登山者とトレイルランナーは「山で共存できるのか?」問題

「高尾マナーズ」から考える、登山者とトレイルランナーは「山で共存できるのか?」問題

トレイルランナーの聖地・高尾山。ここで2018年に「高尾マナーズ」という団体が発足しました。「歩く」「走る」という行動の違いから、登山者とトレイルランナーの間では諍いやトラブルが起こっていた昨今。どうしてトレイルランナーたちが自らマナー向上の活動を始めたのか?についてインタビューしました。トレイルランナーと登山者に共通する「山が好きだから」という思い。お互いの原点をもう一度考えてみませんか?

目次

アイキャッチ画像提供:高尾マナーズ、撮影:石原敦志

「歩く人」vs「走る人」。山でのモヤモヤからトラブル発生も……

高尾山でのトレラン風景

現在、日本の「登山道」をアクティビティに利用している人は大きく2つのタイプに分かれます。登山者のように基本的には歩いている」人と、トレイルランナーのように走っている」人です。

スピード感は異なるとはいえ、共通するのは「山が好きなこと」。ただし、登山道の利用の仕方や山に対する思いは意外と異なり、そのために登山者とトレイルランナーとのトラブルが生じているのをご存じの方も多いかと思います。

そういえば、これを書いている僕自身も何度か「なんだかな~」と思わされる経験があり……。

トレイルランナー有志が「高尾マナーズ」を立ち上げた!

そんななか、日本どころか世界でいちばん登山者が多い(年間260万人!)といわれている高尾山を中心に、登山者とトレイルランナーがともに心地よく過ごせる仕組みを模索しているのが、「高尾トレイルマナー向上委員会(通称・高尾マナーズ)」。トレイルランナーのマナー向上のために2018年に発足し、ウェブサイトFACEBOOKからの情報発信など、さまざまな活動を続けています。

今回は創立者のひとりであるトレイルランナーの内坂康夫さんにお話を聞き、登山者(ハイカー)とトレイルランナーとの関係性について考えてみました。

内坂康夫さん
撮影:編集部(高尾山の駅に近い「高尾山遊歩マップ」の看板の前に立つ内坂康夫さん。本職はフィットネス雑誌『ターザン』などで活躍する編集者です)

「山を走るな!」……罵声の原因は何だろう?

そもそも「高尾マナーズ」はどうして設立されたのでしょう?

内坂さん:東京生まれの僕は、初めての登山が高尾山でしたし、20年くらい前からは高尾付近の山域を頻繁に走ったり歩いたりしていました。その実感だと、都市部に近いからか、高尾はハイカーとトレイルランナーの関係がうまくいっている場所なんです

高尾山は東京の都心からでも電車で1時間程度。国内外からの観光客も多く、もともとさまざまな人たちを幅広く迎え入れてきた歴史を持っています。

内坂さん:ところが、一昨年かな、陣馬山(高尾山域)付近を走っていたとき、上から降りてきたおじさんのハイカーに『山を走んじゃねえよ!』と怒鳴られたんです。おそらくトレイルランナーと嫌なことがあったんでしょうね。

同じ日に知人が同じような経験をしていたこともあり、こういうハイカーが10人、20人と現れたら大変なことになってしまう、もしかしたらハイカーとトレイルランナーの間に何か問題が起きているかもしれないと、心配になりました。

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