道「諏訪南」ICが最寄り
※唐沢鉱泉の駐車場は宿泊者限定になるため、登山者は登山口駐車場を利用します。
※冬季は滑り止め未装着のクルマだと通行困難な場合もあるので必ず事前に通行可否を確認しましょう。
【公共交通機関の場合】
バス路線はないのでJR中央線「茅野」駅よりタクシー利用となります。
《2》南八ヶ岳の岩稜縦走を満喫コース|桜平〜硫黄岳〜根石岳周回
最高点の標高: 2737 m
最低点の標高: 1875 m
累積標高(上り): 2007 m
累積標高(下り): -2007 m
- 【体力レベル】★★★☆☆
- 1泊2日
- コースタイム:約7時間40分
- 【技術的難易度】★★★☆☆
- ・ハシゴ、くさり場を通過できる身体能力が必要
・地図読み能力が必要
夏沢峠を越えて天狗岳に向かう周回コースです。八ヶ岳連峰の中でも異彩を放つ、迫力満点の火口跡を望める硫黄岳へも寄り道。南北八ヶ岳の境界線をまたぐ、展望の良い稜線歩きを楽しめます。硫黄岳をカットすれば全行程約6時間と日帰りでめぐることも可能です。
桜平登山口のゲートからしばらくは、林道歩きが続きます。約30分で最初の山小屋・夏沢鉱泉に到着です。

夏沢鉱泉から沢沿いの登山道を歩き、約50分でオーレン小屋に到着します。ゆるやかな斜面を登り、樹林帯がハイマツ帯に変わるとやがて赤岩ノ頭へ。ここから、展望の良い稜線歩きが始まります。

硫黄岳山頂へ。北側が大きく崩落した爆裂火口は圧巻の景観です。南八ヶ岳の名だたる山々をはじめ、360°の展望を楽しめます。
ハイマツ帯のガレ場を下り、樹林帯に戻ると夏沢峠に到着。ヒュッテ夏沢と山びこ荘の2軒の山小屋があります。
樹林帯の中を箕冠山へ登り返し。なだらかな山頂を下ると、根石岳山荘は目前です。初日はここで、稜線上の絶景を楽しみながら宿泊しましょう。
根石岳山荘からは、まず根石岳へ。山頂からは、目の前にさえぎるものなくそびえる天狗岳が見事な景観です。
白砂新道分岐まで下ると、天狗岳は間近。ハイマツ帯を登り鉄製の橋を渡ると、東天狗岳山頂です。ここから西天狗岳を往復しましょう。
箕冠山まで戻ったら稜線上の登山道と分かれ、右側のなだらかな斜面へ。樹林帯を下ってオーレン小屋に到着したら、桜平まで往路を戻ります。
桜平へのアクセス
【クルマの場合】
中央道「諏訪南」ICが最寄り
※桜平駐車場は上・中・下の3か所に分かれており、登山口であるゲートに近い上駐車場から順に満車になります。下駐車場からだと登山口ゲートまで約3.5km、徒歩1時間半ほどの道のりに。そのため混雑時期は、時間にゆとりを持った計画が必要です。
【公共交通機関の場合】
公共交通の場合、バス路線はないのでJR中央線「茅野」駅よりタクシー利用となります。
《3》苔の森を満喫コース|白駒池〜渋の湯縦走
最高点の標高: 2598 m
最低点の標高: 1841 m
累積標高(上り): 1403 m
累積標高(下り): -1606 m
- 【体力レベル】★★★☆☆
- 1泊2日
- コースタイム:約8時間
- 【技術的難易度】★★★☆☆
- ・ハシゴ、くさり場を通過できる身体能力が必要
・地図読み能力が必要
日本有数の苔の森が広がる白駒池から、高見石・中山などの展望スポットを経て天狗岳をめざすコース。スタートとゴール地点が異なるため、マイカーではなくバスでのアクセスがおすすめです。
白駒池周辺の原生林は、一面が苔で覆われています。この森は日本で見られる苔の約4分の1が自生するといわれ、日本蘚苔類学会の「日本の貴重な苔の森」に選定されているほどです。
標高2,100m以上にある湖としては、日本最大の天然湖でもある白駒池。周囲をめぐるトレッキングコースも整備されています。例年10月上〜中旬には湖畔の広葉樹が赤や黄色に染まり、絶景の紅葉スポットとしても人気です。
白駒池から約40分ほど登ると、高見石小屋に到着。薪ストーブやランプの灯りが温かなぬくもりを感じさせてくれる人気の山小屋です。軽食メニューも充実しており、名物の揚げパンをおやつにカフェタイムを楽しむのもおすすめ。
高見石小屋の脇にあるガレ場をひと登りすると高見石に。原生林の中にたたずむ白駒池を眼下に望む絶景スポットです。
麦草峠方面・渋の湯方面への下山路と分かれて、なだらかな稜線を南下。苔むした林床の静かな樹林帯を歩く登山道は、北八ヶ岳ならではの景観といえるでしょう。
高見石小屋から約90分、樹林が一気に開けると中山展望台に到着。正面に、天狗岳の特徴的な双耳峰が姿を現します。
中山展望台から振り返ると、北八ヶ岳特有の縞枯れ現象が見られる原生林と蓼科山の眺望が。視界が良い日には、乗鞍岳や北アルプスまで広がる大パノラマを楽しめます。
中山から下り、ニュウからの登山道と合流すると約15分で中山峠へ到着。ここから黒百合ヒュッテに向かい宿泊しましょう。翌日の黒百合ヒュッテ〜天狗岳は《1》と同じコースです。
唐沢鉱泉だとバスが運行していないため、渋の湯登山口まで歩きます。ここからアルピコ交通バス・奥蓼科渋の湯線に乗車して、茅野駅へと向かいましょう。
白駒池入口へのアクセス
【クルマの場合】
中央道「諏訪」ICもしくは中部縦貫道「八千穂高原」ICが最寄り。
※北八ヶ岳西麓の蓼科高原(茅野市)と東麓の八千穂高原(佐久穂町)を結ぶ国道299号線・通称メルヘン街道。その最高地点である麦草峠近くにあるのが白駒の池入り口有料駐車場です。例年11月下旬〜4月中旬は雪のため通行止めになるので注意が必要。
【公共交通機関の場合】
・JR北陸新幹線「佐久平」駅から千曲バス・白駒線で約1時間40分。「白駒池入口」下車。
・JR中央線「茅野」駅からアルピコ交通バス・麦草峠線で約1時間20分。「白駒池入口」下車。
※上記の駐車場同様に、バスの運行も例年11月下旬〜4月中旬は雪のため中止となるので注意が必要。
千曲バス|時刻表アルピコ交通バス|時刻表
事前の情報収集を欠かさずに!自分に合ったコース選びを
1日あたりの行動時間が長くなるため、今回はご紹介しませんでしたが、東側の本沢入口登山口からスタートするコースも設定可能。日本最高所の野天風呂がある本沢温泉や、レトロな雰囲気が女性に人気のしらびそ小屋も、魅力的な山小屋ですよ。
本沢温泉|ホームページしらびそ小屋|ホームページ
山小屋の営業期間だけでなく、アクセスについても最新情報をしっかりチェックしてから臨みましょう。北八ヶ岳や南八ヶ岳ならではの景観を楽しみながら、小屋泊登山の魅力を存分に堪能してくださいね。
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