管理栄養士に聞いた! 安全に登山するための正しい水分補給とは?

正しい水分補給は、安全で楽しい登山には欠かせないもの。そこで、「飲み物の種類、組み合わせは何がベスト?」「水だけの持参じゃダメ?」「登山前後に飲むと良い飲み物って?」など、水分補給に関する疑問について管理栄養士が教えます。

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登山に持っていく飲み物のギモン

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激しいスポーツと違い、ゆっくり少しずつ登っていく登山では、喉の乾きを自覚しにくいことがあります。「気温が涼しくてあまり汗をかいていないから大丈夫!」と思っても、体内の水分は少しずつ失われていくもの。喉の乾きを感じた段階ではすでに、軽い脱水症状になっているという例もあるのです。

そこで、最適な飲み方や量、飲み物の種類など、登山時の水分補給のあらゆるギモンについて、フィットネストレーナーであり管理栄養士でもある山田賢児さんに教えてもらいました。

山田さん
提供:山田賢児

理想的な飲み物は…「水」と「スポーツドリンク」の組み合わせ!

水
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筆者が普段登山をするときには、特に何も気にせず水のペットボトルを2本ほど持って行っていました。しかし、汗をかく季節は特に、スポーツドリンクなどを持って行ったほうがいいの?という疑問が…。そこで、まず気になる飲み物の種類について聞いてみました。


山田さん
水だけでも良いですが、水ではナトリウムやカリウムなど、登山中に汗で失われる成分を補給することができません。行動食でそれらの成分を摂れれば問題ないですが、水分からも補給できた方が良いと思います。


スポーツドリンク
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この夏も猛暑続きでしたが、熱中症予防のためには、水分だけでなく塩分も一緒に摂ることが大事と言われていますよね。やはり水だけでなく、スポーツドリンクでナトリウムやカリウムも補給したほうがいいとのこと。

ポカリスエット なお、スポーツドリンクには糖分も入っているため、行動中のエネルギー源になり、登山中の低血糖や、体温の低下を防ぐ効果が期待できるそう。また、ポカリスエットなどのように電解質が含まれているものなら、登山中に汗と一緒に失われた電解質も補給できるので、理想的だそうです。

水の代わりに、お茶じゃダメ?

お茶を飲む登山者
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ちなみに、日常生活では水筒にお茶を入れて持ち歩くことが多い筆者。水の代わりにお茶を持って行ってもいいのでしょうか? また、ひとくちにお茶といっても種類はたくさんあります。どんなお茶がいいのか、選ぶポイントも教えてください!


山田さん
お茶はカフェインが含まれているもの、含まれていないものに分かれます。カフェインが入っているものは利尿作用があり、トイレが近くなるので注意が必要。水分補給用には、カフェインが含まれていない、麦茶などを選んでおくと安心ですね。

一方で、カフェインにはこんなメリットも

秋の一ノ沢ルートを登山する男性
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山田さん
カフェインは、交感神経を優位にしてくれる働きがあるので、体を活性化させ、集中力を高める効果があります。そういった意味では、カフェインが含まれている、烏龍茶、緑茶、紅茶、コーヒーなども個人的には良いと思います。


なるほど、カフェインが一概に良くないという訳でもないようです。飲みすぎるとトイレが近くなる可能性がありますが、“ここぞ!”という時のために好みに応じて紅茶や緑茶などをプラスで持って行っても良さそうですね。

【まとめ】
・水だけでなくスポーツドリンクもあると◎
・お茶であれば、水の代わりにカフェインが含まれていない麦茶などもOK
・カフェインには利尿作用がある
・ただしカフェインには集中力を高める効果があるので、適量であれば緑茶や紅茶も可

自分の脱水量や・ひと口で飲める量って知っていますか?

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では次に、適切な水分補給のタイミングについて。よく、一度に飲まずに少しずつ、などと聞きますが、少しずつってどれくらいなのでしょうか? 季節や汗の量によって、水分補給のペースや、飲む量も変わってくるそうですが、目安を伺いました。


山田さん
水分は呼気からも少しずつ失われていくもの。そこで、喉がかわいていない、汗をあまりかいていない状態でも、15〜30分おきにひと口かふた口は飲んだほうが良いですね。


水分は、1度に大量に飲んでも意味がありません。体に吸収しきれず、結局は尿として排出されてしまうのだとか。

カラカラに喉が乾いた状態で一気飲みすると、トイレは近くなるものの、体には吸収されないということになります。山ではすぐにトイレに行けない状況もありますから、あまり急にトイレに行きたくなるのも困りもの。それを避けるためにも、こまめな水分補給を心がけたほうがいいですね。

汗をかく
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なお、自分の脱水量を簡単に知ることができる方法として知っておくといいのは、およそ行動時間1時間で体重1kgにつき5gの脱水が起こるということ。つまり体重50kgの人が合計6時間歩くとすると、脱水量は1500gとなるそうです。これがわかると、持っていく飲み物の量の目安になりますね。ただし季節による気温差や、汗をかく量など、脱水量には個人差があるのでその点は注意が必要です。

スケール
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ちなみに、自分のひと口の量を明確に知っておくと、水分補給する頻度の目安にもなり、安心ですよね。簡単に、自分のひと口の量を知る方法もあるようです。


山田さん
ペットボトルの重さを計ってから、いつも通りにひと口飲みます。もう一度ペットボトルの重さを計測。減った重さの分が、自分のひと口で飲める量ということになります。


試しに計ってみたところ、女性の私は、ひと口で11mL(1g=1mL)だったのに対し、男性では25mLと、2倍以上の差がでる結果に! 同じように水分をとっていたつもりが、全然違ったなんてことにも繋がりそうです。

出発前に体内の水分を満タンに!

前日夜も水分補給
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では、水分補給は歩き始めてからこまめに行えば、脱水症状を防げるのでしょうか。登山前に心がけておくことがあれば教えてください!


山田さん
まず登山前日の夜から水分をしっかり補給しておきましょう。当日朝にお手洗いをすませ、その後もこまめに水分を補います。出発前に体内の水分を満たしておくことが大切です。


なるほど! これは気にしたこともありませんでした。歩き始める前から十分に体内に水分を入れておくことが、脱水症状の予防には大切なんですね。

登山後には疲労の回復を助ける飲み物を

また、登山後には、筋肉の疲労を回復させる成分が含まれた飲み物を飲むように心がけることが大切なのだそうです。
オレンジジュース
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●オレンジジュース、グレープフルーツジュース…糖分やクエン酸が多く含まれているので、筋肉のエネルギー源の回復を手助け。

チオビタ
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●栄養ドリンク…ビタミンB群とカフェインが含まれているので、効率よくエネルギーを生み出し、疲労回復に効果的。

アミノバリュー
●アミノ酸入りのスポーツドリンク…BCAAという分岐鎖(ぶんきさ)アミノ酸が多く含まれていているものは、筋肉疲労の軽減と回復を手助け。登山後半や疲れを感じたときにも摂取すると効果的。翌日すっきりしたい人におすすめ。

登山した日の夜の食事はタンパク質をしっかり摂ると筋肉の疲労回復にいいと聞きますが、飲み物からも疲労回復の成分を摂取することができるんですね。疲れて食欲が出ない時などは特に、水分からの栄養補給を心がけたいものです。

水分を適切に摂取しないとどうなる?

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では最後に、水分を適切にとらなかった場合、具体的にどういった症状があらわれるのかを聞いてみました。


山田さん
脱水症状のほか、気分が悪くなったり、目の焦点が合わず視界が狭くなる、筋肉の痙攣などの症状が起こる危険性があります。


マラソン
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これは怖い。歩けなくなったり、滑落などの事故にも繋がりかねませんね。ちなみに、箱根駅伝出場経験をもつ山田さんですが、実はマラソンの練習中に脱水症状をおこした経験があるそう。


山田さん
数十kmを走る練習中で、休憩時には必ず水分をとるようにし、正しい水分管理がとれた状況でした。周りと同じ水分量、同じペースを摂取していましたが、周りの人と比べて、僕は汗っかきだったんです。徐々に視界がぼやけて、1人だけ倒れてしまいました。

必要な水の量、ひと口の量は人によって違う!

応急処置により重症には至らなかったものの、この経験から、自分にあった水分補給の大切さを痛感したのだとか。自分が汗っかきの自覚がある場合は特に、水だけではなく、塩分やミネラルが含まれているスポーツドリンクを持っていくべきとのことでした。集団登山の場合、どうしても周りのペースに合わせてしまいがちですが、自分の体調を第一に考えて、自分に合った水分補給をすることが大切と言えそうですね。

自分に合った水分補給で快適な登山を!

快適な登山
出典:PIXTA
「自分に合った飲み物の種類、量を考え準備をする。その結果、登山中に今日はこれを持ってきて良かった、と感じることも、登山の楽しみのひとつだと思っています」と山田さんは話します。

季節や気温など当日の状況と、自分のコンディションを考えた上での水分補給が大切と言えそうです。自分に合った水分補給を知ることは、快適な登山に繋がるでしょう。

◆お話しをお聞きした方:山田賢児さん
山田さん
提供:山田賢児
管理栄養士。フィットネストレーナー。「YAMADA BODY MAKE.」(ヤマダボディメイク)代表。トレーニングに加えて栄養指導を行うことで、健康的で機能的な身体作りをサポートしている。大学では栄養学を専攻するかたわら、陸上選手として箱根駅伝に出場した経験を持つ。



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古川晶子
古川晶子

編集者・ライター。六甲山の麓で生まれ育つも、六甲山より高い山は登ったことがない登山初心者。都会でパソコンと向き合う日々の中、休日のアウトドアで心のエネルギーを充電しています。

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