苦手意識をガイドが解決!地図読みのキホンはそんなに難しくない【地形・地名編】

2020/11/11 更新

登山装備のチェックリストに必ずと言っていいほど記載されている地図とコンパス、あなたは自信を持って使いこなせていますか。地図読みに必要な様々な法則は、一見すると小難しくてかなり取っ付きにくいものですよね。漠然と抱いている登山の地図読みに対する苦手意識を克服するためのポイントや法則を、わかりやすく解説します。


アイキャッチ画像:地図の出典:YAMAP・イラストの出典:いらすとや・写真の出典:PIXTA

ハードルが高すぎる!地図読みって難しくない?

地図読みの重要性はわかるけど…
出典:PIXTA(地図読みの重要性はわかるけど…)
これから歩くルートや現在地の把握、気になるランドマークや目的地の確認など、「安全で楽しい登山」に大切なのが地図とコンパス。

しかし、さまざまな情報が書かれた地図を見てもなにがなんだかわからないことも多く、たじろいでしまう人もいます。

今回は登山ガイドとして「地図読みとコンパスワーク」を教えてきた自称“等高線フェチ”の筆者が、多くの登山者が持っている地図に対する苦手意識を解消していきます。

地図とコンパスが大切なのはわかるけど…

登場人物
撮影:washio daisuke(イラストの出典:いらすとや
筆者の高校山岳部時代の後輩である登山者Aさんも地図とコンパスに苦手意識を感じている一人。

ある日、Aさんは会社の同僚から「登山に連れて行って」と頼まれたものの、なにやら不安なことがあるようです。

払拭できない「地図読み」への苦手意識

自分が山に連れて行って大丈夫?
出典:PIXTA(自分が山に連れて行って大丈夫?)
“Aさん”
初心者を連れて登山をすることになったんですが、地図とコンパスの使い方が不安で。

“鷲尾”
山岳部時代の知識、忘れちゃったの?

“Aさん”
今だから言いますけど、地図に描いてある複雑怪奇な等高線を見ると気持ち悪くなっちゃうんですよね。

「難しそう」「敷居が高い」と尻込みしたまま、登山から一度卒業しちゃったんです。

“鷲尾”
まぁ、先輩について行くのと誰かを連れて行くのでは、立場も違ってくるよね。

“Aさん”
そうなんです!いちおうリーダーとしての責任もあるから、道迷いとか絶対できないし。

“鷲尾”
えらい!実際、地図読みとコンパスの使い方に苦手意識を抱いている登山者の人たちはすごく多いんだよね。

でも実は“登山”という目的に絞れば、身に付けておきたい知識や法則は決して多くないし、意外とシンプルだったりするんだ。1つずつ疑問を解決していこう!

紙の地図はGPSアプリで代用しちゃダメ?

GPSアプリと紙地図…どちらも必要です
出典:YAMAP(GPSアプリと紙地図…どちらも必要です)
ほとんどが無料でダウンロードでき、現在地が一発でわかるGPSアプリ。ぶっちゃけコレだけでも十分な気もしますよね。けれども今なお、紙の地図(特に地形図)が使われている理由は何なのでしょうか?

GPSアプリと紙の地図は「補完し合う関係」

現在地が常に表示されるのがGPSアプリの強みですが…
撮影:washio daisuke ・スマホ画像:YAMAP(現在地が常に表示されるのがGPSアプリの強み)
“Aさん”
GPSアプリってすごく便利だし、地形図も入ってますよね。
だったら、紙の地形図はもう必要ないんじゃないですか?

“鷲尾”
たしかにGPSアプリは便利だよね。だけど、どちらも必要なんだ。
GPSアプリがもっとも威力を発揮するのは登山中の現在地確認

その一方で紙の地図は、広げて見ることでルート全体を把握できる良さがあるんだよ。

“Aさん”
それぞれ強みが違うんですね。

“鷲尾”
そう。だからどちらも使いこなす必要があるんだよ。

ルートの俯瞰はやっぱり紙地図

小刻みなアップダウンが続く稜線などはルート全体を俯瞰するのも大切
撮影:washio daisuke(小刻みなアップダウンが続く稜線などはルート全体を俯瞰するのも大切)
“鷲尾”
登山中も「あとどれくらいで着くの」と聞かれた時や、何らかのトラブルでルートを変更する時に絶対必要だから、地形図は持っておいてね。

“Aさん”
登山中はGPSアプリだけじゃダメなんですか?

“鷲尾”
ダメではないけど、スマホの小さな画面に表示されているGPSアプリの地図はルートのほんの一部。
縮小させて広範囲を表示させても、スマホサイズだからね。

ルートや山全体を“俯瞰する”ことに関しては、地形図を広げたほうが良いよ。

“Aさん”
たしかにそうですね。登山中はどこに持っておけばいいですかね?

“鷲尾”
ウェアのポケットとか、すぐに取り出せるところに携帯しておいて欲しい。

“Aさん”
登山前に地形図を広げて、スタートからゴールまでどんな地形を歩いてどれくらい登ったり下りたりするのか説明するのも良さそうですね。

“鷲尾”
それも大事!紙の地図の大切さがわかったところで、地図を読むために必要なことをみていこうか。

たった5種類!?覚えておきたい山で出会う地形

北アルプス・西穂高岳の地形
撮影・作成:washio daisuke(北アルプス・西穂高岳の地形)
いろいろな地形が組み合わさっているように見える山の地形。でも実は、たった5種類だけなんです。まずは、地図に慣れるために山の地形について知っていきましょう。
“鷲尾”
山の地形って基本的には、
「山頂(ピーク)」
「ピークとピークの間のコル(鞍部)」
「尾根」
「谷(沢)」
「斜面(尾根と谷の間)」
の5種類しかないんだ。

それに自分が今どの地形にいるかは、周りの景色を見ればわかる。

5つの地形
作成:washio daisuke・イラストの出典:いらすとや(5つの地形)
“Aさん”
なるほど!これならわかりやすいですね。

でも、地形図でこの地形を見分けるにはどうしたらいいんですか?

“鷲尾”
じゃあ次は、この5つの地形を表す等高線の簡単な法則を教えるね。

地形を表す等高線の「かんたんな法則」

北アルプス・西穂高岳周辺は地形図ではこう描かれています
出典:YAMAP(北アルプス・西穂高岳周辺は地形図ではこう描かれています)
“鷲尾”
等高線が地形を表現する法則は、以下の4つでOK!

覚えておきたい4つの法則
【1】ピーク:等高線が一周して輪の形になっている部分 輪が大きければ広くなだらかなピーク・小さければ狭く尖ったピーク

【2】コル:ピークとピークの間 両サイドのピーク中腹を描く等高線がひょうたんのようにくびれている部分

【3】尾根:等高線が標高の高い方から低い方に指のように伸びている部分 基本的に始点はピーク

【4】谷:等高線が標高の低い方から高い方に指のように伸びている部分 基本的に終点はコル
“鷲尾”
さっきの地形図に書き込んでみると、こうなる。

西穂高岳周辺の地形図に地形を書き込んでみました
作成:washio daisuke・出典:YAMAP(西穂高岳周辺の地形図に地形を書き込んでみました)
“Aさん”
ん~。ピークはわかりやすいけれど、尾根と谷の区別が難しいですね。

“鷲尾”
慣れないうちはそうだよね。
補足すると、
・尾根は標高の高い方から低い方に枝分かれする(支尾根)
・谷は標高の低い方から高い方に枝分かれする(支流)
と言う法則も覚えておくと良いよ。

実は地形を知る大ヒント?山の地名に隠された秘密

北アルプス・大キレットの「キレット」も地形を表す言葉
出典:PIXTA(北アルプス・大キレットの「キレット」も地形を表す言葉)
●●ノ頭、▲▲乗越など、山には独特の地名が付けられている場所がありますよね。実はこれらの地名の多くは、そこの地形を指していることが多いのです。
“鷲尾”
難コースとして有名な北アルプス・大キレットの「キレット」って、コルのことだって知ってた?

“Aさん”
南岳から下って、北穂高岳に登り返す、たしかにコルですね。

ということは等高線の読み方に慣れていなくても、地名を見ただけで地形がわかる場所もあるってことですか?

“鷲尾”
そう!地名を手がかりに地形を想像するのもアリだね。
では、山特有の地名で地形がわかるものを幾つか見ていこう。

ピークを意味する地名

南アルプス・鳳凰三山にある赤抜沢ノ頭と背後にそびえる地蔵岳のオベリスク
出典:PIXTA(南アルプス・鳳凰三山にある赤抜沢ノ頭と背後にそびえる地蔵岳のオベリスク)
“鷲尾”
●●岳、▲▲山、■■峰の他に、以下のような地名もピークを指すんだよ。

ピークを意味する地名
*頭:中白根沢ノ頭(南アルプス)、赤岩ノ頭(八ヶ岳)、王ヶ頭(美ヶ原)など

*森:堂ヶ森(石鎚山系)、月山森(鳥海山)、嶮岨森(南八幡平)など

*丸:檜洞丸、畔ヶ丸(丹沢山塊)、大蔵高丸、ハマイバ丸(大菩薩連嶺)など

*塚:天狗塚(剣山地)、二ツ塚(富士山)、米塚(阿蘇山)など

*ドッケ・ドッキョウ:高ドッケ、三ツドッケ(奥多摩)、高ドッキョウ(興津川流域)など
“鷲尾”
ちなみに「森」は四国や東北に、「丸」は丹沢山塊や大菩薩連嶺に集中しているんだ。
「塚」は富士山や阿蘇山など大きな火山の“寄生火山”に多く見られるよ。
名前の由来を調べてみるのも、興味深いからおすすめ。

コルを意味する地名

裏銀座縦走路から雲ノ平へ向かう途中にある岩苔乗越
出典:PIXTA(裏銀座縦走路から雲ノ平へ向かう途中にある岩苔乗越)
“鷲尾”
●●のコル、▲▲最低鞍部などの他に、以下のような地名もコルを示しているんだ。

コルを意味する地名
*乗越:スゴ乗越(北アルプス)、乗越浄土(中央アルプス)、中ノ川乗越(南アルプス)など

*窓:大窓、小窓、三ノ窓(すべて北アルプス・剱岳)

*キレット:不帰キレット(天狗ノ頭と不帰ノ嶮の間のコル)、キレット(八ヶ岳・赤岳と権現岳の間のコル)

*タルミ:三条ダルミ(奥多摩・雲取山と飛龍山の間のコル)、大弛峠(奥秩父・国師ヶ岳と朝日岳の間のコル)
“鷲尾”
ちなみに「峠」も一部の例外を除いてコルやその周辺に位置することが多いんだ。

例えば東北なら奥羽山脈を挟んで東西に、西日本なら中国山地を挟んで南北に、多くの県境(いにしえの国境)は山で分断されている。
山を越えて隣国に行く時、ピークよりもコルを通過する方が容易だったことから、多くの峠がコルに位置しているんだよ。

“Aさん”
なるほど!地名が地形を表現している場所を確認するだけでも、地形図の中の山の形が少し立体的に見えてきましたね。

地図のことを知れば親近感も湧いてくる!

地形図&コンパスと仲良くなろう!
撮影・作成:washio daisuke(地形図&コンパスと仲良くなろう!)
今まで苦手意識を持っていた「地図読み」ですが、登山における地形図の重要性や地形を把握するコツを知ることで、少しは親近感が湧いてきましたか?
ようこそ!楽しい地図読みの世界へ。次回は、縮尺の違う地図の使い分けやコンパスを使うための基礎知識についてお伝えします。
まとめ
▼GPSアプリも紙の地形図も役割が違うのでどちらも大切

▼基本の地形は「山頂」「コル」「尾根」「谷(沢)」「斜面」の5つ

▼山の地名は地形を表している
■「地図の使い分け」や「磁北線の引き方」がわかる後編はこちら!

地図読みは実際にやることが大切です!

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washio daisuke
washio daisuke

登山の総合プロダクション・Allein Adler代表。 登山ガイド・登山教室講師・山岳ライターなど山の「何でも屋」です。 得意分野は読図(等高線フェチ)、チカラを入れているのは安全啓蒙(事故防止・ファーストエイド)。 山と人をつなぐ架け橋をめざしています。

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