【山岳ガイドにお悩み相談】 登山道での「すれ違い」「追い抜き」「鎖場の通過」のマナー

2019/08/17 更新

登山には、身につけておきたい「山のマナー」がたくさんあります。しかし、法規定として明文化されているわけではないので、まさに“暗黙の了解”。登山経験者の知人がいない場合には教えてもらう機会もあまりなく、イマイチよくわからないという人も多いのでは。そこで今回は、実際に登山者が山で出くわした『こんなときどうすればいいのだろう?』という場面をピックアップ。登山道でのマナーについて、山岳ガイドにお悩み相談してみました。


アイキャッチ画像出典:

山のマナーが“暗黙の了解”すぎてよく分からない…。誰か詳しく教えて!

疑問
出典:PIXTA
登山をする上で、押さえておきたい山でのマナー。皆が気持ちよく登山を楽しむための気遣いですが、明確な規定があるわけではありません。それでも山に行けば当たり前のように存在し、逸脱すれば「マナー違反だ!」と言われてしまうことも。

渋滞の登山道
出典:PIXTA
山での挨拶ひとつをとっても、“登山道で誰かとすれ違う時は挨拶をするのがマナー”といわれますが、実際には挨拶が返ってこないこともあれば、息が切れていて返せないこともあります。対向者が連続するときなんかは、正直面倒だなと思っている人もいるかもしれません。

それゆえ、「結局、どうするのが正解なんだろう…」と悩む場面に出くわすことも多いのではないでしょうか?

そんな、理解しているようでよく分からない“暗黙の了解”の中から、今回は『登山道でのマナー』に注目。登山道での「すれ違い」「追い抜き」「鎖場の通過」の際に、登山者が実際に抱いた疑問を解決するべく、山岳ガイドにお悩み相談してみました!

相談に乗ってくれたのは、山岳ガイド・上田 幸雄さん

山岳ガイド上田さん
撮影:YAMA HACK編集部
上田 幸雄さん
日本山岳ガイド協会公認 山岳ガイドステージ2
国立登山研修所、国際自然環境アウトドア専門学校 講師
剱岳、穂高をメインに中部山岳をオールシーズンガイドしている。富山県在住。

【相談➀】登山道でのすれ違いは“登りが優先”は絶対?

登山道でのすれ違い
出典:PIXTA
体力に自信がある方ではなく、いつもゆっくりと登っているAさん。対向者とすれ違うときに、下山者が待ってくれていると、ついつい急ぎ足に。慌てなくていいと分かっていても、なんだか焦ってしまうそう。下山者に先に下りてもらって、落ち着いた状態で登りたいなと思うことが多々あるようです。
相談者:Aさん
「登山道では登りが優先」と聞いたのですが、下りの人に先に通ってもらってもいいでしょうか?


上田さん
結論から言うと、下りの人に先に通ってもらっても問題ありません。ただし、状況によりますので、まずは「登山道でのすれ違いは登りが優先といわれているのはなぜなのか?」を考えてみましょう。理由は大きく2つあります。


登山等マナー
出典:いらすとや(編集:YAMA HACK編集部)

Aさん
大切なのは、登りを優先することではなくて、「安全にすれ違えること」なんですね


上田さん
そういうことです。例えば2つのグループがすれ違う場合、少人数のグループの方が安全な場所を確保しやすいので、大人数のグループを優先させた方がいいですね。



Aさん
少人数同士のすれ違いでも、考え方は同じですよね。


上田さん
その通り! Aさんのような場合には、下りの人に先に通ってもらうのもいいでしょう。ただし、安全にすれ違えるかどうかを考えて判断することが重要なんです。そのためにも、どちらが先に行くのか、声を掛け合うことも大事ですよ。

登山道でのすれ違いは臨機応変に
どうしたら最も安全にすれ違えるのかを考えて、状況に応じて判断することが重要。どちらが先に行くのか、互いに声を掛け合いましょう!

【相談➁】登山道で前の人を追い抜きたい・道を譲りたいとき、どうするのが正解?

岩場(鎖場)の混雑・渋滞
出典:PIXTA
Bさんが登山道を登っていると、後ろから迫ってくるペースの早い登山者の姿が。気づいたら真後ろにぴったりとつかれており、咳ばらいをしたり、わざと足音を大きく立てたりと、どうやら早く抜かしたい様子。狭い道だったため、広いところまで行ったら止まって抜いてもらおうと思っていたBさんは、すごく嫌な気分になったそう。
相談者:Bさん
道を譲るときや追い抜きをしたい時、お互いにどう対応するのがいいのでしょうか?


上田さん
大事なのは、コミュニケーションをとること。これに尽きます。みなさん登山道で誰かとすれ違う時に「こんにちは」って言いますよね? 挨拶はできるのに、追い抜きの時に声を掛けられない人、意外といるんですよ。


Bさん
なんて声を掛けたらいいでしょうか?

登山道挨拶
出典:PIXTA
上田さん
追い抜く際は、「こんにちは」「すみません」などいつも通りの挨拶をして存在を伝えれば大丈夫です。そしたら「先に行かせてもらってもいいですか?」と伝えればいいだけです。もちろん、安全に追い抜きができる(待機できる)場所かどうかの判断は必要です。


Bさん
道を譲る側はどうしたらいいですか?

上田さん
道を譲れる安全な場所であれば、「お先にどうぞ」。追い抜いてもらうのが難しい状況であれば、「広いところまで行ったら止まりますね。」など、何でもいいんですよ。そしたら相手も「ありがとうございます。」とか「ゆっくりで大丈夫ですよ。」ってなるでしょうし。


狭い登山道
出典:PIXTA

Bさん
声掛けがあるだけで、だいぶ印象が変わりますね。

上田さん
追い抜く側が声を掛けるべきとか、譲る側が察するべきとかではなく、双方に言えることですが、自分から声を掛けるという意識を持っていれば、不要にイライラしたり、不快な思いをすることはまずありませんよ。


Bさん
登山中ってついつい自分本位な言動になりがちなので、気をつけようと思います。


上田さん
余裕のある人が積極的に早めに声掛けするのがいいと思います。余裕のない人は、誰かが後ろを歩いていても全く気づいていないですし、すれ違うときでも下しか見ていないので、待っている人の足元が急に視界に入ってびっくりしていることがよくあります。

安全に追い越せる・待機できる場所で声掛けを
ひと声掛けて、「先に行きたい」「道を譲りたい」意志をきちんと言葉で伝えましょう!

【相談➂】渋滞の鎖場を通過するときのマナーって?

乾徳山の岩場
出典:PIXTA
とある山で鎖場が渋滞しており、下り側で待機していたCさん。登りの人・下りの人が、なんとなく譲り合って順番に通過していたものの、次第に下降待ちの人で狭い岩場がいっぱいに。これでは登ってきた人とすれ違うのも怖いなと思いはじめます。
相談者:Cさん
鎖場では、登りと下りはどちらが優先などあるのでしょうか? 通過時のマナーを教えてください。


上田さん
基本的には通常の登山道と同じ考え方で、安全を考慮した状況判断が第一です。滑落や落石の恐れもありますから、鎖への取りつきは1人ずつというのはもちろんですが、順番を待っている間も安定した場所で安全に待機する必要があります。

乾徳山の鎖場
撮影:YAMA HACK編集部

Cさん
今回のように、鎖上部の狭い岩場にどんどん人が溜まってしまうような状況では、どうするのが良かったのでしょうか?

上田さん
滑落などの危険度が高いのであれば、「待機場所に人が多くて危ないので、先に下りてもいいですか?」と声をかけて先に通してもらうのもひとつ。まずは状況を伝えましょう。


Cさん
なんとなくの譲り合いの雰囲気だけでは、いつまで経っても進めない…なんてこともありますもんね。

上田さん
「下ります!」「登ります!」と声を掛けることも大切です。渋滞中に限らずですが、次に誰が通過するのかを明確にした方が、スムーズですし安全ですよ。

互いに声を掛け合って、臨機応変に
鎖場の通過時は、どうしたら最も安全に通過できるのかを考えて、状況に応じて判断することが重要。鎖への取りつきは1人ずつ。登り・下りのどちらが先に行くのか、しっかり声を掛け合いましましょう!

“コミュニケーション”をとることが、楽しく安全な登山への一歩!

登山を楽しむ笑顔の登山者
出典:PIXTA
登山道でのすれ違いや追い抜き、鎖場の通過において共通して大切なことは、“コミュニケーションと安全性”。そして、登山者同士の『声掛け』が重要な役割を果たしていました。

山のマナーは、みなさんが安全に登山を楽しむための最低限の立ち振る舞いであり、登山者同士のコミュニケーションなくしては成り立たないものが数多くあります。

初心者も上級者も関係なく、譲り合いの心を持って山に入り、状況に応じた適切な言動を心掛けたいものですね!

登山を安全に楽しむために

長野県が策定している『登山を安全に楽しむためのガイドライン』や、山梨県が策定している『山梨県における登山を安全に楽しむための指針』にも、登山道でのすれ違いに関してを含む“登山中のマナー”についての記載があります。

登山中のマナー

➀スペースや資源(水、電気等)の限られた山ではお互いに譲り合うこと。
➁登山道でのすれ違いは、双方が声を掛け合い臨機応変に行うこと。
➂対向者に登山道を譲る場合は、対面して山側で待機すること。
➃他のパーティに道を譲る場合は、転落する危険を避けるため山側で待機すること。
➄落石を起こしたり、見つけた場合は、すぐに大きな声で「ラクッ!」等と叫び周辺登山者に周知すること。

山のマナーを再確認!


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登山道でのマナー すれ違い・追い抜き・鎖場の通過
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YAMA HACK編集部 荻原
YAMA HACK編集部 荻原

YAMAHACK運営&記事編集担当。もともと旅行が好きだった延長で山へ登るように。山の魅力やワクワクするような山道具など、アウトドアにまつわるあらゆる情報をお届けしていきます。

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