登山に持っていく飲み物のギモン

そこで、最適な飲み方や量、飲み物の種類など、登山時の水分補給のあらゆるギモンについて、フィットネストレーナーであり管理栄養士でもある山田賢児さんに教えてもらいました。

理想的な飲み物は…「水」と「スポーツドリンク」の組み合わせ!

山田さん
水だけでも良いですが、水ではナトリウムやカリウムなど、登山中に汗で失われる成分を補給することができません。行動食でそれらの成分を摂れれば問題ないですが、水分からも補給できた方が良いと思います。


水の代わりに、お茶じゃダメ?

山田さん
お茶はカフェインが含まれているもの、含まれていないものに分かれます。カフェインが入っているものは利尿作用があり、トイレが近くなるので注意が必要。水分補給用には、カフェインが含まれていない、麦茶などを選んでおくと安心ですね。
一方で、カフェインにはこんなメリットも

山田さん
カフェインは、交感神経を優位にしてくれる働きがあるので、体を活性化させ、集中力を高める効果があります。そういった意味では、カフェインが含まれている、烏龍茶、緑茶、紅茶、コーヒーなども個人的には良いと思います。
なるほど、カフェインが一概に良くないという訳でもないようです。飲みすぎるとトイレが近くなる可能性がありますが、“ここぞ!”という時のために好みに応じて紅茶や緑茶などをプラスで持って行っても良さそうですね。
【まとめ】
・水だけでなくスポーツドリンクもあると◎
・お茶であれば、水の代わりにカフェインが含まれていない麦茶などもOK
・カフェインには利尿作用がある
・ただしカフェインには集中力を高める効果があるので、適量であれば緑茶や紅茶も可
自分の脱水量や・ひと口で飲める量って知っていますか?

山田さん
水分は呼気からも少しずつ失われていくもの。そこで、喉がかわいていない、汗をあまりかいていない状態でも、15〜30分おきにひと口かふた口は飲んだほうが良いですね。
水分は、1度に大量に飲んでも意味がありません。体に吸収しきれず、結局は尿として排出されてしまうのだとか。
カラカラに喉が乾いた状態で一気飲みすると、トイレは近くなるものの、体には吸収されないということになります。山ではすぐにトイレに行けない状況もありますから、あまり急にトイレに行きたくなるのも困りもの。それを避けるためにも、こまめな水分補給を心がけたほうがいいですね。


山田さん
ペットボトルの重さを計ってから、いつも通りにひと口飲みます。もう一度ペットボトルの重さを計測。減った重さの分が、自分のひと口で飲める量ということになります。
試しに計ってみたところ、女性の私は、ひと口で11mL(1g=1mL)だったのに対し、男性では25mLと、2倍以上の差がでる結果に! 同じように水分をとっていたつもりが、全然違ったなんてことにも繋がりそうです。
出発前に体内の水分を満タンに!

山田さん
まず登山前日の夜から水分をしっかり補給しておきましょう。当日朝にお手洗いをすませ、その後もこまめに水分を補います。出発前に体内の水分を満たしておくことが大切です。
なるほど! これは気にしたこともありませんでした。歩き始める前から十分に体内に水分を入れておくことが、脱水症状の予防には大切なんですね。
登山後には疲労の回復を助ける飲み物を
また、登山後には、筋肉の疲労を回復させる成分が含まれた飲み物を飲むように心がけることが大切なのだそうです。


●アミノ酸入りのスポーツドリンク…BCAAという分岐鎖(ぶんきさ)アミノ酸が多く含まれていているものは、筋肉疲労の軽減と回復を手助け。登山後半や疲れを感じたときにも摂取すると効果的。翌日すっきりしたい人におすすめ。
登山した日の夜の食事はタンパク質をしっかり摂ると筋肉の疲労回復にいいと聞きますが、飲み物からも疲労回復の成分を摂取することができるんですね。疲れて食欲が出ない時などは特に、水分からの栄養補給を心がけたいものです。
水分を適切に摂取しないとどうなる?

山田さん
脱水症状のほか、気分が悪くなったり、目の焦点が合わず視界が狭くなる、筋肉の痙攣などの症状が起こる危険性があります。

山田さん
数十kmを走る練習中で、休憩時には必ず水分をとるようにし、正しい水分管理がとれた状況でした。周りと同じ水分量、同じペースを摂取していましたが、周りの人と比べて、僕は汗っかきだったんです。徐々に視界がぼやけて、1人だけ倒れてしまいました。
必要な水の量、ひと口の量は人によって違う!
応急処置により重症には至らなかったものの、この経験から、自分にあった水分補給の大切さを痛感したのだとか。自分が汗っかきの自覚がある場合は特に、水だけではなく、塩分やミネラルが含まれているスポーツドリンクを持っていくべきとのことでした。集団登山の場合、どうしても周りのペースに合わせてしまいがちですが、自分の体調を第一に考えて、自分に合った水分補給をすることが大切と言えそうですね。自分に合った水分補給で快適な登山を!

季節や気温など当日の状況と、自分のコンディションを考えた上での水分補給が大切と言えそうです。自分に合った水分補給を知ることは、快適な登山に繋がるでしょう。
◆お話しをお聞きした方:山田賢児さん
